2025/07/12 のログ
エレイ > その後、何事もなく夜は更けていって──
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」からエレイさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 「妖精の泉」」にキタさんが現れました。
キタ > 心身共にボロボロだった。今神社を訪れてもいつ水に溢れ整えられていた手水舎に水は無く。
着ていた白衣、袴も所々破れ、場所に寄っては赤く染まっていた。
そんな身体を引き摺り、森の中を隠れて辿り着く泉。冒険者に、魔物に見つからなかったのは唯の運。
泥と血液に汚された白衣を脱ぎすて、新たな白衣の入った袋を置くと躊躇いなくその泉に身を投じた。

いつもならゆっくり、足先から、というにまるで飛び込むように。そのまま泉の中程まで。
身体の汚れを落とそうとするかのように両手が腕を、胸を、肩を、そして……身体を丸め足先まで……

そんなことをしたところで何かが取れるわけでもない、むしろ鮮明に刻まれた物を思い出す行為にしかならず。渇ききった身体にそれはむしろ苦行……。

「嗚呼……、欲しい……」

口元まで水に沈む。気泡が水面に起こり何事かを紡いだ形跡は見られるがそれは音にならず水に溶ける。
そのまま、水中で伸ばす舌。そこを中心にして水流が生まれる。
身体のサイズに見合わぬ程の水を吸い上げてゆく物の怪。普段であれば少し拝借する程度のそれが……

今は泉の水位を下げ、川に流れる水が少しばかり減った……。
そうして吸い上げるのを止めれば湧水の湧き上がる場所で、肌も露わにただ水に浮かぶ姿。

漸く落ち着いたように、赤い瞳にも生気が戻り。ただそれと同時に、噛まれる唇が強く、ぎゅっと……。

キタ > 吸い上げた水。落ち着いた事で戻ってくる思考。
長い長い吐息を零す。と改めて掌で肌を撫でてからゆっくりと岸へ向かう。

「嗚呼──、早く満たしてあげなくては……。」

渇き、潤いを求めている自身の分身とも思える手水舎へ、その根源へこの水を注がねばと。濡れたままの肌に纏う白衣と緋袴。汚れ破れた白衣はそのままに、キリっとした表情も戻った物の怪はその泉を後に。

程なくしてまた川の流れは戻る。自然はたった一人の物の怪には動じずいつもと変わらぬ姿を。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 「妖精の泉」」からキタさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  汗と血が止まらない。
 時刻は昼日中のこと。これだけ酷暑の陽気なのにガタガタ震えて、震えが、止まらない。
 額が割れて滴る血を止め処なく噴き出す汗が流して。目の中にまで汗混じりの血が入って沁みる。
 どくどくと脈拍は早く、ともすればはあはあと乱れた呼吸が洩れそうになるのを口を塞ぎ込んで耐え。
 一方の手は紅く鮮血が滲む脇腹を抑え。
 涼しい木陰を作り、蝉がやかましく喚き散らす大樹の陰で息を潜めていた。

 ――そうなった経緯は半刻程前に遡る。
 危険な魔物は出没しないとされていた樹海の浅い区画で簡単な依頼をいくつか抱き合わせてこなしている最中に。
 深部の危険エリアまで潜ったどこかの冒険者一行が、狩ろうとしていた大型魔獣を仕留めきれずに中途半端に手傷を負わせたらしく。
 手負いとされて激高した魔獣がその冒険者連中を恨んで追いかけて来たところに――不運にも出くわしてしまった。
 回復術士一人では無論手負いであろうともそんなものに歯が立つ訳もなく。
 急に襲い来た魔獣から命からがら逃げ落ちるので精一杯。

 不意打ちの初撃に致命傷を負わされたが即座に回復魔法を自らに施せはしたものの、咄嗟に魔力の制御が敵わず。その一度だけでかなりの魔力を消費してしまった。
 そして逃れる最中に爪で裂かれた腹側部と割られた額の傷は癒しきれずにそのまま流血を余儀なくされ。

