2025/08/15 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス・海賊酒場」にエキドナさんが現れました。
■エキドナ >
―――湾岸都市の裏通り。
表に比べ、急激に治安が悪化するエリアだ。
そんな裏通りの、普段は寂れた酒場が今宵は実に賑やかである。
店内には大柄で屈強な、肌の焼けた男達が酒に歌にと大騒ぎ。
海の上では塩漬けぐらいしか喰えない肉の料理を存分に喰らい、浴びるように酒を飲む。
店の中は殆どそんな海賊達の貸切状態――というか、この状況では誰も店に入る気も起きないだろう。普通の客は。
「悪いわねえ? 騒がせちゃって。これ、お代とは別にとっといてよ」
そんな中、カウンターに見事な脚線美を組み上げた黒髪の妙齢の女。
暗い赤の瞳は冷たい輝きを宿し、どこかカタギでない圧を感じさせる。
布袋にどっさりと詰まったゴルドをカウンターにドン、と置いて困り顔の店主にぱちりと目配せ。
「ついでにラム頂戴。オーク樽のヤツね」
そうして、全身に金銀あらゆる装飾をあしらった黒髪の女は、タンブラーに波々と注がれた酒を豪快に煽るのだった。
■エキドナ >
「船の上であんまり飲めないからってよくそんなにエールばっかり飲めるわね、アンタ達…」
自分は上等なラム酒を味わいつつ。喧騒に一瞥。
まあ、楽しそうで何より、船の上では外せないハメを外すのは大事でもある。
「アンタ達どうせ夜の街で女探しするんでしょう?
持ち合わせなきゃフラれるだけなんだから、持ってきなさい」
そんな喧騒の一団にもう一つの金貨袋を放り投げれば更に喧しく現場が湧く。
そして飲めや歌えやも闌となれば、荒々しい男達は女の言葉通り、一晩の相手を探しに街へ、あるいは夜の店へと赴くため酒場を一人一人でてゆく──。
「出港には遅れるんじゃないわよー」
いつも必ず一人二人、夜通し遊び倒して寝過ごすんだから、と。
普段は暴力的な連中だけに、そんなところがカワイイ奴らでもあったりするのだが。
ご案内:「港湾都市ダイラス・海賊酒場」にアードルフさんが現れました。
■アードルフ > 店から頼まれていた依頼品。配達の指定は夜になってからだった。
裏通りを台車を押して歩く。奇異の目を向けられ絡んでくる若者も居たが配達先次第では邪魔したとあれば無事では済まないと承知なのだろう。
比較的安全に店の前まで辿り着く。
丁度その頃、店からワイワイと賑わい上機嫌で出てくる集団をやりすごしてから──
「親父さん、約束のモノ持って来たんだが──、って成程。」
どうやら団体さんが居たらしい事は察しがついた。店に残っているのは女性一人、そして彼らの格好でその出自は察しがつく。
とりあえずと、酒樽を転がしカウンターと作業台を隔てる平台にその樽を抱え上げて設置すると。
「もしかして、親父から姉さん達へのプレゼントだったかな?だとしたら、悪い事したね。」
遅れたわけではないけれど、振る舞う相手は殆ど消えてしまった。
バツが悪そうに肩を竦めつつも樽に蛇口を取り付ければ。
「親父さんの選んだ上物の葡萄酒。姉さんもどうだい?」
そう、勝手に声を掛けてその間に用意されたグラスに手を伸ばす。
揺らしてしまったために澱が混ざらないよう丁寧に注ぐと、店主には品質チェックのために、
そして元々供されるはずだったろう相手にも、勝手に振る舞い始めるが、店主より咎められない所を見れば許容されたのだろう。
■エキドナ >
静けさを取り戻した店内に新たな客が現れる。
否、客ではなく業者のようだった。
「――あら、特別なお酒でも用意してくれてた?」
男の運んできた樽に瞼をぱちりと瞬かせる。
歓迎される人種ではないため、そういった饗しが予定されていたのは驚く。
一応、酒代以上のゴルドを渡したりしているために上客と捉えてもらっているのかもしれない。
「ふぅん。それじゃ、貰おうかしらね」
タンブラーに残っていたラムをぐいっと飲み干して、提案にはそう応えた。
店主の労いを無碍にするのも勿体ない。
グラスに注がれたのは葡萄酒。
エール、ラム、と来て葡萄酒。なかなかのちゃんぽんっぷりであるが、予想される女の出自通り、酒には滅法強い。
■アードルフ > 「さぁね。ただ同じ酒場の店主として言うなら、ウチじゃ出せない、出しても捌けないだろうね。」
ひょっとしたら、男の勘違いでただ特別に飲ませたい客が居たのかもしれないけれど、時間の指定からしてほぼ推測に誤りはないだろうと。
蛇口より流れる葡萄酒の色は濃く、香りと渋味と度数の高めな所謂フルボディタイプ。
本来であれば葡萄酒を注いだグラスを持ち運ぶ事はしないけれど樽ではいかんともし難く、
三分の一程注いだそれを相手のテーブルへと運び、目の前へと差し出した。
「随分と飲んだ後だったかい? まぁ、海の女ともなればきっと強いんだろうけど。」
テーブルに転がるまだ片し切れていないグラスやジョッキの数々に言葉を向けては笑いながら、自分もほんの少し注いでいた葡萄酒を口に含む。
好みの分かれそうな強い渋味と重み、そして香り。鼻に居抜けて行く酒精は心地よく双眸を閉じて満足そうに唸った。
「姉さんは、随分気に入られてんだね。親父さんにさ。」
そう言葉として賞賛する程の出来、そう思えた。そしてグラスの良く似合う女性へ供するのにも良く合うと。
■エキドナ >
「当然。普段荒くれどもと飲み交わしてるんだから、この程度じゃ酔いもしないわ」
どこか得意げにそう言葉を返し、置かれたグラスを手にする。
ふわりと香るのは実に色濃い、じっくり熟成された芳醇な香りだ。
格好をつけるでもなく、グラスをくいと煽れば鼻腔にまで届く酒精の香りに満たされる。
成程、上物。好みは別れるだろうけど。
「ふぅ…。なかなか。
女目的でさっさとでてったアイツら、勿体ないことしたわね」
ふっ、と鼻から抜けるように笑い、男…アードルフから向けられた言葉に視線を向けて。
「金払いがいいからじゃない?
