2026/01/02 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」に枢樹雨さんが現れました。
枢樹雨 > 巨大な平原に存在する森林のひとつ。
満月へと向かう明るい月の光を遮るように生い茂る木々。
人の為にと整備された道はなく、獣や魔物が踏み慣らした草や低木が、それらしい道を作るだけ。
そんな場所に不意に現れる、深い湖。
闇夜の中、底の見えない深い深い水溜まりは、底なし沼の様に静かに在る。

妖怪は、迷うことなく其処へとやって来た。
湖の縁に立ち、視認難しい霊体姿から実体へと変化する。
それを感じたかのように、不自然に縁から波紋広げる暗い湖。
しゃがみ込んだ妖怪は、そっと息を吐く。
冷えた空気に白くなるような、僅かながら人の体温を持った息を。

「今日は、殊更冷える。……でも、君は凍る気配もないね。」

伸ばした左手。
淡い浅緋色の袖から覗く、抜けるような白の指が、湖の表面を撫でる。
此度は必然。湖の中央へと広がる波紋。
凍っていないことを示すそれを眺めながら、妖怪はもう一つ息を吐き。

「この一年で、またいくつか吞み込んだの? …前に来た時より、暗い。」

枢樹雨 > 湖の周りに、妖怪以外の気配はない。
妖怪が見つめる先は、暗い水の表面。
何故か空に在る月を映すこともなく、混沌とも言える闇を広げるばかりの湖。

当然、返る言葉はない。
それでも妖怪は気にする様子もなく、薄い唇を開き。

「吞み込んだだけ、物語が増えるね。…また、聴かせて。」

湖の表面を撫でるだけだった指先が、僅かに沈む。
血流感じさせない白が、湖の闇に消える。
それと同時、湖から幾本も伸びる闇色の触手。
黒い靄の集合体たるそれは、月明りを僅かに透かすも闇であることは変わらない。

触手は妖怪の手に、腕に、首周りにと絡み、懐くように頬に触れる。
体温の低い妖怪以上に冷たい温度。
寒気に小さく震えるが、妖怪はされるがまま。

「暦と共に、命終える。
 朝日と共に、天に召される。
 ―――不思議な、考え方。」

枢樹雨 > 「人の子は、どれだけ死に意味を見出すんだろうね…」

妖怪が首を傾げれば、尚のこと密着する頬と闇色の触手。
持ち上げた右手でその触手を撫でてやれば、右手にも絡みつく。
懐いた犬のように、甘える猫のように。

そうしてしばし、静寂が支配する時が流れた後、闇色の触手が妖怪から離れていく。
惜しむように揺蕩う一本を撫でてやれば、妖怪へと絡みついていた触手がすべて、湖に消える。
湖には波紋ひとつなく、ぽっかりと空いた穴のようにただただ闇を広げて。

「―――温かい湯に浸かりたい。」

妖怪が湖に背を向け、小さく呟く。
それと同時、空に在る月が水面に映り込む。
気が付けば風が周囲の木々を揺らし、葉音を鳴らす。
当然、水面も風に揺れて小さな小さな波を作る。

まるで静寂など存在していなかったかのように、当たり前の景色が広がる。
次の瞬間、妖怪の姿はその場から忽然と消えていて――…。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」から枢樹雨さんが去りました。