2025/09/22 のログ
ティアフェル > 「……だねえ……わたしもうちょいやれると思ってましたが……川流れはなかなか堪えたようで」

 顔に似合わず親切……と云うと失敬だけれど。
 半眼気味の目つきは不機嫌そうに見えてしまうけれど、気遣ってくれる様子からそうではない…らしい……と思う。
 最終的に荷物はひとつもガメてないし、それどころかこうして助けてくれたので彼女が罪悪感を覚える必要などひとつとして存在しないので、何か小骨が引っかかったような歯切れの悪さはむしろ何が起因しているのか読めずに薄っすらと戸惑う。

 手早く火を起こしてくれて焚火からの暖気が伝わると濡れて冷えた身体にはありがたく。
 なんて気の付くお姉さんだろう。やはり女神認定しておこう。
 感動さえ覚え。

「へー…? 結構鍛えてた…ってこと? ふむふむ……思ったよりは流されてないかな………あー…でも後で困らないかなー…濡れた毛布は重くなるし……」

 申し訳ない。だけど今は甘えておくしかない。
 いろいろしてくれる。
 やっぱりいい人である。絶対いい人である。少なくとも恩人である。

「いや、ありがたい……荷物まで世話になって本当頭が上がらないなあ」

 一時は溺死するところだったけれど、女神が救出してくださった……。
 神はわたしを見捨てなかった、と胸中で拝む。拝み倒す。
 女神の表情がなんか微妙な気もするが……気のせいだろう。

「ぁー……だねえ、ぐっしょぐしょ……そうさせてもらった方がよさそ……ぃったた……ぁ……そーだ、ばかだなーわたしも……」

 と、回収してもらった荷物の中にスタッフを見つけて。ようやく気付いた。ヒールできんじゃんわたし。
 何をボケていたのか自分でも疑問。
 親切にも濡れた服を心配して悩んでくれている彼女の前でのそりと起き出してスタッフをつかむと。
 上半身を起こした体勢でスタッフを瘤へ掲げ。詠唱を紡ぐと、スタッフの先から淡い橙の光りを生み出して傷を癒し。

「っふー、よーし。復・活! もう痛くないぞー。いやあ、頭痛はバカにできませんな。正常な思考を奪う奪う……
 まだちょーっとぼっとするけど。とりま、大丈夫そ。
 お姉さんありがとっ。あ、服乾かそっかな。マントお借りしてい?」

 ヒール完了すると大分シャキッとしたようで。本調子とまでは行かずとも一応は回復したコンディションで。
 賑やかに改めてお礼を述べると、服乾かしたい、と早速ぬぎっと白衣から脱衣していき。

セニア > 彼女の言から言うにはそこそこ体力はあるようではあるが。
そもそも水というのは人には適正があんましない場所である。
陸地と水辺では出来る事もやれることも、注意すべき所も違うワケなので。

今回の事でまあそれは理解したであろう、多分、きっと。

「……ま、冒険者ってヤツだからうん。昔とったというか今もやってるというか」

何となく兵士時代から今に至りほぼほぼ戦場なんぞに行ってないので昔取った杵柄、といったもののよく考えたら今も重いものは運んでいるのだから今でもよかったなどと思いながら。
ひとまず暖気が伝わったようで少しばかり楽になったかな、と顔を見る。

「先に荷物が流れてきて、拾い上げてたら、その後ティアフェルがどんぶらこ、ってね」

死んでたら貰おうかなって思ってたし―――とは冗談にしても口が裂けても言えない。
純粋な瞳にキラキラという効果音をつけてこちらを見ているのを見ながらやや視線を逸らしつつ。

「ってもすぐ動いたら……って」

―――そしておもむろに荷物からスタッフを取り出して自分にヒールをかける姿を見て。
がく、と力が抜けかける。
ヒール使えるんじゃん……。
……まあ頭打ってたし朦朧としてたんだろう。
きっと。

