2025/07/26 のログ
ご案内:「無名遺跡」にレヴァレットさんが現れました。
■レヴァレット > コツコツ、と。硬いブーツの靴音が迷宮内に反響する。
特に気配を隠すでもなく、暗い通路を進んで行く白ウサギが1匹。
その姿は雰囲気に似合わぬクラシックなメイド服。
そして手には抜身の長剣。
魔物や魔導機械に気付かれても構わない。
現れたのなら、斬り伏せるだけ。……というより、それが目的だった。
最近、冒険者に憧れてギルドに登録した貴族息女のため、
事前に予定の通路のクリアリングをしておくことが今回の任務。
げんなりしてしまいそうな内容だが、それが仕事ならただ淡々とこなすのみ。
もう迷宮に入ってから随分と時間が経ったが、表情1つ変わらない。
ご案内:「無名遺跡」にルティナさんが現れました。
■ルティナ > 人工的な通路が続く迷宮の奥
ダンジョンとしては初心者向けの比較的危険の少ない場所だけあって、出てくるモンスターもさほど強くはない。
ぽよん、と水風船のような風体のスライムを前に、三角帽子に箒を持った少女が相対しており。
「――ファイアボール!
やった! 勝てたっ」
ボールのように右へ左へと跳ねまわるスライムに対して、狙いを定めて小さな火球を撃ち込む。
威力はさほどではなかったけれど、それでもスライム程度であれば一撃。
核を残して燃え尽きたのを確認すると、ぐっと拳を握りしめ。
■レヴァレット > ぴくりと長く白い耳が揺れる。
戦闘音がする。どうやら、近くで誰かが戦っているようだ。
さて、どうしたものか。しばらく思案した後……音のした方へ向かう。
後からトラブルになっても面倒だし。
(ん……)
しばらくすれば、通路の先に戦闘を終えた少女の姿が見えて来た。
が、それと同時に、少女の背後の物陰で何かが蠢くのを目に留める。
小型のスライム。どうやらもう1匹隠れていたらしい。
「後ろ、危ないよ」
声を掛けた直後、小さなスライムがあなたへと飛び掛かる。
果たして気付いているのか、いないのか。
■ルティナ > 錬金術の素材にもなるスライムの核
燃え尽きた後に残ったそれを拾おうと屈んだ矢先に、声が掛かる。
「―――え? きゃ……っ!?」
薄暗い通路ということもあって、まだスライムが潜んでいたことに気付けなかった。
サイズとしては少女でも一抱えできる程度のものだけれど、それが勢いよく体当たりしてくる。
背後からの不意打ちに対応できずに、前のめりに吹き飛ばされてしまい。
「いたた……こ、こっち来ないでっ!」
痛がっている場合ではない。
すぐさま体勢を整えようとするけれど、連撃を避けるので精一杯。
手にした箒をぶんぶんと振り回して威嚇するけれど、あまり効果はないようで。
■レヴァレット > (仕方がないな)
少女の叫び声に、手にした長剣を持ち上げる。
人間を助ける義理はないが、見捨てられるほど薄情でもない。
何より、魔女らしき格好の少女はまだ子供のようだし。
「動かないでね」
一言声を掛けてから踏み込む。
たった一歩の躍動で巨体が流れるようにあなたの前まで移動し。
鋭く振るわれた剣が、スライムの核を一刀で両断する。
体を保てなくなり、スライムはべしゃりと崩れて床の染みとなった。
……どうやら、素材の回収などは考えていないようだ。
「大丈夫?」
剣を振って粘液を払い。少女の方を振り返る。
その声は随分高いところから降ってきた。
■ルティナ > 不意に視界に飛び込んできた大きな影
振り下ろされる大剣は、まるで断頭台の刃のよう。
さっきまで元気に跳ねまわっていたスライムが過たずに両断され。
薄暗い通路に浮かび上がる白いその人影を見上げ。
「え、あ……ありがとうございます……」
まだ少し状況が掴み切れていないようで、瞳を瞬かせ。
見上げた先に、メイド服とうさみみを見つけると、更に困惑したように首を傾げてしまい。
「あ、あの……助けていただいたみたいで。
えっと……メイド、さん?」
ぺたんと石造りの床に座り込んだ格好で、相手を見上げる。
その容姿も、声も、麗しい女性のもの。
ただ背丈が、冒険者ギルドにいる大男たちよりも高く。
まるで天井を見上げるようにして、とりあえず大丈夫だとコクコク頷いて見せ。
■レヴァレット > 「ん」
刀身に粘液が残っていないのを確認してから、鞘にしまう。
とりあえず、怪我はしていなさそうだ。
いまだにへたり込んだままの少女に、手を差し伸べる。
細く長い指……のように見えるが。まるで縮尺を間違ったかのように大きい。
「そう、メイド。でも、今は冒険者」
頷く女性の耳がぴょこぴょこ揺れる。
どうやら作り物ではなく本物のウサギ耳のよう。
もしその手を取ったなら、巨体に相応しい膂力で軽々と立たせてくれるだろう。
「大丈夫なら良かった」
「そっちは大丈夫じゃなさそうだけど」
