2025/06/27 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川辺」にキタさんが現れました。
■キタ > 陽も沈み、辛うじて月明かりが木々の無い川辺を照らす。街道から少し奥まった場所に位置し湧水の混じる水は澄んだもの。
そんな川辺に不釣り合いな巫女が一人。街道から抜ける獣道を背にして膝を付き赤い糸を垂れていた。
一見したところ釣りを楽しんでいるような光景に見えなくもないが、もし近づいて見るものが居たのなら驚愕か、恐怖か、気味悪さか……
いずれにしても奇妙な違和感を覚えるだろう。何故なら、その赤い糸は紛れもなく女の口から伸びている。
「────ハ、 ァ…… 」
うっとりとした吐息が零れる。冷たく、清い水は甘露にも似て。
余すところなく持ち帰りたい。吸い上げてしまいたい……、そんな物の怪としての欲求。
舌先を通して身体の内へと貯め込まれる液体は無尽蔵に、しかし度が過ぎればそれはいずれ飢饉を生み、多くの民草を困窮させる。
そんな葛藤に苛まれながらも、まだ舌は湧水を求めていた。
やはり何よりも強い物の怪の本能と、奪えるならば奪ってしまえという奪われた女の怨念。
それを止められるとすれば、身の危険か、それとも他に興味を引く何かの存在だろうか──。
■キタ > 「ン──ク…… ン。」
こくん、喉を鳴らす。シュルシュルと水中に伸びていた赤い舌が口内へと納まった。
その勢いに飛び散った飛沫が緋袴を点々と染め上げ白い布地にうっすらと褐色の肌を透けさせた。
そんな飛沫の跡もこの暑さをもってすればものの数分持たずして乾いてしまうのだけれど、川辺で正座になり流れる水面を見つめる巫女には些末な事。
湧水で満たされた身体が、吐きだす先を求める衝動。しかしながら自らの居場所たる神社、その手水舎までは随分と距離があり。
「ふふ……、やはり求めるだけではいけません。求めるだけでは──。」
誰も居ない、水の流れと虚空へ溶ける独り言。正座のまま足先に手を伸ばし足袋を脱いでゆく。
揃えられた草履と足袋、ゆっくり立ち上がるとその足は冷たい水の中へ。緋袴が濡れるを厭う事なく。その深さが脹脛程度までになった所で足を止めると。
チョロチョロ──
水の流れる音に混じり聞こえる音。袴と其の内にある白衣を少し持ち上げて吸い上げた水はまた水へと還元されてゆく。
川辺での放尿。倒錯した光景ではありながら、長い長い時間をそうしていた。人ならざるもの、それが流す豊穣の種。
希釈されはするだろうが、その水は確かに、魚を肥えさせ稲の頭を重くする。
それでもすべてを還元しないのは、手水舎の湧水に分けたいから。
何も知らぬ者が見たなら、水に浮かぶ月明かりの巫女。多少は神秘的な装い。
■キタ > そんな、物の怪のほんの気紛れ。
たっぷりとお返しをした湧水の源。残りは頂きますとそのまま水辺に上がる。
たっぷりと染み込んだ緋袴をそのままに溶けるように闇へと消えてゆく。
新たに手水舎から湧いた水はたいそう甘く、土地を潤す事となったはず。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川辺」からキタさんが去りました。