2025/08/30 のログ
ご案内:「無名遺跡」に影時さんが現れました。
ご案内:「無名遺跡」にアリージュさんが現れました。
■影時 > ――貧すれば窮する、とはよく言ったものだ。
否、今すぐ。大金を。寄越せ。とまではいかない。そこまで切羽詰まってまではいない。
実績を積んだ冒険者や、後援者が付いた冒険者なら、きちんと理由を話し期日までに返す旨の証書を書ければ、当座は凌げる可能性は高い。
ただ、短期間の間で蓄えを幾つも切り崩したとなると、良くも悪くもも経済観念があるなら、思うのだ。
稼がなければなるまい、と。その為にはどうするか?
安い依頼では良くない。コツコツ稼ぐならそれでも良いが、先を見越しておくなら、もう一声二声欲しい。
ここで、ひとつ。渡りに船――というわけではないが、思い当たるものがある。あったのだ。ある双子姉妹の片割れに逢った後日に。
「火山帯が近い、いや、溶岩脈が近い……とかは、よく言ったものか。
アリージュお嬢様、大丈夫かね? 調子が悪いとか整わンとかあれば、気兼ねなく云ってくれ」
無名遺跡――のひとつ。
底に潜れば潜るほど、暑くなり、深層になれば処によって溶岩流ともぶつかり合う報告例がある処の一角で声が響く。
冷え切らぬ溶岩が流れ抜けたとも見える洞穴の所々を、石造で埋め、補強したと見える遺構だ。
そこを行く姿の先頭が声を放つ。声の主のカタチは闇に溶け込むかのよう。
黒基調の忍び装束の上に柿渋色の羽織を重ね、肩上と頭上に小さな獣を乗せた男が、注意深く進む。
複雑に入り組んだ回廊は、侵入者を阻み、奥底に近づけさせぬ意図を感じるが、それは何故か。
曰く――大地の熱を取り込んだ宝玉が奥にあるらしい。
まるで灼熱した溶岩のように輝きつつ、熱を閉じ込めて漏らさぬそれは、迷宮の核とも呼べる魔力源であるとかなんとか。
だから、か。風通しの悪い洞窟は奇妙に蒸すような気配を伴い、侵入者を弄うかのよう。
「おっと。……お嬢様の前方、三つ先の石畳に仕掛けのスイッチがある。お手数だが、足元気ぃつけて跨いでくれ」
その上に当然、とばかりに罠もある。
次第に見えてくる扉らしい影の手前に整地された石畳が見えるが、とんとんと足音を奏で、右手で壁に触れる。
音と氣を僅かに流して得る反力、手応えから、仕掛けの有無を察する。それを肩越しに後ろを見つつ、告げようか。
弄うつもりがなくとも、その意図が籠ってしまいかねないのは、魅惑のむっちりわがままバスト故に他ならず。
■アリージュ > 「なんで、なーんで?」
鼻歌交じりにアリージュは、先生と共に歩く。
いや、普通に疑問なのだ、先生には、トゥルネソルの娘たちがそれなり以上にお世話になっている。
アリージュを含めても6~7人くらいは、お世話になっているのだ。
そして。リスは、その一人一人に対しての金額で、お支払いをしているのだ、教育に関しては熱心な部分もあるからこそ。
ケチとは言えない金額をしてるし、先日もリスの方から増額言い渡している。
それなのに―――。
実入りのよさそうな依頼を受けている影時先生。
冒険者の本分は冒険だし、自分の実力の限界をと言うのは間違いはないけれど。
だからこそ、疑問が残るし、それを、子供のよーに問いかける。
忍者の後ろをぽてりぽてぽて歩くのは、魔術自然とした服装。
手には、魔力浸透の効果の高いミスリルの杖、魔術的な防御を施した帽子とマントとローブを着ている魔導士。
その胸部衝撃吸収材を揺らしながら、汗一つ掻かず、さらに言えば、地熱も気にしている様子もない。
「此処に来る言うんだし、耐熱の術式は万全だよー。」
そう、魔導士だ。
地熱がすごい所に来るというなら、その対策はするのは当然の事。
にへーっと笑いながらも、ほれ。と足を踏み出せば、溶岩の中へ。
溶岩の上を、地面のように歩きながら。
そして、マントの中にある術式は防熱の上で、内部には冷房。
二匹の毛玉は、此方に避難しているのだ。
すずしぃ、と極楽気分でアリージュのマントの中。
「センセーにも、施す?」
本当に。
本当に。
なんで今更、と言うレベルで問いかける。
■影時 > 「そりゃお前さん、先々考えたら稼いでおきたいからなァ。
……頼めばどうにか、とも思うが、此れはもうちょっと後にとってもおきたい。
それと、アビールからの頼みもある。アリージュの稽古とか気がけておくよう請け負ったもんでね」
先々を考えたなら、考えるなら、有形無形の財産資産の類はどれだけあっても困ることはない。
