2025/11/23 のログ
夜宵 > 驚く素振りに、仕込みは上々とばかりに──くすり、と薄く笑む。
女の飄々とした佇まいは其の儘、彼が取り落としそうになった薪を
ひょいと摘みあげては代わりに火の中へ投じてしまおうか。
──火の粉が上がり、ぱちりと燃え上がる。
その勢いに二人の姿が一寸だけ鮮明になる、か。

「そう。徒党を組むはずだったのだけど──…
 ……生憎、直ぐには集まらなくて。丁度乗り合いの馬車も出るとギルド員の人聞いたから
 ──手も空いてたし、其の儘来てしまったよ。……元気、だった?」

知己の名前があったからも理由の内の一つではあるが。
単純な話、顔を合わせる事も久しい故に、息災にしているだろうかとの想いの故──
己が内はさて置き、再会のひとときを喜ぶのだ。

異国の花が施された袂が翻る。
紫の藤花と、女の体躯から放つ香。静かに匂い立つ様は、己が此処に居ると示すようでもあった。

「ふふ、そっか……じゃあ、塒の規模はどのくらい?
 明日の朝には、他に人員も補充されると聞いているから──此の儘警戒にあたるだけでも十分かもしれないけれど。
 ──とはいえ、他の魔物も出るだろうから、私は警戒を解くつもりはないかな。」

君の方が状況を知っているだろうから、と。
女は彼に判断を委ねる心算であり、男が望むなら討伐も視野に入れている。
──彼の判断力においては、評判も相俟って一定の信頼は置いているのだから。

ケストレル > 炎に照らされる女の姿は、幾度か顔を合わせた時のまま
それはきっと己もそうなんだろうけど、とケストレルは思う
とは言え、確かに日は流れて季節も変わり、すっかりと肌寒くなっている故に、多少なりと装いは変わって……いるのだろう
白い貌に揺らめく橙が差し、何をしても艶のある女性だ、と改めて思わざるを得ないケストレル

「そりゃあ、緊急でも無ければすぐに出向ける方が稀さ
 冒険者は事前の準備が肝要だから
 ――まあ、夜宵さんみたいにカタナ一本で準備は事足りる人も居ないわけじゃないけど……元気だよ、夜宵さんも息災そうで何より」

前よりも綺麗になった?と冗談めかして笑いつつ
知り合いが不意に消息を絶つことも、そう珍しいことではない職業柄、会わない期間があると心配になってしまうのもある種職業病なのだろう
そんな事を思いつつ、変わらぬ姿に密かに安堵した

密かについでに、努めて自然な動きで薪の傍に寝かせた丸谷腰掛けて膝を閉じる
急な異性の、それも少なからず知っていることの多い相手となると色々想起するものもあるが故

「規模は……確認出来ただけで10はカタいかな
 幾ら俺や夜宵さんが腕に覚えがあると言っても、地の利は向こうにあると言わざるを得ないし
 明日、増援があるならそれまで待とう……幸い、目立った動きは無いみたいだから」

冬に備えて人の生活圏に塒を近づけようとしているのかも、とケストレル個人の所感も添える
二人で討伐まで持っていければ越したことは無いが、万一があった場合、後発で来る人員を最初から救護に割かなければならなくなるだろう
それは極力避けたい、と薪の枝を指揮棒の様に持って宙に円を描く

夜宵 > ──変わってない。そう、お互いに何も。
過ぎたのは幾らかの時間。そして移りゆき肌寒くなる季節。
篝火が齎す温もりに自然とお互い距離が寄るのは、きっと夜気の寒さだけでないのかも知れない。
……冒険者なんて生き方は、何時如何なるかも判らない。
だからこそ、時には息災かどうかを確かめたい時は──ある。
女は、時の流れに疎い。だからこそ、不意に掠めた予感めいたものは取りこぼさないようにしているのだ。

「そうだね……火急の件では無いから、ね。
 用心するに越した事はないし、夜目が効くとは言い難いし──
 流石に、狭い塒で刀一つ振り回すのは、なかなか骨が折れてしまう。
 ──だから、先ずは君の見解からかな。」

砕けた口調。いつかの距離感で、言葉で確かめる一幕。
変わらぬものに安堵を覚える。強く。
して丸太上に座る、背の高い彼が何処と無く萎縮する様子を見るに──ごく静かに、距離を近くして座るのだ。
見詰める女の双眸は、揶揄うより男の横顔を眼に焼き付けるような様子で、言の葉に耳を傾けて。

「──君が、そう判断するなら従うよ。
 増援はね……私以外に二人来る。前衛と後衛が居れば、均等のとれた徒党になるだろうね。
 ──とりあえず、交代で不寝の番でも構わないよ。」

