2025/08/22 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にセニアさんが現れました。
■セニア > 【夕方:港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”歓楽街入口の辺り】
「……ついた」
ダイラスのハイブラゼールの入り口に立ち、ぼす、と持ってきた手荷物を足元に取り落とし呟く。
陸路を進み、あれだこれだと色々と起きた末、彼女は湾港都市の歓楽街入口へとようやく、辿り着いていた。
髪やら身体は連日の移動やら何やらでぼろぼろであった。
「くっそー……絶対文句言ってやる」
ぱんぱん、と髪やら鎧に付いた埃を手で払いつつ、その間にも長期で宿を借りている安宿兼酒場のマスターの顔が脳裏に浮かび、先日マスターに頼まれた時の事を思い出せばぐぬぬと苦虫を噛み潰した顔を浮かべた。
その話はしばらく前へと遡り。
まず発端として、彼女が余りにやる気が無さ過ぎて仕事をサボり続け、酒場で延々と管を巻いていたのがマスターの勘気に大変抵触したらしく。(若い奴が働かないという事に非常にご不満だったご様子)
別にお金払ってるからいいじゃんと抗議をすれば、それは実に火に油を注ぐ行為となり。
宿から追い出されるのをちらつかされ、それは流石に横暴だとぎゃーすかぎゃーすかと騒ぎ立てれば。
飴と鞭と言わんばかりに「なら仕事がある。簡単なうえにこれをやってくれるならある程度の補助もするし文句も言わない」と言われ思わず飛びつくように承諾して―――。
「ここですよ」
はあ、と息を吐く。
まさかマスターに謀られる(謀ったつもりは勿論相手にはない)と思っていなかったので無意識からの一撃であった。
頭の回転はそこそこ速いくせに、肝心の詰めの甘さと無駄なお人よしさが露呈する結果である。
仕事の内容としてはダイラスにマスターの知り合いが居るのでそこまで手紙と荷物を運び届けるという確かに内容は簡単ではあるが。
旅中は想定されておらず、補助という名の旅費も足を出たら自己責任。
そして色々と起きたせいで無論既に足は出ているし本来の予定通りの日程にもなっていないのだが……その『色々』はまた別の話。
「どうしよっかな……」
既に夕暮れで荷物を届けるのも明日にしようと思った所で。
辺りを見回せば流石の歓楽街で、まさにこれからという賑やかさ。
すんすんと鼻をならせば潮の匂いに混ざって色々な食べ物の匂いが鼻孔をくすぐった。
財布から足は出て心許なくなろうがなるまいが腹は空く。
当たり前である。
「何か食べるかなあ」
よいしょ、っと荷物を軽く背負い直し、ゆっくりと歓楽街へと足を踏み入れる。
明らかに鎧を付けて、旅姿をしており、この辺りの人間ではないので少しばかり目立つかもしれない。