2025/09/04 のログ
ご案内:「無名遺跡」に影時さんが現れました。
ご案内:「無名遺跡」にアリージュさんが現れました。
アリージュ > 「ま………。
 経路を切られようとも、直ぐに治るし……と言っても、それでも停滞はするからなぁ……。
 もっと動けるって。正直……。」


 ばいんばいんおっぱい(超重量級の重り)が、なんとかならないとままならないんだよなぁ、と。
 だって、よけようと思って、遠心力で体が持ってかれて命中とか、良く在る話でもある。
 それこそ、千切って取って、軽くなるくらいしか。
 逆に言うと、ダメージを受けて、再生してなくすという方がむしろウロボロスとしては、在りなほうだ。
 回避よりも耐久、若しくは回復、と言う方なのだ。
 回避ができるに越したことは無いけど、無いけど、と言う感じ。
 アリージュが戦士で、がちがちの鎧を身に纏えば、ある程度はみわくのばでー(おっぱい)を抑えられるだろう。
 体格と言うのは、重要だと思うんだよね、と、しみじみ呟く。

「という事で、ヒテンマルスクナマル君は、ポシェットの中に、ないないが大安定。」

 その辺りは、先生と意見は同じ、毛玉ーず達の生存本能や危機管理能力は抜群だ。
 危ないと思えばすぐに逃げるし隠れる、だから今、相手ができない状態と言うなら、安全な場所にないないしてしまおう。
 文句は終わった後に聞く。聞く気があれば。

「そーれーにーぃ?」

 忘れてもらっては困るが。
 回復魔法と言うのは、僧侶だけの特権では無い。
 魔導士が此処に居るのだ、回復魔法と言うだけあって、魔法なのである。
 僧侶やヒーラーのそれと、別のルーティンだとしても、回復するための方法はある。
 氣で回復する、神性力で回復する、魔力で回復する。アプローチが違うだけで、結果は同じだ。
 回復するという事象を作り上げることは、アリージュだってできる事だ。
 胸を、叩いてアピール(ぽいーんという擬音)は忘れない。

 それはそれとして、回復薬や、回復魔法のスクロールは、必須だ。これも、手段のうち一つだし。

「知ってる?竜の持つ一番の感情はプライド(傲☆慢)だから。
 たまに、別の持ってる子もいるけどねー?色欲とか暴食とか。」

 誰とは、言わないけど。
 先生であるなら、まあ、大体想像がつくだろう。
 アリージュだけではなく、形だけのドラゴンのゴーレム……特に、実力が半端なのは、許せないのだと。そうおもう。


「それはそれとして。
 良い物お持ちで―!へっへっへー。」

 ごっちゃんです、と、膾切りになったゴーレムが崩れていくところを背中に、お辞儀お辞儀。
 飛ばせる斬撃とか、便利。
 地属性は、叩き潰す、貫くはあるが、切り裂く系の魔法は少ない。
 今回のそれは、立派な斬属性土魔法と言って良いだろう。
 先生に、ありがとござーい、と手刀きったりする。
 ニマニマニマニマ、新しいものをラーニングするのは、何時でも、面白い。

 背を向けたのは、別に油断と言う訳では無くて。
 ぶっちゃけ、高速で動く先生に追いついてなかっただけだった。
 へっへっへーとか言っている時に、高速で動いた先生が、ゴーレムにとどめを刺している状態だったりもする。


 そりゃあ。

 魔法で加速してる忍者に、速度が追い付けるわけがない。
 反応速度とか、全てにおいて、遅い魔導士、ドラゴンを差っ引いても、敵わない。

影時 > 「――竜種(ドラゴン)の血さまさま、だよなぁ。
 完全励起状態の屠龍なら若しかするとだが、……それは俺の監督不行き届きだけじゃ済まんわな。
 そこに尖ったものがあれば、それを削ろうとするものが生じるのが、何と言うか世の常、摂理らしい。
 