あと、海のお尋ね者なんて怒らせたら何されるかわからないしねえ?」
グラスを手元で揺らしながら、くすりと笑みに唇を歪めて。
■アードルフ > 「まぁ船乗りからすれば葡萄酒もエールも水か。」
常温での保管が利く酒は海で生きる者たちの血肉を作る存在そのものだと聞いたこともある。
とはいえ、と先ほどまで海賊が座っていただろう席に腰を下ろすと残りの味見分を飲み干して。
「きっと親父さんが瓶詰めしてくれるさ。
んや……、こいつは女を落とす酒だと思うけどね。ちょっと無粋な真似をしてしまったけど。」
そこまで気づいていたならさっさと二人きりにしてやるべきだったと。
思わないわけでもないが、目論見が外れたかバツが悪かったか店主は奥に引っ込んでしまって──。
「まぁでも、酒の味がわかる姉さんなら、王都に寄る用事があったらウチにも遊びに来ると良い。とはいえ、キャパ少ないから大勢は厳しいけど。」
そう、腰の袋からショップカードを取り出し、差し出してみよう。
店のキャパはここの三分の一にも満たない。
店主である男の名と店の名、そして地図が描かれたシンプルなもの。
■エキドナ >
「おやおや。案外目利きだったのかもね」
奥に引っ込んでゆく店主を暗い赤の視線で追いつつ。
女の見る目はあったようだと曰う。
己の属する海賊の船長に心酔し忠誠を誓っている女としては、上等な酒一つで靡くつもりもなかっただろうが。
「王都からわざわざ運んできたってこと?それはお疲れ様ね…」
働き者には驚かされる。
手渡されたショップカードに視線を落とせば、どうやら男も店主の同業者のようで。
「陸にいる時は大体此処だからねぇ。
王都に足を伸ばす機会は稀だと思うけど…。あ、タレコミは禁止よ?」
まぁ、貰っておくわ。と。カードを胸元の谷間に収納。
お尋ねものだしねー、と。
■アードルフ > 「金が貰えて、良い酒の味を知れるなら良い仕事って奴さね。
それに良い物ってのはどうしても、王都に集まるから。」
献上品の横流し然り、純粋な高級品然り、港町や生産地では中々消費されにくく仕入れも限られるから尚の事。
「それに、火遊びするにはこの街は色々便利だしな。
姉さんみたいな飛び切り上玉の火薬なんかとも出会えるわけだし。」
タレこんだら、その火薬が爆発するのは目に見えているから、小さく喉奥でククっと笑ってみせながら。
態々網を張られている王都に来ることもまぁ無いだろう事は用意に想像もついて。
「ま、姉さんみたいな客に頻繁に店に来られたら、うちも破産しそうだからある意味都合が良い。親父さんの気持ちは良くわかるわ。」
海での生活というに艶やかな黒髪や豊満な肉体。落ち着いた物腰の奥にある冷たい赤。男なら惹かれるなと言う方が無理であろう。
そこへきて更に危険な海賊の女とくれば背徳感と触れられた時の達成感はまさに魔性といった魅力に繋がる。
「そうやって、何かに追われたり追ったり、刺激的に生きてるからいいオンナで居られるんだろうな。全く、御宅の大将が羨ましいね。
姉さん相手に理性を保つ必要もないんだろうから、ホント。」
■エキドナ >
「随分饒舌に口がまわるわね。たったあれだけで酔ったってわけでもないでしょうに」
くすりくすりと笑みを深める女。
海賊船に乗る以前より引く手数多の高級娼婦。
男からの褒めの言葉には慣れている、といったような余裕を見せていた。
「そう思うなら貴方も海の上にでも出てみたらー?
自由気儘に振る舞う代償は毎日の命の危険。生きてる実感はお墨付きかしら」
露骨というほどでないにしろ、自身にこの男が惹かれていることは伝わる。
したたかな女としては、そういった男は利用できるなら利用するところだが──。
まだ目の前の男は素性が知れない。
女が海賊に身を窶すまでの間には権力による圧力や、知人の裏切りなど色々なことがあった故に。
■アードルフ > 「そりゃぁ、月並みに言えばいいオンナを口説かないのは礼を欠く。
っても、まぁ聞き飽きちゃいるとは思うが。」
軽く肩を竦めながらも、まるで挑発をするかのような言葉に首を横へ振るのは──。
「俺は刺激的な毎日よりも、平穏な毎日の中でちょっとした火遊びをしたいタイプでね。
それに、君らみたいなの然り、武装商船然り、もうレッドオーシャンになってる界隈に飛び込むほど無謀じゃぁないさ。」
酒場の店主の方が余程、と突っ込まれてしまえばそれまでだが、彼女からすれば退屈な男と映るやもしれぬ。
それでも明け透けに語るのは、味方ではないだろうが、敵でもない、そんな風。
「ま、だから火遊びの土産に、良い酒なり落ち着いてゆっくり飲む時間くらいは確保できるからな。
それに、酒場の親父が客を売ったら、それこそ海賊を笑えない不義理ものになっちまう。」
■エキドナ >
「ふぅん?」
カウンターに肘を置き、頬杖に頭を預ける。
男を見る視線は値踏みをするような色に変わり──。
「(陸で使える筋が増える分には、悪くはないかもしれないわね)」
海に出ている間、基本的に陸で何が起きているかはわからないもの。
海賊を拿捕するための待ち伏せなんかも在り得るというわけだ。当然、そんなものに引っ掛かりはしないが。
それでも面倒は少ないほうがいい。となれば…陸で使える筋はいくつか持っているべきである。
酒場の店主であれば、当然情報にも強いだろう。
「アードルフ…だっけ?」
胸元から取り出したショップカードへ改めて視線を落とし、名を呼んで。
「私はエキドナ…。
ま、お酒のお礼ってことで名前くらいは名乗ってあげるわ。ふふ」
そんな高飛車な言葉を向けて、小さく笑うのだった。
■アードルフ > この類の視線には身に覚えがあった。若かりし頃に、といってももう人の寿命の数回分昔の話にはなるが……。
自分たちに利する者か否か、要するに使える奴かを見定めているようなそれに、双眸を細く返しながら、お道化て両手を上げて見せたりして。
「どうやら姉さんには酒や飯より警吏の情報やら王都の港での動向のほうが喜ばれそうかね。酒場の主人としては悲しい限りだけど。」
肩を落とす芝居を大袈裟にしてみせてから、名前を呼び、名乗る相手の名を一度口にして。
「エキドナ姉さんな、ホント怖い姉さんだわ。男を沼らせる術を熟知してらっしゃる。 名前聞けただけで嬉しいって感じたらもう負けだわ。」
お手上げだと、今度は本気で、両手をあげて見せ、そのまま席を立つ。
その沼に嵌らないように、なんて冗談を載せながら
「今夜は丁度いい火遊びになったさ。感謝するよ。」
そう、振り返り笑みを浮かべ、店主へ帰る旨を伝えてまた店の外へ。
そろそろ空も白み始める、流石の路地裏もその頃には少しは安全に帰れただろう。
■エキドナ >
「おや…そんなこともないわよ?