 追って来る魔獣をどうにか撒いたかと思われたが、人間の身には酷く走りにくい森の中を逃げ回っていたせいで必要以上に消耗し、満身創痍でどうにか大樹の陰に隠れ潜んで。
 まだ周囲を探しているかも知れない魔獣に見つからぬようじっと身動きもせず太い根が地中に顔を出す広葉樹の根元で蹲っていた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にゼオンさんが現れました。
ゼオン > 冷気が漂う。
それは深手によって貴女が今わの際へ僅かに近づき感覚が研ぎ澄まされたからか、
寒気を感じ取った後に聞こえる、響くような重い足音が、深手の元凶の足音が近づいてくる。

それは思った以上に深く臓腑へ傷は届いていたのか、相対した冒険者達は深部に至るだけあってそれ相応に腕利きだったのだろう、
足取りは長い間を伴い、時折引きずるような音も連れ立って。

そしてもう一つ、風が流れ込む。
冷気と交じり合い、穏やかな涼風に変えていく暖かな風。
砂塵と草原の境目に伴うような斑色の風。

「……痛い目に遭わされたんだなぁ。ほれ、こっち来いって。」

脅威の気配に比べれば軽い足音。だが、木の根の陰にうずくまって尚、それが”そこにいる”と否応なく感じさせられる気配。
それが発する声は、おそらくはその脅威と相対しているのだろう。
覗き込むのならば、そこには褐色肌に金髪の男。浅い区画とはいえ王都の普段着にブロードソード一本だけ携えた場違いな風体。

異質と異質。
だというのに、双方の気配は昂ることなく、それどころか、脅威は、静かな鳴き声をか細く漏らして、
ゆっくりと暖かい風が流れる方向へと重い足取りを運んでいく。

「つまんねえよなぁ……。やりきれねえのに喧嘩売ってくんだろうによぉ。
 塒がどっちか、もう分んねえんだよな。よく頑張ったな。おめえすげえよ。」

様子を伺わなければ聞こえてくるのは何かを擦る音。それと魔獣らしき、鼻から呼吸を漏らすような音。

「……ほんと、よく頑張ったな。もう、休んでいいからな。」

その声と共に、鈍い破砕音が響き、大きく重い音が地に響く。
手負いの魔獣が昂ることなく、歩み寄って、すり寄って。
そして撫でていた男の手が首に回されて、太く筋肉が集約された獣の首をへし折って介錯して。

「ほんとクソだよな。つえー奴が弱い奴に群がられてよ。
 ……あ? ……ぁ」

死を悼み弔うように、魔獣の瞳をさすって瞼を閉じさせて、それから一息ついて立ち上がり、

貴女に初めて気づいたように多分、視線が合う。
冒険者で女性なら問題児扱いされる異端。
竜を殺し、魔族を弄ぶひとでなし。極度の女好き。
近づくなとも口々に揶揄されるならず者。
それが貴女に見られたかもしれないと思ったのか、まるでごろつきが路地裏に打ち捨てられた子猫を拾う瞬間を
誰かに認められたような気まずさが如実に表情から伺えて固まっている。

「えと、あの、え、怪我してる? え、あ、だいじょぶ? 手当しよか?」

目が泳いで声が震えて明らかに落ち着かない様子で。
あと許可を得るまで近づこうともしない。
少なくとも、女性に対して己の評価を弁えているように。

ティアフェル >  血も汗も流れすぎてもう朦朧とし視界がぼんやりと霞んできた。
 だめだ、と思っても瞼が重く目を開けているのも大儀に感じて。

「―――……?」

 気を抜けば遠のきそうな意識を必死で繋ぎ止めている、そんな時のこと。
 異質な空気の流れをほんのりと察知し。
 ずるり、ずるり、重たげに這うように進む魔獣の足音の他にもうひとつ……森の獣じゃない二足歩行の安定した人の歩速である。
 それが手負いの魔獣へ近づき声をかけている、という酷く異様に思える音が隠れ潜む大樹の陰からも聞こえ。

「……………」

 飽くまで口は塞いで不用意にも声を出さないように留意しながら。
 魔獣をまるで宥めるような……傷ついた犬猫へでも優しく語りかけるような声に、そおっと……顔を木の陰からの覗かせて茂みの合間から窺い見る。

