2026/01/19 のログ
宿儺姫 >  
やがて月が登り始めた時間頃。
大口を空ける洞穴を見つけ、中へと踏み入る。

「手つかず、か…?」

少なくとも知恵のある種が住んでいるようには見えない天然洞窟。
長身の大女である女鬼がすんなり入れる程の大きく口をあけた闇の中。

住まうものがいるとして、相当な巨躯か、あるいは大きな群れか、またあるいは竜の類か。
誰も住んでいないのであればそのまま自分の塒にしてしまうか、と洞穴の中へと入ってゆく。
広い分には困ることもなかろう。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に李皇華さんが現れました。
李皇華 > 普段はここまで遠出する事は無いのだが、足を伸ばした理由としては先日立ち寄った冒険者ギルドと言う施設にて、様々な依頼を張り出している掲示板を見て興味本位から受けた依頼があった。

王国の妖魔や魔獣について、ついでに見聞できるだろうとの思惑もあり、受けた依頼は討伐に関係する物。
山脈付近までは雲に乗って直線に進んだので然程、時を要する事はなく……山脈付近まで来れば地上の街道途中へ降り立ったのは、疲弊したらしき冒険者と呼ばれる一団を発見したからで――。
話を聞くに別の場所にて自分が受けた依頼と被ってに先行したらしく……だが、逃げ帰ってきたらしい。

大体の方向、場所を聞き出して情報料として幾ばくかの金銭を手渡して別れた後、同行している黒猫の背を撫で「お願いしますね」と言葉をかけ……一声鳴いた黒猫は大型の虎へと姿を変え――その背に跨れば音も立てずに山中へと風の如く疾走し始めた。

日も暮れかかった頃、辿り着いた現場にその姿を見つける事は出来ず、さて如何した物か……と悩んでいると耳を立てた虎が気配を察したらしく――背に乗ったまま行先は虎任せ。
行きついた先……そこにあるものは、大きな洞穴ではあるが……月の光が差し込むその場所、真っ暗な入口に目を向けたままの虎は地面に伏せるなら、この場所に居るという事か。
背から降りて地面に脚をつけると、洞穴に向かっていこうか。

「さて……鬼という事でありましたが…流れてきたものなのかどうか」

独り言を呟きつつ、人差し指を唇に当て呟けば、自身の周囲に火の珠が3つほど周囲を舞い闇を退けて15mほど先まで照らし出していく。
人の手が入ったような気配はない洞穴に足を踏み入れていけば、その姿を見つける事になるのか――。

宿儺姫 >  
その者は洞穴へ踏入ってから、然程に時間は経たなかっただろう。

不自然に開けた大きな空間に差し当たる。
光苔が生えているのか、薄暗いなりに視界は通るそこで。

「───は、こやつらの住処であったか」

肉塊を踏み潰すような音が反響する。

「……む?」

灯がこちらに近づく、それは洞窟の中であれば当たり前に視界に捉えることが出来る。
やがて視界にその鬼を見ることができれば、大型の触手生物…人をも喰らうだろうワームを踏み潰した女鬼の姿である。

ある程度の要望の情報を入手しているのなら、
亜麻色のざんばら髪、黒肌の女鬼が件の存在であると理解するのに時間はかからぬことだろう。
女鬼もまた翠の夜光眼を灯りへと向ける。

「…匂うな。人、か…?」

連中が引き返し後を追ってきたか、しかし違和感がある。さて……。

李皇華 > 洞穴であれば音は反響する為、活動する者があるのならば発生源となり、その存在を知る事は出来よう。
が、大きい洞穴となれば入り口付近では風の音が反響するので、掴めず……脚を進めていく内に静かになって来れば気配を探る様に研ぎ澄ましつつ……ぼんやりとだが光源らしき光は目に入るのならば、それが火の明かりでは無いのは色から察し…どうやら発光する植物らしいと認識した。

依頼に書かれてあった様相は、特徴しか書かれていない為、この王国で言うところの巨鬼…オーガと呼ばれる類であろうか…とも道中考えてはいたが。
前方より感じる気配に傾げる首は……はて…何処かでと記憶を探るような仕草をしつつ足を進めた。
広けた空間に出る事になれば、一応の警戒までに小刀の鞘に触れ「疾」と呟けば4振りの小刀は回転をしつつ宙を舞い始め、火の明かりを反射し血て輝きを放つ。
そして、その姿を目にすることになり―――。