それはそれ、嬉しさの種類が違うわね」
戯けた様子にこちらも細い肩を竦めて見せる。
「貴方も、ちゃあんと沼があることを理解しているじゃない。
目先の欲に眩む目ばっかりもってる男よりは余程にイイ男だと思うけど」
彼には及ばないけどね。なんて付け加える。
この海賊女が如何に己の主に心酔し、忠誠を誓っているかがよくわかる言葉だろう。
飽くまでも今の時点では…だが。
「そう。またいつでも火遊びしに来なさいよ。お酒を持ってくれば、歓迎してあげる♪」
私の部下達もね、と咲い。
店の外へ出る彼の背中を細めた赤い瞳が見送った。
「──さて、彼のこと知ってる限り教えてもらおうかしら? もう少し飲んでってあげるから」
そう店主に悪い笑みを向け、今宵の酒場の一幕はゆっくりと帳を下ろすのだった。
ご案内:「港湾都市ダイラス・海賊酒場」からアードルフさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス・海賊酒場」からエキドナさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にディエゴさんが現れました。
■ディエゴ > 港湾都市ダイラスの船着き場に、5隻の船が係留された。
その船たちから荒くれものの船員たちが出て来て街の中へと散っていく。
港の埠頭にて、その様子を楽し気に見やる一人の男。
腕を組み、小さく笑いをこぼしてから
「ま、半月ぶりだもんなァ。そりゃぁ、はしゃぐだろうよ。」
今回は冒険行のあと。とはいえ、今回は実入りが目的ではなく、
幾つかのお宝の可能性のある場所を回るだけの長期航海。
結果としていくつかの情報を仕入れ、次はいくつかのお宝さがしも出来るかもしれない。
とはいえ、それに全船を使うのも違うし、金のための襲撃も必要だろう。
さて、誰をどこに配置するのか。
そんなことを考えながら、今はひと時の享楽。酒に女、博打に薬。
それぞれの欲望を発散するために街へと向かった船員たちを見送った。
■ディエゴ > 自分も繰り出すというのなら、それはそれで快く送られるだろうが、飴と鞭は巧みに使う必要がある。
今回は、ロクな寄港先もない航海で半月、船の中に缶詰め。
上の方なら無茶ぶりにせよ、船員を使うにせよ好きに発散のしようはある。
程度問題はあるにせよ。
でも、船員はそうはいかない。
下手にケンカをすれば、役持ちに吊るされる。
交渉して相手が見つかれば御の字。
見つからなければ、自分の利き手がコイビトだ。
そんな抑圧された船員たちに船の残り番を命じたり、半舷休息といって半分残したらどうなるか?
