2025/09/03 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にセニアさんが現れました。
セニア > 【夕方:港湾都市ダイラス 船着き場 とある船の前】

「……」

がやがやと柄が悪かったり筋骨隆々な男達が一つの船の前でまだかまだかと待ち構えている。
―――ぶっちゃけ相当汗臭い。
船は所謂商船であり、荷下ろしの準備をしていて、男たちはその荷下ろしをする仕事を待っている、というわけで。
幾つかの貨物は既に降ろし終えているので―――残りは後数回といったところだろう。
そして何故かその中にいつもよりやる気のない顔で彼女はいた。

「―――」

少しばかり天を仰ぎ見て。


思い出すのはちょっと前の話。
こんなに暑いと仕事なんてやってられるか、と酒場で夕方過ぎから飲んだくれていた所、仕事上りの水夫達がこぞって癒しを求めて酒場へと入ってきて。
数人の水夫が絡んできたのである。
下世話な話題を振ってくるわ、セクハラをしようとしてきたので―――酒も十分に入っており、色々持ちかけられはしたのだが、売る気分でも無かったもので。
ついつい買ってしまった。

喧嘩を。
そして数人を素手でのしてしまった。
それがあれこれやそれやあれやと色々と話が大きくなり。
結果、ここで荷下ろしの仕事を受けている、というワケである。


「はあああ」

何度目かのため息である。
いかんせん、昔取った杵柄と言う奴で、肉体労働への適正は非常に高かった。
腕力も無いわけではなく、荷物降ろしで苦になる程度でもないのではあるが。
辺りは男だらけ、中には女性もいそうではあるが、今の所近くには見かけない。

ほとばしる汗!
躍動する筋肉!
無駄に明るい職場!
たまに飛んでくるセクハラ!(避けている)

辟易していた。

セニア > 次がいくぞー!という声ににわかに周りが騒がしくなる。
そして周りがまた汗臭さが上がっていくのだが。

―――まあ別に彼らはそうそう仕事熱心ではない。
全員の心は大体がさっさと終わらせて酒を飲みたい、女遊びしたいとかそういうのである。
まあ一部には自分の筋肉にしか興味が無いのはいそうではあるが。
そのむさ苦しい群衆の中にぽつんと、滅多には居ない女がいるので周りは割とざわついていた。

当人はただ汗臭いとしか思ってはいないのだが。
何だかんだと薄着で動きやすい恰好をしており、彼女が動くたびにちらちらと色々と見えるので―――。
彼らにとっては非常に生殺しであった。
普通ならこんな状況なら、数分もたたないうちにセクハラの嵐、終わった後は数人で囲み宿屋へお持ち帰りとかいう黄金ルートを辿るのであるが。

そもそも彼女は数名の水夫を素手で叩きのめしているのである。
しかも酔っ払い。
その酔っ払いに手も足も出ず、結果、その絡んだ水夫はしばしの間再起不能になり。
その腕っぷしと穴埋めの補填として、彼女はココにいるのであって。
その話は周りに知れ渡っており、結局出来るのはこういう時にちょっとボディタッチできれば、ぐらいである。
荷物を運んでいる時はやらない。
危ないので。

という事で粛々と荷物を運ぶ事になる。
後やたら汗臭かったり筋肉アピールが凄いのはどっちかっていうと近くでいいトコアピールして何なら気に入られればワンチャンスあるのでは?というスケベ心ではあるのだが。
残念ながらただ近くで汗臭いという感想だけなので悲しい結末である。

「はよおわらんかな……」

何度目かの荷物をやる気のない顔で粛々と運びながらそう呟いた。
後そろそろ姐さんとか言わないで欲しい。
多分もっと似合う人らが居る。
と適当な事を考えながら出来る限り匂いに気を取られないようにしているのであった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にアキアスさんが現れました。
アキアス > 荷下ろしの仕事も大半が終わるころ、商船に赤い髪の巨躯の男が近づいてくる。
男は船の所有者である商会に雇われていて、護衛という名目ではあったのだが、湾港都市に着いたならどうやら雇い主は大歓楽街で気に入りの愛妾とゆっくり過ごすつもりらしく、その間は自由にしてよいと言われたところ。