祓刀をいつでも抜ける姿勢は崩さない。けれど、女が纏う空気は柔く在る。
相貌を覗き込んで彼に問う姿は、屈託のない微笑み。
男の記憶の何処かに、静かに根を張るような──そんな気配を漂わせていた。

ケストレル > お互いに息災である事が知れたのは良かったけれど
なればこそ、もっと違う形で近況を知れれば良かった、と思わざるを得ない
出来れば王都のギルドか酒場の方が――そう思いながらも、自然引き合う様に距離が近くなっていく事には、彼女の無事を知れた安堵からか自然と受け入れて

「――じゃあ、小鬼の対処は明日改めて詰めるとして
 今日は久々の再会を喜ぼうじゃないか
 まあ、積もる話なんてそうそう無いと思うけど」

夜宵が間近に腰を下ろした事で、はた、と互いの距離に気付く
既に夜の暗闇が周囲を覆い、話をするにしても距離が近いに越したことは無いのだけれども
それはそれとして一度意識が向けば、そわ、と妙に落ち着かなくなってしまう

「不寝の番か……夜宵さんは今さっきここに来たばかりだろう?
 とてもじゃないけど、近い距離じゃないし……まずは夜宵さんから移動の疲れを取っとくのが良いんじゃないかな
 それと……流石にその服装、寒くはないかい?」

此方を覗き込む顔を見つめ返して問う
どこか儚げで、美しさを覚える微笑みに、射竦められた心地になりつつも、視線を一度、彼女の纏う着物へと向けて
夏であれば涼し気に見えたそれは、今になると少しばかり寒々しい
もしかすると見た目よりよほど暖かいのもかもしれないし、魔術による防寒処置が施されているのかもしれないけど、と

夜宵 > いついかなる時、必ずしも出会える訳ではない。
依頼を何方が受けて、現地へ赴いたりすれば──会うのは難しいもの。
今回は偶々追いかける余裕があったからこそ出来た事で、そうそう出会すものでは無く。
距離を詰めた儘、篝火が爆ぜる音と、互いの言葉、呼吸だけがやけに近く感じる。

「そうだね……。少しこの国から離れていたから。
 違う国の話でもしようか?然りとて、これといった話がある訳じゃないけれど。」

──特別、積もる話がある訳ではない。
それでも近しい距離に在ろうとするのは、相手を警戒してないとの意だ。
夜の帳が降りた今、声を顰めて話す方が危険も少ない故の。

「馬車の中で幾らか休んでは居たから──ね。
 其れより君の方がずっと見張っていただろうから……少しでも寝てくれて良いんだよ。
 朝にならないと、増員は来ないからね。」

女は喩えるならば、異国に咲く藤の花のような物だ。
寄り添う様な咲き方をして、静かに此方へ手招く。
だからきっと、そんな委ね方をするなら望めば、応じる筈で。
彼の問いかけには、空いた手を差し伸ばして確かめてみて、とも言いたげに。

「──あまり気にしてなかったけれど。どう、かな?私──……冷えてる?」

手を取られるのならば、きっと体温の差を感じるか。
女が其処まで気にしてないとも取れるが、何方にしろ、ひやりとした感覚を伝えてしまうことだろう。

ケストレル > 一期一会――とまではいかないものの
一所に留まる様な職では無い事もあって、すれ違ってしまう事は少なくない
だからこうして再び会えたことを素直に喜ぶ様に、ケストレルは心掛けている
それは夜宵に対してに限った話では無いけれど、それでも彼女に対しては他の誰か以上に距離を詰める事に無防備で居た

「へえ、そりゃあ……全然見かけないわけだ
 うん、良かったら聞かせて欲しいな……いや、酒の肴に聞く方が良いかもだ」

あまり国外に出ることの無いケストレルにとって、異国の話は非常に興味を抱きやすい事柄である
そもそも彼女に初めて会った時も、彼女の纏う異国情緒に惹かれたからだ
是非、と言いかけて、場を改めた方が良いなと考え直す
遠い地に思いを馳せるには、些かこの場は剣呑過ぎた

「む、そうは言うけれど
 乗合馬車で来たんだろう? この辺りを走るのは席が固いからなあ……
 夜宵さんの身体まで硬くなられたら困るよ、非常に困る」

ううむ、と真剣な面持ちで腕組みまでして唸る
勿論本気で真剣に考えているわけではない事は明白だ
その証左に、目元は揶揄う様に弧を描いている
そして伸ばされた手に、僅かたじろいで、恐る恐る触れて、

「思ったよりも冷たいな、これは……一度確り暖まっておいた方が良いかも
 明け方になればもっと冷え込むし、風邪でも引かれたら事だしね
 天幕の中に防寒具があるから―――それとも、人肌で温めようか?」

