2025/10/31 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」に睡蓮さんが現れました。
睡蓮 > 港湾都市随一の歓楽街。
昼も夜もその賑わいは尽きぬもの。女が訪れているのはその一角の喫茶室。

喫茶──とはいえ、独特の蒸気が燻り、こぽりと沸き立つ音。
曲線を描く優美なガラス管の中を巡る煙。いわゆる水煙管──シーシャを商っているその場所は、どこか退廃と淫靡さを備えていた。
控えめの光量、異国情緒を醸し出すための演出に幾重にも、きらびやかな織りの飾り布が垂れて仕切り代わりに。

漏れ聞こえる水音は、管を通る煙が水を潜る独特の音か、あるいはそれ以外か。
勿論普通に軽食や、異国のお茶を楽しむこともできる。

スパイスを利かせたチャイや濃い目の珈琲。
そんなものの香りが交じり合って非現実的な空間を描く。

その中で、シェンヤン様式の装束の女は寝椅子に自堕落に転がっている。
傍らの水煙管に手を伸ばすでもなく、口許に宛がっているのは自身の煙管の吸い口。
火はついていないのか、煙も香りも燻ぶりはしないまま。

店の様子を見るともなしに、その金眼へと映して愉しんでいる。
手元の小さな卓には、やはり王国の様式とは違う小ぶりな茶器。
彩も鮮やかな器に、乳のまろやかさとスパイスの刺激が舌をたのしませるチャイが満たされて。

時折注文を窺う給仕と一言二言言葉を交わす。

客の中には給仕の女を侍らせるものもいるし───まあそういった場所ではあるのだろう。

睡蓮 > 咥えていた煙管を離すと傍らにしまい。
卓に手を伸ばす。丸みを帯びたフォルムの茶器を取り上げ、その縁に唇を寄せる。

普段馴れている味わいとは違う、まろやかさと甘味をあじわいながら。

「───寒くなってくると、こういうのも美味しく感じるな」

スパイスの刺激が舌を擽る。
生姜の風味が喉を通って、体の内側からを温めるように感じるのに呟きを落として。

睡蓮 > 異国情緒漂う街で、異国の女が嘯いている。
長枕を抱えなおして丁度良い重みに身を合わせ。
シーシャの沸く音の向こう側、帳の更に向こう。

店の外の雨の気配に、尖った耳がピクリと揺れた。
長時間寛ぐことができる場所とはいえ、さて、これで店を出たあと濡れながら移動する、というのは街中では好ましい事ではあるまいなあ、と茶器を手に思案。


「篠突く雨を愛でるのも───やぶさかではないが」

今はそっと、手指を温めてくれる茶のぬくもりを愛でながら。

睡蓮 > けれどそれも尽きてしまった。やれやれ、と体を起こす。
自身の煙管を隠しへと仕舞い込み。
代金を、と給仕へと渡す。

「では少し濡れるとしようかな」

さら、と衣擦れの音を伴い立ち上がる。
濡れること自体を厭うているわけではないのが声音から知れるだろう。

柔らかい足取りで、飾り布をかき分け喫茶室を後にした。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」から睡蓮さんが去りました。