2025/07/12 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 晴れた空から降り注ぐ陽光を波がキラキラとはじき返し、海の上が地上よりも明るく見える晴れた夏の日。
船着き場は着岸した客船から降りるものとまた乗り込むものと、それを迎えたり見送ったりするものと
それら行きかう人々を相手にする露天の売り子の掛け声とで姦しい。
そこから少し離れた、主に貨物船が係留される辺り。空の木箱が詰まれた場所は人通りの多い所と比べて手入れをされた跡も少なく、傍まで逞しく生い茂った木々が枝を差しかけている。
そんな涼しく快適そうで実際快適な場所を、船着き場を根城にする猫たちが占領しないわけがない。
三毛に白の長毛に青黒い毛に、いろんな種類の猫が思い思いに寝そべっている―――というより、奇天烈な恰好で伸びているなか。

「啊ー もう動くなッてば」

真ん中に、女がどっかり胡坐をかいている。
猫たちは多少女が邪魔そうであるが、そうする気力もないのか女を倦厭するような気配はない。
その当の女がやっているのは

「哎呀(うわー)ー すッごい取れた。
アンタよく我慢できてたね」

猫のブラッシングである。
自分の膝上に伸びた猫の腹あたりやら背中やら四肢の辺りやら、一見ぞんざいな手つきでかしかしとブラシを動かしている。自分のズボンが毛まみれになるのはおかまいなしだ。

ホアジャオ > 取れた毛束はぽいと近くの麻袋に放り込む。以前、風で飛んで行った毛束のことで露天商から苦情があったのである。あと意外と売れる。

「ハイ、おわり。
 ン――――― 次アンタね」

ひととおり、自分が満足するまで(あるいは猫が逃げ出すまで)ブラシをかけると、女は手近で伸びている猫を拾い上げて膝の上に載せる。拾う時、猫の身体が想像以上に伸びるのがいつも面白くてけらっと笑い声が上がる。

「さってっと―――」

今日のバイトは日暮れ以降である。気が済むまで辺りの猫をブラシしたら、女自身もここで寝転がって昼寝にいそしむつもりだ。ここで寝ると潮風のせいであとからべたべたするが、止められない事のひとつである。

夜までしばらく貨物船が来る予定もないのだろう。日暮れまで、小さな猫の王国が脅かされることは無く
穏やかな波音に満たされた平和な時間が過ぎていく―――

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からホアジャオさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にラッツィオさんが現れました。
ラッツィオ > 男は塒である倉庫を出て、船着き場近くの酒場が並ぶ通りにやってきた。
船が寄港した直後は気性の荒そうな船員たちで溢れ返っているが、慣れたものである。
磯と汗の香りが入り交じる船員たちの間を抜けて、空いているカウンターの椅子に腰掛けた。

「――今夜は強い酒はあらかたなくなってそうだな。
酒として飲めるなら何でもいい、適当にくれ」

通過してきたテーブルには酒の空き瓶が針の筵のように並んでおり、店の在庫が尽きないか危ぶむほど。
幸い、まだ在庫は尽きていないようであり。
声をかけられたマスターはひとつ頷くと、男の前に酒瓶を置き、呼ばれたテーブルのほうへすぐに歩き去っていった。