2025/10/05 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川辺」にアレハンドラ・アルディオーラさんが現れました。
アレハンドラ・アルディオーラ > 夜間。川辺に火が灯っている。たき火かと思えば煙が無い。炎の揺らぎはあるのだが。
仮にだれかが近づいてみれば、それは水流の中に半身を浸かっている少女の、顔の高さに浮いているとわかる。
燃えるものもなく、炎だけが虚空に浮いて、川面と少女の肌を照らしているのだ。
少し吊り気味な大きな瞳も、今は自然に細められてどこか憂いを帯びてすらいるような──

「ぜー……はー……────つっ…………かれたぁ……!!!」

──憂いなど何処にもなかった。ただ疲労感のみ多大にあるばかりだ。
紆余曲折有って地下迷宮に放り込まれた挙げ句、大立ち回りをして地上への脱出ルートを発見。
トラップやら魔物やらを切り伏せて脱出したころには、とうに日付が数個変わっていた。
その間、魔物の肉を雑に焼いたもので腹を満たし、魔物の血を煮沸消毒したもので喉を満たし、ろくに眠れず。
今は川の流れの中にありながら、まるで王都の温泉宿でもいるかのように、手足をぐたりと垂らしているのであった。

「ったくもう、あんな危険な洞窟がまだ有ったなんて……はっ。ギルドに情報持ち込んだら幾らかで売れないかしら?」

独り言と共に、赤い髪が比喩でなく〝燃え上がる〟。こびりついた血の塊も何もかも、その炎で煤になる。
少し黒くなった髪を流れに浸して手で剥くと、煤の汚れが流れ落ちていった。

アレハンドラ・アルディオーラ > 戦いと旅でくたびれた髪が、ようやく本来の赤色を取り戻す。
湯船の中ならば結んでまとめておくべきだろうが、川の流れの中ではそうまで几帳面になる必要もあるまい。
水面に浮くに任せて、少女は次の工程に取りかかる。
……にわかに水面が、鍋の中の水のように泡立つ。
かと思えば次の瞬間には、しゅうしゅうと音を立てて熱蒸気が水面に立ちこめる。
少女自身が熱源となり、身体の周囲の水を沸騰させて──サウナのようにしているのだ。

「うー……石けんが欲しいわ……あとブラシ……清潔なタオル……着替え……。
 贅沢は言わないから背中を流してくれる従者とー、アイロン係とー、コックと食卓とー」

欲深い独り言をこぼしながら、熱蒸気と水流で肌の汚れを洗い落としていく。
良くも悪くも冒険者稼業に慣れて、屋外だろうが我が家、我が庭とばかりにくつろいでいた。

アレハンドラ・アルディオーラ > 「……はぁ。ないものねだりしてても虚しいわね……」

結局のところ、どれだけ呟いても石けんは空を飛んでこないし、コックも現れないのである。
そろそろ手足の疲れも癒えた少女は、ようやく立ち上がり衣服をまとった。
水で大雑把に洗ったばかりの衣服は生乾きどころか、裾から水がしたたるほど。
だが少女がそれを纏った次の瞬間には、じゅうっと音を立てて蒸気が立ち上る。
暫し蒸気のベールが少女を包んだ後には、すっかり乾いた衣服を纏う少女の姿。

「さっさと帰って次の仕事探さなきゃ……あーもー、とんだ貧乏くじ探索だったわ……!」

嘆きながら歩き始めた少女は、数歩先でぴたりと立ち止まる。
早足で川へ戻り、蒸し焼きになって水面に浮かんだ川魚を拾って、かじった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川辺」からアレハンドラ・アルディオーラさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」にアキアスさんが現れました。
アキアス > 喜びヶ原に点在する野営地の一つ。

街道にも近いその場所には、幾つかの焚火の明りが灯っていた。

それぞれ違う隊商だったり、冒険者であったり。複数人のものも、独りのものも。
水場も近く、警戒もしやすい。共用の天幕も置かれていて、幸い利用者多いからか荒らされてもいない。

「しかし今日は賑やかだな」

男も、採取の時間帯が深夜に限られる希少な植物の調達依頼を受けて、泊まり込みの準備をしてきており。
共用天幕は時折ひどい使われ方の後だったり、不埒者が荒らしていたりでということもあって自前の天幕を構えてきていた。
大柄な男が使えるそれは嵩張りはしたが、知人の魔法使いに軽量化を施してもらって。

おかげで余計な採取物も依頼されたが、それを込みにしても行き帰りの荷重は相当に楽になった。

共用天幕は、隊商が確保しているようで。
それにあてにしてきて野宿となりそうな者もいるかもしれない。

「まぁ、まだそこまで寒いってわけでもねぇしな」

逆に、野営地の警戒は多少気を抜いても人数がいるから、どうにかなることだろう。
その分、人間の方からのちょっかいも注意しないといけないだろうが。

つくづく、この稼業は行き当たりばったりが多い分、準備しすぎて困ることはないものだ、と。
火にかけていた狩り立ての小さな魔獣の肉を取ってはかぶりつき、唇に吐く溢れる肉汁を拭っては満足げにした。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」にアレハンドラ・アルディオーラさんが現れました。
アレハンドラ・アルディオーラ > 野営の最中、暗闇の方角から、ざくざくと足音が聞こえてくる。
草を掻き分け踏みつけ進む誰かのもの。気配を消しているような様子は無い。
……ということは少なくとも、隊商を狙う賊徒の類いではなかろう。
が、街道の無い方角から真っ当な人間が現れることも、また多くは無い。
故に幾分かの警戒も抱かれるかもしれない──が。

