2025/08/15 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」周辺」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 アスピダ周辺
 にわか雨という中途半端な雨が降ることで、葉の下は乾き、何もない青かった天井の下は濡れることとなる。
 その中で進軍していたのは城塞都市アスピダの周囲にて膠着状態を続ける軍への物資を目的とした部隊
 積まれた馬車 歩兵 騎馬 物々しい列の中で、異様な圧を出しているのは黒兜と黒真銀
 全身が真っ黒な出で立ちをした、夏日も厭わないような姿をした赤目のギザ歯。
 鞍を付けあえて銜を付けず口顎を開放的にさせた、胴体に手綱を伝えている姿の二足大蜥蜴に跨る姿。

 愛馬と呼ぶそれは馬ではない
 蹄の代わりに黒く太い鉤爪と逞しい腿
 両手は同じく鋭い爪で覆われながら足に比べ頼りなく見えるものの
 押さえつければ、搔けば惨事に違いないと見えるそれ。

 コロロロロ

 そう愛馬が鳴き、鼻をフン、フンと鳴らしている。
 この愛馬は足場が悪い場所も巧みに移動し、鼻が利く。
 また賢しく、恐れを知らない。
 

   「トニー(トニトルス)、まだ抑えなさい。」


 愛称で呼び、頬を後ろから撫でやる。
 剣 槍 杖 弓
 備えている周囲の交代要員と物資護衛
 そしてメイラと轡を並べる伝染した者ら。


   「アスピダ 少し、久しぶりですわね。」


 兜の上部 美しい女の彫り込みと、乱杭歯が縁で映え揃い、外側で反り返る異形女兜
 ガチャリと持ち上げて周囲を見れば、赤い目とギザ歯がそう動いてつぶやいた。

メイラ・ダンタリオ >  
 物資と共に参じるのはおなじみだろう
 負傷した者と入れ替わり、任期を終えた者らと入れ替わり
 アスピダが始まって長い。
 真っ白に覆われた雪の地面が二度過ぎたころから数えるのをやめた。

 思考にふけりながら、兜上部を開けたまま周囲を見回し、左手で手綱を右手にはアレを持つ。
 途中数名の、メイラと並んで長い同じ群れと会話を交えながらも愛馬には慣れてない。
 というより、愛馬もほかに愛想を浮かべることはない。
 馬ですら食われる者という自覚はあるものの、その賢しい乗り物を制御する者が上にいる安心感から
 まだ正気を保っているのだ。


   「―――。」


 途中、愛馬が鼻を鳴らし、首をあらぬ方向へ向ける。
 背筋を平らに伸ばし、尾を持ち上げる姿勢。
 アスピダという籠城の中 間合いの中に入れば迫る攻城型の魔導機械の攻撃
 エイコーンによる強者封じ
 それらとは違う何かが、背筋にビリビリと警告を与える。


   「―――チッ。」


 舌打ちと共に、右手に持つそれ
 長く、厚みのある鉄棍の先に備わる斧刃と円錐矛
 シンプルな外観と、微細に通常とは違う出来の“長柄斧”を片手にまず始まったのは、弓矢の応酬からだった。

 始まる戦闘 軽装が矢を受ける者の、装甲で帯びた者らが盾となり弾かれる。
 また、革の盾のような物理的重量以外ならば耐えきる軽く制御しやすい厚い重ねで対処されていく中
 次にはこの物資運搬路を狙った、物資強奪か 妨害か。
 どうせ始まってもなにも進まないというのに、狙うのは食い物と酒への魅力か。
 武器にも目が行くだろう。

 殺害よりも馬車と馬に狙いがいく様子を見ながらの殺し合いの最中、愛馬が声を上げる。


   ―――“ギュオオオオオオッッ”―――

 
 まるで、肉のゴムを擦り合わせたような奇怪な声
 馬でも人でも熊でも野犬でもない
 背を低くし、突っ込んでいく様子はその鋭い歯列と鋭く瞳孔が縦に割れた捕食者の姿
 そしてその背上には、頭を低くして突する愛馬に呼応するように長柄の振り幅がなんら困らない
 化け物呼ばわりされるメイラがいる。


   「引き籠り共が。」


 鏡面磨きの斧が迫る。
 横薙ぎの一撃
 大剣とは違う、一点に込められた力は間違いなく、胴体両の腕もろともに
 衝撃が加わると同時の抵抗力から生まれる切断性
 頭上に飛ぶ上半身が鎧事千切れたのが見えた。

 愛馬の道を開けるように、一撃、二撃
 振るわれていく長柄武器の斧刃。
 途中、止め切ったように抵抗した者もいる。
 だが刃を止める行為は下策。


   『わ―――ぴっ!?』


 跨るトニトルスが、主の刃が届かないのならと抵抗する刃がガリンと流れ
 または弾かれるように退いたのに合わせて両後ろ足を広げてとびかかり、地面に引き倒す。
 その大きな顎が頭をつかむと、小気味よい ゴキンッ という音共に首をひねり壊した。

 噛みつきや爪による引き裂きではない
 最小効率と最も力をかけられる部位での頸椎破壊。
 頭上では、突破したことで新たな周囲の敵を貫くように突き出す両腕。
 再び振るいあげ、斧の一撃の間合い 愛馬の突
 どちらも対処できなければ確実に斧か爪、届く周囲の敵ら。
 

メイラ・ダンタリオ >  
   「―――全く 思わぬ試し斬りになりましたわね。」


 鏡面仕上げの斧が、血糊を振り払いまたその輝きを取り戻す。
 殺しには不要な輝き しかし顔を移すようなその斧面の仕上げこそが、メイラとイーヴィアには必要だった処置で
 数体を薙ぎ払い、数体を突き殺した斧 首を捻り壊し、爪で脊髄を断つ愛馬。

 二足大蜥蜴の足場では特大剣は安定感がない
 その上での騎馬戦に仕上げた長柄斧の出来に満足したメイラは、兜の内側でもわかるような声色で笑みを浮かべる。


   「相変わらず良い仕事ですわ イーヴィア。」


 華やかなハルバートでも、繊細なパルチザンでもない
 ポールアックスのシンプルな一撃の力。
 それの後で、戦う手筈が整った囲むようになった部隊。
 人間の次に出てきた騎士鎧だけの姿とわかる音の具合。


   「―――空っぽ共ですわね。」


 第二ラウンドは妖魔。
 デュラハン類の空っぽの騎士鎧が出てくる姿。
 物理攻撃は多大に与えなければ怯まない。
 メイラを含むそれらが得意な者らによる、剣と剣
 斧と槍による交差する火花が散りながらの、エイコーンに比べればまるで大したことはない
 破壊できて破壊すれば動かなくなるというそれが必然の物体に対し、物資輸送を進めるべく、その日
 辺りはちぎれた鎧が散乱することになった。

 

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」周辺」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。