2025/09/07 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 倉庫街」にドリィさんが現れました。
■ドリィ > その倉庫にあるのは――とある、船の積荷であるらしい。
そしてその船主は女の世話になっていた娼館の贔屓客で、女主人とも昵懇ということ。
その船が如何様な船であるのか、船主がどのような人物なのか、女は知らぬ。
女が関与するのは、少なからず恩義のある女主人に頼まれた。――その事実だけ。
「あたし? ――… ク、ふ。違う違う。ただのマムの知り合いってだぁけ。
少ぅしばかり手先が器用で、少ぅしばかり美人で目を惹く冒険者。それだけ。」
『えらい別嬪が来たが、あんたも娼婦なのかい?』
――監視の御役目だろう船乗りらしき男の好奇に、女はわらって軽く返す。
確かに、冒険者と呼ぶには酷く垢抜けた女だった。
褪せた薔薇を思わせる煉瓦色の髪と、夕暮彩の双眸。
その場に佇むだけで、眼差しは何処か愉しそうで――まるで御機嫌な富豪飼いの猫の気儘を思わせた。
女が斯様な場にいるには理由がある。
頼まれたのだ。どうしても鍵の開かぬ積荷があると。女の知己経由にて。
先導されてかつりかつりとブーツの靴先が潮と埃の匂いの雑じる倉庫街を歩む。
導かれた先、数多の積荷とともに鎮座するそれは、酷く古く、酷く厳つい宝箱のようだった。
海から引き上げたのだろうか。藻と海藻、貝が付着しており、随分と――骨董品だ。
「これはぁー…… 破壊した方が、早くなぁい?」
思わず苦笑とともに呟いたら、睨まれた。なので、冗談冗談、と繋げ。
■ドリィ > 女は、その呪い由来の”特技”を普段、好んで披露しない。
だってリスキーが過ぎるだろう。
――如何なる鍵をも神業の如くに開錠できること。
――“価値”に関して非凡な勘が働き、知らぬうちに嗅ぎ分けること。
ので、適度に器用な冒険者、程度の売り方をしているのだけど。
「…マムにも面倒持ち込むなって、今度ちゃんと言っておかなきゃあ。」
場に片膝をつき、腰元に携帯した開錠道具を取り出しては、
穴に油を数滴差し落とし。手慣れた仕草でピッキングツールを片手に持てば、
鍵穴に差し込み、形良い眉を僅か顰め、小頚を傾ぐよに。
――…そしたなら、どう動かせばいいかが指先に難無く視える。
嗚呼、間違いなく開く。恐らく直ぐに。
天啓めいた確信が脳裡に過るから、そしたなら。
「ンー……、こーれーはー… 時間掛かるかもー…?」
凡庸な手技であるかのよな言葉と小難しげな表情を添えて、先ずは返す。
そして、丁寧に、慎重に。程々に時間を掛けて――開錠にまでもってゆく必要がある。
御身の悠々自適にして気儘な生活のためだ。やむを得まい。
■ドリィ > そして、暫くの後に全ての開錠が済んだなら、
御役御免とばかり報酬を得て、女は場を後にする。
あわよくばと口説いてくる船乗りを軽口にて遇って躱し、何処に行こうか。
適当に飲みに。それとも――…?
ご案内:「港湾都市ダイラス 倉庫街」からドリィさんが去りました。