2025/06/18 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にネフェルティさんが現れました。
■ネフェルティ >
「…身の程知らずもいいところだ。賞金額に眼が眩んだか?」
山賊街道の外れ、横転した馬車を盗賊団が取り囲んでいた。
馬車は冒険者の一団が借りたもの。馬は既に逃げ…それに乗って者と、他に二人の冒険者が逃走した。
残っているのは一人、逃げ遅れた少女と、それを守ろうと逃げることをしなかった男。
「男は後で使ってやる、洞窟に運んでおけ。
女はこのまま放っておいてもゴブリンどもの餌食だろうが…」
どうする?と、背後の屈強な連中に視線を投げかける。
――視線は様々だ。しかしそのどれもが、少女を助けてやろうなどという目はしていない。
■ネフェルティ >
月の下、映える闇色の肌の女は足元に倒れた男と女、それぞれを足蹴にしつつ、溜息を吐く。
「仲間が逃げてる。そのうち応援が来るぞ。さっさと決めろ」
首領らしき女に一括され、盗賊男達は話し合うまでもなく方向性を決める。
男と女を担ぎ上げ、塒となっている洞窟へと盗賊達は引き上げてゆく。
「おい、これもだ。
馬車はアジトのほうに運んでおけ。
何かしら便利に使えるだろう」
残った数人の男達にはそれを無名遺跡のアジトに運ぶよう指示する。
馬こそ逃げていない、なかなかの重労働だが彼らは文句一つ言わず、その仕事に取り掛かっていた。
「……ふむ」
あとに残る痕跡はこれで殆どない。
奪えるものはすべて奪う。盗賊として実に正しい行為だった。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にクレイさんが現れました。
■クレイ >
「カッコいいねぇ。でも0点、馬鹿だろ勝ち目がないなら逃げろよバカ野郎」
応援が来る。そう言う風に言っていた女の危惧はまさしく的中していた。同時に、高い賞金額に見合うだけの冒険者サイドの切り札と言えるだけの男を雇っていたのだから。
完全に撤退をするその前に悠然と姿を見せる。傭兵の斡旋もしているのなら噂程度は聞いた事があるだろう。傭兵でありながら接近戦ならば魔王の首も落とす。そう言われていた男の名前を。
まだ剣すら抜かずヘラヘラと笑う。
「さーて、禍月旅団の面々にご挨拶だ。俺は雇われだこの馬鹿がやらかしたら助けろって言われてる。つまり……まぁ現状で言えば敵対してるわけだが」
周りを見る。首領までいる。
凄く、凄くまともにやり合うのは面倒くさい。そう言わんばかりに顔をゆがめた。
「馬車の中身はくれてやる。ついでにそいつらの武器防具も持っていけ、一応は魔法の武具だ。全部売れば4桁後半。もしかしたら5桁にはなる」
その程度でケリがつくなら安いもんだろと冒険者には睨みを利かせ反論を許さず。
そしてその目は首領であるネフェルティに注がれる。
「拒否なら……まぁ、俺とやり合う形だ。俺もお前も、どっちにも面白くない結果になる。どうだ? 賢いやり取りを期待するぜリーダー?」
■ネフェルティ >
「──お前は」
その場に訪れた者。
黒髪黒目、焼けた肌の東平然とした男。
外見だけならば、ではあるがその纏っている雰囲気に首領らしき女は僅かに眉を潜める。
「──つまり、下手をやらかした冒険者二人と馬車そのものは返せと」
既に塒に向けて移動を開始しはじめていた盗賊たちを視線一つで留め、確認すかに言葉を向ける。
「安いもの、どころか丸儲けだな」
横転し傷ついた馬車を椅子がわりに腰掛け、脚を組み上げ男を見据える様は無防備のようにすら見えた。
しかしその昏い赤の視線は不敵に、射貫くように男を見据え。
「そいつらが雑魚すぎて此方の損害は0だ。
それでお前は傭兵として盗賊団に被害も与えず、物品は奪われ、
価値もない冒険者の命二つを持ち帰るだけの仕事の評価になるわけだが──」
「魔王も屠ると揶揄される傭兵としてはチャチな仕事だ。噂に違わぬ道楽ぶりだな」
噂に聞けば、貧しいものからは然程金を取らず、汚い金持ちからはふんだくるという。
金銭勘定だけで動いているタイプではないのだろうが、己の評価についても同様なのか。
「とはいえ、この場だけでも十数人でお前を囲めるぞ」
僅かに声のトーンを落とし、凄腕であろう傭兵の男の返答を待つ。
■クレイ >
「俺の依頼はこいつらの尻ぬぐいだからな。だから事実、俺は後ろにいただろ? 冒険者としての箔をつけたいんだとよ。つまり、お前の討伐は依頼の外。こいつらの命があれば俺の依頼は達成だ」
