2025/08/31 のログ
アリージュ > 「だって、戦士ってのは、強い相手にぶつかるのが、一番成長するし。
 大丈夫☆全力で調整するから、おねーちゃんとね❤

 んー。場所なら、問題ないんじゃない?
 私の魔力が心配なら、竜胆おばさんにお願いして作ってもらえば。

 うーん。
 まあ、動き方……かぁ。参考までに、考えてみるよー。」

 あまり遠くに行くのは移動の労力もある。
 空間拡張の上に結界を張って作ればいいだろう、伯母の竜胆のレベルならば、自分たちが暴れても問題はない物ができる。
 姉も妹も、二人そろった状態でのバトルに対しての興味とワクワクがとてもとても、乗り気なのである。
 それに、本気で二人そろった全力を出してみたい、と言うのもあるのだ。

 剣士とか拳士とか、戦士とか、そういった動きだって、学ぶと言うのもわかる。
 魔導を学ぶ勉強の時間を体の動きを覚える時間にするのはよろしくはない。
 何かを学ぶというのは、他を学ぶための時間がもったいないのだと思う。

「りょー☆
 戦闘中は、けだまーずには隠れて貰うね。」

 流石に、守るというなら、戦闘中は激しくなるので、ヒテンマルスクナマルには、自分の服の中に隠れてもらう。
 その方が安全だろう、防御や保護の魔法を使えばと思うだろう。
 道具と言う便利なものがある、魔法のバッグがあるから、そこに入っていてもらおう、其処も快適だし安全だ。

「徒党かぁ……。」

 ふと考えると、いつもはペアだけどパーティで動いた事が余り無いなぁ、と思うのだ。
 パーティでの動き、魔導士としては、徒党で動く形も覚えておいたほうが良い。
 そういう意味でいうなら、先生の徒党に入って、パーティの動きを覚えるのも良いなぁと。
 アリージュはアリージュとして色々と考えているのである。

「いやぁ、無差別広範囲魔法(ブリザード)と、どっちがいいかなって思ったんだけど。
 質量には、質量だよねーって。
 それと、戦いは数だよねって。」

 同じ大きさのゴーレムをぶつければ、当然対消滅する。
 一応、呼びに2体追加で作ってあるので、問題は無いだろう。
 組み合って、急速的な蒸気爆発が発生して、どかんどかんとド派手に爆発してる。
 うんうん、避けてる避けてると、にまーっと笑う。

影時 > 「まァその道理については、俺も否定するとこは無ぇがな。
 ……成る程。符とか宝石にでも封じて用意して貰えるんだったら、それが一番良い。
 
 小耳に挟んだことだが、……――口頭での詠唱ではなく、身振りと足運びそのものが術を喚起する手法があるそうだ。
 俺の忍術の手印のように、だ。本を読む時間がとか思うなら、そっちの研究も兼ねりゃあ一挙両得だな?」
 
一番弟子に忍者を名乗ることを許す試験をした際は、諸々を考えて魔族の国近辺の荒地でも使ったのだったか。
思い返すと、今のようになるとは全く欠片も思わない。思いにもよらない。
だが、それだけの移動ができたのも、互いの移動速度の凄まじさ有ってのことともいえる。
それなら大掛かりな一方で移動距離を極小に抑えられる戦域作成の方が、戦う側にとっては面倒が少ない……かもしれない。

――そんな気乗りがいまいちらしい様に、そういえば……と思い出したような風の提案を投げてみよう。
こう考えてみると良い、という思考の転換。詠唱を基軸とする術者で忌避するケースは、わざわざ言うまでもあるまい。
無詠唱術という方法が流行りとも聞くが、手管はどれだけあっても困ることはあるまい。
身振りと足運びによる喚起、地面に擦らせて魔文字を描く、等々。どかん☆と撃つ以外の手段もあるに越したことはない。

「頼む。そうでなくとも隠れるだろうが……くれぐれも粗相はするなよ?」

な?と二匹に念押しする。潜る前やら小休止の旅に用足しをしているなら、そうそう心配もなし。
こくこくこく!と。親分の言わんとするところは、分かるのだろう。何度も頷く毛玉達には真剣みがある。
胸の谷間という乙女の聖域(サンクチュアリ)に、二匹まとめて収まる様を見れば、立ち回りも幾つか思う。
後衛に魔導師を置いた戦術は勿論、何を重点すべきは明瞭明確。本当に危ないなら、魔法の鞄に二匹を入れておけば万全だ。