そこに想像力が及ばない奴は、海賊団を率いることはできないし、自分の副官として船を一隻任せられるわけもない。
副官たちも、それぞれの船に行き来して会話をしたり、酒を飲んだり
相性によってはよろしくやっているのだろう。
一段落ついて特に状況に変化がなければ自分もそっちに参加してもいいかもしれない。
そんなことを考えつつも、振り返って沖の方を見やった。
はっきり言ってクソ暑いが、時折いい風が通るとそこそこ心地よい。
海に生きる連中は、そんな少しの幸せを見つけることも多かった。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」に枢樹雨さんが現れました。
■枢樹雨 > それは冒険者ギルドにて請け負った、運搬依頼の帰り道。
霊体となって気儘に上空漂うも良いが、頻繁に訪れることない場所となれば視覚聴覚以外の五感でも感じたい。
ちょうど、緩やかな潮風が頬を撫で、鬼角隠す白絹を揺らし、その香りにスンと鼻を鳴らす。
長い前髪から覗く鼻の先が、小さくひくりと動いた。
白木の下駄鳴らし、街中から海の方へと向かったのは少し前のこと。
降り注ぐ陽光は心地良いとは言い難いが、それでも賑わい見せる港の空気には好奇心擽られる。
更に言えば、以前よりも多く碇泊する数多の船に、歩みは向いてしまう。
特に目を引いたのは、黒地に人の頭蓋を描いた旗を掲げる船。
あれは何かと首傾げ、見上げるままに近づいて行こう。
カラ、コロ―――。
石造りの桟橋を歩けば、白木の下駄が独特な音を鳴らす。
すれ違う人々の視線を時折攫うも、それに気を取られることはない。
むしろ、船に気を取られすぎている。
向かう先、誰かが居たとて気が付かぬまま、華奢な身体で柔く追突するも十分にあり得る。
歩む先に居るのは、己より随分と体格の良い、貴方だとしても。
■ディエゴ > 風に吹かれていて、少しぼんやりしていたのもあるかもしれない。
ただ、白木の下駄の音が耳に入れば、誰かが近づいてきたのだろうとも気付く。
とはいえ、埠頭の突端部分までわざわざやってくるとは思っていなかっため、敢えて意識を向けなかったところ
「……っとぉ?」
ドン、と背中に感じる衝撃。
とはいえ、体格差、身長差を考えれば、踏みとどまるのは容易いこと。
ぶつかった相手がだれか、何か、どうなったかを確かめるように視線を巡らせれば
「……ァん? こんなところ歩くって感じにはみえねぇお嬢ちゃん、だねェ。
こんな所で何してんだ?」
海を行く男やそれに絡む女として考えれば、まずどの形にも合致しない、どちらかと言えば街中でちょっとした仕事をしている方が似合っている女。
また、どこか浮世離れしているような印象に少し毒気を抜かれたか、そんな問いかけを投げて見せた。
■枢樹雨 > 碇泊するいくつもの船の中でも、殊更立派に見える其れ。
何層もあるのか、赤茶の木目に小窓のようなものが数多並んでいる。
更に見上げてみれば其処に甲板があるのだろう。
しかし妖怪の身長では…、否、人ひとりの身長では、地上から確認することは叶わない。
では霊体となって他者の視認から逃れ、浮いてしまえば見ること叶うか。
そんな思案をする一瞬、不意に何かにぶつかる。
岩ほど硬くはなく、さりとてビクともしない、地に根を張ったような頑強な何か。
幸いにして歩みは遅く、着物故に歩幅は狭い。
後方へ数歩、よろつく程度で済めば、反射的に頭上の白絹が落ちぬようにと左手で押さえ、行く手阻んだ何かへと視線を向けよう。
「……運搬の仕事の帰り、だったのだけれど、…船、立派で、見惚れていた。」
咄嗟に正面見遣れば、見つけたのは人の胸元。
前髪の隙間から覗く蒼の双眸をぱちぱちと瞬かせた後、少し視線を持ち上げる。
其処に在ったのは鳶色の瞳。片方が眼帯に隠れたそれを見つめ、人にぶつかった事実を知る。
降ってくる問いに咄嗟に答えられなかったのは、単純に戸惑いのラグ。
息吹き返したように言葉紡げば、なんとも抑揚なく、淡々とした声音で。
「…ぶつかってごめんなさい。…君は、海の人?潮の香りが強い。」
ひとまず問いに答えれば、少し頭を下げ、よそ見からの衝突という失態への謝罪を。
しかしぶつかったからこそ香った貴方のもつ香り。
すぐ傍らの海のものかもしれないが、スンと鼻鳴らし。
■ディエゴ > この大男にぶつかったという事は、見上げ見惚れていたのは旗艦だろう。
近くに停泊している5隻の中でもひときわ大きく、ひと際高いマストを持つその船。
その主たる男にぶつかって、かけた問いに返ってきた言葉の中、素直な謝罪も混じっていれば、軽く肩をすくめて髪を掻き。
「あァ……そうかい。
そんな華奢な体で運搬の仕事、ねぇ。っても、大きさもサイズもピンキリかァ。
そりゃァ、立派さ。コイツはァ……」
向けてきた言葉に少し気をよくしたか、自らの海賊団に属する5隻の船を指さしながら
「……って、5隻の船のボスだからなァ。
大抵ボスってなァ、見た目は立派にしてるもんだろ?
その実がどうだったとしてもよォ。」
告げて小さく笑いこぼして。
更なる問いには口元のみ大きく笑みに変えて
「あァ、そうさ。お嬢ちゃんは、海賊船の集団の中に飛び込んできた、って訳だ。
で、見事に海賊サンにぶつかっちまった、って訳だ。
まァ、すぐにどうするって訳じゃねェがよォ?
こんなとこで、虫の居所が悪いヤツとやらかしてたら、浚われて、犯されちまってたかもしれねェなァ。」
ま、次からは気を付けな、とおかしげに笑いながら言葉と紡いで。
■枢樹雨 > 「そうだね。私が持って、運べる物だけ。馴染みない土地に赴くついでに、出来る仕事があるのは有難い。」
己よりもよほど、この世の中の"仕事"というものに知識も理解もありそうな様子。
異能使っての運搬であることは語らず、己が船見上げるまま歩て来た方面を振り返る。
馴染みない土地と視線が示すのは、当然港湾都市ダイラスである。
「ボス、とは、頭領のことだよね?君はこの船の所有者?」
どのような形であっても、今の妖怪が持つ知識量では海に浮く乗り物は総じて船。
それでもその大きさの違い、年季の入り具合、どれほど長く人の手が入って来たか、それはわかる。
その結果、殊更気になったものが貴方を長とする旗艦。
さらにはそれに近く碇泊する4隻も指が示すなら、驚きに目を丸くする。
重ねた問いはほぼ確認のそれ。
そして図らずも"何の"ボスであるかを貴方が教えてくれるなら、笑うその顔をじぃ…と見つめ。
「…なるほど。ともすれば飛んで火にいる夏の虫か。
じゃあ、君は虫の居所が悪いわけでもなく、浚い犯す予定も現状はないということだよね。」
貴方の言葉に己の状況を把握するなら、改めて周囲を見渡してみる。
長たる貴方と言葉交わす己を、視界に収める誰かもいるだろうか。
居たとてそれをどうこうするわけでもなく、今更逃げをうつわけでもない。
前髪から覗く双眸は、好奇心を乗せていて。
「海賊とは、海を縄張りとする賊、だよね?…君にお願いをする場合は、対価が必要?