「…………!」

 大振りな刃……十分な得物を背に追った大柄でどうも年若そうな青年。
 声の感じや顔の造作からすると自分より年下にすら見える。
 自棄に軽装なその彼が魔獣の意図を汲んだかのように穏やかに語りかけて――

「っっ…!」

 素直にそちらへ寄っていく魔獣の首をひと思いにへし折った。軽々といとも容易く。
 まるで少し太い枝でも折るくらいに簡単そうに。
 口を両手で覆って額と腹側部から血と汗を流しながら思わず瞠目して硬直していると。

 一部始終を窺っていたこちらと視線がかち合い。思わずびくりと肩を跳ねさせる。

 やばい、次にへし折られるのはわたしか…!?と危機感を抱き、思わずざり…と後ずさりかけて背にしていた大樹に当たって止まるが。
 しかし、手傷を負ったこちらを認めてそちらから発されたのは気遣うような声と無遠慮に近づいてこない距離感。
 無意識に目をぱたぱたと瞬いて。
 じ…としばらく黙りこくって褐色肌の青年を見つめると。そろりと口をふさいでいた手を下ろして。

「………怪我は…してる……手当……、でき、るの……?」

 見たところ癒やし手とは程遠い。物理で物をいわせます!といった風体の彼の様子。
 小首を傾げては。

「てか……なにものよ……とんでもなくチートなのはようっく分かったけど……なんだろ、やべーやつ?」
 
 ほとんど独り言のように思わず本音がぶつぶつこぼれてしまう。

ゼオン > 怯えた目を見る。手負いだからしょうがないし、多分、今介錯した魔獣の巻き添えにあったのだろう。
鼻をひくつかせれば奥から血の気配が続いていたことを悟って、それから気を落ち着かせるように深呼吸。

改めて相手を見る。明らかに魔獣へ深手を負わせた相手じゃないのも分かる。

「なんもしねーって。こいつもう絶対死ぬのに見逃しても辛いだけじゃん。
 治療は出来る。ほれ。あと、手負いの女とヤる趣味ねーから。」

ぶっきらぼうに、しかし言葉を受け止めれば端的に必要な情報だけを投げかけ、それから掲げた弦手に淡い光を宿して見せて。
何故殺したのか、何故距離を保つのか、治療できるのか、そしてその証明。
応急処置の声かけとしても適切に対応をしながら貴女の警戒を尊重して距離を徐々に詰めて。

「傷痕見ていいか?」

最後に距離を詰める一歩手前で最後の断りを入れながら、淡い光を宿した手からは事前の応急処置として範囲回復の術法が流れ出して僅かに血が止まり始めていく。

「んだ、警戒してんのは殺したの見たからだけなのな。まあその方がいいや。
 俺ゼオンての。こっちの国じゃ冒険者もやってるよ。
 今日はアニキ分から薬草取ってきてくれって頼まれたんだけどな。

 ……多分、あいつの縄張りの中にあったやつなんだろうけど、今日はなんかテンションがた落ちなんだわ。」

許可を得れば、無為に回復を行わず、着衣の傷口に張り付いてる部分を避けて血を拭い、
ズボンの後ろポケットから合わせ貝の軟膏入れを取り出すと、染みるからなと断ってからまずそれを塗る。
それだけで痛みが引き、血の気が巡っていくのを感じるだろう。
それから、改めて回復の術法を施していく。
分類は自己治癒の増幅。軟膏はおそらくそれに必要な栄養、触媒。

「名前と帰る家分かるか? どっちも分かんねーなら強めの術かけるから。」

ティアフェル > 「…………なんもしなくはないんでしょ? 手当、してくれる気、なんだよね?
 あー……悪っぽいやつがちょっと善行積むと過剰に良く思えるという構図をわたしは今見てるのかぁ。
 や、治療してもらった後、手負いじゃなくなったらヤります!とかも困りはするんですけども」

