2025/09/18 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に影時さんが現れました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に篝さんが現れました。
■影時 > ――街の暑さは耐えず。止まず。
だが、少しでも標高が上がる山の中ならばどうだろうか。
涼しいと思うなら、感じるなら、遊ぶに丁度良い。鍛えるに丁度良い。
九頭龍山脈の麓、山賊街道と綽名される街道から離れた山中に、清らかな水が流れる川がある。
川に沿って奥を目指してゆけば、小さな滝のようになる落差と広い川べりが生じている箇所が出来ている。
その傍にしっかりとしたテントが一張り、設えられてる。
一人で使うには明らかに大きいサイズに加え、離れた所に石を組んで竈まで作っているのは手慣れている所業だ。
テントの入口から伸びた庇状のシートの下に置かれた折り畳みテーブルの上に、水を入れた浅い皿がある。
そこで水遊び、水浴びのつもりだろうか? 茶黒の毛並みの二匹の毛玉がわちゃわちゃする中、
「火の娘に水の扱い方やら乗り方教えるってのも我ながら諧謔じみてるが……あれだあれ。
与太のつもりで聞いてくれてかまわん。知らぬよりはずっと良いだろう。
それと、用意しておいた奴の使い方はもう一度言う必要はあるかね?」
冒険や戦いに赴く時の忍び装束――でもなく。白いショートパンツ風の水着に裸足といった装いの男が声を放つ。
胸の前で腕組みしつつ、“奴”と称した道具は角が丸くなった砂利多めの川縁に置かれている。
直径およそ60センチの木製の道具。草履か下駄のように鼻緒がついた中心部に、四分割した木板を括り付けたような代物。
左右で一揃いのそれは、忍びの間では俗に“水蜘蛛”と呼ばれる忍具だ。
比較的流れの緩い水上を浮いて渡るために進むもの、等と云うが、
――そもそも、こんなものを両足に付けて水の上を進めるわけがない。浮けるものか。
だが、それも氣の技を使うならどうだろうか。
シェンヤンの地の武侠等が言う軽身の技。体重を打ち消すような練氣の技を使えるなら、行けるかもしれない。
■篝 > 避暑地と呼んで遜色ない、川のせせらぎが耳に心地よい山中でのこと。
偶然ながら同じく白い水着に身を包む白猫は、男の傍らに控えるようにして立ち尽くしていた。
庇の下で浅瀬の水遊びに興じている獣二匹の気軽さとは打って変わって、此方は名目上は修行である。
事前に用意されていた奇妙な靴――水蜘蛛と呼ぶらしい――を半信半疑な様子で素足に履き、片耳を器用にぺたりと下げて、無表情ながら疑心の籠る緋色が師へと向けられる。
「影時先生は、ユーモアのセンスがおありですね。
……泳げないわけではありませんので、溺れる心配は無いのですが。
一応、もう一度使い方をお聞きしてもよろしいですか?」
使い方は一通り聞いたし覚えてもいるが……。
こんな小さな木の板を両足につけて川を渡れるものか、と正気を確かめるべく尋ねるのだった。
氣を練って足に集中させれば壁を上ることや、逆さになって天井に張り付くことが出来るのは経験上よく知っている。
しかして、動く水の上でバランスを取りながら奇妙な靴で歩くとか、己は揶揄われているのではないかと。
■影時 > もう少し暑さが緩めば、適当な川縁から釣り糸を垂らすのも良いだろう。
釣りは一番の趣味というわけではないが、精神修養がてら無心に費やせる感覚が嫌いではない。
しかし、今回はそれよりも修行だ。時刻は昼。夜までまだまだある。
川の流れに沿い、わざと狭まる処に石を積んで流路を変え、そこに罠も仕掛けておいた。そこに集まるものが夕飯になる。
魔法の雑嚢にも食料を詰めてはいるが、今は此処に居ない一番弟子が大きな土産をひっさげてくるかもしれない。
庇の下のシマリスとモモンガは元々泳げないが、暑気が残るなら野性の本能的に水浴びもしたくなるらしい。
視線があれば、前足と尾っぽを振って自己主張してくる。それにあいよ、とばかりに片手を挙げて。
「ははは、よせやい照れるじゃねェか。
だったなァ。なら、仕損じた時は大丈夫とは思うが、極力水に濡れずに水場をやり過ごしたい時もある。
――まず、履く。履いたな?