「気づけば、トゥルネソル家の身内で商会専属のパーティを組めそうな有様だからなぁ。
 個々にばらけるのも其れは其れで良いが、チカラを出し合えるなら、それが一番手っ取り早い気もしてな」
 
己もまた単独、ないし弟子たちとペアでつるんで動く。それでも問題はない。支障はない。
だが、自分が中軸、ハブとして一団を組み、数人体制で効率よく依頼を片すやり方もあるのではないか、とも思うのだ。
冒険者ギルドの中には、数人で組んだ固定パーティで名を挙げるものたちも、少なくない。其れに倣ってみてのこと。
まだまだ模索、思索の範囲内だが、提案を述べてみるだけなら自由の範疇だろう。

「無差別よりはまーだマシだろうが、……ったく。俺と組む時以外は気ぃつけてくれ、な?」

対消滅させる、させきれないなら叩き切って――先ずはひと段落。
うわぁ……と言わんばかりに二匹が見てくる様に肩を竦め、呼吸を整える。
水蒸気爆発の残滓を大きく気にせずに済むのは、突入前に掛けてもらった耐性付与の賜物。つくづく馬鹿にならない。
支援魔法、魔術の有難みを思い知りつつ、先を進む。

恐らくは此れが最下層、最奥――なのだろう。周囲を見回せば、辺り一面の赤、赤、赤。溶岩の海。
煮え滾る岩漿/マグマの広がりの中を貫くように、凝固した岩の道がうねりつつ一本道で続く。
そこを駆け抜けてゆけば、立ちふさがるものが生じる。
先程と同じ溶岩人形、溶岩に憑依して産まれた炎蛇、或いは宙に浮かぶ人魂めいた火精霊(エレメンタル)

魔導士からの支援、ないし射撃を先行させ、生じた破口を拡げるように忍びが進む。
斬る、だけでは足りない。周囲の火行、土行から喚起した火球、岩礫を放ち、火そのものを氣を篭めた白刃で叩き切り、前に。

――押し通る先に、見えてくる。石組みの段々状の祭壇の上に安置された、溶岩色の光。

それを阻むように立ちふさがるものもまた、溶岩色。全身が赤々とした溶岩で燃え滾り、滴れば焦音を響かせる。
身の丈10メートルほどはあるだろうか。竜頭の溶岩巨人が不遜なるものを阻もうと身構えてみせる。

アリージュ > 「え。そんな手間かけるの?」

 影時の思惑に関しては、此処はずれてしまった。
 印とか、動きとか、必要ないのだ。アリージュはウロボロス。
 竜の因子を起動さえしてしまえば、魔法陣は体内で生成し、いくらでも、魔力を増幅し、魔法をぶちかます。
 両手を合わせる事さえ、必要がない。
 詠唱破棄とか、それ以前。体内で魔法陣で作り詠唱をキャンセルする。
 ゆえに、通常の破棄のように威力の減衰が熾きるわけでもなく、むしろ強化されるし。
 意識さえあればいつでも発動できるし。
 逆に、トラップのようにセットすれば、意識が無くても魔法が発動する。
 これは、アリージュだから、という特殊な例なので、影時先生は、何ら悪くはない。

「そそう?」

 粗相って、何だろう?
 先生の言葉に、なんかすごい勢いで、同意しているけだまーず。
 粗相てなーに?と、毛玉たちに問いかける。
 まあ、一番近くに居る質問しやすいのが、毛玉―ずだから。
 何気なく意思疎通しているのがアリージュだったりする。

「ま、一応トゥルネソル所属の冒険者もいるんだけどねー。
 何時も、リスかーさんの、護衛してる人たち。

 おかーさん、子作り大好きだしねー、もう、3チーム位できるよね。」

 4人1チームなら、12人。
 本当に様々居るもんだ、とアリージュは考える。
 ただ、冒険者になっているのは、長女(クロナ)二女(シロナ)、アビール、アリージュの四人だが。
 ラファル叔母を考えれば、5人。
 バランス的には、ヒーラーが居ない程度、かなぁ、と考えるアリージュ。
 アリージュが回復できるから、まあ、なんとかできるかな、とかいろいろ。

「あはっ。うん、色々とちゃんと考えてやってるから!」

 先生だからこそ、ぼかーんとしているだけであって。
 普段はもっと落ち着いている、アイスジャベリンとかを突き刺して、ラヴァゴーレムを止めたり、とか。
 とりあえず。