 ――汝、驕ることなかれ、だ。俺も常々気をつけなきゃならん」

そんなもの(どたぷん)を削るなんてとんでもない、と。何かそう思っていそうな有様に返す顔は、不思議に真面目で。
世の中の戦士にはその超重量級の質量をクッション代わりに、とか、その真逆の体躯で超回避をかますという例もよく聞く。
どちらも一長一短だ。どちらの優越も付け難し。どちらかと云えばという煩悩はあれど、まさしく貴賎なしの概念。
ともあれ、単純な効率な面を思えば、自己再生、回復に任せて耐え凌ぐというのは理に適っている。
その場合に懸念すべきは、時間当たりの回復力を上回る攻撃、ないし、再生能力を阻害する類の何か、である。

この双子の娘たちは聡明である。そんな憂慮すべき事項を今更説くまでもないだろう。
だが、例えば、今振るうこの刀ならどうだろう。片割れと揃い、屠龍の威を全開にした刃なら、どうだろうか。
或いは竜殺しではなくとも、対魔族や対魔獣で需要のある再生能力阻害の性質を持つ魔剣等なら。
“あり得ない”と思うことは、転じて“ありえる”という可能性を生じさせうる。――よく心得なければなるまい。

「色々お陰様で自衛は出来るが、間に合わねェときもあるからなあ……と、それもそうか。
 いやはは。つくづくかゆいトコまで手ぇ届くじゃねえかお嬢さん」
 
何せ元々色々跋扈する森に棲んでいた野生動物である。今も危機回避の感覚はばっちり健在だ。
その上で、与えられた魔導書を使えば、一時的に身を守ることも出来る。
それどころではなさそうな時にこそ、二匹を仕舞っておけばいい。そう感じた場合には命令に従うよう教え込んでいる。
今はまだ、大丈夫そうだ。よろしくーとか言いたげに身じろぎするのを、懐深い向こうは感じるかもしれない。

そして、そう。一見無用かもしれないが、不測の事態にこそ備える意味がある。必要がある。
毛玉たちを怪我させないとしたら、真っ先に手傷を負うのは自分である。
一流とは自惚れ過ぎでも、自前でポーションや巻物の類は買い貯めている。それよりもすぐに使える癒しがあるなら、まさにぬかりない。
胸を叩けばぼいーんと響くのは、まっこと当然。男の胸板よりも圧倒的にやーらかーいものをお持ちならば。

「――暴食は最早言わずと知れずよなァ。色欲は……最近だと心当たりが多いんだが、が。
 えぇい、見せちまったものは仕方がねぇ。遠慮なく持ってけ持ってけ。んでもって無駄なく使ってくれぃ!」
 
誰とは言わない。だが、直ぐにピンとくるだけだ。今日はお留守番のちっこいのが遠くで、ぐわっ!と咆えている気がする。
色欲は思いつく顔が一人、否、新顔でもう一人、か。ただ、形を真似ただけの竜の紛い物にこう反応するかはさておき。
そう、さておく。使い出の良いとっておきをこうも見事にというのは、色々末恐ろしい限りである。
完コピではないだけ、オトナらしく素直に許そう。そう思いつつ、バフが乗りに乗った速度で肉薄し、止めを刺す。
血振りの如く刀を振り払って収め、一足先に祭壇に登りて確かめるのは――宝箱二つ。

【発見物判定(2d5+0)⇒1:武器 2:防具 3:アクセサリー 4:宝物/素材 5:魔導書】
[2d5+0→1+2+(+0)=3]
影時 > 【発見物鑑定(2d6+0)⇒1:良品/普通 2・3:高級品/業物 4・5:最高級品/大業物 6:マジカルなor魔導機械】 [2d6+0→4+5+(+0)=9]
影時 > 「……ふむ。ちと、後ろ見張っておいてくれ。
 その球の確認とかは、少しに後にしてくれると有難い」
 
祭壇の上には、例の宝玉らしいオブジェクトがある。
其れにはまだ触れない。まだ何か面倒の類が埋もれている気がする。先に宝箱の確認をしておきたい。
慣れた素振りで、しかし注意深く宝箱に近づき、周囲の罠の敷設の有無を確かめる。