確実度が高いのは何がしかの討伐なのだろうが、そんなに都合よく大物がホイホイ転がっているものではない。
否。心当たりはあるのだが、貴重な呑み友達でもある。真面目に狩る気もないなら意味もない。
そうとなれば、これ。折りよく捕まえられた知己、弟子の一人をとっ捕まえての迷宮探索。
潜る先は、深い階層。自然の脅威がより間近になろうもの。そこには強敵があり、きっと宝もある。
――否。あると予測されている宝までは、重視しないが。
内心でそう思いつつ、子供めいた問いの主にちらと顔を向けて答える。
魔術師然としたいでたちと持ち物の魔導士スタイル。己と違い、汗がかかない有様となれば。
「おおすげぇ。……って、肝が冷えるからあンまり無茶はしてくれるなよ。頼むから」
脇道的に横を見れば、溶岩流の支流?とも見える赤い流れが見える。
そこに踏み出す姿は、一瞬肝が冷える。だが、耐熱術式に加えて浮遊魔術でも使っているのだろう。
照り返しも高熱も何のそので歩く有様に危なげはなく。毛玉達もまた、心底涼しげに居ると来たものだ。
さりでに“しゃきーん☆”とばかりに構えてみせるのは、小さなシマリス&モモンガサイズの黒眼鏡。
溶岩の照り返しもこれで凌げるとなら、快適万全準備万端と云ったところか。
いーでしょいーでしょ、とでも言いそうなその有様を見れば、ああうむ、と一瞬間をおいて絞り出そう。
「…………出来たら、くれ。掛けてくれたらこの先の扉を開く」
緊張感も何もあったものではない。溶岩流経由で直近の罠を見事に迂回したのを確認し、白い扉の前に至る。
押せば開く。触れる扉はこんな場所なのに、奇妙に冷えている。熱を遮断でもしているのだろうか。
■アリージュ > 「あ、そうそう、おねーちゃんで思い出した。
おねーちゃんから聞いたよ、今度、私達姉妹とそろってた状態で、模擬戦したいんだってー?
せんせーの座学は面白いんだけどねー。
運動は、一寸ねー。」
だって、胸部衝撃吸収材がある、運動するとなると、これの質量が体幹をいっぱい持っていくのだ。
回転なんぞしようものなら遠心力で体が、持ってかれるのである。
まあ、直線距離のとつげきとか、スタンプとかの追加重量には良いだろうがー。そこは乙女としてどうかと思う。
基本後ろの安全な所から、魔法でどっかーん☆と言うのが、一番いいのである。
「確かに、お金は、あるに越したことは無いもんねー。
私としては、楽しければいいんでー。
それに、一寸、此処のお宝には、興味沸くかも、だし。」
大地の熱を宿した宝玉。
普通に考えても魔導士垂涎なマジックアイテムになるようなものでは無いか。
特に、アリージュは大地属性だし、溶岩はよく使う。
手に入るなら、それこそ、アリージュのお小遣いをはたいて買うのもありという所でもあるのだ。
「だーいじょーぶだーいじょーぶ。
私は、ウロボロスだよ。溶岩なんかに負けないのだー☆」
はっはっはっはっはー。と、腰に手を当てて、胸を強調するように背中をそらして、笑う。
家族の中では、一番再生能力にたけた存在だ、アビールとセットでの話。
セットでは無くても、常時フルリジェネレートが掛かっているような、急速回復体質。
溶岩で燃えるよりも早く治るよ、と。
ペコちゃんのようにウインクながらピース☆もつけてしまおうか。
毛玉-ズが、そのままでっかくなったような、お嬢様。
「はーい。
じゃあ、@ウロボロスエフェクト:ドラゴンインストール@起動。」
ぱん、と手を合わせて円を作る。ウロボロスの円を想起させて、体内に魔法陣を作り出して、魔力を流す。
ウロボロスサークル起動、魔力を円環の中で循環させての増幅。
「耐火術式起動、耐熱術式起動、冷却術式起動。
身体能力向上、筋力、耐久力、体力、敏捷、向上。
マジックアーマー、付与対象、忍びの衣。」
矢継ぎ早に、強化の魔法を影時に。
詠唱が無いのは、自分の中に作られた魔法陣で、魔術を完成させるから。
魔力の続く限り、詠唱を破棄し連続で魔法を使い続ける。
これが、アリージュをマスタークラスと言わしめる技能。
「こんなもんでいーい?」
武器に魔術を掛けなかったのは、必要なさそうだったから。
と言うか、武器に魔法掛けたら、武器に呪われそうな気配もしたし。
■影時 > 「アビールが“すとれす”的に我慢できなくなったら、仕合ってみるかって話だった筈だが……。
あー、だがそれもそれで、気になるな。興味深くはある。
こてんぱんになりかねねェ気もしなくもないが、戦ってみたくと云ったら噓になる。
別に棒振れ、筋肉を鍛えろ、という方面で説くつもりは無ぇぞう?