感覚的には足裏に見えない層、体重を打ち消すように氣を流しつつ、水場に踏み出す、だ。
今回の水蜘蛛は取っ掛かりをつけるための補助具のつもりで拵えた。
ゆくゆくは全体重を打ち消すようになる方向を目指す。すると、こういう芸が出来るように、なる――……」
照れるねえ、とばかりに顔に手を当てつつ、冗談交じりとばかりに身をくねらせて、こほん。
咳払いののちに、真面目な面持ちで改めての説明、勘所を声に出す。
一応の構造として、水蜘蛛はいわば“かんじき”よろしく、体重を分散させ、浮き代わりの木片の浮力で浮く――ことを目指している。
勿論大いに無茶がある訳だが、その無茶を無理ならぬ不条理で引っ込める。その過程の練習具としてなら使えなくもない。
今回のテーマの到達点、目指すべきところは、早速ながら実演してみせよう。
くるりと川の方に男が振り向く。この季節だ、少しずつ落葉も交じり出す頃合い。
おりよく流れに乗ってきた枯れ葉を認め、鋭く、長く氣息を巡らせながら跳び移る。水柱があが――らない。
木っ端にも劣る筈の枯れ葉の上に足指一本で立ち、川の流れに乗る姿がそこにあった。
■篝 > 釣りも最初の一時間は我慢できるが、途中で眠くなるか、川に直接入って採ってきそうな猫である。
今夜の食事になるだろう川魚が、修行の裏で密かに罠にかかっていると知れば、喜びますます師を尊敬するのだろう。
造られた緩やかな川の流れを眺めながら、チラリと振り返り師を見れば子分達と挨拶を交わす姿が。二匹が楽しそうで何よりだ。
「むぅ……。水に濡れたくない時は、仕事中はおおいにあります。
ん、履きました。
……んと、んー体重を、打ち消す……原理は、理解しました。
この靴が無くても、使えるようになる。そこが目標。それも承知」
火薬を使うことも理由に上がるが、痕跡を残したくないのが先に立つ。極力濡れたくないのは、至極同意できる。
唸りながら頷きを一つ。
靴をちゃんと履いたのを目視で確認し、感覚を確かめて頷きをもう一度。
原理は理解できたが、実際にやるとなると……上手くいくイメージがあまり浮かばない。
水に関わる術では無いが、どうしても水術に関わりそうなことは苦手意識を持ってしまう。悪い癖だ。
自信なさげに萎れた尾を力なく揺らしていると、師が目の前で実演して見せる。
軽やかに跳び、水蜘蛛を履かない素足が水面に浮かぶ木の葉の上へと降り立つ――。
「――おぉ……っ! おー……。うー……凄い……」
水柱も、飛沫も上がらず、脚一本で小さな葉の上に立ち、川の流れに乗る姿に感嘆の声を上げた。
素直に褒めてぎゅーっと両手で拳を握り、力んで身を乗り出す。
これを己も今から練習するのか。そう思うと、興奮よりも不安の方が大きくなってくる。
何事も、ようく見て覚え、理解できることならば大概のことは出来るようになる真似が得意な猫だが、今回ばかりはそうはいかない。
「……よ、よし。参ります……っ」
意気込み、大きく深呼吸を一度してから、足元へ氣を送り膜を張るようにして、一歩を踏み出し。
――ドボンッ。
そのまま垂直に、重力のままに川の中へと落ちるのだった。
どうも、氣の層が薄く均等では無かったようだ。
■影時 > 竿で釣るしかない魚もあるにはあるが、二人前三人前の分量を求めるには難がある。
それならば、木の枝と紐代わりの蔓で拵える罠を、仕掛けておく方がよい。
獲り過ぎた分は大きさを見て川に返すつもりだが、足りなければ――その時は上手くどうにかしよう。
「全くだな。俺だって濡れるのはあンまり好かん。濡れるのを避けたい理由は山ほどあるが。
とは言え――使えるようになれば、という程度の技でもある。
浮いたままを長く保って戦うとなれば、ちと足元が不安が過ぎる。荒れた海原を走りたい気にもならんなぁ。
補助が無くとも立てる、位が必要十分、最低限の到達点とするか」
火薬を使うという点は自分も同じ。濡れていると痕跡が残り、特に冬場だと体温もまた削られる。