――罠はなし。次は宝箱自体の仕掛けの有無の確認。
――どちらも仕掛けあり。取り出す開錠道具類を傍に広げ、千枚通しにも似た鉄具や鉤などを差し込み突っ込み。

がちゃがちゃとやっていれば、開く。その工程を二つ。
開いた中身を見れば、武器らしい長さのあるものともう一つは、何だろうか。厳重な布包み。

アリージュ > 「………あへ?」

 背後から声が聞こえた。
 目の前に居たと思った先生の声が後ろから聞こえたのだ。
 後ろを見張っておいてくれ、と言われて、ポカーンとした様子で、視線を一度向けると。
 いつの間にか、先生が、ゴーレムにとどめを刺していたのか、宝箱に向かっているのが見えた。
 集中している様子を見せるので。あれまぁ、と。

魔力回路起動(ウロボロスエフェクト)
 範囲索敵魔法(エコーロケーション)

 とりあえず、後ろをと言われても、アリージュは、魔法を使用する。
 自分の視覚だけではなく、魔法による警戒、その方が広範囲を警戒することができる。
 ダンジョンの魔物は倒してきているが、それでも湧かないとも限らない。
 湧くとするなら、何処に出るとか、そういったのもあるので、部屋全体からもう少しを範囲として。
 魔法の警戒網を張ることにする。

「とりあえず……、ドラゴンキラーなら……うん、なんとかするんだ。」

 そう、竜に特攻があるとするなら、竜ではなくなればいい。
 それを可能にするのが魔導だ、一時的に無効化し、その間に対策を決めればいい。
 それだけじゃなくて、それを使えないようにするとか、いろいろ考えればいい。
 真っ向から向かうのは、先生の言葉では無いが、魔導の戦い方では無い。

 力こそパワーと言う至言もあるから、其処は本当に、時と場合による、と言うものだ。

「と、ゆーことで。
 警戒はしてるからねー。」

 いつでも魔法を発動できるように。
 体内の魔力回路を、魔導を循環させて、準備ができたことを伝えよう。

影時 > バフの難点は時間制限があること。都度かけ直すことは出来ても、基本は永続するものではない。
だからこそ、特に数人がかりで挑む強襲戦(レイド)では、幾つもの砂時計をひっくり返すように厳密な管理が必要になる。
それが力合わせることの素晴らしさであり、難しい処だ。生死の境界上で踊る戦いは常に神経を削るものである。
今もまた然り。諸々の加護に守られている反面、その勢い任せは実はとも言わなくとも危ない。
ただの一歩が二歩も三歩とも成りうるなら、手の動きもまた然り。

手元が逸らないように、損なわないように気をつけなければならない。別の意味で集中が要る。常以上に要る。

(……――この時だけ、加護を外してくれ、ともいかねぇだろうしなぁ)

額にじわり、と汗が滲むのは暑さではない。らしからぬ緊張、集中故。
速度域に慣れたなら多少は緩めつつ、言葉を返す余裕が生まれる。

「なんとかする、と言える時点で全く大したモンだよアリージュ。
 どれもこれもが誰かにとって最適解となりうる。不穏を感じたなら、即応できるよう磨く方が良いのかねェこりゃ……と」
 
がちゃがちゃ。がこっがたん。言葉を返しているうちに宝箱を開き、中身を露出させることができる。
だが、直ぐに見えるわけではない。どちらも厳重に包まれている。
傍に広げた道具入れに使ったものを収め、戻して腰の雑嚢に突っ込み直す。触れたらまずいものではないと思いたいが、さて。
警戒態勢が出来ているうちに、一番手近にあるものを確かめよう。此れは武器のような気がする。

【形状判定(1d6+0)⇒1:剣 2:短剣/短刀 3:刀 4:斧 5:槍 6:鎚/杖】
[1d6+0→2+(+0)=2]
影時 > 「……こりゃ珍しいな。なンかこんな形の包丁とか、鉈とかシェンヤンの辺りに無かったかな?」

手に取ってみる包みはずしりと重い癖に、そう長さを感じられない。
取り出す前は長くも見えた気がしたが、目の錯覚でもあったのだろうか。首を傾げつつ布を引き剥がす。
出てくるハガネの色は、溶岩の光を受けて冷たく輝く肉厚。
切先のない、否、直角に切り落としたような形状は鉈とも肉切り包丁とも言えるいかつい代物。