……ふむ。舞闘、舞って闘うように動けるよう、鍛えてみるのも良いかもなぁ」
そんな話だったろうか。思わずぱちくりと瞼を瞬かせ、ふぅむと直近の記憶を漁る。
要件としてエクストリームな難度に跳ね上がっている気もしなくもないが、確かめてみたくないと言えば嘘になる。
単純な火力と猛威の点だけで云えば、己をあっさり追い越してしまいかねない。
だが、まだ使っていない。明かしていない。見せてもいない諸々の札は、忘れぬよう時来たらば試しに切ってみるのも良いだろう。
そして、運動的な分野云々を考える。単純な筋トレ、体力作りは一番弟子の例のように意味がない可能性が高い。
もっと向くとすれば、体重&重心移動、体幹を徹底的に鍛える方だろうか。
何せ、この魅惑的大質量衝撃緩和剤がある。この重さの捌き方と付き合い方は必要だ。
「まーなァ。愉しんで糧に出来るならもっと良い処だが――はてさて。
……そこは信じちゃァいるが、二匹を落とさねえようにくれぐれも頼むぞう?
って。こら。云ってる傍から胸の谷間に飛び込むつもりならやめとけ。な?寧ろ俺に代わらせろ」
噂のブツが実際に有れば善し。
それは流石に売り切れず、処遇をトゥルネソル家に委ねることになるだろうが良い土産となる。
そうでなくとも、道中の敵やら何やらを潜り抜け、相当深い処まで来たのだ。より金になるものは持ち帰りたい。
欲はかかないが欲を少なからず、抱えている身としては、何某かの収穫位は欲しい処で。
背中を反らせば自ずとバストが目立つ。そこにひょいと登る黒眼鏡付きの毛玉達が、えへんぷい、とばかりに胸を張る。
言葉通りの耐久性は、信用しているが、彼らばかりは魔術の加護がなければ是非も無い。
ぴーす☆までしかけそうな素振りにかかれば、慌てて落ちそうになる。咄嗟に元の場所に飛び移るさまに、吐き出すのは冗談交じりか本気か。
(…………とは言え、此れだけのものは、確かに……)
だが、実力は疑う余地もない。次々とかかる強化術式の数々。
自力自前の練氣では、及ぶべくもない物が幾つかある。大なり小なり、此れが使える者の有る無しは大きい。
「……十分だ。全く、身内とは言え、否、身内だからこそ徒党に誘いたくなるもんだ」
耐火耐熱冷却。それに加えて続けざまに付与された強化の数々の具合を確かめるように、五指を握り開く。
内心で感嘆の唸りを覚えつつ、忝いと頭を下げよう。前に向き直りつつ、零すのは最近考えることのひとつだ。
弟子が増え、かくも身内も増えるなら、パーティやらチームやら、拵えるのも一興ではないか?ということ。
そんな句と共に押し開く先は、広い。そして何よりも暑そうに見えて、かけたてほやほやの術のお陰でかなり緩和されている。
寧ろ涼しい。そう体感する中見えるのは、溶岩溜まりの上に出来た広い円状広場。そこに幾つもの乱立するものがある。
「成る程。溶岩人形……と来たか。……――先に行く。俺を巻き込むつもりで射かけてかまわん、ぞッ」
溶岩人形――ラヴァゴーレム。半凝固した溶岩が二足歩行のヒトガタを形成した精霊とも魔法人形ともつかぬもの。
動きは鈍いが、高熱を抱くそれは近づくだけでも火傷必至。さらに加護もない武具にもダメージを与えかねない。
そんなものが、都合8体。それを認めれば声をかけ、身を低くしながら駆け出す。
ぐるぅーり、と迂回するように8体の脅威の群れの後方まで走り込み、腰に差した刀を抜く。
きぃぃぃ、と微かに震えるのは、竜の気配を感じてか。だが、それも篭められる氣ですぐに響かなくなる。
刀圏の外で抜き放ち、切り下ろす刃金が、音なく風を切る。描いた斬線が氣を篭めて奔り、遠間からざくり、と半凝固の岩漿の肌を爆ぜ斬るのだ。
■アリージュ > 「あはは、おねーちゃんは戦士だよ?強い人に、いっちょやってみっか?なんて言われて、やらないなんて選択肢無いでしょ。
おねーちゃんはやる気満々だったよ?