ちらりと視線を送るのは、あなたの服。
おそらく、体当たりを受けた時のものだろう。
粘つくスライムの粘液が、べっとりと服を汚してしまっていた……。
■ルティナ > 差し伸べられた手を見つめ、自身の手と比べてみる。
まるで大人と赤子の違いほどある。
獣人? ミレー? とは会ったことはあるものの、巨人族?と会ったのは初めてで。
「冒険者さん! あ、ありがとうございます。」
その手を取れば、小柄な身体など易々と引き上げられる。
冒険者と聞けば、ぱっと瞳を輝かせ。
「私、ルティエって言います。
助けていただいて……って、わっ……ほんとだ。」
改めてお礼を述べようとしたところで、服の汚れを指摘される。
道理で先程から、何だか冷たいと思ったわけだ。
あいにくと浄化の魔法なんて使えない。
使えるとした水魔法で洗い流すくらいだけれど、余計にびしょびしょになってしまうわけで。
「まぁ、でもおかげで怪我もなかったですし。
帰ってから洗濯すれば、これくらいは。」
ぬるぬるとした感覚は気持ち悪いけれど、我慢できなくはない。
ふるふると首を振って、大丈夫と答え。
■レヴァレット > 「どういたしまして」
笑顔を浮かべるでも、誇るでも照れるでもなく。
ただ真顔で感謝を受け取り、あなたを力強くしっかりと立たせて。
逆にころころ変わる少女の表情を「元気だな」と眺めつつ。
「レヴァレット」「レヴィでいい」
名乗られたので名乗り返す。
愛想も何もあったものじゃないが、所作と対応だけは礼儀正しい。
機嫌が悪いとかではなく、純粋に普段からこんな性格なのだろう。
「そう」「じゃあ、もう帰る?」
「帰るなら、送る」
どうにもあまり冒険に慣れている様子ではない。
先程、不意打ちに遭っているのを見たこともあり、少し心配で。
■ルティナ > 淡々とした様子ではあるけれど、機嫌が悪いとかいうのではなさそう。
きちんと返事はして貰えるし、どうやらそういう性格なのだろうと察し。
「レヴィさん。」
教えられた名前を口遊む。
何故だかにこにこと微笑みを浮かべ。
「うぅ……素材集めに来たんですけど、確かにこのままだと気持ち悪いですし……」
一応、冒険者登録はしているものの、受けられる依頼など雑用ばかり。
生計のメインは、錬金術で作った薬などを売って稼いでいるのだけれど、今日の仕入れはまだスライムの核ひとつきり。
まだ蓄えはあるから帰ってもどうにかはなるけれど、心許ないのも事実で。
ただ送ってもらえるというなら、心強く。
迷うように視線をうろうろと彷徨わせ。
■レヴァレット > 表情の動かない人形のような顔で、あなたをじっと見つめる。
どうやらまだ何か迷っているよう。
あなたが手にしているスライムの核を見て、続いて転がっている核の残骸を見る。
そうしてしばらく考えた後。
「素材集め、手伝う?」
そもそもこちらが迷宮を訪れた理由も魔物の数減らし。
あなたを送り届けた後は、もう一度仕事に戻るつもりだった。
なら、一緒に素材狩りをしたところで問題はない。
もっとも、こちらが倒したものを拾うだけになってしまうかも知れないが。
その分早く集まるはずだ。
■ルティナ > 「え? いいんですか?
その……助けていただいたうえに、手伝ってもらうなんて……」
お礼は言ったけれど、何も謝礼は渡せていない。
余裕があれば何か渡したいところだけれど、どう見てもこんな初心者用のダンジョンにいる腕前ではない冒険者
そんな相手に、渡せる物など思いつくはずもない。
願ってもない申し出にぱっと喜色を浮かべるけれど、
さすがに厚かましすぎると思いなおして、窺うようにその長身を仰ぎ見る。
■レヴァレット > 「うん、採集は依頼されてない」
どうせ倒すだけなのだから、拾って再利用したところで不都合はない。それに……。
「子供は、頼って良い」
どうやらまだ遠慮しているらしい少女の頭に、ぽん、と掌を置く。
自分よりも随分と下の位置にある、小さな頭。
そうすれば、それ以上問答を続けるでもなく、
「こっち」と通路の奥の方へと足を進めていく。
しばらく立ち止まって話をしていたし、そろそろ魔物も集まって来る頃だろう。
■ルティナ > 「わふ………
うぅ、子ども扱いしないでください……」
三角帽子の上からぽんと手を置かれ。
頼って良いと言われたことは嬉しいものの、子ども扱いには少し微妙。
確かにまだ半人前の見習いなのだから、胸を張って大人だとは言えないのだけれど。
「え、あっ……ま、待ってください!」
長いコンパスで通路の奥へと進んでいく相手を慌てて追いかける。
べっとりと染み込んだ粘液が気持ち悪いけれど、そうも言っていられない。
箒を抱えて、駆け足で追いかけていき。
■レヴァレット > スライムを、コウモリを、ゴブリンを。
遭遇する度、一刀の下に斬り伏せてゆく。