アリージュ > 「魔術とは、魔導とは、不可能を可能に、現実を夢幻に、無限を現実に。
 世界を改変する為の技術だもの。
 竜胆おば様だって、そういうはずだよ?」

 そう、世の理を壊すための技術が魔法だ、その為の力が、魔力、神性力、氣、様々な言葉があろうとも、変革する力だ。
 詰まるところ、変化の魔法とか、そう言うのだってあるし。
 アリージュは、人竜だから、竜をなくして人になれば、竜特攻に意味はなくなる。
 そう言う物なのだ、とアリージュは考えているし、考えていることを実現するのが、魔導だ。

「準備して、予測して。
 死ぬのは怖いし、痛いしね……?
 それなら、死なないように、色々と準備するのが……必須だよ?」

 死んだことがあるような口ぶり、と言うよりも。
 死んだことがあるから、そういう風にしているのだ、と言う経験則。
 ふつう死んだら終わりだが。
 そこは、双頭のウロボロス、片割れが生きていれば、片割れが死んでも、生き返る。
 それゆえの、感覚と言うべき、か。

「しかし、先生器用だねー。
 器用のバフ要らなそうだし。」

 カチャカチャしている様子、鮮やかだねー。と、感心しきり。
 取り出している物品に関して、凄く物騒な、ぶった切ることに全力な短刀にも見える。
 でも。

「魔導士のあたしが、判ると思うのー?
 魔法で鑑定するのは出来ても、判るのは性能と、呪われてるかどうかとか、魔法の武器かどうかぐらいだよー?」

 武器の知識は、余り無い。
 其処は姉のアビールの領域だ。
 なので、うーむ?と首を傾ぐ。

影時 > 【形状判定その2(1d5+0)⇒1:服やローブ 2:軽鎧/革鎧 3:鎖帷子/鱗鎧 4:板金鎧 5:全身鎧】 [1d5+0→2+(+0)=2]
影時 > 「成る程? ……何かの戯曲になかったかねえ。世界を改変するチカラを、とかそんな感じの」

こう見えなくとも、色々本を読む。学院の図書館で流行りの本があると聞けばついつい借りたくなる。
演劇の台本であっても先ずは読む。手に取ってみる。合うかどうかは読まなければ分からない。
昨今の流行りではなくとも、何か印象的なセリフであるなら、なにがしか印象に残るものであるもの。
はて、と首を傾げる。何と言うタイトルかは思い出せないが何か読んだのは、見たのは間違いない。
ともあれ、それだけに強烈であり、脅威である。真っ向で相対するとなったら――、手番として真っ先に倒すべき、という程の。

ついつい考えてしまうのは、戦うものとしての効率、戦術眼的な癖である。
理屈の上、セオリーの上では、広範囲を制する魔導師が居るなら、先に叩くのは常道的。
だが、常識はずれはいつだって現れるものだ。双子のもう一人が揃えば、常道を行くのは非常に至難とも言いうる。

「……――あー。訳知り顔で言い過ぎたかね、その具合だと。
 死んだことがなくとも、死なないように徹底的に備え、揃えて挑む。死んだら元も子も無い」
 
さて、この言い方、口ぶりは。聞けばなんとなしに察するものはある。
もぞもぞ、もぞもぞ!と身じろぐ毛玉が魔導師の少女の肩に出てきて、じっと首筋に頬擦りしてゆく。
死ぬのが怖いから、というのか。或いは。彼らの気持ちは分からない。だが、そうしたかったのだろう。

「どういたしまして、と言いてぇ処だが、これ以上強化されると逆に手が捗り過ぎて怖ぇな。
 加減が要るなあ。でー、こっちは……革鎧、か。どっちもどれも、えらい上等のように見える」
 
盗賊的な技能もお手の物。一家に一台、忍者をとばかりの鍵開け、罠外しの冴えも過ぎると逆に危うい。
適度な鈍さも感覚的には必要。強化の道も中々奥が深いものだ。
そんな仕様もないことを思いつつ、もう一つの箱の中身も改める。良い色合いの胴鎧――ソフトレザーの革鎧であった。
硬過ぎず、さりとて脇部分など調整をすれば、着用者の体形によく馴染んでみせると言わんばかりの上物。
兎に角無骨な短刀も合わせて、深層らしい申し分ない収穫であった。あと、気に掛かるとすれば。