忍者であろうともなかろうとも、衣類が濡れたままの行動は大小様々なデメリットが付き纏う。
それを水を歩けることで避けられるなら良いが、絶対条件ではない。この技もそれなりに難易度の高いやり方だ。
だから、まずは水蜘蛛がなくとも水に立てるを目標にしたい。数秒でも出来ればいい。最終的な所への足掛かりだ。
「それ程でもない、と言いたいが結構気を遣うからなぁ……、まぁ、先ずはやってみ、……あ」
流れを見切り、次に流れてくる木の葉に当たりをつけてひょい、と。長い脚で葉から葉を渡る。
興奮から不安も勝るだろう。そんな顔、気配を感じる。
そうして勇気を出して踏み出して、――どぼん。まあ、こうなるよなぁ、とも思いながら顎を摩る。
水音に心配げに庇から視線を投げ掛ける二匹が、ぢぃぃ、と。大丈夫かしら……と言わんばかりに顔を見合わせ。
■篝 > 足元が不安定な場所での戦闘は御免願いたい。荒れた海など、もっての外。そう思うのは地に足を突けて歩く者の共通認識か。
『水蜘蛛無しで立てるようになる。』を目標に掲げた弟子の第一歩であったが、その結果は――
ぶくぶくぶく…………。
と、娘の沈んだところから泡が浮かんでいた。
思いのほか深い場所だったようで、上がってくるまでに暫くかかる。
と言うのは言い訳で、水の底に一度沈み切って直ぐに浮上しなかったのは、見事に失敗してしまった情けなさからだった。
何がいけなかったのかと悩みながら、ぶくぶくぶくと浮かんで消える泡を見上げながら、原因を考えつつ。
そーっと浮上する。
ぽちゃっ。と小さな水音を立てて顔を出し、師の方をチラリ。
遠くから此方を視ている二匹の視線も背に感じながら、また沈んで隠れたくなるところを堪えて浅い所へ泳いでいく。
「ぷは……っ、先生、これ難しい……」
ひょいひょいっと、軽い調子で葉から葉へと渡って行く師のようにとは難しくとも、せめて今日中に水面に立てるようにと考えていたのに。
浅瀬について、一度川から上がり水蜘蛛の板の上に乗った水を捌けさせて。
魔法も魔術も忍術も、イメージできないものは大概できないと言うが、目の前で実演されたというのにイメージできないとはどういうことなのか。
不甲斐なさに、しゅんと一回り小さくなって項垂れる。
■影時 > 寝床となる船さえあれば、荒海を走って渡れると思った――ことが昔あったとは言えない。
今でこそ大人げない処は大いにあるが、それよりももっと若い、無謀だった頃もあった。
「……あー。大丈夫か篝?」
そんな頃よりももっと若い娘が、どう考えても無茶としか言いようがない無理に挑み、――どぼん。
淵というほどではなくとも、深度がある辺りに盛大に沈んだ有様に眉を潜め、歩み寄る。
水面を踏みしめる。その度に微かに氣の流動が水面を揺らし、奇妙な波を起こして水面を乱し、直ぐに消える。
溺れているようには見えない。ぶくぶくと浮かぶ息の泡はどうやら何考えてのことか。
暫しして顔を出してくる姿に、見守る毛玉たちと一緒にほっとしつつも声をかけ、泳ぐ姿を追って水面を歩く。
「そりゃそうだ。水を歩くだけなら、この国なら至極単純に魔術に訴えりゃあいい。
ラファルに云わせたら、そもそも浮くまでもよー☆とか云ってしまいかねん。
勿論、誰の助けもなく水の上を歩けるようになるのは大きい。
その上で、さっき俺がやったように水の流れを見切り。
次に何処に踏み出せば、流れる落ち葉や木っ端やら、程よい足場が来るかを見切る。
水は高きから低きに向かって流れる。流れやすい処を縫って流れる。
故に、己が流れるように進むにはどうすればいいのかを、自然に見切る――のが到達点だ」
裸足の足が水から川縁に上がり、水を捌けさせる姿を見遣りながら肩を竦める。
滔々と言葉を紡ぐのは、もっと楽にできる方法を知っている、普及しているからかもしれない、という点。
風の扱いに長ける弟子に至っては、もっともっと楽に浮くか飛ぶかだろう。
だが、此れを修行に出来る点は、流水の如く淀みなく移動する心得を磨くことにある。