それとも、言ってみれば気紛れで叶えてくれる?」
■ディエゴ > 「あァ、それなら納得だねェ。小回り手回りのものだろうが、持ってこい、って奴ァ、いるからなァ。
自分でとってこい、と言いてェ所だが、そう言っちまっちゃァ、お嬢ちゃんみてェな子の仕事が無くなっちまうかァ。」
まさか目の前の女性が異能持ちとは流石に思わないのでそんな言葉を。
少しピントはずれているかもしれないが、会話自体は成立しているだろう。
程なく向けられる次の質問。
口元だけニヤリと笑みを見せれば
「あァ、そうさ。この船……ってか、指さした5隻とも所有者、って意味なら俺だなァ。
……なかなか図々しいお嬢ちゃんだが、言っちまった以上は、違うとは言えねェなァ。」
確認だけの問いかけ故に、そうだ、と回答した後で、なかなか肝の据わった確認の言葉。
その図太さが少し興に入ったか、そして言質を取られたようなもの故に、それはそうとだけ答えておく。
「あァ、その通りさ。海賊は、海の賊。……何をお願いするか、によるねェ。
大した事ねェ願いなら、聞いてやらんこともねェなァ。
内容によっちゃ、相応の対価を必要とするかもしれねェが、まァ、今日この場に関しては、騙しは無しってことにしといてやるよ。
対価が必要なら、払えば叶えてやるし、払わねェなら、そこまでだ。」
■枢樹雨 > 「人の怠惰が仕事の始まりと、誰かが言っていたよ。
泳ぐことを厭うて、こうも立派な船が出来上がるのも、美味しい酒の為に私でも出来る仕事があることも、
ひいてはどちらも怠惰のおかげだ。」
随分と極論であるが、それを語った誰かすらも妖怪は覚えていない。
大きく乖離生まない会話は存外巧く紡がれ、妖怪の質問攻めへと繋がってしまう。
それでも貴方は丁寧に答えてくれるから、妖怪の好奇心は留まること知らず。
「海賊として、5隻もの船を持っているとういこと?海賊とは凄いんだね。…否、君が凄いのか。
君にぶつかったこと、夏の虫たる私としては、幸運だったと言えそうだよ。」
抑揚のない声音。それでもつらつらと並ぶ言葉はじつは常より多く、妖怪の興奮度合いを示す。
改めて貴方を見上げれば、その顔を、体躯を、服装を、改めてまじまじと見つめる。
遠慮のない視線。しかし害意敵意は欠片もない、何とも純粋な幼子のような不躾さ。
それでいて自然と背筋伸ばし、きっちりと着付けられた異国の衣装纏う佇まいは、異質な品を感じさせるか。
ひとまずは言葉交わすことも、願い伝えることも可能とわかれば、ひとつ頷くことで貴方の言葉を理解した旨伝え。
「君の船に、乗ってみたい。それが私の願いだよ。
…大した事のない願いとは、思っていないからね?」
貴方が騙しは無しと、先に名言してくれるのだから、妖怪もまた何を包み隠すでもなく率直に願いを伝えよう。
少々端的すぎるのはたまに傷かもしれない。船員になりたいと言う意味合いではないのだから。
少し頭傾け鳶色の瞳覗き込めば、もとより気紛れはないこと認識はしていると言葉添えておき。
■ディエゴ > 「ハハハ、それは言いえて妙だねェ。そんな怠惰で儲けようって連中がいるから、俺たち見てェな賊が儲かるんだから、怠惰にゃ感謝しねェとなァ。」
怠惰に他人に流通を任せるからこそ、その士気が低く、油断があり、奪うのが容易くなる。
この男に関していえば、容易くなくとも奪うのだが。
「あァ、海賊もピンキリだねェ。俺みてェに5隻連ねるのもいれば、1隻で海賊ってェのもいる。
ま、船の数で凄いたァ言い切れるもンでもねェんだが、隻数が多ければやりようも増えるわなァ。」
船の数は多いに越したことはないが、多くなくてもやりようはある。
男の様に5隻も持っていれば、役割を付けてより効率的に戦えたりもするのだから。
そして、続いた願い。聞いてしばし、目の前の女を見つめていたが、軽く肩をすくめて苦笑を浮かべ
「お嬢ちゃんよォ、アンタ、言葉が足りねェとは言われねェか?
騙しはねェと言っちまって損したって感じたのは久しぶりだねェ。
……船に乗ってみたい、ってなァ、このまま上に上がって上から景色をちょっとだけ見てみたい、って意味かァ?