「……何にせよ元気になってよかったよ」

一気に疲れが出てきたような気がする。
じとりとした目が呆れるように細められた。

さっきまでよりも一気に捲くし立てられて、元々元気なんだろうなあ、と思っていたらやはり元気で。
マントを渡せば一気に脱ぎ始めるのを見て。
慌てていやいやと立ち上がって。

「いや、あのね。同姓だからって躊躇なく脱ぎ始めるのはね?」

そもそも一応さっき辺りは偵察したものの、他誰かが来るとも限らないというのに。
もおお、と呟けば、マントをばさっと広げて、一応陸の方からは見えないように、水辺の方からは見えにくいようにマントとと自身の身体で隠しながら明後日の方を見て。

「……脱ぎ終わったらマントそのまま身体に巻き付けてね?そしたら手離すから」

視線を外しながらそうティアフェルに伝える。

ティアフェル >  泳げない訳ではないし、そんなに溺れた訳でもない。
 しかし思いの他消耗したらしく。本当川辺ではもっと注意せんといかんなとひとつ教訓。

「なるほどー。前衛なのかな? いちお、わたしもそうなんだけど……後衛なんだなー」

 とはいえゴリラだから並の後衛より大分体力ある方なのだが。
 前衛ほどではないのは確か。
 冒険者仲間であることは判明して何かお礼ができればいいのだがと一考。

「あぁ……ぁー……そんで、こいつ生きてんのか?って拾い上げてくれた訳かー納得ー助かったー」

 把握した。大体画が浮かんだ。まあ、そうなるかと納得してふむふむ肯き……ちょっと使えそうなもんが流れてきたら使えなさそうな人間も流れてきて已む無くということかと想像。
 視線が逸れるもので云わずとも察することもあった。
 察したところで別にいいのにーって感じであるが。

「いやー。とっとと治しとくべきだったよねー。お世話掛けましたー」

 唯一といっていい特技。回復魔法を発動させると、がくっとしたリアクションが見えて。
 あはは、とやや気まずそうに後頭部に手を当てて苦笑い。

「お陰様で! っくしゅ……でもせっかく助かったのに風邪ひいちゃあねえ……ともかく脱ご」

 と躊躇なく脱衣を開始すれば慌てたようにマントを広げて目隠ししてくれる。
 目線も外してくれているのが大変気配り屋さんな女神様である。

「えっ……あー。女同士じゃん? でもありがとー。――ってか、あは。そんな目ぇ逸らさなくたって……あ、いやお見苦しいか。こりゃ失敬」

 敢えて見たくはないかー。などとけらけら笑いながらマントで隠してもらうと濡れた衣服を身体から剥がすように脱いでいき。
 思い切りよく全部脱いでしまうと隠してくれてるマントをくいっと引っ張ってぐるっと身体に巻き付けるようにしてすっぽり覆い。

「よし、おっけ。もうだいじょぶだよー。ありがと!」

 にへ、とマントをしっかり巻き付けてすっぽり肌を覆い隠して新た笑めて一礼。

セニア > 「……ああ、成程」

スタッフといい、医療道具といい。
成程冒険者だったのか。
つまるところ、ヒーラーなのかと。
何と言うか、元気なヒーラーだなあと失礼な事を思ってしまいつつティアフェルを眺める。
元気になった所を見れば、何だかんだと動きやすい服装でもあるし……。
肝っ玉かーちゃんというかねーちゃんというかそういう雰囲気があるなと少しばかり。

「……ま、大体事情を理解してくれたみたいで」

彼女の言葉と腑に落ちた表情にやれやれ、と軽く肩を竦めてほっとしたような声をあげて。
頭もすっきりしたのか、大方此方が女神でも何でもないという事も理解してくれただろう。
大体柄ではない、というか慣れてないのだ感謝されるという事には。
ので、知らない奴に気を許したらひどい目に遭う、という事はわかっててほしい。

