2025/06/21 のログ
エレイ > 男の予想通り、この晩雨は止むことなく降り続け──
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエレイさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に宿儺姫さんが現れました。
宿儺姫 >  
───九頭龍山脈中腹。

鬱蒼とした樹海を抜けた先の岩場にいくつか、天然温泉が湧いている。
当然源泉であり、とてもではないが人間が入ればその沸き立つ熱に火傷を負うだろう熱泉。
月明かりの下、白煙烟るそんな岩場の源泉に身体を鎮める者がいる。

「──湯治、とはよく言ったものじゃ」

高温の源泉に身を沈め、湯治も何もあったものではないが。
事実、幾重もの闘争などで手負った傷は癒え、折られた角も月齢によって妖力が満ち、復活していた。

「あの巣穴の小鬼どもには、存分に報復させてもらわねばな…」

しっとりと濡れた亜麻色の髪を掻き上げ、天を仰ぐ。
突きの冷たい光に濡れた褐色肌が照り映える。

闘争に磨き上げられた肢体、されど顔立ちはかつての鬼姫の丹精なそれ。
異形ではあれど、同族の鬼の雄であれば見惚れる美姫であるのだろう。

宿儺姫 >  
こういった温泉がいくつも湧いているのがこの九頭龍山の良い所。
故郷である八卦の山とはそれが違う。

「…賊の類が多いのは、朱金…
 そして辰金とかいう眉唾が眠っておるせいじゃったか」

耳に挟んだことはある。
おかげで賊を狩って酒の類を奪うには困らぬ環境だ。
山賊に盗賊に魔物にと忙しい山ではあるが、棲まうには実に良い。

特に魔物の中には、己を子供扱いするかに強力な怪物までもが紛れている。
怪力乱神を地で往く戦狂いである己にとっては、強い者はいればいるだけ良いものだ──。
特にこの熱泉は気に入った。深みもあり、湯浴みに丁度よい。

「こんな場所では覗きも現れようがないしのう♡」

現れたところで、この鬼姫に羞恥心などは無縁のものであるが。

宿儺姫 >  
こんな位置までは賊も登っては来るまいて。
必然、何かが現れたとて魔物か、怪物か、龍か。

「──龍は歓迎じゃな。
 存分に死力を尽くし、漲らせ…肉も喰える」

喰えものせぬ魔物の類よりは、そちらが良い。
湯跳ねの音を静けさが支配する月下に響かせ、月を見上げる。
今宵は妖力の高まる満月。折れた角の復元に至ったのもその影響が大きい。

要するに、力が有り余っているのだ。

「となれば、怪物でも歓迎、じゃがのう──」

まぁ今は良いか、と。また深く身を鎮め、心地よさげな吐息を零す。
重力に反するような双つの肉鞠がぷかりと浮かぶ様は実に牝らしいのだが、零す独り言はすべからく物騒である。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にシアンさんが現れました。
シアン >  
とある友人を訪ねて九頭龍山脈の麓近くにある農村を訪ねていた折――

(ついでにあの馬鹿どもの様子も見に行くか~)

等と余人には知られたくない手勢の事を考えていた時。
ふと、山脈の方角から見知った気配を感じた気がした。

「ああ、やっぱ、気の所為じゃなかったか」

最初は、勘違いか気の所為かとも思ったものだ、覚えている気配よりもかなり小さかったから。
然しどうにも気掛かりで一応瓢箪に酒をなみなみ淹れてから山を登り始めて暫く……
常人よりか何倍も夜目は効くとはいえども道なき道の夜の山道には難儀したものだが、
徐々に徐々に近づくにつれデカくなっていく気配を追って辿り着いたのは。

沸き立つ温泉と。

「久しいなぁ、すーちゃん」

久方ぶりに見る友人の顔。

よっ、とのんびりとした仕草で片手をゆらりと持ち上げて、気楽そのものな具合に声を掛けた。

足音もとんと無し、草葉や枝に当たる音もなければ衣擦れの音さえとんとなく、
傍目にはふっといきなり湯気から出てきたようにも見えるだろうが……
常人ならず、鬼の中でも特異な類の彼女には近づいてくる気配を察知するのも簡単だったろう。