それなら、ロハでいい。
この船は、向こう3日は停泊中だ。その内、今から一日船の上の生活を経験させてくれ、ってんなら、
お嬢ちゃんに一晩付き合ってもらう。……もちろん、無制限の色事付きだが、代わりに海賊流のメシと酒くれェは面倒見てやる。
この船が動いて、次の寄港地まで乗せてくれ、ってんなら、そうさなァ……一番下っ端の船乗り扱いで、到着まで働いてもらおうか。
……女が海賊の下っ端、ってこたァ、女の身では少々辛いことになるかもしれねェがね。」
率直に告げてくるから、そして事前に騙さない、と言ってしまった以上、乗せて襲って売り払うのも難しかろう。
そして、乗って何をするのかが見えてこないので、男の方から案を三つ出した。
対価無し、ちょっとした対価あり、相当の対価あり、と。
■枢樹雨 > 「その言い草だと私は賊に搾取される側だよ?それは困る。」
怠惰を喰らうなりのリスク。
其処をしっかり釘刺されたような状況に、前髪に隠れた眉でハの字を描く。
そもそも人ならざる力での移動に他者が関与してくることはまずないのだから、どこか他人事のような言いぶりではあるが。
「でも、船を買うだけの利を得ているのだよね?自分たちで造ったにしても、どちらも私からすれば凄い事だよ。
船の戦は見たことがないけれど、落とすべき城が5個あると思うとなかなかに大変そうだ。」
歩や馬での戦は見飽きるほどに眺めてきたけれど、船となれば話は180度変わる。
一度だって見たことのないそれを想像してみるも、実際のそれとは雲泥の差なのだろう。
……と、いざ願い伝えてみれば、なんだか芳しくない笑み浮かべる貴方。
やはり難しかと、対価の思案を始めようとした矢先、何故か図星の指摘をしてくるのだから、驚きに目を丸くし。
「え…、」
何故わかるのか。前髪から覗く仄暗い蒼が無言で問うも、続く丁寧な提案を聴けば自ずと理由も知れる。
若干気まずいのか、貴方の喉元や胸元に少し視線がずれるも、結局は本来持つ気質故に真っ直ぐに瞳見遣り、
じつに大人しく、言葉挟むことなく最後まで聞き終えて。
「損した分を取り返したいけれど、料理も掃除も洗濯も見様見真似でしかできないからおすすめできそうもないよ。
……今から船に上がって、甲板と、船内とを、見せてほしい。
こんなにも大きな船、初めて見た。外から眺めるだけじゃ、とても満足できない。
もっと多くを見て、触れて、知りたい。
船員体験も少し気になるが、ひとまずは君の船を教えてほしい。」
汚名返上を願うも自ら諦め、まずは己の願いに言葉を付けたそう。
そしてその意思も添えるなら、好奇に染まる双眸で見上げ。
「船内分は、曲をひとつ演奏するくらいで付け足してもらえる?」
■ディエゴ > 「お嬢ちゃんの依頼主も怠惰、お嬢ちゃんも怠惰なら、そうだろうなァ。それが嫌なら、お嬢ちゃんは少しでも勤勉であれ、ってコトだ。
運ぶ側が勤勉に警戒してりゃァ、確率は下がる。まァ、下がるだけで運が悪けりゃ襲われるんだがねェ。」
表情が困ったように変化する雰囲気を察すれば、おかしげに笑う声交じりにちょっとしたアドバイス。
とはいえ、海の上ではどんなに警戒しても、熟練の海賊からは逃れられないのだが。
それだけの利益の話には意味深に笑う。自分の儲けを開示するつもりはないのだ。
とて、否定もせぬが故、女の考えは正しい、と察することは容易かろう。
そして、しばしの間の中で陰る表情。続いた指摘に丸くなる目。
表情の変化を楽しみつつも、こっちから持ち出した3条件で、まずは1つめを取った様子。
「あァ、損した分はいいさ。お嬢ちゃんみてェな上玉を、捕まえて売り払うチャンスをみすみす逃してもったいねェなァとおもっただけさね。
ま、その辺はさっきの困りっぷりの表情で相殺してやる。美人に生まれて良かったなァ?」
軽口めかして告げた言葉。その上で表情戻し、笑みではあるが要注意とも思えるような表情に。
「んじゃ、ロハの範囲だねェ……あァ、ロハでもよかったんだが、お嬢ちゃんからそう言ってもらえるなら、酒を飲む前で一曲やってもらおうか。
じゃ、上がるぞ。」
そう言葉を告げれば、女の背中、歩くように促すように軽く触れ、ダイラスの港故に常設してあるタラップを登っていく。
それなりに急な階段を一通り登っていけば、程なく到達するのは広々とした甲板の上。
高いマストが船から生えているように見え、舵輪や船内への入り口と扉。
船首楼やその他、船の設備も色々と。ただ、今は人気は全くなく、広々とした空間に見えるだろう。
「はしゃぎすぎて海へと飛び込まねェなら、俺の見える範囲で好きに歩いて良いぜェ。
設備に触れてェなら、逐一許可を取ってくれ。」
■枢樹雨 > 「勤勉に、警戒…。勤勉に本を読むほうが、良い。」
初めて聞く単語の組み合わせ。思わず反芻してしまうのは、己の好奇心と警戒が直線で結ばれぬが故。
気になる本を読みながら歩いた方がマシ、とでも言いたげに小さく呟くも、妖怪にとっては良いきっかけになるだろう。
仕事を阻害されて嬉しいわけではないのだから。
「……売り払うのは、駄目。気持ち良いことは好きだけれど、拘束されるのは嫌。」
利回りに関しては、丁寧に説明はもらえないらしい。
とはいえ財を求めぬ妖怪には、追及を必要としない事柄。
ただ素直に、貴方が5隻の船に見合う努力の時間と実力を持っていること認識し、その実力者に売り飛ばされる危険孕んで
いた事実に半歩後退り、顎を引いて視線を強める。睨んでいる、心算。
美人のきつい睨みとなるか、無謀な女の睨みとなるかは、貴方次第で。
「ありがとう、…ボス?酒を一杯分けてくれたら、一曲が二曲になるよ。」
そうこうして願い叶えられることとなれば、笑みこそ浮かばぬが、仄暗い蒼の双眸が煌めいている。
感謝に添えようとした貴方の名は妖怪の中になく、唯一知る貴方を表現するにふさわしい名称そえれば、貴方に背を押されるようにして歩き出す。
