2025/10/12 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にアキアスさんが現れました。
■アキアス > 眠らない街。湾港都市ダイラス、ハイブラゼール。
賭博場からやや渋い顔で出てくる巨躯の男が一人。
この街ではよく見る類の表情。
短い赤い髪を太い指でがしりと掻いて、大きく息を吐く。
「ま、素寒貧にならなかっただけマシとしとくか……」
普段は王都で活動している冒険者の男が、隊商の護衛依頼を受けて訪れた場所。
仕事は往路だけで終わり、依頼料の清算を受けて懐潤ったのが数時間前。
カジノや酒場、娼館に少々いかがわしい風呂屋など。いくつも暇をつぶす手段はあって、今日は賭け事を選んだ。
その結果は、稼ぎの大半を失って、熱くなりかけてなんとか踏みとどまったところ。
近くの酒場の屋外座席に座り、店員を捕まえてエールを頼む。
それを半ばまで一気に飲み干しては気分を変えようとしながら。
王都に戻ればギルドに預けた生活費はある。ここで散財しきってもせいぜい明日の朝飯に困る程度だろう。
こちらのギルドで依頼を受ければそれもどうにかなるだろうと軽く考えながら。
ひとまず今夜はどうしたものかと、サービスで出てきた煎り豆を摘まみつつ、ぺろりと唇を舐めて娼館の看板やら、そこらで客引きしている娼婦やらを眺めて。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にセニアさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にセニアさんが現れました。
■セニア > 当たり前の事なのだが。
何もしなければお金は減る。
面倒くさくても、何かしら働かなければ増えないのだ。
増えることもあろうが、それは極々一部の話。
という事で。
「……しゃーっせー」
非常にめんどくさそうな声で呼び込みのバイトをしていた。
看板のようなパネルを持って適当にハイブラゼールの中を闊歩している。
通り過ぎる度にちらちらと男達はその姿を見ている。
それは彼女がバニーだからであろう。
バニー衣装を着て、髪をポニーテールにしてゆったりと看板を見せながら歩き回っている。
どうにもその店が衣装売りをしているとの事でこの服を着させられている。
まあ、背に腹は代えられず、というヤツだ。
そんな中、ふと見れば知り合いが野外座席へ座って飲んでいる様子を見かける。
妙に辛気臭そうな顔をしているようにも見える。
客引きは別に個人に話かけてもいいらしいし、特にルートや時間などは決められていない。
ちょっかいかけてみるかあ、などと思って。
「や、どしたの。妙に辛気臭いけど」
看板片手に近づいて話しかける。
傍から見れば辛気臭そうにしている客によかったらこのお店どうですか?と話しかけにきた客引きといった構図ではある。
■アキアス > かりこりと豆を噛む。流石は不夜の街、こんな酒場のサービス品でも上等だと。
そんなふうに益体も無いことを考えながら。
ぐびり、と、また一口エールを喉に流す。
煌びやかな街を支えるのは今日の自分のような者なのだろうな、と。
やや不貞腐れたような思考を癒すかのように、見目麗しい娼婦らや、着飾り通りを歩く女を眺めていて。
聞こえてくる客引きの声。考えればあれらもご苦労なことだと。
煌びやかな高級な飲み屋だの、娼館だのを下支えしている使いっ走りにしみじみとした視線を向けると、
そのうちの一人、煽情的なバニーガール衣装でなれなれしく声をかけてくる客引きがいる。
「先に値段教えろよ、ちょいと手持ちが――……ぁ? セニア?」
なかば反射的に応じつつ、聞き覚えのある声だなと思い視線を向けてみれば見知った女。
スタイルのいい彼女の身体のラインが浮き上がるバニー衣装。
鍛えられた体幹に支えられる肉感のよい体つきがその衣装でより強調されるようで、しばしまじまじと眺め。
「そこの賭博場でけっこうスったんだよ。まぁ、酒やら宿屋やら、オンナ買うにゃまだ……なんとかなるが」
ただし、高級店でなければ、と。男のやや投げやりな返しに、そんな枕詞が隠れているのも察せられるだろう。
髪を頭の後ろでくくり、肉付きの良い肢体を強調するような恰好の彼女の胸元やら、鼠径部やらに男の碧眼は這い回る。
