2025/09/22 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 灯台」に睡蓮さんが現れました。
睡蓮 > 灯台のその頂、見張りのために張り出した構造のその手すりに腰かけ潮風をゆるく浴びる。

柔らかな生地が風を孕んで揺らめき、ろくに纏めてすらいない髪もまた同様に遊ぶ。

細めた金の双眸が、秋めく空の淡く高い色合いを眺め。海鳥の群れが行き交うのもまた同じく視界に収めていた。

「邊秋一雁聲……というのにはまだまだそぐわんな」

陽射しはまだまだ眩しく、暑い。
そも、辺境というほどの場所でもない。
帝国民としてみればそうなのかもしれないが、本拠が帝国というだけである話。
ただ、遠く離れた土地、という印象はそれに乗るかもしれない程度。
そもそも飛んでるのも海鳥だしなと、つい毀れた自身の引用を笑うように独り言つ。

睡蓮 > 灯台も今はまだその役目を果たすときではないからか沈黙している。
だからこそ己のような胡乱な来客を黙認されたともいえるが。

「ま、煙は上るものだしな。────、さて、いい風だ」



季節は巡る。
北の冷たい空気を運びつつある海風に身を晒しながら、手にしているのは長煙管。
火口を指で弾けば、ぱちりと火花が躍ってゆるりと薫香が流れる。
一般的な刻み葉ではなく、香りと煙を喫んでいる。

普段纏う瑞々しい香りではなく、今毀れているのは、この地ではよく嗅ぐ香辛料の香りだった。
肉桂と小豆蔲を少々。

味わいは少々辛いが、異国情緒を味わうにはちょうどいい。
複雑な香りの絡み合いの中にふわ、と柑橘のような爽やかさが後を引く。

ふぅ、と煙を吐き出し、余韻を味わいながら。
耳に過るのは波の音と、海鳥のせわしのない話声。
賑やかだな、と結構な距離離れていても聞こえるそれらに、口元に笑みを刻んだ。

睡蓮 > 吐き出した煙が昊へと昇る。
風に流され、空に融け、淡くなったそれが消えるころ、女の姿もまた消えていた。

ご案内:「港湾都市ダイラス 灯台」から睡蓮さんが去りました。