「そんだけ頭へのダメージが大きかったってコトでしょうよ。無理もないとは思うけど」

そもそもこっちもスタッフを拾っているのに気づかないのは若干慌ててたんだな、と今にして冷静になれば思う。
鈍ったかな……。
兵士時代で状況が状況なら死んでるなあ、明日の墓場入りはおめーだぞとか考えてしまう。

「……まあそりゃそうなんだけど……まずここは下流の水辺であって。近くにいるのは私だけとは限らないでしょうよ?あと……」

ちら、とティアフェルを流し見る。
無論、しっかりとは見るつもりはない。
シルエットだけ見ればちゃんと肌も白く、清楚さもあり、しっかりと女性らしさのある身体だとは思う。

「―――ちゃんと女性らしく綺麗とは思うよ」

などとコメントしているうちにマントを引っ張られる感覚がしたので手を離して。
しっかりと包まっているのを確認して。

「はいはい。もう一個の毛布敷いてるから、そっち座っておいて」

そう彼女に伝えれば、すっかりと濡れた彼女の衣類を拾い上げて焚き木の近くへ持っていき、乾かすよう干しておく。
ぱんぱん、と手を払い、これでよし、と呟く。

「しばらくはその毛布で勘弁してね……まあもう少しすれば……っくしゅ」

突然出たくしゃみで思い至る。
忘れてた、私も濡れてるんだったと。

ティアフェル >  ご納得いただけたらしい様子に。
 わたしも大分冒険者らしくなりましたかな…フフフ。と見当違いな認識を固めつつ。
 眺められる視線へ、へらへら笑いながら。ひら、と手を振って見せる。
 なんというか、ヒーラーらしくもなければ冒険者らしい緊張感は皆無である。

「逆の立場だと仮定すれば……想像に難くないよ。
 まー。ぶっちゃけガメちゃうよねー。死んでれば必要ない訳だしー。そのまま廃棄物になるよかねー」

 あっはは、わっかるぅ~。と至って能天気に肩を竦める前で笑う川流れ。
 流れて来た持ち物をどうこうしたって本当に罪悪感を抱く必要が微塵もないのだと思うかもしれない。
 ちなみに女神扱いは……そんなに揺らいでない。
 恩人認定は間違ってないのだし。

「フォローしてくれるなんてやっぱ女神じゃね? 優しい~」

 頭を打った影響なのは間違いないが。正味『バッカじゃねえの?』と一笑されてもおかしくないところである。
 なので人情を感じたようにまたキラキラした。親切な人には途端無謀になる危なっかしさ。

「今んとこ他にいなさそうだしさ。誰か来る前にぱぱっと脱いじゃったほうがいいかと思って。……ん?
 え、あー……いやーん、照れるぅ」

 ちらりと見やって云われたコメントにふざけ調子ながらさすがに照れた。
 やや紅潮しつつ、でへへとおどけて笑うのがまたアレなところだけど。
 さらに気が利くことに毛布をもう一枚敷いてくれているとのことで本当に頭が下がる思い。

「わあ、本当に何から何まで……恐縮過ぎる。あ、服まで……あ、ありがとうっ」

 脱いだ衣服はささっと回収してもらって干してくれている。どれだけ気配り上手なのか。やっぱり女神。と評価がうなぎ登り。

「うん、すぐ乾くと思うし……って、そっちも濡れてる……あー……わたしの所為かぁ……マジでごめん~……な、なんなら人肌で温めましょかっ?」

 逆に迷惑過ぎる。マントにくるまって毛布に上に座り込んで首を傾げたが、申し訳なさからのそれは多分ありがたくはない。

セニア > ……これは私でもでもわかる。
すんごい勘違いしてるな、多分と。
とはいえそこを突っ込むもの無粋かなあと思いつつ。
何も言わないやさしさ(つめたさ)