つまり傭兵が殺したと言いたくないらしいと肩をすくめてみせる。
まぁ男としては出会えば今回みたいに、出会わなければ丸儲け。その程度で受けた依頼だったわけだが。
しかし相手がこちらを試すような発言をしていたので思わずニヤリと笑ってしまう。
「それにだ。実際に禍月旅団に遭遇した冒険者が全滅しなかった……それがどれだけ名誉な事になるか。首領であるお前が1番よく知ってるだろ」
それとも、それが普通と言える程度に小さな組織なのか? そう言わんとするような挑発的な目線を向ける。
実際それだけでおつりがくるほどの名誉が入ってくる。
声のトーンを落とせばこちらはふぅと息を吐く。
「おいおい、それこそ舐められたものだな……仮に数十人どころか数百人で囲もうと雑魚じゃ相手にならねぇ。仮に相手になるレベルなら……そいつはお前らの盗賊団でも宝だ。そいつらを半壊させてもいいってなら相手になるぜ?」
ほんの僅か。体勢を整えるだけ。それだけで実力があるのならわかるだろう。
男の周囲から隙が消える。今どこかから不意打ちしたとして中途半端な腕前では首がどこかへと飛んでいくのがオチだろう。
「だからもしやり合うなら……首領であるお前さんとのタイマン。これが落としどころだろ。俺はこの状況じゃお前を殺せない。殺せば部下が決死で襲い掛かってくるからな」
それは俺も御免だと。流石にやっていられない。
そして顔を上げる。
「さて、どうする? このまま荷物だけを持って退散。ワンチャンかけて俺とタイマン。宝を見捨てての戦争。もしくは俺と仲良く茶をしばきながらお話でも続けるか?」
なんて最後に冗談を交える。
だがここで男はあえて戦争というワードを出す。戦争、つまり何でもありならば……この状況からでも十分逃げ出す算段は持っているという事であった。
■ネフェルティ >
「逃げるヤツを背中から斬る真似はしない。金にもならないしな…。
向かって来るヤツと逃げるフリをするヤツは潰すが。……さて、討伐したならともかく生き延びるだけで名誉とは些か大げさだな」
挑発的な視線はさらりを流し、淡々とした言葉がそう告げる。
実際にそれほどの扱いを受けているのなら面白い話ではある。
それをダシに色々な取引や交渉ができる、という意味でだが。
「──、よし、一つおもしろいことを思いついたぞ」
一通り男の声を聞いていた首領の女は馬車から腰を降ろし、音もなく地面に降り立つ。
そうして、隙なく構える男へと向け、一歩一歩無造作に歩み寄ってゆくのだ。
「お前、依頼は幾らで受けているんだ」
「いくらで寝返る。それだけ教えろ」
手を伸ばせば互いに届く距離。
昏い赤の瞳は上背で大きく勝る男を見上げ、じ…と空虚にも見える視線を向ける。
周囲の盗賊達はそれを止めることもせず、たじろぎもせず、首領の女の命令を待っていた。
■クレイ >
既にお互いの間合いは浸食されつくしている。
いや、小柄な分この間合いは彼女の有利だろう。それでも男は動かない。女から今は攻撃の意図が見えないから。
その後の言葉を聞けば少しだけ目を広げる。
「なるほどな、傭兵へ向けるには最適な言葉だ」
実際この手の話は何度も聞いてきた。
貴族の護衛をしている時、パーティの警護をしている時。戦場で王族の下についた時。
その敵対者から数十数百と言われた。故にその理由を理解している。だからこそ返答はいつもひとつだけだ。
「寝返るのはゴメンだ。信頼ってのはすぐに崩れる。どんな形であれ、受けた依頼は遂行する」
その理由は結局の所興味本位、もしくは恐れが多い。自分がいると作戦遂行の障害になるから消したい。
もしくは、完全に興味。彼女の場合はこれだろう。寝返らせるというそれだけの興味。圧倒的な強者だからこそできる事。ある意味で経済力という力による屈服を目論む姿。
「次は色で堕としてみるか? この身分だ、貴族のルートとか色々と知ってるしな。もしお前達側についたらかなりルートが広がるぜ?」
なんて言う。半分は本気だし半分は冗談。ホントに堕とされたらわからないが、落とされないという自信もある
だからこそでた言葉だった。
■ネフェルティ >
「構わんだろう?
こんなケチな依頼よりも余程大口の依頼が舞い込むようになる。
安い、使い物にもならない冒険者の命二つとでは天秤にもかからないと思うがな」
受けた依頼は完遂するという強い意思の込められた返答。
女はやれやれと肩を竦める。
こういった価値観の持ち主は金で動くことはない。
故にこれ以上の交渉の目はないと踏んでいたが…。
「──ほう。
金では動かんが色では動くと?