あくせく働く荷物運びの屈強な男たちの中、薄着でなかなかに雄を煽るようなふうな体つきの女がいるのを見つけて。

「珍しいな……ぁ? やめとけ? 海の女より手が早い?」

後ろ姿でもその引き締まる腰回りや、重い荷物を運ぶのに他の男にも引けを取らない働きをしているのが遠目でも見える。
それに注視していれば、水夫の一人が男に親切心からか、あるいはライバルを減らすためか、忠言してくる。
曰く、酒癖が悪い、陸育ちっぽいが海育ちよりも喧嘩っ早い、顔と体に釣られると痛い目に遭う、と。

それを聞いてはふぅん、とばかりに、歩を進めてその顔を覗いてやろうとして。

「セニアじゃねぇか。そりゃ……」

見知った相手。王都でも正規の軍人を務められるほどの女。
そりゃあにわかな水夫では、腕っぷしだけならともかく喧嘩なりでは叶わないだろう。

周囲の男たちから、姐さんに何の用だ、とばかりに、こちらもこの後のワンチャン潰されまいとの視線も飛ぶが構うことなく。

よう、と、知己の女に声をかけていく。

セニア > そんな虚無な時間(と男達のアピールタイム)を淡々とこなし。
合間合間で「姐さんお持ちします!」とか「姐さんこっちの方どうぞ!」とか露骨な下心と呼び方に若干こっぱずかしくなってきた所で。

よう、とまた声をかけられはあとため息を一つ。
またか、とあからさまにジト目を強めてひょい、とそちらを見れば。

「あれ」

目をぱちくりとさせる。
とはいえジト目は何時もの事なのだが。
それは見知った顔であった。
周りからは妙に敵意を持たれてそうな視線の中歩いてくるが彼は全く気にした素振りがない。
以前に仕事やら―――一夜やら共にした事がある男である。

「どしたのこんなトコで」

よいしょ、と抱えていた荷物を所定の場所においてふーと汗を拭いながら特に変わりのない様子で聞く。
ざわ、とまた周りがざわめくがこのざわめきは何なんだろう、と未だに自分がどういう立場なのか理解していなかった。
うるさいなあ、とそう思っているだけであった。

「こっちも庭だっけ」

この庭、というのはつまるところ縄張りを指すのだが、アキアスは王都の方に家を持っていた故、こっちで見るとは思っていなかったので素直にそう聞いた。

アキアス > 冷静。あるいは人によっては睨まれたようにも、無感情にすら見えるかもしれないジト目。
それを碧眼で捉えたならへらりと緩んだ笑みを見せる。
彼女の特徴ともいえる目つきにも、案外と見慣れれば愛らしくも思えるから不思議なもので。
それも、その瞳が蕩けるのを幾度か見ているからかもしれないが。

「こっちに店持ってる商会とはちと縁があってな。ちょいちょい仕事貰えてる」

船のほうから歩いてきたのと、男の言葉を聞けば相応に割りの良い仕事にありつけているとも想像できるだろうか。

腕自慢の水夫たちが、荷運びが終わりそうだからこそ、いよいよ、と。
それぞれ牽制しあっていたところにぽっと出のそんな冒険者の男に、むさ苦しい仕事の場に珍しく現れたオアシスの如き姐さんが、まさか、と、気もそぞろなふうで。

それも周囲の勝手な思惑で、彼女としては気にすることでもないのは、ジト目が時々周囲をうっとうしそうに見るので男にも知れて。

「罪なオンナやってんなぁ……仕事はぼちぼち上りか?
 雇い主から、独りじゃ持て余しそうないい宿を宛がってもらってンだが」


大きな歓楽街もあるダイラスの、良い宿ともあれば酒精やら、それこそ汗を流す風呂やらもある。
それを餌に、彼女にこの後の時間を共にしないかと、それとなく誘う。

周囲は宿、と聞いてまた色めきだつ。
露骨な誘い文句に、男を睨むやら、女に縋るような視線向けるやら。
そんな言葉で靡く姐さんじゃないぜと知ったか顔で腕組みするものやら、色々な反応もありつつに。

