2025/11/23 のログ
アルジェント > 夜、昏い海を照らす灯の許に足を運ぶ。
冬の海風に、鈍色の髪が流れて夜に融ける。

黒基調の衣服をまとっているからか、浮かび上がるのは肌の白。それと眸の金が、影の中で昏く光る。

鼻を麻痺させるような潮の香りに目を細めながらも、それを本気で厭うわけではない。
あとで身繕いはしたくなるかもなあ、と纏わりつく風がそのうち毛並みをべたつかせることを理解してるが故の思考を巡らせながら。

軽く首を左右に振れば、こきりと関節が軋む音。
ぐう、と背筋を逸らすように腕を伸ばして、脱力した。

「はー、冬の港で荷運びとかやってらんね」

本日の実入りは酒瓶一本に化けた。
誰にでもできる仕事っていうのは実入りがしょっぱいっていうのは実情ではあるが。
それにしたって足許見てるよなあ、とそれなりに度数強めの酒瓶を揺らしつつ。

己は人間の食事をさほど重要とも思わないし。
それこそ森で獣を狩れば済む話。

灯台元の固められた足場に腰を下ろして。
瓶の口を切る。
そのまま呷れば、喉を通った後に甘ったるく灼ける味わいがせり上がる。
甘く芳醇な香りは、普段足を運ぶ酒場では望むべくもない味わいだが
女に言わせると「やっぱ高ぇ」に落ち着くのだった。

ぶら、ぶら 分厚い靴底のブーツの足元を揺らしながら。

醒めた冬の空気に身を晒しつつの一人酒。

アルジェント > たぷ、と瓶の中身が揺れる。
半ば以上を干して、は、とこぼす吐息。

まだそれらが白くなるのは少し先だろうが、冷える毛並みと、内側にともる熱に細めた眸。

一挙動で身を起こすと、その体は鈍く光を反射する蒼鈍色の体毛をした狼へ変わっていたのかもしれない。
それらはすべて闇に紛れ、人の目に映ることはなかったが、大型の獣が路地裏を駆け、そのまま街の外へと去っていった。

ご案内:「セレネルの海 灯台」からアルジェントさんが去りました。