「こういう工芸品とかなんとかは、詳しそうな気もしたからなあ。
 取り敢えず締まって、商会で見てもらうかね。あ、と、は……お待ちかねだろう?」

魔導師が何もかも知っている、詳しいとは限らない。すまんすまん、と苦笑交じりに頭を下げ、改めて物を仕舞う。
元通りの布に包んで一先ず全部、腰裏の雑嚢ににゅっと突っ込む。魔法の倉庫に納めておく。
そうして手元が軽くなれば、祭壇の上で何処か待ちぼうけよろしく輝いている宝玉を見遣る。

――溶岩色の輝きと魔力を蓄えた宝物。

だが、手をかざしても不思議と熱くない。この取り分は他ならぬ人竜に相応しい。

アリージュ > 「あるかもねー?
 魔導と言うのは荒唐無稽だし、戯曲に使うには便利だもんね。
 とはいえ、ちゃんとした理があるから使う事ができるんだけど。」

 魔道とは、魔術とは、魔導とは……、学ばねば判らない。
 そして、なんでもできるけれど、何にもできない事も、判らない。
 だからこそ、戯曲などの空想の産物に使いやすいのだ。
 世界を騙すともいえるし、世界を変えているともいえるし。
 その辺りは、個人の感想でしかない、魔導士さえもどちらととらえるのかは個人次第。

 それに、苦手とはいえ、そうそうやられたくはない。
 その為に魔導士は身を守る術を各々で作る。
 徒党を組むことだってそう、使い魔に身を守らせるのもそう。
 不完全な不死を得るのだってそうだ。
 
 それもこれも、自分の求める真理を突き詰めるための、方法のうち一つでしかないのだけども。
 あともう一つ。
 アリージュの半身である姉が居るのであれば、それこそ。
 二人を止めるには圧倒的な力で二人を同時に消し飛ばす、だけれどもさて。
 それができるのが居るのかどうか。

「普通に考えれば、そんな経験をしたことある人なんて、居ないと思うよ?
 どっちにしろ、死にたくない、は生きてる人すべての真理だとおもうし。
 その為に、冒険者は、備えるんだもんね。」

 先生の言葉には同意しかない、復活できるから、と死を軽んじることは無いのだ。
 だって、痛いのは誰だっていやだし、死にたくないのは誰もがそう。
 ただ、運が良いことに、アリージュと、アビールの双子は、復活ができる、と言う幸運があるだけ、なのだ。
 それでも、進んで死にたいとは思わないし、そんな感覚を覚えたいと思わない。
 毛玉たちの擦りつく頭を優しく撫でてみせて。

「あ、切ったほうがよかった?」

 バフはかかったまま、永続では無かったとしても効果は残っている。
 それなら、バフを解除しても良かったか、と目を瞬いて、首を傾ぐ。
 解除して、掛けなおすのは別に手間でもない、それに、先程と同じ戦闘があるとは思うわけでもないし。
 出てきたソフトレザ―アーマーは、とてもいい作りだ。
 魔法の力がないからこそ、それは良い素材だともいえるわけだ。

「ふむふむ、私とか、竜胆叔母様にエンチャントしてもらえば、良さそうだね其れ。」

 魔法が掛かってないからこそ、できる作業。
 上質の武器防具を恒久的なエンチャントを掛けるなら、それは上質の魔法の装備になるわけで。
 下手にかかっているよりも、魔導師や魔導士に言わせるなら、こっちのほうが良い、になりそうだ。

「工芸品とかは詳しいというよりも、価値が判る、ぐらいだよ?
 両方合わせて、20000ゴルトくらい、とか。」

 竜の目は、価値を知る、魔力を知る。
 ただ、その価値が、人の目で見ればと言うなら、その人の道具の価値を、知って居なければならない。
 最高品質の武器だから、その位の価値がある事はみれても、武器に詳しいわけでは無いのでと言う訳だ。
 これは、魔導士としての知識よりも、竜の生得の性質と言う方が正しい。
 むしろ、そう言うのは、熟練のシーフとか、商人の役割では無いだろうか。

「火と地の魔力が混在しているオーブ。
 いうなれば、溶岩のオーブってところかな、あれがこの洞窟を作ってるし。
 道具として使うなら、溶岩を作れるだけじゃないね。
 火の属性、大地の属性の魔法の助けになるね。
 それこそ、魔法を覚えてなくても、溶岩を作り出す魔法は、オーブが自動的にやってくれる。」

