2025/08/14 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にオルヴィさんが現れました。
■オルヴィ > ――この具合だと、夕刻位には雨が降りそうだ。
夏の暑い日差しが降りる九頭竜山脈。
険しい山脈の麓に走る街道から外れた山中に生い茂る樹上に居れば、色々とよく見える。森の呼吸も嗅ぎ取れる。
産まれは街。育ちも街。血筋は森の奥に住まうものであると聞いても、ピンと来ない。
けれども。されども。血は抗えない……とか思ってしまうと、最近学院の図書館で借りた小説の一節のようで笑えない。
笑いどころだろうか? 何か違う気がする。
森の中に跋扈する魔物を射て、狩って、その身体の一部を持ち帰ると換金可能。そんな依頼を受けているせいだろうか。
「……――矢を撃ち切るには早いけど、思ったより多いかも。
回収の手間を考えたら、もう少しこっちに引き付けたいけど……難しいかな」
弓弦が鳴り、矢が飛んで、挙がる悲鳴ひとつ。また一つ。
足跡や糞等の痕跡を辿り、魔物の巣はこの辺りだろうと認められる地域を見下ろせる太く大きな木。
これまた太いその枝の上に座し、矢を射放った弓を下ろしながら嘯く姿がある。
生成り色の上衣の上に草色のケープを羽織った、エルフの少年が菫の花弁の色にも似た双眸を細め、遠くを見る。
見える先にあるのは、山の一角にひっそりと空いた洞穴の入口。
出入りするゴブリンらしい姿を遠く認め、入口から程よく離れたと思ったあたりで狙い射る。
作業として行うとしては至極単純。外すつもりがないなら、当てない方が難しい。
だが、換金のために必要な獲物の身体の一部を回収しようとなると、少し考えた方が良いかもしれない。伏兵も居そうだ。
■オルヴィ > 臨時のパーティ募集でも挙げるか、参加すれば良かったかも知れない。
射手一人でも遣れる内容には違いないが、最適化を図ってしまうと何分作業じみてくる。
撃てるうちは勿論それで良い。だが、矢は無限ではない。
高ランクの冒険者なら無限に入る魔法の鞄や、魔力で矢を生成する術等、色々と工夫している……とかは聞いたことがある。
(……そういうの、僕にはまだ無理だ)
お高そうなグッズも便利な術もない。矢を撃ち尽くしたら、後は小石をスリングで投擲するか。
剣と小盾は持っているから、真正面から戦えなくもないにしても、好き好んで群れる魔物とは戦いたくない。
矢筒の中身を確かめる。矢だって無料ではない。回収出来ないなら大損になる。
精霊に頼んで手頃な枝を矢にしてもらう手もあるが、それは最後の手段に取っておきたい。敵の数が分からないのが厄介だ。
「都合よく誰か通りがかったり、挑んだりしてたら……今更か」
焦れながら待つのは苦手ではない。浅慮に流されるのは、射手にも野伏にもあるまじき行いだ。
先刻から矢を放つ先も、時間が経てば血と屍の匂いも次第に立ち始めるだろう。どうなるか、というのは考えるまでもない。
■オルヴィ > 「……手持ちの矢数より少なく居てないかな、頼むから」
まさに勝手なお願いである。理不尽である。狩られる方にはたまったものではないだろう。知ったことではないけれど。
とはいえ、多過ぎるとどうなるか。実例込みで幾つか浮かぶこと、考えられることがある。
多過ぎる魔物は様々なものを食い荒らす。食い荒らされたものが自然に復帰するには、時間がかかる。
最終的に飢えて死んだなら、やがて元通りになるだろう。また住み着く可能性もあるが、その繰り返しで自然は保たれる。
不、自然となるとすれば、例えば魔物が植樹、農耕という概念を覚えた場合か。
否、それはあり得まい。そんな人間じみた概念、在り方、考え方をしないから魔のものである。
「――もう一匹。あと、一匹か……」
思案しながら、寄ってくるゴブリンを認めては二本、矢を引き出す。
矢を番えて一発。すぐさま二発。狙いは――見るだけで良い。其れで大体当たる。外す、という意図が無ければ最近だと外したことはない。
脳天を深々と射抜かれた二体が転がり、先刻より折り重なる骸の輪にまた加わるのを確かめ、ふぅー……と零す溜息は重い。
この時期、学院の講義が休みになっているお陰でいつまでに帰らないといけないという縛りはないが、長く居続けるのも問題だ。
少し様子を見る。観察する。これ以上寄って来なければ、見かけなければ骸から剥ぐものを剥いでしまおう――。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からオルヴィさんが去りました。