…それはそれでどうかとも思うが…私の身体は高いぞ。
お前の依頼料と、あの馬鹿二人の命では到底釣り合わん。ルートについては、一考の価値があるがな」
さて、どこまでが本気なのやら、と。
男を見上げるままに視線は外さず。
…深い色の赤は、まるで男の奥底を覗き込んでくるような、ある種の薄気味悪さにも似た感覚を与える──だろうか。
■クレイ >
「王城にはお気に入りの娼館もあるし、ヤル相手もいるしなぁ。まぁダチもいるし離れるってわけにはいかねぇのよ」
なんてハハハと笑う。
実際は悪党嫌いというだけである。その為同じように金で動くといっても盗賊は不可能な性格ではあった。
しかし、相手の言葉を聞けば少し目を細める。
「見りゃわかる、相当高いだろうさ。だからただやりたいだけかもしれねぇぜ? 王都でお前みたいなのとやろうとしたらマジで5桁近くぶっ飛ぶだろうからな」
そう言ってニヤリと笑う。
男の奥底。そこを見るのならおそらくは見えるのは興味。つまりはこの依頼に関してもそうだし今の提案もそうだ。男がやりたいから言っている。まるでそう示すように。
「すげぇ目だな。たまに貴族や王族のヤベェ奴らがそういう目をしている……全部見透かしてくるみたいなエグい目だ」
同時に、こちらが感じたその違和感を口に出す。
覗き込まれるような感覚。それを確かに感じたのだから。
至近距離で見つめ合う様子。冒険者たちは文字通り震えてみているのだろう。
「ま、とりあえずだ……どの選択肢を選んだとしてもあいつらはもう解放してやってくれ。命を取ったって小銭にもなりゃしねぇだろ。女に関しては……まぁ部下の性欲発散にはなるか?」
男に関しては性欲という意味なら俺がいるからという感覚でそんな風にサラっと言っていた。
■ネフェルティ >
「ふん。まあいい。別働隊に来られても面倒だ。…お前ら、離してやれ」
男から視線を離し、踵を返す。
同時、冒険者の男と少女を抱えあげていた屈強な盗賊男が前に出て、不要になったものを捨てるかのように、男の前へと投げ落とす。
男も、少女も、それに苦悶の声をあげはするものの、致命的な傷は負わされていないいない。
傭兵の男の実力を負いきれない盗賊達には不満げな雰囲気を漏らすも、首領の女の指示には素直に従うようだった。
「馬車の積荷と装備は貰っていく。
口約束なんぞは騙すために使うものだが、お前はそういうタイプでもないだろう。
……名は何だ、傭兵」
踵を返し男と距離をとれば再び向き直り、胸の下で腕を組むと共に、噂で聞いた存在である男に再びその視線を投げかける。
■クレイ >
「お互いに一番いい落としどころだな。まぁ少しだけ俺が割を食ってるが」
1発やりたかったも事実ではある為にそんな風に少しだけ笑う。
投げ落とされた冒険者2人。本来なら助け起こすべきなんだろうが、男は完全無視。ここは戦場だ、出てきた以上はひとりでも生き残れないと話にならないのだから。
そして頷いた。
「当然だ、というか……この状況で騙せるか? お前のテリトリーだろ今」
嘘をつこうものならこちらが食われると肩を竦めた。
まぁ馬車を持っていかれても何もいたくないのでこちらとしては問題無いが。
投げ捨てられた冒険者の男を掴み上げれば懐に手を突っ込んで。
「こいつも」
ポイッと渡すのは宝石の入ったブローチ。この男を雇おうとしただけあり貴族だったのだろう、相応に高価な代物だ。
「俺はクレイだ。盗賊行為を手伝えだったら御免するが、普通の傭兵で人手が足りないとかなら喜んでお手伝いするぜ。いつでもごひいきに」
■ネフェルティ >
「尻拭いの依頼なんぞ割を食うものだろ。
それが嫌なら仕事はもう少し選ぶんだな。折角の腕が台無しだ」
もっとも、今回は男の戦力を勘定に入れて折れたという形ではある。
簡単に捻じ伏せられる程度の相手であればそうしているに違いない。
投げ渡されたブローチをぱしっと受け取り、それに視線を落とす。
随分上等な品であることは見ただけで理解る。
「律儀な男だ。……クレイ、か。
腕も立つ、幾分か生真面目なところが気に入らないが、傭兵にしておくには惜しいな。
貴様こそ、悪の道を進んでみたくなったらいつでも歓迎するぞ。その暁には私手ずから可愛がってやる」
悪に加担しない。
金で揺らがない。
そんな信念がある内は籠絡も魅了も叶わないだろう、と。