「…………貴女は……鬼姫…でしょうか?」

記憶としては、かなり遡らなければならず。
だが、その容姿と気配に思い当るとなればと、うろ覚えながらに問うような声。

宿儺姫 >  
人…のように見える。その外観は。
しかしその匂いに違和を感じ、投げかけられる言葉にもまた…。

「はて。このような装い、姫に見えよう筈もなかろうが」

「何ゆえそのように問う」

野性味溢れる襤褸布だけの姿。
姫と呼ぶに相応しきは整った目鼻立ちくらいのものか。
肉体は筋骨に溢れ、それこそオーガやそんな類の種と見るのが普通だろう。

ずしゃりと歩み寄り、目の前の存在を値踏みするように見下ろし乍ら。

李皇華 > 「装いで姫と呼ばれるのでしたら、巷は姫だらけになっているでしょうね。
いや、それはそれで艶やかであり華やかと言えなくもありませんが」

自身の周囲を舞う小刀が襲い掛かる事はないが、然したる威嚇にも脅威にもなっていないのは、その距離を造作も無く縮める歩みを見せる事で分かる。
返す言葉は普段と変わらず穏やかなもの。
自身よりも目線は少し上になろうが、容姿を改めて見るのは確認でもするように

「この国の巨鬼と言うよりは、気配が違うように感じました。
私の出自の国に近い気配と腹の傷痕……八家山の大妖、鬼姫によく似ている気がしてまして。
失礼……私、崑崙山の李皇華と申します。」

異国の者であれば、その見分けなどは難しかろうが、同郷ともなればその辺りの違いには気付きやすくもある。
襤褸布だらけで目のやり場に困りそうないで立ちではあるが、鍛え抜かれた鬼特有の躰は全盛期に近い物であるように思える。

軽く鞘を叩けば、周囲を舞っていた小刀は自ら鞘へと収まっていき―――。

宿儺姫 >  
あの国では道士と呼ばれる者、仙と呼ばれる者が多くいた。
剣を宙に舞わせる芸当も見慣れたものであったが、成程、と合点がいく。

「なんという奇縁」

思わずその眼を丸くしてしまう。
同郷の者と出会うことも珍しくはあるが。
伝え聞くのであれば兎も角、八卦の山に鬼姫として在った頃の、気配を知る者がいるとは。

「ならば恐らく貴様の知る通り、山におった頃の我が名は宿儺。
 崑崙の者がこの地に足を踏み入れていようとはな……」

それを知っている時点で定命の者ではあるまいな、と。
己を知る者などろくでもない悪仙の連中か、記憶を継承した帝国の道士どもくらいだと思っていたが。

さしもの戦狂いもその者の登場は余りにも稀有。闘うことも忘れまじまじとその姿を見下ろしていた。

李皇華 > 「いやはや………まさに貴女の言葉通り」

彼女の反応からして、恐らくという推測は決定に近い物となろうか。
出身は明かさずとも、悪名高き場所を示せば知れようもの。
遠くは五百有余年程、遡る事になれば記憶を有しているものより、語り部や書物に僅かに残る程度の物の方が多かろう。
当時の討伐には間接的に関わりがあった記憶、かなり強固な封印を施されたとも聞いていたことも朧気乍ら思い出し。

「やはりでありましたか。
私共の間では通称の方が響いておりましたので。
宿儺殿……ふむ、以後お見知りおきを。
時勢の変化と言ったところでしょうか……まあ、私は真新しい事を得る為に来た次第ですが」

彼女を前にすれば、普通は威圧感に恐怖して逃げ出すか、鼓舞して襲い掛かるかであろうが、敵意を向けるでもなく至って普通に言葉を交わし乍ら――。

「ギルドなる施設に討伐依頼がありまして、こちらへ窺った次第ではありますが……街や村、家畜や農作物への大きな被害がある訳でもなく不思議に思っていた所でした」

鍛え抜かれ曲線に富んだ肢体は、否応なしに目を惹き付けてしまうので、目線は彷徨いはするが、腹部の傷痕にはまじまじと。

宿儺姫 >  
「人の世に降り、人の中で過ごすに不都合もなさそうじゃな。貴様は」


ふと見れば、誰しもが人であることを疑わないだろう。
大悪妖の中でも如何にも鬼であるという風貌の自身とは大きく違う。
言葉を信ずるならば、ギルドなどという場所で仕事を受けている始末。
生活するに弊害も苦慮も感じられぬ様子にやや肩を竦めてみれば。