 こっちに関しては、専門家だから、しっかりすっぱりと言い切る。
 それに、オーブ自体に魔力があるから、魔力のない物でも使えるね、と。

影時 > 「だな。暇な時にでも学院の図書館でも漁ってみるか。最新の奴じゃあなかったのは確かなンだが。
 ――渇望を叶えるチカラを祈願する、みたいな意図の台詞だった筈だ多分。
 
 俺の忍術然り、魔導然り、(コトワリ)が通っていこそ成り立つ術には違いない筈だがね」
 
ふむ、と。学びの面で幾つか考える、思いを凝らすのはすっかり教師然となったものである。
甘くなったとも云えるし、凶刃の体現者が鈍くなったとも言える。
人間であろうと竜であろうと、興味の向く先次第では持ちうる知識、記憶に偏りがあるの当然。
己が知っていることを相手もまた知っている、と思うことこそ愚の骨頂。
見る者には、想う者には夢のよう。実際の行使者にとっては有限がありうる技術でもあり。

ただの技術を超越しうるのは、例えば才能。はたまた異種の血。或いは狂気じみた渇望。
致命の刃を避けうる手管は、誰しもが考え得ることであり、手段はきっと星ほどにも存在しうるのだろう。
二人で一人。一人で二人。片割れがあれば蘇るものを殺すには、二人同時にと思うが……。

「あるぞ。俺のように分身を紡ぎ、使える手合いなら、な。
 生きるか死ぬかのぎりぎりを攻めるのは愉しいが、死んだら酒も飲めねえし、抱けもしねぇ」
 
……むつかしいもんだ、と。死闘にこそ滾る者が、しみじみと嘯く。
双子といずれ手合わせはするだろう。だが、其処から進んだ死闘までは御免だ。やり過ぎだ。
死ぬのは恐ろしい。分身からのフィードバックは疑似体験の四文字を超えて、生々しいほどのものを与えてくる。
慣れてはいけない。慣れたら死ぬ。さりとて慣れない塩梅だと心身に響く。
擦り付く毛玉達が撫でてもらえれば、嬉しそうに尻尾もその手に擦り付ける。ちらと向ける小さな瞳は、飼い主の性分に呆れたように揺らめいて。

「あぁ、いや。大丈夫だ。……そうだな。もっとこう、変な組み方仕掛け方してたら、やばかったろうなあ。
 ふむ。俺には見ての通り鎧があるから、今すぐは必要な類じゃない。
 アリージュお嬢様が良けりゃぁ、エンチャントの素体として持って行ってくれ」
 
エンチャントされた武具はものにもよるが、冒険者の誰しもが欲する高級品と成りうる。
付与魔術の内容精度もそうだが、ベースとなる武具の質が良ければよい。色々な面で伸びしろが見込める。
後の相談は、一先ず鑑定を終えてから幾らでも考えれば良い。ただ要らぬから売るには、それだけ惜しい。

「ラファルもそんなこと言ってたなあ。……成る程。だが、こうもよけりゃあ売るのも勿体ない。
 
 ……ふむ。溶岩の忍術も遣ろうと思えばだろうが、ちぃと俺が使うにゃあ熱すぎるなぁ。
 多分場所も選ぶ。まあ、取り敢えずこれも回収して…………あ。がこん?」
 
価値換算が直ぐに出来るのは、確かそういうものであったか。一番弟子の鑑識眼もこんな感じだったなと思い出す。
価値はある。だが、用途を見出したものにとっては、金額はただの数字の羅列にしかならない。
使う者持つものが込める思い入れであり、感情移入とは、金額には代えられない。
ごつい包丁じみた刃も、エンチャントの余地もありそうだと思いつつ、残る物の説明を聞く。
本領、領分的を思うと己よりも、魔法の知識を持つもの向きの代物か。そう思いながら、手に取る。

――物自体はひょいと手に取れる。そして、己が掌に程よく乗っかる位に馴染む。

ただ、問題は。取ったら音がした。ついで、ごごごご、と。遅れて遠く遠く、鳴動が響き出す。何が、源泉の堰がきれたような不吉な音。