セニア > じろり、とメンドクサナンパ男と思っていたので何なら若干の敵意を込めた兵士時代の目つきで睨んでみたものの。
アキアスはへらりとそれをいなしており。
まあそもそもそれが知己、とわかったのでいつもの顔に戻ったのだが。

一夜を共にして―――こっちの勝手を理解している、というコトでもあり。
そしてアキアスのその口ぶりを聞いて露骨にまたジト目が強くなり、唇を尖らせた。

「へ~~~~~。いっつもいい仕事ありつけていいですねー」

へっと、明後日の方向を向く。
以前も大盤振る舞いをしているところに居合わせた事も思い出しての態度である。
私なんてこれよこれ!と言わんばかりに。
全て身から出た錆なのだがそんなのは棚上げである。
片や縁故によるお仕事、片や酔っ払った勢いで水夫を張っ倒したお仕事(ペナルティ)
思いっきり不貞腐れた声をあげて。

そしてまた、その声を目の当たりにすれば周りがざわつく。
……本当に何なんだろうこれは?
疑問符を浮かべながら頭を傾げる。
その傾げ方も、女に飢える男からすれば、たまらない仕草なのだろう。

「はあ……?」

罪なオンナと言われてやはり疑問符をあげる。
つまるところ彼女は、貧民層での暮らしが長すぎてちょっと気を許したらあっさりセクハラ・犯されるという環境に慣れすぎており、この状況もそれと同じ、と当てはめていたのである。
所謂、貴重なオンナ(やや畏怖も混じるが)扱いに全く慣れていないのである。

閑話休題。

「ふ~ん、こーんな疲れてる私に労いをして頂けると?」

ひょい、とアキアスに近づいて腰に手を当てて下からジト目で見上げて。
傍から見れば、言葉遊びをしながら見せつけてるように見えないことは無く。
やはりまた周りから声がざわ、と起きる。

「吝かじゃないかな~」

それはジト目を崩さないままにた、と笑う。
知己であるからこそ見せる顔であって。
ここに至り、外野との決定的な隔絶を齎した。

アキアス > これが彼女と諍いでも起こしてのものなら、警戒なりするだろうけれど。
仕事中の知己を誘う気まんまんで声をかけたのだから少々強い当たりが返ってくるのも想定の内。

もっとも、拗ねたかのように振る舞われては、太い腕を持ち上げ首の後ろあたりを撫でて、参ったな、というふうな仕草をしてみせる。
二人の様子に険悪なものはなく、気安い冗句の応酬のようなもの。
だからこそ、また周囲もざわつく。
搔っ攫われそうな水夫たちの貴重な目の保養要員、あるいはうまくすれば……という女の状況に、さりとて合間に入り込むようなほどの仲でもなければ見守るしかなく。

そんな水夫たちの様子に気づいていない女の首傾げる様子には、気にするなとばかりにひらりと手を振った。
男としては万が一にも、彼女が気に入った水夫でもいたなら話が変わってしまうかもしれないのだから。

彼女はと言えばやはり周囲の視線には気づかぬまま。
こちらの言葉にその意図を探るような――……それもどこか、そうしているふり、のような。
こうやって思わせぶりに振る舞うところがあるから、余計に男たちに期待を持たせるのだろうなと、アキアスが思い浮かべていると、やはり勿体付けるようにと、迂遠な了解の返事が返ってきて。

「ああ、たっぷり労ってやるよ。……よし。じゃあ、仕事はとっとと済ましちまおう」

そういうと、残り少ない荷物を彼女と軽口交わしながら運び、仕事を手伝っていく。
水夫たちはどこかやるせなさそうに二人の様子を眺めて。

彼女の仕事が終われば、歓楽街のほうにある宿へと、連れ立って向かっていくのだろう……。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からアキアスさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からセニアさんが去りました。