2025/10/06 のログ
アキアス > 彼女が差し出してきた財貨は、換金すれば間違いなく肉の串焼きの比ではない価値があるだろう。

けれども男が目を付けたのはそちらではなく、燃えるような髪色と瞳を持つ女自身。
冒険者の間では冗談としても、本気としてでも、こういった野営地では交えられる交渉でもある。
相手次第、というところはあれど。女は元手が要らず、男は満たしにくい欲を満たせる。

男にとって今この野営地で価値があるものと腕の内に捉える。
それなりに重量のある装備を纏うままの少女を、しっかり受け止める大きな体。

見上げ来る朱色。小動物めいた困り顔が、戸惑う困惑の色を乗せて。
その頬が髪色には負けるも、仄紅く染まるなら、脈ありと見て男の笑みがだらしなく緩む。

「いいぜ。娼婦みたいなのを期待してるわけじゃねぇよ。
 じゃ、先に腹ごしらえするか? ……ただ、ほどほどにしとけよ。お楽しみの後でも、ゆっくり食えるしな」

高い体温は、季節柄いくらか涼しくなってきた夜には丁度良い。
装備を纏うことのない肢体はしっかりと女の柔らかさを感じさせてくるから、引き寄せる前よりも男の期待が増す。

女を腕の内に抱きかかえてしまったままで、彼女の目の前に肉を差し出す。
酒も彼女に瓶ごと渡し、暫しまるで今回臨時のパーティー組んだ冒険者のように言葉を交わしながら食事を済ませて。

そして、火の始末をしてから、彼女を自身の天幕にと招いていく。
あとのことは、二人だけが知ること。

あるいは、同じ野営地にいた者たちにも、声やら物音やらで知られることになるかもしれず――……。

アレハンドラ・アルディオーラ > 腕の中に閉じ込められた身体の熱が、また少し高まった。
身体を休めて落ち着いたはずの鼓動も、少しだけやかましくなる。
……女としての性を、何かの代価に支払うことは、基本的にはしていない。していないと自負している。
自分は娼婦ではなく冒険者なのだから、それは在り方として適当ではない──と。
一方で、実利的な部分ではこうも考えている。
肉や酒は欲しいし、眠るなら吹き曝しより天幕があった方がいい。……無沙汰の身を慰める手立ても。
つまりこれは自分が代価を支払うというより、相手から一方的に与えられる訳だから、

「ん。じゃ、さきにごはん……と、お酒。大丈夫、たぶんあなた程食べないから……。
 ……あ! け、けど、言っておくけど! 誰が相手でもいいとか、そういう女じゃあ無いんだからね!?」

心の中の長い言い訳が済んでしまうと、少女はなついた飼い犬のように男に従った。
犬。
犬は大概、鼻が利くものである。

「……あなた、あんまり悪党っぽくないし、後腐れも無さそうだから。……それだけっ」

この一晩だけの〝飼い主〟は少なくとも、くたびれた野良犬に石を投げるタイプではなさそうだ。
それを見極めて水をねだるくらいの鼻は利く。
天幕に、足を踏み入れる。
それから顔だけ外へひょこっと出して、周囲をきょろきょろと伺って──また顔が奥へと引っ込んだ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」からアレハンドラ・アルディオーラさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」からアキアスさんが去りました。