「はー……ぜー……ちょ、ちょっと……水、無いかしら……?」

現れたのは、鞘に収まった剣を杖代わりに歩く少女である。
背の背嚢は痩せ細っていて、荷はあまり多く無いように見える。
長旅をしていたにしては小綺麗だが、さりとて衣服にはこびりついた返り血。
いささか物騒な少女は、水を求める言葉の直後にぺたりと座り込み、

「ひー……あと、ここ何処かしら……? あとご飯と……できたらせっけんとお風呂……」

……あわよくば、で求めるものが多い。

アキアス > 刺さっていた肉をたいらげて、杭をからりと手元に置いたとき。
暗がりのほうから隠す気もない気配、堂々とした足音がする。

新しい野営者、とも考えられるが、獣が真っすぐにやってくることも無くはない。
魔除け、獣除けを使っていても防ぐことのできないこと、というのはままあることで。

近場に置いていた剣を引き寄せ、警戒する。
もちろん男だけでなく、気づいたものは皆それぞれに、聞こえ来る足音の方向に視線向けて注視していて。

得物を杖にしながら、少ない荷物で焚火を挟んだ向こう側にへたり込む女。
衣服に付いた血の割に、足取りはしっかりしていた。

準備不足か、不測の事態に見舞われた同業者か。
それを装った賊、ということもあり得るが、それにしては気配は一人。

若く、恰好以外はずいぶんと身ぎれいにも見えたから、小さく嘆息だけして警戒をいくらか弛めた。
朱い髪が火に照らされては揺れる。それがくたびれた女の整った顔と相まって美しく見えたのも理由の一つだろう。

「……ここは野営地だ、お嬢ちゃん。
 水は……まぁ、水場も近いしな。飯はちっと厚かましいな。石鹸と風呂は諦めとけ」

そう言って、近くにあった水筒を彼女の方に放り投げてやる。
じろじろと男の碧眼が無遠慮に少女の身体を見回して、どういう手合いか探るようで。

アレハンドラ・アルディオーラ > 少女はたき火を挟んだ向こう側、会話を楽しむには少しばかり遠い位置に留まっている。
杖代わりに使っていた剣は、特に珍しいところも無い店売りの平凡な代物。
ちゃちではないが優れてもおらず、使い潰して惜しくもない数打ちの剣だ。
身体を覆う防具は、胸当てと脛当て程度。こちらは剣よりは上等に見える。
とは言えやはり、目立った特徴の無い店売りの品。特注品を身につけるようなランクではない、のか──

「あ、ありがと……」

投げ渡された水筒を受け取る。視線が大きく動く様子は無かった。
受け取るやいなや、ほとんど逆さにする勢いで水を喉へ流し込む。ごく、ごく、と喉を鳴らす。
口の端から僅かに水を溢れさせる勢いで喉を潤し、ようやく一息。袖で口元を拭う。

「っはー……! ひさしぶりのちゃんとしたお水……!
 助かったわ、同業者さん────同業者よね? そんな感じの臭いだし」

ぽうんと山なりに水筒を投げ返す腕は、細く引き締まった戦士のもの。……筋肉の線が浮く程の鉄腕でもないが。

アキアス > 突然現れた少女の格好を観察してみれば、小綺麗な顔とは別に装いは多少上等な代物。
駆け出しが背伸びした、というには好すぎるし、どこぞの貴族の御落胤にしては多少、大人しいか。
年若い冒険者が身に着けるには過ぎるご言えば過ぎるもの。

ともあれ見た目通りの年齢でないことも、稀にある。
水筒をその中身を警戒することもなく飲んでいく様子からも、時折居る、来歴が自分よりは増しな冒険者だろうと。

「冒険者かって意味なら、そうだな。
 って、随分飲みやがって……後で補充しとかねぇと」

投げ返された水筒を受け取る。少女の腕は、生白いものではなく健康的な色合いにも見え。
少なくとも、剣は杖代わりにもきちんと使えそうなふうに鍛えられているふうではある。

水筒がかなり軽くなって、振ってもあまり水音がしないのを確認しては、小さく息を吐いた。
火にかけた肉をまたひとつ手に取って、齧りつき。水を今、汲みに行くのも面倒だからと、荷物を漁って酒を取り出す。

軽い酒精なら水代わりとばかり、咀嚼した肉をそれで喉奥へと流し込む。

は、と、短く息を吐いて腹を満たす様子は、何かの理由で窮しているらしい今の彼女からすれば見せつけるようでもあったかもしれない。

アレハンドラ・アルディオーラ > 「悪いわね、水汲みくらいは後でするわよ」

水筒を空にした事にさほど悪びれる様子も無く、軽口一つで済ませたのは、喉が潤って大分落ち着いたからか。
急を凌いでしまえば成る程、年の若さや軽装度合いはさておき、案外にどっしりと構えているようにも見えよう。
服にひっついた枯れ草を手で払い落とし、焚き火から少し離れた位置に腰を落ち着けて、
そのまま身を休めるのか──とも見えた。