敵意の坩堝の中でどこを進めば、危なげなく進みゆけるか。自然と己が進む道を自得する。
観念めいているが、決して無意味ではないだろう。
しゅんと項垂れる姿の傍に歩み寄り、しゃがみ込めばぽんぽんと濡れた髪を叩くように撫でてみよう。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にラファルさんが現れました。
■篝 > 水底から見上げる水面に、川の流れとは異なる揺らぎがある。その上には人の影。
そこにだけ薄いガラスが張られているような、自然の中では見ないような不思議な光景だった。
水面を歩むと言うのは、踏みしめると言うのは、こう言うものなのかと違う視点から見ていた。それは少し前のこと。
水から顔を出し、声を掛けられ一言。
「だいじょぶ、です……」
舌足らずな返事をして、川から出る。その後ろをついて歩く気配を感じつつ。
「魔術は学んだことが無いのでわかりませんが、そんなに簡単に水上歩行が出来てしまうのですか……。
空を飛ぶ……のは、竜なら考える必要もなく、飛べてしまいそうです。参考にはしがたい、かと。
ん、助けがなくても歩けるように……。うー。……うん。
先生は……そんな風に考えながら、さっき渡ってた、ですか? 足場や、川の流れ……考えることが多い」
魔術に頼るのは楽かもしれないが、それはもう身もふたもない話になってしまうわけで。
空を飛ぶ、風に乗る、読む、空を掴む。色々と思考が川から離れた場所へ流れてしまいそうになる。
緩く頭を振って、此方を視ている暗赤に振り返り。
水の上に立てるようになった先、流れに乗って歩くにも、動きながら考えることがまた多そうで頭が痛い。
項垂れる頭を軽くぽんぽんっと撫でられて、俯いた視線を少しだけ上げると、そこに丁度しゃがんだ師の顔が来る。
年甲斐もなく、子供のように落ち込むことは良くない事だ。面倒をかけては……。
「……もう一回、頑張ります」
励ましに応えて顔を上げ、ふんすっと鼻を鳴らし、もう一度川へと向き合い。
■ラファル > 弁えろと、師は言う。
それは、物や物事をきちんと見わける。識別する。弁別する。自分の置かれた立場をよく理解し、行動を律する。
そういう事である。
さて、今、この場はどうとらえるか。
ラファルは今、その場に居た。
何時から居たのか、と言えば、最初からいた。
ラファルは、風を操る竜である。
風を使えば、光を、音を、全て抑えることができる。
透明になり、音もたてずに隠密する事さえ可能。
師であればと思うだろう、しかし、ラファルは、その方面に至っては、師を超えていた。
技術に落とし込んだその行為を、【無私】と言う。
それこそ、攻撃行動をとらなければ、師さえ、ラファルを発見することができない、隠形の極致。
そんな技術を使い、ラファルは――――。
全裸だった。
だって外だもん、だって、川だもん。
水遊びしたいお年頃。
そして、野生児にとって、服とか水着とかは、拘束具でしかない。
なので。
幼女は。
全裸で、川でぷかぷか浮いていた。
しかも、それもまた、川の上に寝そべる形で、だ。
無論、師の言葉とか、妹弟子の行動を見てたりもする。
キラキラした金色の竜眼が、早く遊ばないのー?と如実に問いかけている。
■影時 > 水中から水面を見上げれば、そうもなるだろう。そう見えるだろう。
侵入経路として泳ぐしかないなら仕方がない。是非も無い。
その手しかないなら、準備万端整えた上で長時間泳ぐことも厭わない。そのための前提、備えは揃っている。
だが、やはり濡れないように水の上に立ち、移動できる手管のある無しは大きい。出来ることが広がる。
「なら、良いんだが。
この辺りは術を掛ける側がどんだけ覚えてるかにもよるが、腕に覚えのある術師なら網羅してることだろうよ。
まぁ、生来の能力、チカラばかり――でもないぞ? 仮に篝が風にも親しめる性質なら、真似れる要素もあるだろう。
