2025/08/24 のログ
ご案内:「セレネルの海」にプラムさんが現れました。
プラム > ダイラスから少し南に下り、道なりに進むと年月により読み取れない程文字が薄れた看板が立てられた分かれ道に出る。
そこを海の方向に逸れ、洞窟を抜けた先にある小ぢんまりとした海岸。
未だ足を踏み入れた者は多くなさそうな其処に、プラムは足を運ぶ。

「………ふぅ」

波が寄せては返す音。鼻をつく磯の香は心落ち着かせるようで、柔らかく息を吐いた。

先日、貨物船に乗っていた際たまたま沖の方から見つけた場所。
別に隠れ家的スポットというわけでもなさそうだが、幸いにして此処を観光地として活用しそうな輩には見つかっていないようだ。

まぁ──大衆に開くには小さすぎるから、なのかもしれないが。

「よ、いしょ」

どしっ、と。砂の上へ直に腰を下ろし、ブーツを脱いで素足になる。
月の光の下、どこまでも続くかのような水平線。暗い水面を眺めながら、次に航海へ出る日はいつだったか。
頭の中で日程を確認し始める。その姿は割合、いつになく無防備だ。

ご案内:「セレネルの海」にアデルリリーさんが現れました。
アデルリリー > その磯の匂いに混じって、微かに百合の花の匂い。崖の上にでも生えているのだろうか、とも思ったがさらにかたり、となにかが動く音がした。人の気配だ。

こういう誰にも知られていない波打ち際には大抵、流木などが流れ着いているもので小さな浜辺の端には嵐にあった船からでも落ちたのか朽ちた木箱だか、小舟だかもわからない大きな木材の残骸が静かに横たわっていたのだがその影から。

人の手があまり入っていない、それに洞窟があるということは……動物それとかわらない低級な魔族などが住み着いている可能性もあるし、海の近くなのだ。だれもよりつかない静かな入江だと思えば、そこは地元では海魔の産卵場所なので誰も近づかない場所だった、などという笑い話や警句は船乗りの間には時折存在するのだからさすがに警戒ぐらいはするだろうが――

「もし――」

その木材の残骸の影から現れたのは、散策には不釣り合い。王都高級サロンのダンスホールにいれば引く手あまたであろう少女だった。

「……地元の方? でしたら申し訳ございません。あなたの秘密の場所に闖入してしまったかしらね」

アデルリリー・レグナムは『敵』の多い立場である。時には王都ではできない密談をすることもあり、この近くの村で協力者と落ち合う手筈であったが。やや迂闊だった。協力者は殺され、代わりに待ち伏せていた刺客に追われる羽目になったのだ。妖精の外套とも呼ばれる姿を消す術でそれらをどうにか一時的に振り切ったものの、この格好では目立ちすぎるし素早く移動するのには向かない。馬車を探すか。いや、街道に出るのはだめだ――奴らはまず街道を塞ぐだろう。

……という折に、偶然見つけたのがこの場所であった。ということはあなたには話さない。なぜならそれを知らせたところでマイナスにしか働かないからだ。本来なら相手が居なくなるまで隠れていたかったが不注意にも音を立ててしまった以上――不用意に警戒させるよりは偶然ここに至ったきまぐれな貴族の少女を演じるほうがいいだろう、という判断。

プラム > 磯に混じって鼻先を擽る花の香は、色々と思案していたプラムの意識を現実に引き戻す。
低級の魔族であればもう少し鼻につく。
船乗りゆえ、あることないこと様々な噂は聞こえてくるものだ。せいぜいが話半分に聞くような眉唾物だが…

辺りを見渡す。
流れ着いて朽ちた木箱、変わり果てた小舟の残骸──その陰から現れた、この場に相応しくもない服装の少女に視線が向く。

「生憎と、アタシは地元の者じゃないぜ。偶々この場所を見つけてふらっと迷い込んだようなもんだ。
 ……魔族じゃないようだが、こんなところで何してんだい」

ダイラスの者──だろうか。パッと見では、王都の富裕地区でぬくぬく暮らしていそうではあるが…
この近くに用向きでもあったのだろうか。王都から遥々…?
様々な想像が頭の中を駆け巡るも、当然答えなんて出やしないから怪訝そうに相手を見つめるだけだ。

アデルリリー > 「あら、ではこの『偶然』の出会いに感謝しませんと。わたしとあなた、二人のきまぐれが星の数ほどもいる民草の中から私達を二人をこの星空にしたに導いたのですから」

唇に人差し指を当てて微笑む。敵ではない、安心して良いと相手に名乗るように。そうして、隠れていた際にドレスに付いた砂をさっと腕を振って、魔術を発動させて落とす。魔術が使えるので何かあれば迎撃程度はできるぞ、と暗に相手に知らせるため。

「――ダイラス。煌めかしい賭博の島。平民にとっては夢と悪夢の島かもしれませんが、私にとっては小金のやりとりなどもはや面白くもなんともなりませんので、こうして夜風を浴びている方が楽しくて」

ダイラスから抜け出してきた気まぐれな貴族。そう思わせるのが一番手っ取り早いだろうか。嘘は相手を騙せればいい。微に入り細を穿つ必要はなく、最低限ダイラスから抜け出してきたと相手が判断すれば良い。

「……あなたもそういう類――暇を持て余しているのならうれしいのだけれど。一夜の友ができそうですもの」

プラム > 「お……おう」

敵ではない、ということはわかった。普段船上の荒くれ共を相手にしている身からすると、彼女の言い回しは少々肩が凝ってしまう。
ゆえに何とも微妙な表情となりつつ、とはいえドレスについた砂を払う際の魔法は見逃さなかった。
魔術が使える様子。見た目より腕は立つのかもしれない。

「──ってことはあんた、ダイラスの人間ってことか。ま、賭け事も楽しいっちゃ楽しいんだけどよ…」

夢やら悪夢やら、大仰な言い方を口にするつもりは無いが、まぁ一般のイメージとしては大体そんなものなのだろう。
船着き場で降りたついで、ハイブラゼールでちょっと遊んだりもした。
楽しいといえばそうだが、やはり自分は海の上で自由気ままにいた方が性に合う。

「一夜の友にされるのはやぶさかじゃねぇが、話が合うかどうかは未知数だな。アタシはもっぱら海の上にいるもんだから」

アデルリリー > 「ふうん。民草の考えることはわからないわね。といってもこれは傲慢な物言いなのは自覚しているわ。だって普通の人たちはお金が私達ほどないのでしょう? 可哀想。南方産のワインの味もシェンヤンの絹の手触りだって知らないということでしょう?」

ふふ、と尊大な笑みをこぼして残骸の上に腰掛けた。

「賊かと思って隠れていたけれど、お尻が鉄になってしまいそうだったわ。こんな粗末な椅子でもあなたの『海』での冒険譚を聞くには十分以上。オペラホールの座席に早変わりしてしまう」

そう言って、上目遣いに物欲しげに言うのだ。

「あなたの冒険譚を聞かせてほしいわ。タフな船乗りさん。海賊とやりあって、時に大海魔の腕を切り落とし、時に白鯨を仕留めるのでしょう? とっても面白いお話のはず」