「まあそうなんだけど下手したら本当に死んでたわけだから気を付けてよね。後あんまし人は信用しない方がいいかなーとは思うよ」

はああ、と息を吐き、自分だけの命じゃないでしょうよ、と。
大方冒険者とはいっているものの……その日暮らしをしているこちらとは違う空気。
私は今を適当に生きれればいいが、どうにもティアフェルはそういう訳でもなさそうな雰囲気だ。
―――とりあえずその人懐っこさは長所ではあろう。
この時代にそれが長所ではなくなる落とし穴なんてザラにあるのだ。

「いや……その見苦しいワケじゃないってのを伝えたかっただけで」

同性でもセクハラだなこれ、とティアフェルの反応をみてあれだこれだと弁解する。
あーだこーだとやれ身体特徴やらどうやらと言い訳と彼女の身体のいい所っぽいのを綯い交ぜで羅列しているのだが―――長いので割愛する。

「そりゃあその恰好で干させるのも……病み上がりみたいなモンだろうし……」

ヒールは便利だが、所謂ダメージを一気に回復させるようにするものだ、と聞いたことがある。
つまり無理やり治している、と言えなくもない。
痛みはおさまっても、そのダメージからの本調子への回復というのはまた少しラグがあるだろう、と思っている。
と言ったり考えていたうち、こちらのくしゃみに反応する彼女を見て。
ふー……と一つ息を吐き。

「……これは先人の知恵(人生の反面教師)として聞いておいてほしいのだけれど」

少しばかり真面目な顔をして―――その次の瞬間にまたくしゅっと小さなくしゃみをして。
無言で火に近づく。
台無しである。

「女の裸は安売りしない。何時か本当に困った時に高く売るために。……いやそんな事無い方がいいんだけども」

髪を軽く梳いたりして水気を少し飛ばしたりしながら。
そこまで言っていやこれ真面目に言う事か?と思い直してはあと息を吐いて。

「こほん。まあ無防備すぎるのはよくないってコト」

口には出さないが、まー狙われるだろう。
この無防備さでこの身体つきなら、などと思いながら。

ティアフェル >  勘違いを突っ込まれないのでそのまま勘違いは続行していく。
 こうしたドライな優しさにスルーされて勘違いは根深くなっていくのかもしれない。

「っはは。疑った方がいいかどうかくらいはわたしだってわかるって。
 信用しない方がいいような人はさー。気をつけろなんて云ってくれないしさ。そもそも流れてくるのを拾ってはくれない」

 ご心配は誠に痛み入る所存だけれど。
 そんなに誰彼構わず油断かましている訳ではない。
 あなたは信用できると思えるのです、という言葉を秘めてに、と屈託なく笑いかけた。
 なんだかんだ親切で世話上手なお方である。この期に及んで警戒心剝き出し…も失礼だ。

「わーかってますってぇ。いやいやどうも。ありがと?」

 って云うのも変かもだけれど。
 セクハラ…には当たるまい。少なくともこちらがそう思わないのだから立件すまい。

「ふふふぅ~。お優しいですのう……わたし親切なひと好きー」

 とても思考回路単純。我ながら単細胞なこと云ってんなーとは思うがそうなのだから仕方ない。
 こんな今出くわした面倒な川流れを気遣って服を干してまでくれるとか。女神過ぎてどう拝んだらいいのやら。である。
 ……そんな女神さまに溜息つかせちゃってるが。

「ん?」

 なんだかくしゃみをしながらシリアスパートが入ってしまった。
 これは真面目に聞かねばか…と居住まいを正しつつ傾聴すると。
 うんうんと相槌を打って同意しつつ。

「大丈夫。安くも高くも売らないから。非売品だから。そもそも買い手の心当たりもない――けど、云いたいことはなんとなぁく分かった」

 ふむり、真顔で首肯しては要は心配してくれているのだと思わずにやついて。

「しかしね。姉さん。わたしはひとつお世話になった恩をちょっとばかしでも返せればっていうところで。それはまたそういうのとは違うし。あと、ノリノリで応じるどスケベな奴には云わないから」

