2025/08/30 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中/秘湯」に睡蓮さんが現れました。
■睡蓮 > ───木々を揺らす風も少しずつその熱の勢いを失いつつある。
山脈の各地にわく温泉の、湯けむりが木々の間を抜け、夜の空へと立ち上っていく。
自然の構造でできた温泉には、自然と獣がよりついているから、この場合人の容をしたものはその相伴にあずかっているというべきだろう。
程よい温度の湯に半身を浸し、湯気に融けるような色身の髪をゆるく結い上げ項を晒していた。とがった耳を彩る装飾が揺れ、それ以外は乾いた岩の上に置かれ。
目くらましの術を兼ねるように、近場の樹木に吊り下げられた香炉から、香気がゆるりと漂っているだけで、後はそのまま、自然あるがままの様子の天然温泉に浴している仙姑が一人。
「─────はー………
……熱気や湿気も、当時なら歓迎なんだがね」
手持無沙汰を解消するように、そこには白い酒杯が握られて。手酌で一献、澄んだ色身の液体が満たされていた。
ちゃぷん、と湯を揺らし、それを呷る。
熱気か、酒精か。白皙の肌がほのかに色づき、湯気にけぶる。
金色の双眸が機嫌よさそうに細められた。
■睡蓮 > 閑で、けれど静寂というわけではない。
梢の揺れる音、湯の沸き、零れて流れてゆく音。
山野をかける獣の気配。
ただ、湯を揺らし、盃を重ねていると、本来のこの場の利用者が訪れもする。
「────おや、……はは、邪魔をしている」
言葉が通じていてもいなくても気にしていないように、訪問者にそうするように言葉を向けて。
共に湯に浴す相手の邪魔をしないように互いの距離を保ちながら。
■睡蓮 > 肩口から、ちょろ、と人の体を利用しつつ、温浴する──栗鼠の動きに少しくすぐったそうにしつつ。持ち上げた腕をそのまま下ろすと、しばらくは好きするがいいさとばかりに目を閉じた。
ゆらゆらと、揺れる湯面。
湯の花の香り。
視界を閉ざせばそういったものや、音がより、知覚しやすくなる。
■睡蓮 > そうしてしばし戯れていた野生の動物が己のそばを離れたのを潮に、静かに湯を跳ねさせて体を引き上げた。
ふわ、と湯気が広がり、よく温まった体躯を外気に触れさせるとひんやりとして心地よさを感じた。
聞こえる、虫の奏でる音色に、確かに時節は移ろっているのだろうとにんしきしつつ、体を麻布で拭い、常の装束に袖を通した。
少し足許を乱したままなのは、足夢いて戯れに爪先をまだ湯に遊ばせているから。
髪が渇く迄今少し、ここで酒精を楽しんでゆくことだろう。
ご案内:「九頭龍山脈 山中/秘湯」から睡蓮さんが去りました。