2025/06/09 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート -12 years ago-」にヴァンさんが現れました。
■ヴァン > 「現刻より状況を開始する。クロウ隊長は療養中のため、代理で俺がブリーフィングを行う」
聖都の中心にある教会の屋根に、青年が立っている。二十歳を少し超えたぐらいで、一見すると少年ともとれる顔つきだ。
青年は首からさげた聖印を右手に持ってぶつぶつと呟いていた。どうやら聖印は視界外にいる何者かと連絡をとる手段のようだ。
「ミレー族の奴隷達が武装蜂起し、聖クレメンス教会に人質数名をとって立て籠もった。既に衛兵が3名負傷している。
賊の数は不明。人質の中には“あの”グレゴール司教がいる。彼を狙っての凶行と考えられる」
ミレー達は何か要求があるのだろうが、男には関係ない。主教が対話を行うのなら、男達は必要ないからだ。
教会の暗部、暴力装置、ウェットワーカー。それが彼等――神殿騎士団特務部隊。
「司教の救出が最優先だが、他にも逃げ遅れた信徒がいると思われる。発見次第安全区域まで移送すること。
人質の確保が最優先だ。突入部隊はフォックスが指揮をとれ。俺はいつも通り単独で行動する。以降は原則通信封鎖だ。神のご加護を」
グレゴール司教は主教の教えに厳格で――ゆえに、ミレーは奴隷であると公言して憚らない。
ミレー達は交渉の切り札である司教を殺しはしないだろう。だが、時間が経てば経つほど傷つける可能性は高い。
相手は自分達を弾圧してきた張本人だ。治療魔法とセットで“ちょっとした苦痛”を与えることは十分考えられる。
青年は2階の窓から教会内部に侵入した。位置的には図書室――正確には写本室。陽が射さない方角に窓が設えてある。
そう広くない室内をさっと見渡す。建物の構造としては奥の方だ。信徒の逃げ込む先としてはありえそうだが――。
■ヴァン > 人気はない。良くない傾向だ。
人質がこの場所にいないのはわかる。書架があるとはいえ、遮蔽物は視線を遮る程度だ。本格的に隠れるには向いていない。
それに――ここには窓がある。武装した連中が追いかけてきたなら、窓から飛び降りることも選択肢に入れるだろう。
問題なのは、排除するミレー達の姿も見えないことだ。
事件の報を聞いて急行したが、連中は写本室をもう調べ終わった――とみていいだろう。
となると、人質を一か所に纏め、主教側の出方を窺っている可能性が高い。
広い場所というと礼拝堂が真っ先に思いつくが、礼拝堂は侵入経路――逃走経路でもある――が多い。
不退転の覚悟を決めた連中ならば、こちらの進行ルートを絞ってくるだろう。
「まずいな……」
自問自答を繰り返すが、あまりいい考えに結びつかない。
普段なら隊の仲間がいて、連携も相談もできる。独りではそうはいかない。
身近な相棒がいれば助かるのだが――。
「虱潰しに部屋を探っていくか。人質と犯人で十名程度。一塊になっている可能性が高い」
ぶつぶつと言葉を紡ぎ思考を整理しながら、男はゆっくりと歩き出す。音もなく扉を開き――そして、閉じた。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート -12 years ago-」からヴァンさんが去りました。