2025/06/30 のログ
■グライド > 「同感だ。 何なら、温泉にでもゆっくり浸かりたい所だが…。
流石に、此処じゃあ贅沢が過ぎるか。」
九頭竜山地に在る温泉が、今此処に在ったならどんなに良いだろうにと
そんな与太話を言いながら笑い飛ばせば、肩を竦める。
温泉の湯を、こんな所まで運んで来れるとしたら、余程の金持ちの道楽だろう
有り得ない、とまでは言わないが、己の様な傭兵が利用出来そうにはない。
風が止まると、肌に張り付く様な熱さが増す
金属鎧の己としては、風で涼んで居た所も在るから、眉根を寄せた。
「ん? 嗚呼、気を付けろよ。
この辺りも、最近碌な治安じゃ無いって話だからよ。
まぁ、嬢ちゃんなら、大抵の事は大丈夫だろうが。」
相手が先に行くと言うならば、別段追う理由は無い。
理由は無い、が――向かう方向其の物は一緒だ、歩みを速めた所で、きっと其の背は見えて居るだろう。
金属鎧の、独特な足音が微かに響く。 ――その音が次第、遠のいて、そして消えて仕舞うかは
女の、歩み次第、か。
■ジーラ > 「温泉か。この辺りじゃ聞いたことないな。
でもハイブラゼールのお高い宿に今回の稼ぎをつぎ込めば――…入れるんじゃない?」
歓楽街まで出向けば或いは、温泉を運んでいる高級宿もあるやもと適当に告げながら、思う。
夫が帰ってきたら九頭竜の温泉に誘うのもいいかも知れない、と。
旅館でしっぽりと二人きりで寛げたらどんなに癒やされることか。
甘い蜜のような時間までもが僅かな夢想に交わればこそ、男の引き連れた匂いは、一層鮮明に嗅ぎ取れた。
鎧の内側に溜められた濃く、酩酊を誘うような野性味のある体臭の、距離に希釈された僅かなそれ。
戦場では全く考えもしなかったものが、頭の片隅を過れば、女はかぶりを振り。
「御心配どうも。
風呂に浸かるまでが遠足だからね。せいぜい気を抜かないようにするよ。」
そう告げれば、女は少しだけ歩調を早め、大股で歩いた。
背後に男は歩むのだろう、が。会話を打ち切る意図を知らしめるように遠離る。
向かう先、宿が同じか、それとも道が何処かで違えるのか。今はまだ解らないが。
少なくとも、女が男に覚えた劣情は、男に開示される事無く済んだには違いなく――。
■グライド > 「……其処まで豪遊する気にゃなれねぇな…。
なら、日を改めて温泉まで登る方が、よっぽど安上がりで良い気分になれるさ。」
恐らく今回の稼ぎの大半が消し飛ぶんじゃなかろうか、と
渋い表情浮かべて応えれば、ゆるりと首を振って、其の案を却下した。
九頭竜山脈の良い所は、然程出費が嵩まない事だ。
代わりに、何せアスピダ界隈の治安の悪さが在るから、少々危険だと言う位
――女が歩みを速めれば、己は其の背を見送るのみ。
内心で、相手が何を潜ませて居たかを悟れるほど人間を辞めてはいない
其の儘、暗闇に姿が消えて仕舞えば、きっと
女が秘めて居た物を、己が知る事が、終ぞ無いのだろう。
あとは、きっと、たとえ同じ宿であったとて、一度部屋に入って仕舞えば、其処から出て来る事の無い男が
女とすれ違う機会は、少なくとも今宵は、無かったのではないだろうか――
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジーラさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からグライドさんが去りました。