2025/11/24 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場近くの酒場」にセットさんが現れました。
セット > その夜の酒場は普段よりも混みあっていた。
外は雨が止めどなく降り続け、海は大荒れとなり船は出せなくなって、水夫や出立を待つ人々は足止めを食らっていた。彼等が酒場で暇を潰すのは必然だった。

酒場ではむさくるしい水夫共の喧噪、店員の怒声、娼婦が客を取ろうとする艶めかしい声が混じり合う。
そんな店内の端、窓際に置かれた二人分のテーブル席に男は一人腰掛けていた。

「ハァ……」

出てきてから暫く経ち、少し暖かくなったエールを一口飲む。
仕事が一段落して、いざ家へ帰還という段階で完全な足止めを食らってしまっていた。
空いている指が小刻みにテーブルを叩く音が、喧噪に混じって微かに鳴る。

「……止みそうにねえな、これは」

彼は窓の戸を少し開け、外を覗いた。雨は止む気配はなく、さらに勢いを増していた。

セット > 「上の部屋に空きはあるか?」

丁度、追加で注文していたエールとパンを届けに来た女の給仕になんとなく尋ねてみる。女は、店主へ尋ねるためにカウンターへと戻っていった。
視界の隅では、また一組の男女が階段を昇って行くのが見えていた。

この雨で少し湿気たパンに齧り付き、咀嚼しながら店内を眺める。
客の入りは先程よりも増えたように感じられ、いつの間にかいる吟遊詩人が歌を歌っている。
客を求めて彷徨っていた娼婦たちの姿も減っていた。時折軋む天井から察するに、殆どが今日の相手にありついたようだ。

給仕が帰ってきて、「部屋の空きは無い」と告げる。
そうか、と答えながらも、暗澹たる感情が内側に芽生えていた。
この街に宿は他にもある。が、そもそもこの天気だ。どこも既に埋まっている可能性は否めない。
最悪の場合は路地で寝るしかないだろう。仕事柄、野外で寝る事に抵抗は無いが、この天候下で寝る事には厭な感じがする。

「ハァ……」

また、溜息をついてエールを呑んだ。

セット > 結局。
部屋の空きを待つのを諦め、代金を払ってから他の宿を探しに雨の中へ繰り出して行った──

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場近くの酒場」からセットさんが去りました。