「此処は獣も多く喰うに困ることは稀。故な。
 呵々、時折姿を見せる賊ども喰らう程度よ。其れでも、定命の人にとっては恐ろしかろうがな」

その女鬼の首に懸けられた額面は大きい。
人喰いの鬼を危険であると判断するのみならず、この地においては珍しかろう、女鬼であることが一部の貴族によってその額面を釣り上げさせていた。

「──して、我を縛るつもりか?
 かつての封はシェンヤンの道士どもの総掛かりであったぞ」

討伐依頼を受けて来た以上は、さて、如何するつもりか。
無論黙って討伐されてやるつもりもない。
豪胆たる女鬼は堂々としたもの。その視線を奇異に感じることもなく。たった一人でその場にいる者を見下ろし。

李皇華 > 「元より人の身ですので不都合はありませんが……王都の方は気の乱れが大きく居心地はよろしくありませんが、そこに目を瞑れば問題は少ないですね」

世捨て人に近い生活を長く続けてはいたので、当初は人酔いと王都の陰陽の気の乱れでやられ気味ではあった。
が、そこは追々と慣れつつ…それでも一目で北方の出である容姿である為に、目立ちはするらしい。
一応は賓客として持て成されているので生活に困る事はないが、一人でも生きていく手段は持ち合わせてもいた。

「それで山脈の中という事でしたか。
身を隠すにしても丁度いい地形でもあるようですし。
ふむ……賊であれば、行いが我が身に返ろうとも仕方がありません」

賊に襲われたものからすれば、因果応報で喰われたところで誰の心も痛まぬであろう。
討伐依頼の金額の大きさは、領主の掛けたものであろうか。
大金と名を挙げる事が同時に手に入るのならば、狙われるのも当然ではあるが滅多な相手でなければ傷を負わす事も難しかろう。

「害悪を成していない貴女を縛る…その理由が私にはありません。
加えて、そこまでの苦労に見合う功を得られるとも思いません。
貴女にとって戦は最高の馳走でしょうけれどもね。

……時折でも良いので、稽古の相手になっていただければ幸いです。
その時は、酒や肉でも馳走する所存ですが、如何でしょうか」

彼女の行動範囲で実害と言えるほどの事はなく、逆に賊討伐を勝手にしてくれているわけで、より調べれば妖魔や魔獣の類の発生率も、他の地域は格段に低いのも分かるだろうか。
故に…彼女を討伐する理由が無いのだ。

「……この辺りは龍脈、気の流れも理想的ですね」

彼女の性質は、その態度からも実に分かり易い。
見下ろされる目線を重ねて向ける笑み。

宿儺姫 >  
「呵々…。我のことをよく理解する。
 にしては、稽古などと。肉、酒は魅力的な条件じゃが、我は加減を知らぬぞ?」

さて、目の前の御仁が如何ほどか女鬼には計る眼はない。
しかし自分を前にして動じる様子も怯える様子もなく、
過去八卦山での暴れぶりを知る上でもそれを崩さぬのであるから、
よほどに腕か術が立つ、あるいは達観しているといった類なのか。

「気の流れがどうのということはわからぬがな。
 水も澄み、木々がよく育つ。良き地ではあるのじゃろうなあ。
 ……さて、我を縛るつもりもなし、というならば一つ問いたいことがある」

そう言葉を向ければ、女鬼はひとまず闘争の気を鎮めたか、その場にどかりと座り込む。

「貴様、封じられる以前の我を知るのであれば、我が封じられていた間の八卦山のことも知っておるのか?」

女鬼には一つ気にすることが在る。
それは、女鬼が封から解かれるまでの数百年の間に、八卦山に在った戦鬼の集落から同胞の姿が全て消えていたこと。
何が有ったかを知る術も、それを知る者に問うことも叶わず今日ここに至っていたのだ。目の前の者なら、あるいはと。

「八卦山の我が鬼族の行方を聞いたことはないか?」

──たかだか十数年前に遡る話。
暴の鬼姫を封じられた鬼の村落は嘗てより目に余るとしていた渾沌宮の悪仙によって滅ぼされている。
そして封を不完全なものと改竄し、同胞亡き地に宿儺を復活させたのも、その悪趣味な仙の手によるもの。
どれほどまでが伝わっているか。目の前に座り返答を待つ女鬼はその一切を知らぬ様子で──。

