2025/09/27 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」にアレハンドラ・アルディオーラさんが現れました。
■アレハンドラ・アルディオーラ > メグメールに無数存在する洞窟群のひとつ。
その比較的浅い層に踏み込む冒険者の影──が、なにやら壁際でしゃがみ込み、ごそごそとやっている。
「えーと、ロープの歯切れに針金、蝋燭のたぐいと……この辺りは貰っておきましょう。
それからこっちの重そうなポーチは……火打ち石? いちばん要らないわよ!」
どうも彼女は、他の冒険者の置き土産──つまり遺留品を浅っていたようだ。
もっとも、この浅部階で投げ捨ててしまえるような代物。金銭的価値が見込めないのは承知だろうが。
「はーぁ……どんなにへんぴな洞窟に見えても先駆者がいるものねぇ。お宝も期待は厳禁かしら。
って言っても足跡も無し、トラップの作動痕跡もほぼ無し。掘り出し物かと思ったんだけど──」
立ち上がり、ひとりごとと共に長剣を振るう。足下のワイヤーが切断される。
途端、天井からの落石。直撃しても死にはしそうにないサイズのそれは、ちょうどワイヤーのあった地点に落下した。
「──罠までやる気が無いわね、このフロア」
■アレハンドラ・アルディオーラ > ロープの切れ端を手に持つ。ふうっ……と息を吹きかけると、それはたいまつのように燃え上がり光源となった。
直接ロープを掴んでいる手はやけどを負う様子もなく、当人も平気な顔をしている。
めぼしいものを抜き取ったポーチを脱ぎ捨てて少し視線を巡らし、怪訝な顔をして歩き始め──
「……童話にこんなのあったような気がするわね」
次に見つけたものは、剣の鞘だとか鎧の肩当て部分だとか、つまり装備品の一部である。
そのまま探索に寄与するものでもないが、持って帰れば宿代の足しにはなる。
が、それなりの重量物。すべて回収するなら、一度洞窟の外に出る羽目ともなろう。
探索の収穫物としてはロマンが無い。しかし労せず拾える金ではある。見過ごすには惜しい。
しかし、〝童話〟と言ったのは、そのさらに先に落ちているもの。
転々と、洞窟の奥へ誘い込むように散らばっている少額のゴルド貨幣である。
こちらもまた、見過ごすには惜しい。
■アレハンドラ・アルディオーラ > 周囲を見渡す。トラップの類いは見受けられない。
大金ならばリスクを取る。少額だから、諦めも選択肢に入る。だから迷うのだ。
千切られたパンのように床にならぶゴルド貨幣の行き先は、通路の角を曲がっている。
「……よし。あそこまで拾って……その先のことはその後で!」
貨幣を拾い、小物入れに放り込む。それを繰り返して通路を進んで行く。
周囲の確認は怠っていないはずだ。奥へ奥へ誘い込まれている気しかしないが、警戒していれば大丈夫大丈夫、
「大丈夫──」
かちっ
自然物にしか見えない石床が、不穏な音を鳴らした。
■アレハンドラ・アルディオーラ > ばぐん と床が開いた。
巨大な怪物が口を開けたかのように、自然物であるはずの石床がぱっくりと開いたのだ。
となれば──当然だがその上に立っている冒険者は、
「え? ……あ!?」
落下する。とっさに何かを掴もうと手を伸ばすも、石壁の他に手がかりは無い。
直下方向に視線を移せば、そこには、洞窟のそれとは異なり規則的に敷き詰められた石畳の床。
負傷を避ける為に着地を──
頭上で石床が口を閉ざした。
石床の上では。
いつのまにやら、冒険者の遺留品らしいポーチが元の位置に置かれている。ロープの歯切れ、蝋燭、火打ち石。
少額のゴルド貨幣が、洞窟の奥へ導くようにぱらぱらとうち捨てられている。
洞窟は全く、冒険者ひとりを地中へ飲み込んだことなど忘れたかのように、元の姿へ戻っていた。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」からアレハンドラ・アルディオーラさんが去りました。