 人見て云ってるから心配ご無用だよ、と注釈しておこう。

セニア > 「っ……まあそれならいいんだけども」

そのにこりとした笑いに思わず言葉が詰まる。
実にまっすぐないい娘だ。
眩しくて目が潰れそうである。
どうにも疑いすぎるぐらいが丁度いい世界だったものでその癖が抜けない。
いやでもまあ、私はそれぐらいでいいか、と思い直す。
彼女には必要が無い事でそれにこしたこたぁないのだ。

「ま、お節介が過ぎたかな。ごめんごめん。柄じゃないや、きっとそれでいいんだティアフェルは」

うん、と一つ頷いて。
はーと息を吐きがりがりと髪を掻いて。
肩から力を抜き、ジトとした目をティアフェルに向ける。
ちょっとした罪悪感から出たちょっとしたお節介。
これ以上は必要あるまい。

「そのまっすぐな好意は気恥ずかしいや」

好きと言われればたはは、と頬を指でかきながら笑う。
まあ言いたいことは何となく、理解してくれているようだし。
これ以上は言わないよと。

「……でも買い手無いのは流石にウソじゃない?だーれもいない訳?」

にたあ、とジト目を細めて笑う。
この笑い方が素である。
実際こんだけ可愛く、活発であればそれこそ引く手数多な気もするが、と。
ちょっとセクハラっぽいのである。

「そんじゃあまあ何かの折にお返ししてくれれば。貸しひとつ、って事で」

こういうコネと縁はいくつあってもいいからね、と。

ティアフェル > 「ご心配痛み入る。やっぱりあなたはいい人だと思うよ……で、わたしは信用できると勝手に思ってるけど。あなたはどう?名前、聞いていい?」

 最低限名乗るに値するとくらいは思ってくれているだろうか?
 じーっと視座を置いて尋ねては。
 それにしても彼女はなかなか苦労人なようであるな、と天性の楽天家は感想を抱く。
 川流れをわざわざ拾うとか余計な苦労を買って出ることも然りだ。

「お節介ではない。少なくともわたしはそう思わない。うーん、若干匙を投げられた感もあるが……ま、どうせわたしはこんな風にしかできないしなぁ」

 お前やばいぞ矯正しろ。と云われたところで難しいのである。
 顎に手を当てて微苦笑を洩らす。
 半眼を向けられて。あはは…とどこか気まずいように空笑いし。

「思ってることは云わんと伝わらん。変な奴に行き当たったと諦めて気恥ずかしがっててちょうだい」

 もう変な奴を拾った点については諦めもついてるかもだが。
 でも頬を掻きながら笑う表情は親しみやすさを覚えて、なんとなく嬉しくなって、っへへと笑みを深め。

「んー……そうだなあ、売る!と云った覚えもないからそりゃ買った!とはならない道理ですが……普段ゴリラと評判だし……」

 売り物じゃないって云ってるものを買いますよってくるど変態もそうそういない。
 先ほどと違う癖のある笑い方に、おお……女神さまがにやついておられる、とけったいな解釈をしつつ。
 
「うぃっ、ありがた~くお借りいたしました。このご恩は必ず、利子付けて返すぞー」

 元金だけ返すなんて真似は名折れである。利子付けてきっちり耳そろえてお返ししたいものである……けどその方法は今のところ見当たらない。

セニア > 「んん?……んんんー?」

え、と声を上げ、あれ、とティアフェルの視線に視線を絡めさせてぱちぱちと目を瞬く。
うーん、翠玉の瞳が非常に綺麗だ、とちょっとだけ全く別に事に思考を寄せた後。
名前……言ってなかったっけ。
……言ってないな。
それどころじゃなかったもんな。