李皇華 > 「で、あればこそのです。
貴女が強者であるからこそのですし、加減されては稽古になりませんのでは無用にて」

身と技の鍛錬は、自身の成長と言うものが一番実感できる。
そして、それを向上させるには同等以上の存在が一番の早道である。
帝国に居た頃にその機会は少なく、それでも良しとはしていたが彼女も言葉にした通り、奇縁であるのなら活かせばいい。
そんな思いもあっての提案となったが、返事はどうやら是と受け取って良さそうだ。

「土地としては申し分ないほどです。
風水も悪くありませんし…大きな街が無いのは、交通網が良くないからでしょう。
……はて…何でしょうか」

戦の気を鎮めて座り込んだ彼女は、自身よりも顔が低い位置になれば、今度は自身が見下ろす側となるが、強調される乳房の膨らみが何とも凶悪であり。

「……その頃には私は崑崙山を離れておりましたし、生憎と八卦山の後の事はよく知りません。
ふむ………ですが、知る術が無い事も無いです。
彼の土地にて関係する亡者、土地神を呼び出してみれば、何か分かるやもしれませんが。
若しくは崑崙山の師に、貴女の言う当時の事を聞く事も可能ではあります」

彼女が知りたいと望む事柄について、自身は情報を持ってはいないが召鬼の中の術を使えば、何か手掛かりになるようなものを見つける可能性はあるだろうと告げる。

彼女がそこまで言うのならば、余程の事であったに違いなく、興味を引かれるのは、そこまでの存在があるという所。
場合によっては自身の堰を置いている崑崙山にとっても十分な脅威となりうる者の存在の情報の価値はかなり大きい。
故に協力は惜しまない姿勢となり、彼女の話は真摯に聞いて告げる手段の内容。

宿儺姫 >  
「そうか」

今すぐに得られる情報はなし。
その言葉に落胆も抑揚も見せぬまま、片目を伏せる。

「気が向いたら、暇にで構わぬ。
 かつての同胞、気にはなれど執着があるという程でもなし。
 空虚を感じぬかといえば、嘘にはなるがな」

同族の消失は多少なり、暴の化身であった鬼姫に感傷を与えたらしい。
不完全に封を解いたかの悪仙がそれを狙いのうちに含めていたかはいざ知らず。
おそらく師とやらに訪ねてみれば、実に醜悪、実に悪趣味な悪狐…傾国九尾の話を聞くことが出来るのだろう。
そして、その狐は今も帝都の皇宮に潜んでいるということも。

「しかしそうか、加減は要らぬか。
 くく、後から文句を言いたくなっても知らぬからな」

では問いかけも終わりである、と言うように再び立ち上がる。
その視線が己の肢体に刺さることも感じてはいようが、あまりにもそういったものに頓着がない。
そういった視線を気にするような鬼姫であればこのような襤褸布を纏っただけの姿では居らぬのだろうが。

「だが生憎。住処を選別しておる最中でな。
 此処はどうも小奴らの住処であるらしい。次の確約が果たしてできるかのう」

何せ洞穴は無数にある。何処か丁度良いものを見つけたら塒とするのだが、見分けはそうつくまい。
自身が縊り殺したワームの死骸へと視線を写し、やれやれと。
この手の魔物が住んでいる穴は無限にあれが出てくることは承知の上、この穴は住処に適さない。

李皇華 > 「承知いたしました。
気になっているが故に尋ねたのでしょうし、この件は私も気になりますので」

自身が聞き及ばない情報は、意外な所からとなりはしたが彼女が気にする程の事となれば、大事の可能性もあるので早速、数日の内に師の元へ尋ねる為に崑崙山へ行く事になるのだろう。
そこで、知らされるのならば昼行燈を楽しむ余裕ができるのかどうか。
その情報は、彼女へ届けられることになるだろうが、それは後の話となろう。

「私が所望した事ですので、それくらいの覚悟は出来ています。
……文句くらいは出るかも知れませんが」

立ち上がれば再び目線は見上げる様になった。
肢体への頓着と言うものを見せない豪放磊落ぶりは変わらずのようだが……自身からの彼女の顔を見れば、視点には必ずその豊満な乳房が目に入るので何とも微妙な面持ちとなるが。