水の上を歩く、までは意識してたが、其処から先は意識もしてねぇな。
いきなり今日全てこの場でやれるようになれ、なんて云うつもりは無いぞう。言うなれば極意、って奴だ」
魔法魔術に頼る方が早い、ということもある。それが他の冒険者と組んで協働するメリットである。
だが、自分達、ないし単独で動くことを考えると、そうも言っていられない。
しゃがみつつ、視線を合わせて撫でながら、言葉を紡ぐ。この術ばかりは長く取り組むが一番無理がない。
兎にも角にもやってみて、チャレンジすることが肝要。おうよ、と頷きつつ川に向き直れば――――あ。
「………………。あー。」
何か浮いていた。金髪のちみっこがまっぱで浮いてるように見えた――気がするのは、見てると認識出来たからか。
己が仕草を見て、二匹の毛玉が遅れて「「!!」」と尻尾をびこん!!と立てる。
■篝 > 出来ることを増やすことは、選択肢の幅を広げると言うこと。
泳いで水に潜らずとも水上を移動できるのは、確実に策の幅を広げることになるだろう。
「そう言うもの、ですか。風とも……仲良く出来れば……、うんっ」
水上を歩くことはそれとして、空を飛ぶとなれば風を知り流れを読んでと。
素養があるかは試さねばわからぬ事だが、師の言葉は容易く弟子に希望や夢を持たせてくれる。
「水の上を歩く、以外は……反射でやってた?
うー……。センスとか、言われるとお手上げです……。
はぃ、今日は……歩けるようになるのが、目標―― う?」
くらくらと頭と尾を揺らして、額に手をやりつつ気合を入れ直そうかと言う時。
沈黙の後に、間延びした師の声が聞こえた。首を傾げて、暗赤が見る先を追ってみれば……。
見えなければ気付かない。気付けない。
風と光によって、世界から消えてしまった隠形の化身を見つける術を持つ者など、そうは居ない。
故に、妹弟子は姿も音も匂いもしない姉弟子の存在に気付けずにいた。今、この瞬間までは。
全裸幼女の川流れとは、なんと風流な。
――もとい、なんて光景だ。
幼女性愛者がこの場にいれば歓喜していたことだろう。
師がロリコンかどうかは一寸の疑惑があるが、今回は歓喜よりも呆れの色が濃く見えた気がする。
「……ラファル、ずっと此処にいた?」
いつからそこに?
■ラファル > ぷかーりぷかぷか。生体水蜘蛛と言った様子か、若しくはアメンボと言うべきか。
水の表面張力の上で乗っかっている、マッパの幼女。
何も隠すものもなく、其れで濡れることもなく、ウォータベッドの上でごろごろするような気楽さで流れてくる。
この辺りは、師匠のいう感覚と言う物だ。
風に馴染み、風を詠む竜。
空の風と、地面の水は、似通っているものだ。
違うのは、濃度と言う程度だから、ラファルは水も、風も、等しく乗ることができて居る。
師匠が、けだまーズが気が付けたのは、ラファルが隠れる意思がなかったからだろう。
むしろ、構って!遊んで!遊ぼう!状態だったから、だともいえる。
ただ、声を掛けないのは、師匠と、篝が訓練中にも見えたからでもある。
ちゃんと我慢できる良い子です。
でも、遊びたいので、うずずとするのは。やはり幼女だからなのです。
「やー☆
えとね、お出かけ開始のころからー。」
最初からいた、らしい。
篝の言葉に、やっほう、と手を振りふりして見せる。
「風を感じるなら、飛ぶのが一番だよー」
よいしょ、と立ち上がり、とことこ、と川の上を歩く幼女。
全裸、何も隠さないラファルの白いロリコンバディを見せつけながら近づく。
川の上、二人の前で胡坐をかいて座って見せれば、深奥さえ見えてしまいそう、と言うか見えている。
何も気にしていないのは。
精神がドラゴンそのものだから、だ。
元々、野生児、頑張って服を着てるだけ、の幼女だからなのだ。
■影時 > 「自然に倣うものは、ある――と言っても、雲を掴むような心地にもなるよなァ。
水なら、そうだな。
蓮の葉は分かるか?知らなけりゃ、葉についた水滴が奇妙に丸くなって転がるように見える植物がある。