 残りの二体のゴーレムに露払いをお願いしつつ。
 師匠と共に進む。ゴーレムに運んでもらえば、アリージュの足元も安全なので。


「うっわ。ふけーい。」

 dragonに対し、竜頭のゴーレムとか。
 喧嘩打ってる、売られてるよね?
 そう言いながらも。

「物理障壁。魔法障壁展開、対象、影時。アイスゴーレム」

 今まで、大きくダメージを受けてはいないものの、奥に行くほど敵は強くなるし。
 あれがボスだとするなら、更に強化を入れても入れ過ぎではあるまい。
 影時の周りに、薄く幕のような物理と魔法のバリアを張る。
 彼の速度を殺すことなく防御力を上げられる。
 ついでにアイスゴーレムの強化を施し、簡単に爆発しないように、と。

影時 > 「……――あー。なァるほど。これはすまん、俺の認識不足か。
 フィリに持たせてる魔槌で周囲の魔力奪われても、体内だけで魔力を巡らせて練れるなら蛇足か。
 
 とはいえ、体幹を鍛えるところから始めるのは推したいがね」
 
恐らく、と前置きする。聞くところと学院で教授を受けた内容等加味すれば、だ、
体内で生成される魔法陣、ないし回路自体に干渉する要素がない限り、この娘の魔法は既存の喚起手段がなくとも発動する。
であれば、自分達の認識における阻害手段は直ぐに思いつく限りで二つ。
己と一番弟子が所有する「金剛刃」、またはもう一人の弟子が所有する「魔槌」。それらが直接接触し、干渉するなら、といった具合か。
翻って考えれば、それらか同等、同様の阻害干渉要素がない限り、魔法を使える、といった具合だろう。
つくづくでたらめである。故にでたらめ任せ以外の鍛錬もまた、おろそかにはしたくない。

「何だろうなぁ。なぁ?」

問いかけられれば、二匹の毛玉は黒眼鏡がずれた様相でわきゃわきゃと身じろぎ、きゃーと顔を覆う仕草を見せる。
小休止の時にでもしてたろうに、とは云うまい。思うまい。
ようは漏らしてしまうようなことはするな、と言いたい訳である。
二匹は親分の冒険に帯同し、根性(レベル)を積んだ毛玉だが、恐ろしいものに遭った時とかは、なのだ。
闘うチカラは持たないからこそ、飼い主などからの庇護を受ける。観客、賑やかしでいられる。

「そうだな。偶にアイサツするが。
 とーはいえ、音頭取りが居たら存外出来そうな位に、居るよなあ……。その気さえあれば」
 
しかも、そのうちまた増えそうな気がしなくもない位に、居るものである。見守る者としてびっくりである。
トゥルネソル家のお屋敷とは別に、シェアハウス的な拠点でもあれば、ギルドの酒場でぐだを巻くような手間も省ける。
身内で固めるというのは、実際パーティの結成手段としてはありがちだが、堅実な組み方でもある。
ヒーラーをまで思うならばもう一人、ナースなおぜうさまを引き込みたい処だが、深い傷を負うケースは余程のことにしかなるまい。

「……ったく。まぁ、気にし過ぎても仕方がない。次だ、次。この分なら罠を敷く段もあるまいよ」

手印を結び、偵察がてら呼び出す分身を二体、薄めで生成して、先行させる。罠の有無を探りながら驀進する。
敵が湧き、立ちふさがればゴーレムの護衛がてら戻して突破し、再び前に出す。
最後に立ちふさがるもの、と思われるものを見れば戻し、見やるものは――大きい。大変大きい。
竜の血を引くもの、龍殺しの太刀を持つものに対し、此れは不敬か。否、これは。

「……――竜、じゃぁないか。大地力の強い顕現の仕方として、なぞらえていると言ったところか。
 屠龍が反応しねェってことは、そういうことなんだろう。来るぞ……!」
 
腰に差した刀が震えない。此れは龍ではない、ということ。だが、地脈を揺蕩い、泳ぐものは何か――かという処から生じたのだろう。
そう見立てながら現れた敵を認め、迎撃するために動き出す。蠢き出す。
大きく吸い込むようなポーズから、開いた口より吐き出すものは赤きもの。粘度の低いマグマの噴出。マグマブレス。
直線状に吹きつけられる其れを側転と共にかわし、受けた加護を頼みに走り出しつつ、印を組む。
ぱぱ、ぱ、と。立て続けに印を組み、周囲の土行を喚起し、術を組む。ぱんと叩きつけた手の間にきらきらと輝く渦を生む。