どうやら素材として価値の高い部位は傷付けないよう気を遣っているらしく、
低級の魔物とはいえ、採取難度が高い素材が手元に増えてゆく。
大儲けとはいかないが、それなりの稼ぎにはなりそうだ。
「ルティナ、子供じゃなかった?」
なんて、無表情に首を傾げる白ウサギは、呼吸を乱す気配もない。
あなたは歩幅の大きな彼女を追いかけ、素材を拾い集めるだけでも
息が上がって仕方がないというのに。
……いや、少しおかしい。日の入らない迷宮の中だというのに、暑すぎる。
特に、スライムの粘液が肌に触れている部分が。
そしてその熱は、少しずつ全身に広がっていっているような。
■ルティナ > 「わぁ……やっぱり凄いです……」
まるで剣で撫でるがごとく振るうだけで、遭遇した魔物が容易く切り伏せられて行く。
残された素材をせっせと集めにまわっているうちに、あっという間に持ってきていた袋に一杯になり。
「はぁぅ……子どもじゃない、です……
ふぅ……走り回ってるから、かな……?」
むぅ、と頬を膨らませて、口答えするくらいには余裕はあるものの。
何だか息が上がって、身体が火照る。
ふわふわと足元が覚束なく、風邪かと思ってしまうけれど。
「はぁ……はぁ……、これ、風邪じゃない……」
肌に張り付いたぬるりとした感触が、気持ち悪さから甘い切なさに変わってきている。
媚毒だったんだと気づいた時には、時すでに遅く。
ひとりきりなら自身で慰めてしまっていたかもしれないけれど、今は相手の眼を気にしてぐっと堪え。
■レヴァレット > 「そっか、ごめんね」
なら、認識を改めないと。子供のように見えても、
子供じゃないということは、もう大人。
そう判断して、先に進もうとするが……ふと、少女の変化に気付く。
「大丈夫? 疲れた?」
妙に顔が赤いし、息も荒い。
いくら体力のない後衛の魔法使いとはいえ、
そこまでの運動量ではなかったと思うけれど。
「少し、休憩しようか」
膝を折り、しゃがみ込むようにしてあなたの顔を覗き込む。
湖面のように凪いだ瞳。感情は読み取れないが、心配しているのだろう。
あなたにとっては、じっと観察されるのは都合が悪いだろうが。
■ルティナ > 「え……あ、あぅ……だい、だいじょうぶ、で……
はぁ……はぅ……」
もじもじと半ば無意識に身体をくねらせる。
むずむずした肌を撫でて、少しでも気を落ち着けたいけれど、
そんなことをすれば止まらなくなってしまうのは目に見えている。
遥か高い所にあった整った顔が、目の前にまで近づいてきて覗き込まれる。
見詰められると、焦ったように首を振り。
「だ、大丈夫……あっ、はぅ……」
瞳は潤み、熱に浮かされたように顔も上気してしまい。
それだけならまだしも、足元もふらふら。
ただ休憩すれば良くなるかと言えば、それは否。
時間が経てば経つほどに、全身を蝕む切なさは高まる一方で。
■レヴァレット > 「どう見ても大丈夫じゃない」
体は忙しなく動き、顔も肌も火照っている。
どこからどう見ても平常ではない。
どうしたのかとより顔を近づければ、ミレーの鋭い嗅覚に
妙に甘ったるい香りが届く。媚毒特有の匂い。
そして……それに混じりつつある、甘酸っぱい雌の匂いも。
そういえば、一撃で斬り払って来たせいで、
自分はまだ一度もスライムに触れていないことを思い出す。
じっと少女を見つめてらから、ゆっくりと頷いて。
「……ルティナ」「おいで、楽にしてあげる」
剣を置き、あなたを迎え入れるように大きな腕を広げた。
■ルティナ > 我慢するのも限界――
けれど手が肌に触れる寸前で思い留まる。
代わりに、せめてもと太ももを擦り合わせ。
大きく息をするだけでも、胸が上下するその動きだけでも、
切なさばかりがどんどん募ってばかり行く。
じっとこちらを観察するような瞳に、いくら媚毒のせいだとはいえ、
自身の浅ましさを覚えてしまって、顔を真っ赤に染め上げて。
「あ……あぅ……」
優しく誘われると、深く考えるだけの余裕も無く。
ぽすっと相手の腕に身を預けてしまう。
触れ合う温もりに、まるで仔猫のように肌を摺り寄せていき。
「あっ……ふぁ……んんっ、レヴィさん……」
■レヴァレット > 「ん、よく我慢した」
腕の中に収まった小さな体を、柔らかくて大きな肢体が包み込む。
本来なら、その大きさや温かさに安堵を覚えたかも知れないが。
今のあなたには、触れ合いは肌を刺激する快楽信号に過ぎない。
それを理解した上で、甘える小動物のような少女を、優しく抱きしめて。
「もう我慢しなくていいからね」
そうして白ウサギは、少女を迷宮の暗がりへと攫ってゆくのだろう──。
ご案内:「無名遺跡」からルティナさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からレヴァレットさんが去りました。