2025/10/29 のログ
■宿儺姫 >
山脈にいくつか在る、白煙烟る天然の湯泉。
人間には熱すぎるその源泉で湯浴みをするのもまた人外。
「やぁれやれ…塒探しもそうそう上手くは運ばんな……」
纏っている襤褸布を岩場に投げかけ、一糸纏わぬ褐色の肌を濁った湯へと沈めるのは一匹の牝の鬼。
使い物にならなくなった塒…洞穴の代わりを求めここ最近方方と歩んでみたがなかなか優良物件には出会えることもなく。
いくつかオークやオーガ、ゴブリンの巣を叩き潰しながらに渡り歩いていた。
相応に負傷もした故に湯治も兼ね、湯浴みに訪れていた。
「水の湧く洞窟なぞ簡単には見つからぬものよの」
一々身を清めるにも遠出せずに済むが故、そうした物件を探していたが当然、そういった洞窟は先客がおり、まともに生活につかえぬような有り様になっていることが多々であった。
■宿儺姫 >
「人里には流石に降りれぬしな」
嘆息しながら、聳え伸びる己の角を撫で擦る。
被り隠すには大きな角であり、何より人喰らいの鬼が人里で暮らすのは如何様にも無理がある。
だというのに、好物の酒は人里に降りねば得られないのだ。
「こいつも残り少なくなったか…」
山賊が襲っていた馬車より得た人里の葡萄の酒。
脇の岩の上に置かれた酒瓶を揺らせば心もとない程度にちゃぷちゃぷと水音が鳴る。
また適当に山賊のアジトでも探して荒らしてみるか、などと浅い思惑を巡らせていた。
■宿儺姫 >
天然に沸き立つ源泉といえど野生の魔物や竜がいないこともない。
こうして悠然と湯浴みを愉しめるのも牝鬼のような人外くらいだろう。
故にこうして湯治に訪れることも多いが──。
「ふぅ…そういえば以前この源泉から湧いてきた怪物もおったな…」
うねうねとした野太い触手の魔物であったが、あれには苦労させられた。
褐色の肌、ぷかりと浮かぶ…牝鬼の身体の部位の中では貴重な、柔らかな乳房に張り付く白髪を指先で選り分けながらそんなことを思い出す。
──こういった仕草一つ、光景一つを取り上げれば女鬼には人外の色香もなくはなかったが、敵が現れればすぐさまそれも台無しになる定めである。
ご案内:「九頭龍山脈・天然温泉」から宿儺姫さんが去りました。