「そいや言ってなかった……か。改めて。セニア。さっきも言ったけど冒険者と傭兵と後適当にやってるよ一応ね。まーよろしく」

一応、と言うのは酷く適当に稼いでいるからで。
真っ当に冒険者!!と名乗りがたく、とりあえず末席を汚している感覚である。
傭兵も登録はしているものの割と形骸に近い。
故にこうやって採取の依頼とかを受けているワケであった。

「匙を投げたわけじゃないよ。大事だって話。その真っ直ぐさもね……」

全てを端折りそれだけを彼女に伝える。
まあ煙に巻くかもしれないが、それを真っ当に伝えるのは何様だしバカ恥ずかしい話だ。
何せこちらも若輩者で。
それが肯定される世界を作るとも、否定される世界を壊すとも言えないものだ。
そんなことを考えつつ、気恥ずかしそうにそのまっすぐの視線と称賛にやはり視線をちょっと外しながら。

「……あーね」

何となく、そしてまた納得した。
それに納得するのは非常に失礼であるが。
つまるところ喧嘩っ早いのだろう。
性格的に後ろで留まって、というタイプでもなさそうで。

「怪我人治そうとしたりして、突っ込んでミイラ取りがミイラになりそうになったりしてない?」

と思ったことをオブラート無しで口にし、ま、じゃあ利子つけて期待してるよ?とにたーと笑いながらそう返せば。
ぶる、とまた身体が震える。

「……くしゅ。だめだな、私も乾かそう……ついでに水浴びするかあ」

流石に身体にぴっちり張り付いてしまったインナーが乾くより先に冷え込んできた。
そもそも水浴びしようとして冷えているのだからさっさと水浴びしてすっきりしてから温まろうと。
よ……っと、彼女の目の前でインナーの上をぐいいと脱ごうとして。
完全な特大ブーメランです。

ティアフェル >  名前を聞きそびれていたし、伝えそびれていたことにも今気づいてもらえたようだ。
 目を瞬く仕草は基本じとっとした半目気味の表情からはあんまり見受けられなかったので、そんな所作をするとかわいらしくも見えるもんだな、とこっちもそんな風に意識を持っていかれつつ。
 名前を聞くと肯いて。

「セニアさん。いい名前だね。よろしく。―――あはは、結構根無し草と見た」

 適当に冒険や傭兵しているということは、そういうことかもと見当はつく。
 地に足がついていないのは、冒険者としては多数派だ。
 今日もそんな風に流離った末、見つけてもらえたのだから文句は何もない。

「あは。そっかな。真っ直ぐッてか単純なだけだけど。あざっす」

 大して何も考えてないだけとも云うし。
 けれどもなんだか肯定的なご意見を賜ったように思えば気分はいい。認めてくれるのは女神様……もとい恩人様だ。
 気恥ずかしそうな様子はちょっとギャップを感じてやっぱりかわいいように思ってにやついてしまう。

「………見て来たかのように云うのはやめていただきたい! 断じてそんな……ことは……なぃ……」

 得心したような彼女からなにか明確な想像を以って語られるミイラ。一度語気強く抗議したが……否定しきれていないのが物悲しい。

 利息はばっちりつけて大恩を返す、と心に誓った直後。
 
「うそだろ」

 さっき見えないようにマントで目隠ししたり女の裸は安売りするなとか説法かましておいて――盛大に脱ごうとしてらっしゃる。
 まさか、そんな。と目を疑った。

「……わたしはいいけど、いいの?」

 同性だし気にしない……してたら公衆浴場とかいけないし。
 けど、ほんまにそれでええんやな?という空気。真顔で脱衣しようとする様子に尋ねた。目瞑ってるべきか。

セニア > 「そう、根無し草。一応宿はてきとーにとってるけど」

やる気が無いのでとりあえず生きてればいいやぐらいなのだ。
後は仕事終わりに一杯の……いや数杯のエールとおつまみ食べれば世は事もなし、である。
多分、やる気を出せばそれこそ多少稼げそうな気もするがもうメンドクサイ。
そして適当さが確かに幸いにも彼女の命を救っているので、縁と運はなんとも妙な因果もあるもんだ。