「……ごくん」

静かな夜には、唾を飲む音さえ煩く聞こえたやも知れない。
酒と焼けた肉だ。
なんの魔物の身体ともわからぬ肉ではなく、おそらく、真っ当な食用の動物の肉。そして酒。
腐らず、味も良く、酩酊も楽しめる。酒は冒険者にとって命をつなぐものであり、大事な娯楽でもある。
そんなものを数日の過酷な冒険の末に目の前で見せられれば、口の中によだれも溢れようものだ。

「ね、ねえ……」

少女はふらりと立ち上がる。
背嚢を身体の前に回し、手を突っ込みガサガサと中身をあさる。出てきたものは──
今回の冒険の戦利品だろう、安価な銀の装飾品だったり、魔物の討伐証代わりとなる耳の塩漬けだったり、古めかしい貨幣だったり。
そんなものをかき集めて掌にのせ、おずおずと焚き火を回り込んで近づいてくる。

「それ、ちょっとだけ分けてくれたりしないかしら……?」

市街地であれば、安価な食事の一食程度にはなるだろう価値の〝寄せ集め〟。
しかしながらここは野営地。物価は決して、街と同じにはならないものだ。

アキアス > この野営地は水場が近いし、水筒に汲み入れるくらいはさほどの労力にならない。
夜間行かせるという点ではたしかに面倒の一つを押し付けることにはなるが、食事の折の水が無くなったのが一番面倒なのだろう。
だから、少女の軽い返事に、大柄な体躯の肩を、大げさに竦めて見せる。
気にするなとも見えるし、彼女の言葉に呆れているようにも見えなくはないかもしれず。

水分補充して少し落ち着いたのか。
焚火からは距離を置く様子に、そこで休むのだろうと。
ある意味、賢い立ち回りとも言える。水だけなら、よほどの場所でなければ大げさな対価を要求されず。
今の男のように、それだけなら同業の誼とばかりに何を言うこともないかもしれないのだから。

けれども、どうやら賢くとも、欲求には逆らえないらしい。。

唇に吐いた油をまた舌で拭って、次の肉に、と、指を伸ばそうとすると掛けられる声。
幾つかの、おそらくは今の様相になってまでの、冒険者稼業の成果品。

それを差し出しての交渉に、差し出されたものと、女の顔を幾度か往復する男の碧眼。

「……肉はまだあるし、構わねぇけどな。……もちっと、価値があるもんが欲しいなぁ」

にやりと笑えば、女に財貨を仕舞うようにと掌を押す。
彼女が男の仕草の通りそれらを仕舞えば……男の大きな手が、彼女の腕を引いて自身の腕の内に捉えてしまおうとして。

『女』を抱き寄せようとするその仕草と、この野営地で、より『価値』が出るものを考えれば。
男の求めるところは、彼女にも伝わるだろうか。

アレハンドラ・アルディオーラ > 手に乗せられた雑多な品。換金の手間は幾らかあるが、かさばらず、持ち運ぶ難易度は低い。
おずおずと男を見る少女の顔。吊り気味の目の端が、眉と共にぺしょりと下がっている。
そういう表情をしている時は、目の大きさも合わさって、最初の印象より幼くも見えるだろうか。
目の中には、焚き火の炎より鮮やかな朱色。
夜にあってその瞳だけが、夕焼けに戻ったように燃えている。

「ね、そうでしょ、まだあるんでしょ? 代金だったらちゃんと──」

男の視線が手元と自分の顔とを行き来しているのは気づいているだろうが、当人の目は肉と酒ばかりに釘付けだ。
時折、男の機嫌を伺うようにチラリと視線を向ける。……が、すぐに食欲に負けて視線が逃げていく。
それでも男の言葉を、言外の意味も含めて聞き逃さない程度には、冷静さが残っているようだった。

「──……価値があるもの、って」

留められた手の上の〝代価〟はちゃっかり、背嚢にそそくさ収納してしまいながら、言葉を淀ませる。
腕を引こうと伸びてきた手に、足は素早く半歩退いて反応しながら、上半身はそのまま逃げずに留まった。
見た目よりは少し重いかもしれない。外していない装備と、少女自身の鍛錬の成果とで。
ぽすん、というよりは、ぼすっ。

「え、っと……あの、もしかして、その。そーいうこと……?
 私、そういうお仕事のほうはしてないんだけど……?」

背は決して低い方ではないのだが、大柄な男と並んでしまうと、頭一つどころでない差があった。
すっぽり腕の中に包まれた身体は案外に柔らかで、体温は高め。
腕を振り払うでもなく急角度で見上げる顔には、困惑が幾らかと諦めと──ほんの少しばかりの紅潮。

「……あ、あんまり上手くは無いわよ……?」

旅が続けば身体が燻るのは、決して男ばかりではないのだ。