「…蟲が住み着いていては難儀ではありますね。
ふむ……では、これをお渡ししておきましょうか」

懐より取り出したのは一枚の紙片。
腰に下げた筒より筆を出して紙へ走らせていき―――出来上がったのは一枚の呪符…それを彼女へ渡そう。

「これを空に投げれば私に届きますので、落ち着きましたらそうして頂ければ。
…ふと思ったのですが、魔獣やらの討伐依頼を貴女に知らせ、遂行したのを私が確認して受け取った報酬にて肉やら酒を運べば、お互いに得しかありませんし、意外と上手くいきそうな気はしますが…」

ふと思い浮かんだ案を出してみながら…足元の死骸に対しては、蟲は厄介であるからと。

宿儺姫 >  
承知する、という言葉に、頼むとは言葉は返さなかった。
たまたま過去の八卦山を知る者と邂逅し、つい吐露してしまっただけのこと。
人並みの感傷、という程ののものでもないのだと。
──気にかかるのだろう、ということには違いはないのだが。その辺りはどこか面倒な女鬼である。

そして提案される妙案。
なるほど、その発想はなかったではないか。
金銭など己が受領しようが価値はない。
飯の種も餓死さえせねば足りるに等しい。

討伐依頼が出される魔獣や魔物とあらば己の望む強敵にも違いあるまい。
その情報の提供と、酒を報酬にということならば女鬼にとっては得しかない。

「乗った」

にやりと牙を見せ笑う。
以前の人間の商人程剛臆にも見えぬ相手。
同郷の者であるということも手伝い、そういうことならばと鬼にしては快く返答を返し。呪符を受け取る。

「このようなモノで居場所が理解るのか。
 相変わらずお主らはワケのわからぬ術を使うな……」

手に取った札をまじまじと見つめても、ただの紙となんら違いがわからぬ鬼であった。

李皇華 > 鬼と言う存在自体、個としての能力が吐出しているが故に、同胞の事は気にかかる程度であるのか。
自身の過去を思い出せば、堕ち掛ける所までの苦悩はあったが故に、彼女の語った事が引っ掛かった事実もあった。
彼女の吐露が新たな扉を開く切っ掛けになったどうか――それも先の話であるか。

彼女が人知れず出している成果ではあるが、本来、評価されてしかるべきである。
と考えた場合、強敵を探さずとも情報は手に入り、戦闘と言う名の馳走と酒が得れるのであれば彼女にしてみれば笑いが止まらぬとなろう。
金銭に興味が無いのであれば自身が、それを変換すればよいだけの事。
上前を撥ねるつもりもないので、相応の量にもなろう。

「では、そのように。
地方の住人も、ギルドも喜ぶでしょうしね」

案の成立に頷きを以て応え、今後は彼女に討伐依頼を回す事になる。
討伐相手に好みがあるのであれば、その辺りも聞いておき……。

「結局は使い勝手のいい便利な術が好まれますからね。
……今は忘れられてしまっているだろう術も、数多です」

呪符を眺めている彼女を見て少し笑いっていれば、中々帰ってこない主を心配してか、のそりとやってくる黒い虎は彼女の気配を感じてか、一定の距離以上は近付かず……。

「迎えが来ましたので、今日はこの辺りで失礼致します。
楽しい邂逅でありました。
依頼に関しては随時、お知らせいたしましょう。
報酬の酒についても同様に」

彼女へ向かってゆるりと一礼をして、待っている虎の方へと歩いていくと背に乗り振り返って目礼を返し、洞穴より立ち去っていくのだった。

宿儺姫 >  
大きな獣の気配を感じる。
と、それは遠い距離で足を止め…成程、使役された何れかだろうと納得する。


「ふ、こちらも酒が手に入れば何より重畳。
 獲物もとびきりを頼むぞ、皇華よ」

去りゆく背へと名を呼びかけ。別れを告げる。

思わぬ奇縁。
己のかつてを知る者がまだ、しかもこの王国の領内に居ようとは。

「…塒を探すとするか」

手にした札を握りしめ、やや後ろ髪引かれつつ洞穴を後にする。
広く、使える洞穴が見つかればいいが、と。

そうしてしばらく後、丁度よい洞窟を見つけたのだろう女鬼かその呪符を使い…シェンヤンを郷とするもの道士の奇妙な縁が始まるのだろう。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」から李皇華さんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」から宿儺姫さんが去りました。