 ぽり、と頬を掻き。なんとなく毒気を抜かれたような気になる。
 見た目よりいい奴パターンらしいし、気遣いも感じる。
 なんか、感心した。し、淡く宿る光の性質は――知っている。
 自分の操るものと性質もよく似ている……、それは癒やしの力だ。
 しかし似合わねえ…と内心でまあまあ失敬な思考を過ぎらせつつも。
 
「うん。正直ぼーっとするの。あっついし…血も汗もだくだく……まじでたすけてー……」

 流れ出した血が彼の生み出した光で止まっていく。ほぅ、とそれ以上の流血を防いでもらって少しばかり安堵の息を吐く。
 緑の目はぼう、とやや眩んだように力なくて。そろそろ本気で助けを求めたくなってきたらしく、弱々しいながらも。少しばかりおどけた調子ながらも素直に助力を請うた。

「いやぁ……魔獣殺してなくっても知らない相手に警戒はするでしょー…?
 いちお、わたし今極限ですし……誰であっても容易く負けるコンディションですしぃ。
 ゼオン……? 冒険者か、ご同輩だね、よろしく…、わたしはティアフェル」

 テンションガタ落ち?普段のテンションを知らないがそうなのか、と肯きつつも。
 力が入らなくて気だるそうに大樹の幹に背を預けていると、手際よく衣服と皮膚の裂けた腹側部の血を拭い、膏薬を塗布する手つきを、慣れてるなと感心しながら大人しくされるがままに眺めていたが。
 膏薬が染みると表情を歪め。
 回復魔法が効いてくると大きく息を吐きだして大分表情を和らげて。

「っ……た、しかに、染みるなぁ……っぁ……ふ……あ~……大分、楽、なってきた………ありがと、助かった……。
 わたしは迷子の子猫ちゃんではにゃいぞ。見たとこ君より年上。舐めてもらっちゃ困……いやここどこら辺だっけ…?」

 一人で帰れるやい、と云おうとしてはたりと気づく。デタラメに逃げ回っていたせいで現在地を見失っていることを。

ゼオン > 「しねーわ。ひとでなしか。いやちげーわ、世間的にはひとでなしだわ俺。」

なんだ元気かこいつと、投げかけて来る言葉に対して露骨に”俺助ける側なんですが”と分かりやすく感情が浮かんでる。
なんならほんとならヤりたい顔じゃある。スタイルもいいし。
でも、そう言う気分じゃない。
どちらかといえばこんな気分にさせた原因(魔獣を殺しきれない雑魚)を握り潰したい感情が強くて。
きっと相対したら面白い相手だったと思う。だから、その介錯をしただけで萎えてる。

「汗と熱がある内はやばいようで大丈夫だよ。体が生きてる証拠よ証拠。
 分かってるって。」

限界のその先のように思えて、それでも大丈夫と言う言葉には適当な軽さは伺えない。
そういう軽率な言葉はそれだけ命を生還から遠ざける。
僅かな差異が、時に致命的な境界を生むことを知るように。

「ま、この国そう言うところあるよなー。自分が手負いにした相手ならともかく、転がされてる女にも群がるんだからな。
 ……コンディションのわりには俺より口軽くない? まあ致命傷じゃねーしそんだけ声通ってりゃ大丈夫か。

 ……は?」

よろしくと言われて名前を聞いて一呼吸。治療をする手から流れ込む術法は、もし読み取るならこの国の一般的なものとは違う。
どちらかと言えば受けるほどに先ほどまで帯びていた熱と汗が大きく巡る。
賦活。骨から血へ、血から臓腑へ、臓腑から肉へ巡っていく、法術等より原始的だが、
大系めいた合理性が伴うそれ。

それを止めないまま、あなたをじーっと見て。

「え……、ゴリラじゃねーじゃん。え、どういうこと? ゴリフェルじゃねーの?
 は、え、ゴリラどころかマジではねっ返る美女じゃん。えー……。」

困惑した表情からクソみたいな評価が溢れてきた。

「ん? あー、まあ駐屯地から大分遠いぜここ。中層より。治療しなくても気合入れたら帰れると思うけど、
 さっきの感じからしたら多分迷って死んでたんじゃね?」

あっちあっち、と、街道沿いのギルド出張所らしい方角を指さしながら。