強い相手と戦うのは、戦士としては一番強くなる早道だし。
センセ―相手なら、もう何もかも全力ぶっぱで行けるんだしさー。
あー。舞闘?いいリズムがあればねー。」
それに関しては、どっちかと言えば、姉のオルテンシアの方だろう。彼女グラップラーだし、八岐だし。
姉の方から、先生が手合わせしたいと言ってきていた。
口数少ない姉の表情、雰囲気からは、興味津々と言うか、二人そろってやりたいという、そんな気概がひしひししていた。
ちなみに……アリージュも乗り気なのは、間違いない。
姉と一緒にと言うのは、とても、とても、大好きなのだ。
別に、平和主義とか、戦いとかいけません、なんていう性格では無いのである。
アリージュが魔導士になったのは。
元々の魔法的な適正と同時に奇乳レベルのおっぱいが、運動にはとても邪魔なのである。
アビールのように鎧を身に纏って抑えるというのもあるのだけど。
でっかすぎる胸は、良い的にしかならない。
体捌きを覚えること自体は、まあ、必要だとは思えるけどどうしたものか。
足元が見えないし。
「大丈夫だよ。そこは。けだまーずには、魔法でロック掛けてるから。
堕ちても、マントの中に納まる様に転がるだけだから。」
マントに磁石のように吸い付くので、堕ちても、下に堕ちる前にマントに吸い付く。
だからこそ、ヒテンマルもスクナマルも、安心して、優雅にしてられる。
だいじょぶだいじょぶ、と笑って見せる。
二匹は胸の谷間の中で、ひんやり涼しく、包まれる。むにゅんむにゅんと、柔らかな質量に押しつぶされている模様。
げんきだねー☆が、アリージュの感想。
「センセ―なら、身体強化しても、暴走はしないでしょ?
もう少し欲しいなら、身体強化のランク上げるけど。」
身体強化に関しては、アリージュは気を張る。ただ、強化すればいいと言う訳では無い。
本人の身体能力の本来の値よりも増やすわけで、下手にあげすぎれば、自分で自分の体が制御できなくなる。
知っている人物だから、このくらいが、と言う感じにできるが、知らない人にはおいそれとかけられない。
以前共に冒険をした友人に身体強化をしなかったのは、その辺りのバランスが見極められないからだった。
それでいて、師匠である彼にも、未だ、上のランクの強化もできる、と言う感じで伝え置こう。
彼が問題ないなら、更に強化を、と。
「んー。その時は、おねーちゃんも一緒にね☆
その方が、前衛中衛後衛のバランス最高だし。」
冒険者ではない姉も居るが、冒険者してる姉は大体前衛だ。
そういう意味で、姉と自分と師匠で動くと、面白いぐらいに噛み合うのだろう、と。
「うーん………そうだなぁ。
地属性の効果が薄いしなぁ……。
じゃあ、こっち、かなぁ。」
先に飛び出す影時先生は、影を残しながら走り込んでいく。
此方がやるなら、と。
体内の魔法陣への魔力を循環させて、加速し、大魔法。
「ほいじゃ、センセー。
がんばってね!」
ラヴァゴーレムが8体ならば。
アイスゴーレムを10体作り出せばいい。
炎と氷、ぶかればどうなるか、だれがどう見てもわかる結果だ。
スーパーゴーレム大戦が、始まる。
■影時 > 「それはそうなんだが、アリージュと一緒に動けねぇ案件が寄せられて……みてぇな感じでよう。
故にどっちかと云えば、仕合を通じての憂さ晴らしの方がとは思ったが……ったく。やる気満々なら仕様がねェや。
二人揃って遣りたくなったら、手紙でも寄越してくれ。
場所も探さないとな。少なくともお屋敷の庭先だけじゃぁ、空間を拡げたっておっかなくて敵わねぇ。