――土遁・金剛砂輪剣。

そう名付けた術だ。鋼玉のような高硬度鉱物を多く含む粉末、砂を呼び出し、高速回転する車輪状にして擲つ。
土行で紡ぐ此れはそもそもの物性として熱に強い。巨大なチャクラムと化した輪刃が、ぎゃりぎゃりぎゃり、と巨躯を削る。
声はなく、ただ、びりびりと。受け止める竜頭の溶岩巨人が叫ぶように唸る。実際、深々と避けた身からぼとりぼとりと熱血めいた溶岩が零れ。

アリージュ > 「そゆこと❤
 因みに、私の中で、魔力はぎゅんぎゅん増加するから……生半可な吸魔じゃ、間に合わないよ?

 体幹かぁ……うーん。確かに、だよなぁ。」

 体幹を鍛えるという事、こけにくくなったりとか、それに関しては、一定の理解はある。
 なので、うーん、と悩むのだけども、さて、どうしたものだろうか、と。
 今考える事では無いというのは確かだ。
 ウロボロスと言う竜は、1で全、全で1を表す、円環の竜。
 自分の存在自体が一種の魔法陣であり、装置となっている。
 金剛刃、魔槌……それらがあったとして、魔力でアリージュを屈服させる出力が無ければ、干渉もままならないだろう。
 トゥルネソルの竜は、竜の属性に従った部分に関しては、追随を許していない。
 だからこその、でたらめ、なのである。

「じー。」

 何が言いたいのかは分かった、判った上で、ニンマリ笑いながら、見やるのである。
 愛い子たちよのぅ、なんて言いたそうに、でも今はそんな状態では無いので、視線を戻す。
 今は、けだまーずに構っていられる程、暇では無いのだから。

 人間よりも発情期な、インフォマニアのリスだ。
 多分増える、きっと増える、沢山増える。
 何処まで行く気なのかと聞けば、何処までも行くつもりだろう。
 そして、それを増やしても問題ないくらいに、商会は大きいし、金もあるのだから。
 あともう一つ。
 ナースなリーナは、お仕事がある、と言うか、普通に治療院にナースとして所属している。
 帰って来た時に治療はしてくれても、一緒に行くメンバーとしては、登録は無いだろう。

 それよりも、ちゃんと薬を買って、備えていく、が正しい気もする。

「何と言うか、純粋な竜かと言われればねー、違うんだけど。
 それでも、あーいう、竜の形だけしてみましたてへ☆
 とか、そんな感じのは、いらぁって、しちゃうんだよね。」

 確かに、竜は強さの象徴で、恐怖の象徴、全ての幻獣のトップにある存在。
 それを形だけ真似ました、的なゴーレムは、本当に。本当に、いらぁっとしてしまうもので。

「あ、それ。」

 影時先生の使った技を見た。
 砂の刃で、敵を削る業だ。

 ――アースマジック・サンドカッター(――土遁・金剛砂輪剣)

 見た、経験した。
 その技術を覚え、魔法で、魔力で―――竜の力で再現する。
 砂で作られた戦輪(チャクラム)をいくつも作り上げて、ぶつけまくる。
 一つ一つ、砂地自体が微細に振動していて、砂自体が、岩を砕き切り裂く刃と化して。
 ぎゃり、ぎゃりん、と、ゴーレムの竜の頭を膾切りにしてみせる。

影時 > 「だろうなァ。
 故に経絡を見切って撃ち込む必要がある、と。……まぁ、最近の弟子にも似たようなこと垂れた気がするな。
 魔力、氣力を奪う手合いはそれだけでも色々面倒しく厄介だが、効果的に遣ってくる奴が一番面倒だ。
 
 ――アビールからは、お前さんが一人の時でももっと動けるよう俺に見てもらいたい様子だったからなあ」
 
だから、騙されたと思ってやってみるか?と。そう唆してみる。
優先度は低く、そもそもとして、運動に求めがちな痩身やら健康やらは竜には元より具備する概念でも在ろう。
特にウロボロスとなれば、概念的にも強固でもあると思われる点が強い。
円環の守りを突き崩す楔は、的確に回路を見切って打ち込む必要があるが、それが出来るものが双子の仮想敵と成りうるか。
そう考える。二人同時に相手するとして、どれを先に打ちのめすかという思考実験の手法として思う。
チカラのぶつけ合い、無策の真っ向勝負程、恐らくはバカバカしいものはないのだから。