「単純、いい事だと思うよシンプルって事だし」

わかりやすい、裏表がない、真っ直ぐ。
好ましい気質だ、と少なくとも思う。
そういう奴にちゃんと相応に縁が集まるものだ。
妙にひねずに真っ直ぐに育ってほしい、とよくわからない親だか姉心みたいな気持ちと顔になっている。

「……」

彼女の抗議を聞けばじとりと無言で見つめ、これ以上はまた変にお節介になるだろうしとま、無理はしないよにねとだけ続けた。
恐らく気質的に黙ってられないしじっとしてられいのだろうし。
そしてそれは好ましい事だ。
無理無茶の度が越しすぎなければ。

「なんとですね」

うそだろ、という言葉を気にせずインナーを脱ぎ、さっさと彼女の衣服の横に干して。
流石に隠すべきトコは隠すが。

「私はいいんです。安売りはしてないけど」

理由になっていない理不尽を展開。
ざっざと水辺の方に歩き、アンダーやらも脱いでぽい、と火の方に投げる。
ぱさ、と火の近く、絶妙な位置に衣服が落ちて。
彼女からはマッパで仁王立ちして腕を組んだ後ろ姿が見えるだろう。

「そもそも水浴びしようって思ってたワケだし―――この辺は偵察済みだから多分誰もいないし」

気配も今は増えた様子もない。
きにしないきにしなーいと。
そもそも彼女は元々こういういい加減なのである。
ちょっとだけティアフェルの方に向き直りつつ。

「って事で私は水浴びをするから。温まっててねー?まあ一緒に浴びてもいいけど」

そういうとざぶざぶと水へと入っていくだろう。
彼女が女神とちょっと思ってた奴はいい加減な女だと思い切り叩きつけて。

ティアフェル > 「まー……冒険者なんて堅実な奴がやるもんじゃないしねー」

 適当に食っていける程度に活動する……そんな派閥も珍しくはないし。それに助けられた立場なんだからとやかく云うつもりは毛頭ない。

「うーん、肯定的ありがた」

 腹芸出来ないだけだけども、シンプルイズベスト…で好意的に解釈いただければ嬉しい訳で。
 やはり浮かれたようににへりと破顔。単純とバカにされることも多いゆえに。

 無言の圧。
 それを感じた様な気がしてなんとなく、ぅっと詰まる。
 無理はしないよう…と無難でもっともな一言をいただいたのでここは素直に「はい」と殊勝に返事をしておく。

「ぁー……そう……。いいならいいの、わたしはね。別に……わあ、思い切りいいねえ……負けるわ」

 目を点にしているとその前でぽいぽいと勢いよく脱いでいく。
 この人自分の言葉の説得力を今自ら粉砕しとるなとつくづく感じるし……今まで賜った言葉は一部ちょっと信用ならなくなっている。

 どうでもいいけど全裸かよ……と脱力気味にその後姿を見て思う。
 襲われたところで返り討ちにするという実力故の雑さだろうか。いや、でも見られはしそうだし。見た奴に文句は云えない状況であろう。
 
「うちは川はしばらくいい……し、さっき脱ぐなって止めといてそれはなかろう」

 さっき溺れかけた場所にまたすぐ入っていく気にはなれない。
 首を振って水浴びに川へ入っていく背を見送り。

「いやー……豪快だなあ……」

 昼日中に見目麗しい女性が豊満な肢体を晒してざぶさぶやっているのを直視しないようにしながら呟き。
 服がある程度乾くともそもそと着込んで、水浴びから大胆な女神さまが戻ってくるのを待つのだった――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川辺」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川辺」からセニアさんが去りました。