触れた手の冷たさに目を瞠り、もう、と不服気に口を尖らせ
そのまま手を取ったまま、丸太から腰を上げると天幕へと共に向かう事を促す
最後に冗談めかして告げる言葉は、己の願望も多分に含まれていて

夜宵 > 冒険者という生業は、言わばこのやり取りすら互いの確認作業のようなものだ。
今を生きていることの確かめ合い。
生に触れる事で、自己を認識している──其れが知己であれば、近しくなった間柄ならば。尚更に。

「ふふ──討伐が終わったら、お酒の席で話す方が有意義かな。
 少なくとも、今する話ではなさそうだ。」

しんと静まり返った夜。
此処には己と、彼しか居ない静寂が何処までも広がっている。
寒い故の、澄んだ夜気の中鮮明に見えるは薄い上弦の三日月。
天を仰ぎ見るも、他愛無い話に興じるには状況故に憚られる事となるか。

「君が思ってるより、私はそんなに柔じゃないよ。
 何なら君次第では討伐を始める所だったし──
 いざという時は、動けないと困るでしょ?」

揶揄いを返されるのならば、至極当たり前のように答えてしまう。
でもそれは単なるあしらいではなくて──本当に大丈夫、という剣客たる所以からきているもの。
男が思っているより、ずっと丈夫ではあるのだ。

──そして、私達は確かめ合う。
その実感を、寒いからと理由をつけて。

「警戒しない訳には行かないから。刀は握った儘にはなるよ、私は。
 それでも、体温に自信があるなら、温めてみて。
 ……ちゃんと君自体が暖かいなら、ね。」

手のひら、肌の気配だけが伝わって。
艶然と微笑みを向ければ、笑み声混じりに鈴の声音が鳴る。
──どうぞ、君の体温で溶かせるならば、と。
其の儘天幕の向こう側へと伴われていくだろう。
その後の事は、語るべくは此処には無く。お互いだけの胸裡へ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」から夜宵さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」からケストレルさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  午後の森林地帯――木々は秋色に鮮やかに色づいて。紅葉狩りなんかにはうってつけな清々しい好天気だったのにあまり晴れやかでない表情をした冒険者たちがいた。

 何故かと云えば。
 
 冒険者ギルドでいつまでも片付かない、安い(報酬)遠い(目的地)見つけ辛い(討伐対象)なパーティ向けクエストがあり。
 ギルド側ではいい加減どうにかしたかったらしく。
 たまたまそこら辺で手頃な依頼にありつけず、あぶれていた連中が『お前ら暇だろ』とジョブを振り分けて適当に選抜され。
 雑に即席パーティが結成された。

 今回お初だったり、多少は顔見知りだったりと云った面々。連携に関しては期待値ゼロ。
 ギルド側の判断としては多分どうにかなるだろうとそれはもう大雑把な見立てで、『行ってこーい!』と半ば強引に蹴り出された。

 確かに真昼間からくすぶっていても仕方ない…と即席パーティ四名は渋々、出立したはいいものの……
 パーティで手分けして二名ずつで分かれ樹海を探索中。
 思わずため息を零してヒーラーは連れへぼやくように語りかけた。

「ぜーんぜん、見っかんないねー……。
 出没予想地点の範囲から大分広げてるのに……こんなんじゃ討伐はおろか今日中に見つかるかどうかも怪しいぞ……」

 広大な森林地帯の深部まで分け入って、討伐対象たる魔物が出没する確率の高い場所を探索しているが、ちっとも、微塵も、欠片もこれっぽっちも……出てきそうな気配がなくて思わず赤く色づいた枝葉に切り取られた天を仰いだ。

 ――めちゃくちゃ本日は晴天なり。

 冒険やめて紅葉狩りに趣旨替えしたい。もう少しアグレッシブに鹿狩りだっていい。
 見つかりそうもない魔物狩りじゃなきゃこの際なんでもいい。

ティアフェル >  なんて不平満載だったものだから罰があたったのだろうか。

「――! っきゃ、う、あ、ああぁぁぁぁー!?」

 不意にゴブリン数匹と出くわしてしまった。
 咄嗟のことで応戦しようとはしたが、一斉に飛びかかって来るので一度後退すると――その先に運悪く古い捕縛罠があった。足元を掬われ、危ないと思った瞬間には落っこちていて。
 大型の獣か魔物でも捕らえるつもりだったのか深く広い縦穴。よりによって二人仲良く。普段なら罠回避くらいはできたのだが……状況が悪かった。幸い、ヒーラーなので落ちた弾みで怪我をしてても治せはするが……。

「あいたたた……」

 腰打って擦りむいた程度らしいと認識。縦穴の中で転がる。そして一緒に落ちた仲間は大丈夫だろうか、と。はっとして上半身を起こして薄暗い中で、

「そっちは、大丈夫っ? 怪我してない?」