「まぁ、それほどに危ういと思ったら、先に避難させとく。俺はそうしてるな」

親分の言葉に、こくこく、と。にんまり笑いを真上に見上げながら二匹の毛玉が頷く。
死地と明らかに云わざるを得ない場所については、先にそれを感じる飼い主が魔法の雑嚢の隠れ家に隠す。
その判断には有無を言わせない。翻って己の傍に居てもちびってしまう場合は、かなり危険とも言える事態であろう。

そんな事態にヒーラーが居れば、という安堵、安心感というのは、否定し難い。
だが、難しいだろうと思わざるを得ない。トゥルネソル家の娘たちで思いつくものは元々治療院に属している。
戦闘力を持っていると言っても、それ即ち冒険者になれる、その気になれるとイコールではない。

であるなら、予めポーションや治癒魔法のスクロールを多めに買っておく方が正しい。
各個に突っ込める鞄があるなら間違いない。ナースの帯同はなくとも後の手当の当てがある、ということなのだから。

「まぁまあそう言うな。力あるものとしてもう少し大らかになっても――とはいかねぇか。
 それで向こうが手加減してだのなんだの、ということも無かろうしなァ……。
 
 って、あ゛。やっちまったかー……もう少し、とっておきたかったが、使い出良くしたのが裏目ったか……、ッ!」
 
竜的センス、感覚としては、と言ったところだろう。冗句めかしても仕方がない。
許せないものは許せないのである。そうとなれば手加減の仕様もない。
ただ、一つ仕損じたのはある。敵ではない。己の方。この双子の凄い処/恐ろしい処を失念していた。
時と場合が合えば、額を叩いていたかもしれない心地を抱きつつ、ラーニングし、アレンジしたと見える術式の具現を見遣る。
厳密には完全に同一、ではない。高速震動する微粒子の円刃の乱射が、独特の音を奏でて竜頭をなます切りにしてゆく。
そうとなれば、がらり、がらりと崩れ、覗けるものがある。奥に安置されているものに似た、光の球。

ゴーレムの駆動源となる熱源にして核。それを認め、忍びが走る。瓦
解する熱の塊の群れをするりと抜け、加護頼みに氣を篭め、目を凝らす。急速に熱が抜ける溶岩を蹴り上げ――、

「――御免――」

腰から抜き打つ抜刀を以て、断ち切り、無力化する。
心眼を以て見極め、氣を篭めて抜き打つならば炎とて斬れる。凝った大地の火もまた然り。
豪、と響きを挙げて熱が残る岩塊を散乱させれば、手招きと共に奥の祭壇の上へと駆け上がろう。
そこには掌で抱えられるほどの件の宝玉と、影に隠れるように宝箱が二つ。褒賞とばかりに据えられている。

影時 > 【次回継続にて】
ご案内:「無名遺跡」からアリージュさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」から影時さんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にタマモさんが現れました。
タマモ > 九頭龍山脈に麓付近にある、無名遺跡。
今少女が立っているのは、それなりに進んだ先にある、小部屋の一つ。
位置的には、もう少し先に進めば、最深部へと到達しそう、そんな感じの場所だろうか。

ざっと見た感じ、特に、これと言ったものは無い。
ダンジョンと言えば、こうした場所には、大なり小なり、何かあっても良いじゃないか、とは思うのだが。
まぁ、世の中、そう都合良くはいかないものなのだ。

だから、なのか。
少女は、いつものように、適当な場所に罠を仕掛ける。
…え?余計な事をして、危険を増やすな?
いやいや、罠と言っても、少女が仕掛ける罠と言えば、大体は悪戯を主としたものだ。
つい先日にやったような、ただすっ転ぶだけのものから、着ているものを残しての転送、空間を弄っての無間の領域化。
後はあれだ、最奥に何もなかったら、勝手にボスでもやってやろうか、とかしゃしゃり出るくらいか。
やって来た冒険者とか、そうした類の者達からすれば、迷惑な事この上ないのだが。
そんな事を気にしていたら、こんな悪戯なんてもの、やってられない、と言うものである。

