2025/06/02 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にアセナさんが現れました。
アセナ >  
己(オレ)は色々あってこの戦場にいる。
傭兵稼業の腰掛けのつもりだったが。
想定外に実入りが良かったので長居してしまった。

夜。野外。森のすぐ近く。
部隊の上官に己は今。
叱責を受けている。

スパイ容疑の女性を逃がした、内通の疑いがどうとか。
その辺らしい。

上官 >  
ヒゲを撫で付けるように触りながら、新人に詰問する。

「何故、あの女を逃がした……?」

アセナ >  
背中に手をつけて見事な立ち姿を見せる。
こんなことばかり上達しても魔狼の末裔としてはちっとも嬉しくない。

「……話を聞いたらスパイではないようだったので?」
「無罪の者を捕らえるのは騎士のやることではないと判断しました」

「ひょっとしてまずかったですか」

上官 >  
アセナの右頬を殴打する。

「お前は騎士じゃないだろ!! 騎士は俺だ!!」
「そして上の者に返答する時はハイからだ!! 教えただろう!!」

アセナ >  
痛い。ぶん殴るな。返事をした直後に……
これだからヒューマンのやることは野蛮だ。

「はい、騎士殿! 気をつけます!」
「しかし、女性は近隣の村から拐かされたと証言しており」
「不審な点はありませんでした!!」

上官 >  
殴打。二回。

「それを判断するのはお前ではない! 独断で勝手な真似をするな!!」

アセナ >  
痛い。二回も殴るな。一回でわかる。
いや犬ではないから言葉で伝えてくれれば理解するが…?

「はい、申し訳ありませんでした、騎士殿!」

上官 >  
「お前は立場を理解する必要がある!!」
「これから矯正を行う、返事はどうした!!」

男を殴ってもなにも嬉しくはない。
だがお楽しみを邪魔された以上、腹立たしくてやってられない。

アセナ >  
なるほど……ここではい、と答えさせるための。
さっきまでのやり取りだったわけか。
完全に理解したぞヒューマンめ。

だが己は賢い。ゆえにこんな引っ掛けにはかからん。

「はい! 殴られたくありません!!」

完璧な回答だ。
鼻白む騎士殿の姿が想像できるかのようだ。

上官 >  
殴打。三回。

「お前は馬鹿者だ!! 大馬鹿者だ!!」

顔を真っ赤にして拳を固める。
こいつはわからせないとだめだ。

アセナ >  
なん……だと…
引っ掛け問題ではなかったのか。
三回連続の殴打で鼻血が出た。

くそっ上司と部下の関係でここまでする必要があるのか!?

「ハイ! 痛いです、騎士殿!! 鼻血も出ております!!」

ムカつく上司だ……己が魔狼の姿であったなら一噛みで地獄に送ってやるものを…
(そうなると可愛い姿を周囲にからかわれる可能性があるが)

上官 >  
「見ればわかる!!」

「第一な……お前が逃がした娘がスパイでないことくらいお前以外全員わかっとる」
「あの女は夜のお楽しみのために攫わせた娘だ!!」

「わかってないのは貴様だけだ大馬鹿者!!」

アセナ >  
あれこれちょっと話違うだろ!!
騎士は高潔なものじゃなかったのか!?
今まで読んだ本に出てくる騎士像とだいぶ違うぞ!?

「はい、わかりました騎士殿!!」

「あなたはクソ野郎であります!!」

正直な感想を伝えた。

上官 >  
殴打。四回。

「どうやら死なななきゃわからんらしいな……」

大剣を抜いた。
こいつはここで死んだほうがいい。
バカに部隊でうろつかれると士気に関わる。

アセナ >  
だから痛いんだよ!! 男に殴られて悦ぶ趣味はない!!
相当おかんむりのようだ。
この職場もここまでか……

「悪いが……上司と部下の関係もここまでだ…」

怒りに満ちた表情で相手を睨む。
十回もぶん殴ってくれたなニンゲン……!!

上官 >  
「な、なんだ貴様……やるのか?」

なんという気迫だ。僅かだが気圧される。

アセナ >  
「やらない」
「もうこれ以上なにもやらん!!」

「辞める!! 引き継ぎもせん!!」

「大変お世話になりました、クソ騎士殿めが!!」

相手を指さしてから一方的にまくし立て、
壁に掛けてあった私物の入った袋をひったくるように取る。

「お前に給料もらって飯食ってたのが恥ずかしいぞ、己は!!」

上官 >  
えっ。
なに、辞める?
この会話の流れで……?

それだけ?
呆然と若造を見ているしかない。

アセナ >  
「騎士なら騎士らしい振る舞いをしろ!!」
「それだけだ、じゃあな!!」

肩を怒らせて去っていく。
おっと、忘れていた。
振り返って元・上司の前へ。

「これは支給品だ、返却する。それとその目録だ」
「せいぜい確認してくださいやがれ!!」

そしてまた肩を怒らせて去っていった。

上官 >  
男はあっという間にいなくなる。
そして残されたのは、抜身の剣を持ったままの自分だけ。

「……わからん」

若いヤツの考えてることは。さっぱり。
溜息をつきながら剣を鞘に納めるのだった。

ご案内:「ハテグの主戦場」からアセナさんが去りました。