何故かと云えば、あれは恐ろしく水を撥ねるようでな。……そこがヒントだ」
風も風で火には欠かし難い。鉄鋼を溶かすように焔の温度を高めるには、空気が。風が必要なのだ。
とはいえ、そこらの感覚は一朝一夕では掴みがたい。偶には思考の転換というものも必要になる。
斯く在るのが当然と言わんばかりの領域、感覚の処理までは、無理は言えない。
取っ掛かりのヒントはもっと小さく、コンパクトであるのがいい。頭抱えたげな頭と尾の揺れを認めれば、少し考える。
しゃがんだ姿勢のまま、水面に手を入れる。窪ませた掌に水を溜め、氣を奔らせる。
すると微細な氣の層が生じ、溜まるだけの水が奇妙に丸くなり、数個の水玉が掌使いに応じて自在に転がる。
「――最初からかい。
いやまァ、出かけるとかは予め雇い主殿に云ってたから、追ってくる……じゃないな。
あ。まさか最初から張っついてたかお前」
そんな実演を掌に載せたまま、遊ぼう!構って!と待ちきれなくなったようなようぢょの有様に、片手で髪を掻く。
まさしく自然体。というよりも、色々もってあぶない幼女が川の上を歩き、胡坐をかく様に苦笑を刻む。
見えちゃいけない処まで見せたらイケません、と言っても最早今更。
「ちと、言い足すか。立てる位が必要十分、最低限……とは言ったが、今日必ずなれ、とは云わんぞ。
今やって見せたようなこの辺りの加減がまずは出来るようになってから、と言いたいが……ラファルもやってみるか。
この辺りの細かな行、出来ぬとは言わせぬぞ?」
息を吐き、思考を変える。趣向を変える。
再度挑んでもドボンとなるのが目に見えるなら、精妙な氣の制御の鍛錬と行こう。
水を弾き、掌の上で弄べるようになるなら、逆に足裏に作用させて強くやれば水の上に立つ位は叶うだろう。
この辺と言いつつ、師たる男は掌の上で転がす水玉たちを、念じて一つに固め、また分ける。
慧眼たる弟子達ならば、練習してゆけばきっとこの位は出来よう。
■篝 > 「ん、蓮はわかります。丸い葉っぱ。シェンヤンの昔話に出て来ます。
水を撥ねる……弾く、葉。うーん……。はい、先生」
与えられたヒントには覚えがあり、綺麗な白と桃色の花を頭に思い浮かべて頷き。
そこに繋がる葉を連想し、師が川に差し込んだ手と、その手が齎す氣の流れ、水面の変化に目を瞠り。
ジッと水玉の様子を覗き込んだ後、足元の水蜘蛛を一瞥してから返事をした。
キラリと光る金糸の髪をこれっぽっちも濡らさずに、川の上を漂う幼女。
常識や見えている世界が違うのだろうか、姉弟子の感覚は人間には理解しきれない部分がある。
だが、今彼女が見せている輝く瞳は遊びたい盛りの子供の目。これは人間も人竜も変わらない。
「最初から……居たの。全然、気付かなかった。声、掛ければいいのに……」
予想した以上にずっと前から傍にいたのに気付かなかったことに驚愕と感心が入り乱れ、複雑な心境ながらぽつりと呟き。
修行の為に遠慮して待っていてくれたと知れば、また少し姉弟子を見る目が尊敬へと傾くだろう。
全裸の見事なロリコンボディ幼女だけども、それはそれ。
簡単に、飛ぶのが一番などと言って歩み寄る幼女は、目前で水上に座り胡坐をかく。
まったく隠す気の無い堂々とした晒しっぷりに呆気にとられ、見ている此方が恥ずかしくなる。
師の視線が厭らしいものではないので、冷静に小さく溜息を吐き。
「ラファル、裸なのは……街じゃないし、百歩譲って良いと思う。
でも、脚は閉じる……。 いい?
――先生を交尾に誘ってるのなら、そのままでも良い……けど」
姉弟子だが、年齢は此方が上。諭す様に言葉を選んで言っているつもりだが、色々とストレートな所がちらほらと。
師の言葉に振り返り、ラファルもと誘うのを聞いて姉弟子を見やる。
「……承知いたしました。出来る限り、先生の満足いく程度まで習得できるよう心がけます」
口ではそう言うが気は急いて。
先ほど見せてもらった氣の流れ、動き。それを参考に、イメージを固めていく。