ともあれ、今回はどうしているのか?
いつもが如く、大したものは仕掛けていない。
そこいらに、媚薬効果を含んだ力を流し、何もない所で勝手に発情してろよ、とか言った感じのものである。
…うん、考えようによっては、文句の一つ二つ…いや、もっとか、それくらいの事ではありそうだ。

周囲の通路に張った悪戯、その中央に位置するのが、今己の居る小部屋。
さて、奥を目指しやって来ているかもしれない何者かが、引っ掛かってくれれば面白いが…どうなる事やら。

タマモ > さて、そんな仕掛けをした訳だが。
己としては、後は待っているだけ、と言う状況だ。
こんな何もない小部屋で、一人で、ぼーっとしていても暇なだけ。
であれば、何かをしているのが良いだろう、と言うもの。

もそもそと、着物の袖の中に手を突っ込み、漁り、何かを探す。

「………ん?」

かくん?軽く首を傾げ、反対の袖に手を突っ込み直す。
もそもそ、ごそごそ…ごそり。

「おっと、こっちだったか…いやはや、たまに間違えてしまうのぅ」

と、そうして取り出したのは、数枚の重ねられた折り紙。
地味ではあるが、軽い暇潰しであれば、これでも十分になるものだ。
まぁ、後は…それなりに、役に立つ。

と言う訳で、待ち時間を利用し、ちまちまと折り紙で何かを作り始める少女であった。

タマモ > この部屋に置いてあった、年季の入ってそうなテーブル。
そこに、一つ、また一つと、折り終えたものが並べられる。
それは数個の折り鶴、なかなかに綺麗に折れているもので。

「これくらいで良いか、後は、こうして…と」

並べた折り鶴に、手を翳してゆけば、ふわりと流れ込む力。
とは言っても、一見すれば何かしたようにも見えず。
それでも、翳していた手を引けば、それに合わせたように、一つ一つの折り鶴が、宙に浮かぶ。

「よし、妾が自ら行くのも、あれじゃからのぅ…こんなものじゃろう」

何かを指示した様子もないが、浮かび上がった折り鶴は、その言葉に反応したかのように。
ゆらゆらと、緩やかに宙を浮きながら、少女の居た部屋から、力の張った通路へと向かって行く。
これで、誰かが居るだろう感覚だけではなく、引っ掛かったりすれば、一部を除き見ている様に感じ取れるのだ。

さて、これで後は、のんびりと待っていよう。
何もない、誰も居ないのであれば、適当な頃合いを見計らい、戻れば良いのだから。

ご案内:「無名遺跡」にシルヴァさんが現れました。
シルヴァ > 無名遺跡探索が貼られていたギルドのクエストボード、その前で職員と話し合っている者達を眺めていると困った目を向けられた。
思わず前後左右を見回した後で自分を指差すと職員を含めて頷かれ仕方がないと話に加わった。
職員が言うにはクエスト受託を頼まれたが、そのパーティでは少々心許ないので一緒に受けてくれる者を探して欲しいと伝えた所、当てもないし自分達だけで大丈夫だと言い争いになっているらしい。
そんな様子を眺めていたのだから、良ければ臨時パーティを組んで貰えないかと頼み込まれ、そういう事ならと請け負ったのを思い出し、後悔先に立たずと頭を抱えている。
最初の内は協力して探索出来ていたのだが、時間が経つにつれて勝手な行動を始め、トラップ解除に失敗されて一人になったのが現状であり、他の者達がどうなったのかも分からない。

「悩んでいても仕方がない、進む事にしましょう」

初めて見る場所なので未探索部であったのは確か、どう進んでも同じだと歩み始める。
警戒しながら進んで履いたが、段々と疲労は蓄積されて大きな失敗はなくとも小さな罠を見落とすこともあった。
そう、足を止められたり、転ばされたりと悪戯のような罠ばかりで、ある意味運が良いとも言えるような言えないようなと首を傾げる物を。
そんな中で、罠を張ったものの本命とも言える無味無臭の媚薬効果を含んだ罠にも引掛ってゆっくりと体内に蓄積されていく。
そんな様子を折り鶴を通して観察され、少女の待つ部屋へと近づいていく者の姿を確認できるだろう。

シルヴァ > 部屋の扉を開けた後、どうなったのかは2人だけの秘密となって。
ご案内:「無名遺跡」からシルヴァさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にタマモさんが現れました。
ご案内:「無名遺跡」からタマモさんが去りました。