ちゃっかりと酒も貰おうとし乍らに、下駄を鳴らしてタラップを登る。
そうして辿り着いた広い甲板。地上からでは見えなかった景色に目を見張り、今見渡せるすべてに視線を巡らせ。
視界の中での自由許されるなら、すぐさま小走りに船首の方へと移動していく。
小走りと言っても狭い歩幅。貴方の大股の歩みであればすぐに追いつけそうな移動速度。
可能な限り、看板と呼べる床面があるぎりぎりまで移動し立ち止まれば、しばしそこからの景色を無言で眺め、頬撫でる潮風に頭上の白絹を揺らす。
「……そうだ。船はどうやって動かすの?」
不意に振り返る妖怪。貴方が声届く範囲に居るならば、若干上擦る声で問いかけ。
■ディエゴ > 「……ほぅ?拘束されないなら、セックスするのはいいってことか?」
売り払うの軽口に返ってきた返事。流石に一瞬言葉に詰まり、その上で好奇心めいた視線で向ける問い。
あまり普通の反応ではないため面食らったのもあるのだろう。
睨んでいる表情も、種明かしした後では、男にとっては可愛い仕草の一環にしかならぬ。
実際に売り払うなら、もう既に行っているのだから。
「……さっき言っただろう?酒を出すなら、一晩付き合え。その一晩の中には、一杯と言わず酒もつまみもくれてやるさァ。
代わりに、二人で気持ちよくなるために、その体を差し出してもらうってだけだ。
……あぁ、下で言ったことだから、ここはひっくりかえさねェ。安心しな。」
さっき売り払うという話をしたから警戒したか?と小さく笑い、そこに関しては改めて請け負った。
もちろん、信用するかしないかは女次第。
甲板の上、視界の中で動き回る女を楽し気に見やりつつ、その背を歩いて追いかけて。
その中で、向けられた問いかけ。口元笑みをはかせてから
「船は、なァ。何人も人がいて初めて浮かぶんだが……まァ、いいやァ。
ちィと、真似だけ見せてやるかァ。」
女にそんな言葉を向けてから、一度、後ろの船に向けて特徴的なリズムの指笛を鳴らす。
それは、訓練符丁の指笛で、これから起こることを気にするな、という合図だが、団員ではない女には詮無き事か。
その後で、舵輪の前まで歩いていけば、すぅっ……と大きく息を吸い。
「野郎ども!錨を揚げろォッ!!……面舵、30ゥッ!ヨーソローッ!」
声を上げながら、視線と腕で何が起こるかを指し示す。
まず、事前に帆は張られている状態に。
次に『錨を揚げろ』で、右後部で落としてある錨を揚げる。
最後に『面舵30』で、舵輪を30度右に回して、右側、陸の無い方へと曲げながら進む、ということを。
「……ってな感じでよォ、何人もが連携して、一個の船を動かすわけ、だ。」
わかったかい?と笑みすら浮かべて付け加え。
■枢樹雨 > 「うん?良いよ?触れる体温は心地良いし、他者の味を知るのも楽しい。君は気持ち良いこと、嫌い?」
一瞬の警戒は見せたものの、願い叶うと知ればそれも海の泡となって消えていた。
うっかり落ちぬよう、ゆっくりとタラップ登り乍らに答える声音は、至極当然と言った様子。
何かおかしい事でも言っただろうかと、おかしいとするなら貴方は気持ち良いこと…性交を好まぬのかと首傾げ。
「む…、酒は高いね。まあ、酒だから当然か。じゃあ、今宵は君の傍らに居させてもらって良い?
気持ち良いことが嫌いなら、まあなにか出来ることを探すよ。ただまずい酒だったら二杯目はないからこの話も無い。」
勢いで二杯目の酒も確約貰えるかと思ったが、そこはきっちり弾かれる。
とはいえ酒好きの妖怪。かつ他者との交わりに現状嫌悪を欠片も持たず、気持ち良いことと認識する妖怪。
唯一気がかりなのは、身体重ねるとなれば必然的に頭の鬼角を晒すことになるという事実。
伺うように貴方の片目を見つめ乍らに答えると、あとはもう、意識の大半を貴方の船へと持っていかれて。
「…?」
心地良い潮風。上空から見下ろすのとも、地上から見渡すのとも、まったく違った潮香る景色。
僅かに身を乗り出してしまえば、自然と触れる船造る素材。
木製のそれは、木造建築を主とする生まれた国を思い起こさせ、不思議となつかしさを感じさせる。
掌で木目を撫で、景色に次いでそれを見遣り、紫檀だろうかと思考巡らせ、その先に辿り着いた船の操舵方法。
こんなにも大きなものがどうやって動くのか。帆が風受けて動力となるくらいはわかっても、風任せでは方角は定まらぬから。
そうして聞いてみれば、何やら笛鳴らす貴方。
意図がわからずぱちぱちと瞬くと、移動する貴方を小走りで追いかける。
次の瞬間、鼓膜震わせる貴方の声が今般上に響き渡る。
まるで声が増幅されたかのような張りと、通りの良さとに、反射的にビクッと肩跳ねさせてしまえば、目を丸くするままに貴方を見つめ。
「………吃驚、した。世界が震えたかと思った。」
まだ、貴方の声の余韻が鼓膜を震わせているような感覚。
わかったかと、問いかける声にワンテンポ遅れて頷けば、貴方の傍らまで歩み進め。
「これ、触って良い?」
こと示すは、勿論舵輪のこと。
■ディエゴ > 「あァ……うん、俺が言う事じゃァねェが、お前さん、美人なんだからもう少し売り渋ってもいいんじゃねェかなってよォ。
いや、俺みてェなエロ好きなら、寧ろ大歓迎なんだがよォ。」
目の前の美人が、さも当然というかのようにセックスを許容するものだから、本来悪辣の海賊キャプテンの方が少し遠慮する始末。
でも、据え膳を食わない程聖人でもない。
「あァ、それでかまわねェさァ。でも、その条件なら、間違いなくお前さんは、今夜俺と気持ちよくなってるさァ。
何せ、キャプテン秘蔵の熟成ラム酒が出てくるから、なァ。美人相手に出し惜しみはしねェよ。」
その気になれば、海の怪異でも女ならば喰ってしまうほどの性豪だ。
ちょっとした角程度でひるむようなタマでもなく。
訓練めかした、出航のリハーサルを見せた後、船の奥底までをも通す船長の大音声は、女の耳にもちと強かったか。
その反応を可笑しげに笑って見せてから