そうそう、そうとも云う。別に激しい奴でなくとも、動き方を覚えるだけで違ってくる筈だぞ」
どう伝わっていくのか。伝わっていたのか。だが、まぁいい。深く考えるだけ馬鹿らしい時も偶にある。
今は此処に居ない片割れも込みで、やる気満々、という気迫がひしひしと伝ってくる。
平和主義もへったくれもない。平和を希求するならば、寧ろ戦いに備えなければならない。
その意味でも手合わせは欠かせない。その為の場となると、屋敷の庭先では明らかに足りない。狭すぎる。
何処ぞの荒野でも戦域にするか、がちがちに結界を築いて徹底するか等々。
兎も角――男から見れば揉み具合弄り具合満点のお胸が、体捌きにカウンターウェイト的に働いてしまうのはさもありなん。
足元が危ういのは、それはもう練習あるのみ、だ。優れた剣士が剣を振る時に、都度都度足元を気にすることはない。
一連の動きを総体的に覚え込ませているからこそ、だ。何にしろまずはやってみて考えてみると良いかもしれない。
「然様か。なら安心…………おうおう、お楽しみじゃねえかよおまいら。
――ったく、いかん。ちと真剣になろう。
強化の度合いが増えたなら、それを踏まえて塩梅は変えれるがな。
……これ以上はいい。その分は、そいつらを守る方にでも使ってくれ」
基本、呼吸すると危ないような処でない限りは、毛玉達は外に出している。
この位の場所になると呼気の心配も交じり出すが、この具合ならば諸々ひっくるめて心配はなさそうだ。
寧ろバカンスどころか、新境地まで目覚めていないだろうか。
ぽよんと跳ねるわがままクッションでトランポリンよろしく跳んで、ぽてんと転がり込むのは谷間の中。
慌ててよぢよぢ登り、ぷはっと顔出しながら前足でローブやらマントに掴まり、悠々自適面。
……まぁ、心配は、いるまい。そう考えよう。集中を絶やし過ぎると、動きを仕損じかねない。
先だって付与された分と、自前の練氣による肉体強化。前者の度合いに応じて後者の具合を氣の巡りを変速する。
身体の奥底のどこかが切り替わり、巡らせる勢いを調整する。アジャストする。後は仕掛けるだけだ。
「ははは、大所帯だなァ。
……いやなに、ラファルに一番最新の弟子も入れたりとか考えたらな。
諸々融通が出来る徒党が出来ねえかなとか思ったりでよう、と、ッ……!」
多過ぎてもではあるが、さりとて、でもある。目的に応じて都度組みやすい仲間なら助け合いもし易いのでは?とも思う。
まあ、この辺りは個々人にもよるだろう。無理にとは思わない。
敵の対処に専念する。鉄を斬るには鉄を斬るように。火を斬るには火を斬るように当たる。
その答えの一つは、氣を媒介にした剣線投射による斬鉄。収斂した氣に鉄を斬れるような切れ味を乗せて、放つのである。
結果が此れだ。袈裟懸けに溶岩人形のひとつがずるり、と斬れ崩れ、中身がとろけ滴る。芯を捉えたとなれば、立ち上がる恐れも無し。
「……! 巻き込んでも良いとは言ったが、そう来るかい!?」
問題は、この後。駆動する大魔法が溶岩地帯に局地的な冬を作り出す。
氷人形が10体。対消滅的な取っ組み合いをし出すとなれば、大騒ぎである。言葉は叫びとなるが、心中の奥は冷える。
ぶつかり合い、熱と氷が反応を起こし出すさまを見れば、そこにまた、斬撃を飛ばす。諸共に断ち、対消滅を促す。
それよりも先に生じる爆発的反応の予兆を見れば、大きく離れて間合いを取り、余波を付与で受け流し――。
気付けば残るのは、デコボコに空いた痕跡たち。呼吸を整えれば刀を収め、現状を確かめよう。