にへら、と、途端に表情緩ませるのはそれが気に入ったからだろう。
■セニア > 「そうそう、セニアでーす」
少しばかりポーズをとり、ぱち、と目元でピースなどしてみるが、口調は何時もの飄々とした、というか平坦な声。
違和感が凄い状況ではある。
「ああ……つまり素寒貧に近い、と。それはご愁傷様」
話を聞いてなるほど、と頷く。
彼女自身はそこまで賭場などには行くことはなかった。
これに関してはどちらかというと兵士時代の厳しかった影響が多分に含まれている。
たまーに行くことはあっても気紛れにちょっと雰囲気を楽しむ程度だ。
無論、護衛やら何やらで行ったこともあったが。
「んんー金額的にはこんな感じ」
とんとん、と看板を叩く。
サービス割やら初回特典やら何やら書いており、アキアスの手持ちでもまあ払える程度の金額。
店的にも中堅処で、貴族なら楽々、平民なら週末の奮発、といった程度の金額設定であった。
「よかったら御贔屓にー。紹介って言えば安くもしてくれるよ?あ、もし行ったら私の名前言っといてね?」
ノルマではないが、誰から呼び込まれた、と聞かれれば歩合で増えるのである。
そう、言いながら、ふと気付けば看板ではなくこちらを見る男の目は明らかに胸元やらに行っており。
「相変わらずスケベな顔してますけど私は客引きでーす」
残念でした、とんべ、と舌を出して。
■アキアス > 目元に指を掲げてポーズを決める。
そんな女の目元はじっとりと冷めた目付きで口調も特に媚びたようなものではない。
男は彼女のそういうところにだいぶん慣れているから、小さく息を吐くだけで堪えたが。
知らないものが見たらそういう芸風というか役作りと思われそうな様子。
素寒貧、というわけではないが、余裕に溢れていないだけ。
けれども賭け事に負けたのは事実だから、大きな肩を小さく竦めて見せるだけに留める。
そうして彼女が見せつける看板を見ては、ふむ、と小さく声を漏らす。
紹介割引やら初回特典やら。まぁ、良心的な範囲だ。
大通り沿いで彼女に衣装を着せて客引きしているのであればそこまで酷い店でもないだろうか、と。
こういう街だから、そういう商売の悪評が出回るのも多く、そうなると競合が多いから潰れるのも早い。
もっともそれを見越して阿漕な商売をしている場合もあるから、一概には言えないが。
「……ふーむ。……じゃまぁ、案内してくれよ、客引きさん」
舌を出してくる彼女は、客を取っているわけではない、と言いたいのだろう。
だがそこは、店側との交渉と、彼女自身との交渉次第でもあるだろうと目星をつける。
残っていたエールを一気に飲み干せば、勘定を店員に投げつけて客引きウサギの傍に歩み寄る。
宣伝している店の料金云々は兎も角。外れのない今晩の相手をと考えれば。
この、色々な意味で良く知った女を、店側も巻き込んでうまいこと済し崩しに接待役にさせれば、外れどころか大当たりだ。
そんなふうに企みつつ、馴れ馴れしく腰を抱こうと腕を伸ばしつつ、店への案内をさせようとして。
■セニア > 「りょーかーい」
案内してくれ、と言われれば相変わらず抑揚無い声で敬礼をして。
これはまあ不愛想だけれどもそこそこ顔がいいし、とりあえず愛想を振り撒かなくてもいいから適当にポーズやらはとってくれ、と教えられた結果であり。
ちなみにやはり世界は広いので若干の需要があったのかそこそここれでひっかけられていた。
後は前のバイトやらで見かけた顔もいたので呼び込んだらあっさり引っかかって店へ赴いたりした者もいたりもしたが。
数人そうやってひっかけ、今回もこの男をひっかけたのでそこそこ歩合が取れそうだなー、と思っており。
男の目的が自身だ、という事はイマイチ気付いていない。
故に歩み寄り、こちらの腰を抱こうとしているのをひょい、と避けて。
「客引きに手出しは厳禁ですからねお客さーん?」
じろりと軽く睨みつけながら、さてとアキアスを連れて、雇われた店へと歩き出した。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からアキアスさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からセニアさんが去りました。