「あァ、かまわねェよ。ただ、回らないから無理には回すなよ?」
錨が降りていれば、舵輪はロックされている。
だから先ほども回すふりだった。そこだけは念を押して、好きに触れと頷いた。
■枢樹雨 > 「…だって、触れ合う身体があってこその、ことだよ?身体がなければ、心地良さも気持ち良さもわからないのに。
まあでも、他にしたい事がある時は交わりたくない。今も、嫌。この船を放って他者と交わる気にはならないよ。」
図らずも海賊団の頭領を遠慮させてしまうも、当人は売り渋ると言う判断こそ謎だと言わんばかりに首傾ぐ。
それは人の一生よりも長い時間を、肉体なく過ごしたが故の言葉。
知らぬ貴方には不可思議なことを言っているようにしか聞こえないかもしれない。
ただ続く言葉は明確かつ単純。己の好奇心の邪魔は許さないと、じつにマイペースに甲板に立ち。
「秘蔵。熟成。ラム酒。…惜しまないと、その言葉信じるよ。裏切ったらこの顔が美しくないと言うことになるからね。」
思わず単語ひとつひとつを嚙みしめるように繰り返してしまう。
獣の尻尾を持っていたなら、わかり易く持ち上がってゆらゆら揺れているような状況。
自らの顔の美醜を担保にでもするように応えては、後に控えることとなった良い酒に機嫌も殊更上向くと言うもの。
鼓膜震わす余韻が落ち着いて行けば、貴方の許可を得て舵輪へと両手伸ばし。
「え、………そう。そうだよね。」
一瞬、時が止まる。回す気満々だったのだろう。
無表情が貴方を見上げ沈黙し、心なしかしょげた様子で円描く舵輪に両手を添える。
さりげなく左に回そうと試みるも、当然動きはしない。非力な腕に、ロックをぶち壊すことも当然不可能。
とはいえ舵輪に触れ、見渡す景色もまた良いもの。
しょげた気配はすぐ消え去り。
「なんだか君に成り代わってボスにでもなった気分だ。
これを回すと、帆が動く?それとも違うものが動く?」
■ディエゴ > 色々不思議な物言いが多いことは流石にここまで会話を重ねていれば気が付いて。
故に、多分普通の人間はなく、妖精か何かの類なのだろうという理解になった。
ならば、人の尺度で計っていても仕方がない、と思い直して。
「あァ、そういう事なら気にするな。楽しい、気持ちいい、に勝るものは、ねェやなァ。」
そこの感覚は海賊向きだが、好奇心を擽られている限りは別ごとを拒否する、となればやっぱり向かない。
どちらにせよ、浮世離れしていて最初に少し毒気を抜かれているが故、目の前の女を海賊に堕鳥栖つもりもないのだが。
「あァ。試してみた後の、お前さんの表情が今から楽しみさなァ。」
クックッと喉奥で笑いをこぼして見せる。
この答えは、船をひとしきり、高資金が満たされるまで見せつくした後に知れることだろう。
舵輪に手を伸ばした後の反応で、あァ、回すつもりだったな?と理解するが、そこまで。
それ以上は敢えて言わない。実際に無理に回して壊そうとするのではないなら、気にするべくもない。
少ししょげる様子に片眉あげるも、気分が変わったか、すぐに気配が戻れば少しだけ安堵した様子。
「あァ、それを回すと、船の後ろ、海の中にある舵が動くのさァ。だから、結構な力がいる。
少しでも動いてねェと、ロックを外しても動かすのは難しいし、無理に回せば、一発で壊れる。
舵が壊れると、直すのも一苦労でなァ。」
■枢樹雨 > 嚙み合わない、尺度の合わない言動に頓着しなければ、存外スムーズに進む妖怪との会話。
貴方が気持ち良いことを好まないわけではないと知れれば、妖怪も躊躇いなく、遠慮なく、貴方の酒に口をつけるだろう。
そして日が沈むまで、この船を好きに見て回って良いことが確定し、次は何処を見ようかと気持ちは逸るばかりで。
「なるほど。帆で風受けつつ、行く先はその舵が導くのか。
でも此処から海中にあるものを動かすなんて…、ものすごいカラクリだね。それとも魔導機械というもの?」
他の船と比べてみても、殊更に大きく感じるこの旗艦。
海中と言って単純に真下を見下ろしてみれば、つい数十分前に地上から見上げた景色を思い出し、その距離感に驚きを見せる。
魔力流れている気配を感じられず、自然と大工の仕事へと繋げ驚くも、魔法の可能性も捨てきれなければそれも聞いてしまおう。
「次はあの太い柱に触れたい。叶うなら上に登ってみたいけれど、…それは駄目?
無理ならそろそろ船内を見せてもらいたいかな。」
貴方の答えを待ち、次いで指で示したのは帆を張るマスト。
存在感あるそれを登りたくなる思考はいささか動物的だが、どちらかというと高い場所からの景色より、帆に触れたい意識が強い。
すっかり警戒も忘れて強請っては、舵輪の曲線を楽しむよう、白魚のような手を何度となく滑らせ。
■ディエゴ > 「いいや、魔道機械じゃねェんだなァ。これが、普通に物理機構だ。よくもまァ、考えたもんだよなァ?」
こればかりは海賊団長も、理屈は分かっていても凄いものだと思っている。
そのあたりは、共感されるかどうかはともかくとして、凄いよな、と共感を計ってみて。
「あァ、マストなァ。触るのは全く問題ない。昇るのは……命綱を付けるなら、いいさァ。でも、登れなくなった、ってエンコすんなよォ?」
何となく、問題なく登れそうな気はするが、念のため付け加えたひと言。
その後、連れ立ってメインマスト、一番高いマストまで連れて行き、気が済むまで触れさせて、その後、メインマストの上と滑車で繋がっている命綱を彼女の腰に括りつけ、昇りたいだけ登らせる。
どちらにしても、一晩付き合うことになっているのだから、ゆっくり見せて何の問題もないのだから。
■ディエゴ > 【継続】
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からディエゴさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」から枢樹雨さんが去りました。