2025/06/06 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にカロンさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にヴェスタさんが現れました。
■ヴェスタ > 脅しをかけて、逃げ始めたのを追いながら。
ちょっと怖いと言う少女の様子を、ちらりと見れば至極真面目に頷いている。
「それで良いのだ。危険なモノに対する防御反応のようなものだからな、全くそれが無いより怖がる方が自然なんじゃぁないかね。
慣れろと言っても、平気になれと言う意味ではないしな。折り合いをつける、とでも言うのかね」
怖いものは怖いもの、危ないものは危ないもの、その上で対処できるように自分を鍛えたりなどとすれば良い、と。全く怖がらないようになると、今度は引き際を誤るような事になりかねない。
「うむ、この依頼中は仲間であり助っ人のようなものでもある、頼っておけ。ま、依頼後は――
……おっと、増えたかねぇ」
無事に依頼が終わった後、今度は襲う側に……などとからかってやろうかと思ったのだが。
そういう系統の揶揄が全くわからず素直に文字通りの意味で受け取りかねない子であった、と思い出して、言わずにおいて。
話を誤魔化すのに丁度よく、追う先の気配が増えたように感じ取り。傍らの少女の方も足を止めていたから、なるほどきちんと追えているのだな、と感心もしながら自らも歩を止める。
「んん〜む。……三匹になったかねぇ。これで巣の前、なら三匹で済むかは怪しいが、そうでなくとも方向は概ね解った、で良かろう。
――ここらでやっつけておくかね。どの道、あちらさんも似たような腹積もりらしい」
向こうの気配の方も一度止まったあと、増えてから近づいている節がある。これで此方が隠れ直す、と言う意味もあるまい、と。
■カロン > 恐れを持って、その上で慣れろと。折り合いと言われても、それをどうつければ良いのかわからず、少女は迷いながら頷くしかなかった。
圧倒的に足りない経験は積み上げるしかない。机の上で語られる理論や仮想では得られないものを、こうして一歩ずつ踏みしめ、見つけたもの、知ったことを拾い上げて。
怖いものは怖いまま、それでも止まらないでいられるように。
「……はいっ」
この依頼が済めば、仲間ではなくなる。優しく面倒を見てもらえるのは今回限りである。
そう言葉を受け取り表情を引き締める。
簡単な討伐依頼くらい、一人でもこなせるように。
ヴェスタさんに安心してもらえるように。
頑張らなきゃ――
「目標の三体にはなりましたね。移動する様子は、今のところなさそうですが……。
近くに巣があったら、応援を呼ばれてしまうでしょうか? 腹積もり……ですか? えっと……」
このままどんどん増えたらと恐ろしい想像をしていた矢先、首を傾げかけ、すぐに言葉が止まる。
糸を絡ませた一匹が引き返してくる。おそらく、他の二体を引きつけて。
「えっと、えっと……ヴェスタさん応戦の準備を! わ、私も魔法で――迎撃、しますっ!」
慌てそうになる気持ちをどうにか抑え、リーダーとして指示を出し。
一度は支援をとも考えたが、ここは攻撃を選び杖を構え気配のする方へ視線を向ける。
■ヴェスタ > 少女の胸の内でいかなる葛藤があったかは推し量るのもまた難しいが、引き締まった表情を見せているのを、うむ、今はそれでよし、と頷いてやりつつも。
「もし応援でも呼んでやたら増えるようであれば、その時はおじさんが依頼そっちのけで大暴れしておくから、どうと言うことはなし」
ただ付いてくるので精一杯、でいつのまにか片付いていたとならぬよう、多少の手加減はするつもりでいるのだが。そうも言ってられないようになれば少女の身の安全の方を優先するのは当然の考えで。
三体ぐらいであればどうにでも、ではあるものの向こうは加減するつもりなど毛頭ないのもまた当然の話し。
さて普段であればこのまま徒手で迎え撃つ所だが――と顎を撫でながら一瞬の思案。
「……お、その心意気や良し! 見事仕留めて見せいッ!」
迎撃、と後ろがしっかりやる気を出している、であればこちらも気合を入れてきっちり締めてやらねばならぬ。
前傾姿勢で背中の剣の柄に手を掛けて、すぐ目の前、と言う気配を睨みつけ。
……木立の間から飛び出してくる、まず一体。既に向こうもやる気、粗雑な手製の棍棒を手に殴りかかってくるのを、流れるように背から抜いた剣で受け止めて。
すぐさま二体目と三体目――の、姿が見えた頃には、その二体目に向かって最初の奴が思い切り突き飛ばされて宙を舞っている。
衝突して転倒、その横で一瞬たじろぐ三体目が隙だらけ。
■カロン > 「で、出来れば穏便に済むように、静かに、素早く! ですね?」
巣が目の前でもない限りは、コボルトよりも黒豹の脚を持つ彼が止めてくれる。そういう期待をやっぱり持ってしまう。
最悪の事態にならないことを祈りつつ、こんな冗談めいたことを言って励ましてくれる相手に感謝した。
「はいっ! が、頑張ります……っ」
鼓舞され勇気をもらい、頼もしい背を視界に捉えながら魔力を練り上げる。
魔力の消費は最低限に抑え言葉を紡ぐ。
目の前では、飛び出してきた一体の棍棒を受け止め、彼が軽々と押し返し後続の行く手を阻んでくれる。
「生命の根源 清らかなる天の恵みよ 我が手に集いて力となり 大地を穿つ砲撃の雨となれ」
淡い光を伴い焦らず成せた魔法は、人の頭程度の大きさの水弾を複数空中に生み出すもの。
それを杖が向けられた先へ砲撃の如く。
「【aqua bullet】」
――打ち出す。
殺傷能力は低いが、小さなコボルト相手なら体勢を崩すも、動きを鈍らせるも、視界を奪うも同時にこなせる。
三体の魔物目掛け水弾が降り注ぎ動きを止める。
手練れの彼ならば、その隙をついてあっという間に片付けてしまうのだろう。
■ヴェスタ > 連携して動くのであれば、突出しすぎず、相手のみならず味方の出方にも合わせるもの。
矢継ぎ早に三体の動きを抑え、丁度ひと固まりになった所で、迎撃宣言していた後衛からの魔法が飛ぶ筈、とゆらりその場で低い体勢での構え直し。
「ほう、更に拘束、と来た――」
前がしっかりと足止めをすれば、その間隙をついて術者はしっかり詠唱できると言うもの。
後ろの視界確保の為に低く構えた体の上を、水弾が次々と飛び込んで行く。
既にもんどり打って起き上がるのをもたついている二体は当然避けようもなく、残る一体も不意を突かれた形でまともにその水弾を受ける。
出会い頭に足止めを食らった所へ、追い打ちで拘束していく魔法を見、ほう、と感嘆を一つ漏らした頃には。
複数飛んだ水弾の仕上げとばかりに軌道を合わせ、黒い毛弾――こちらは殺傷能力の塊、のようなものが飛び込んでいる。
面食らっている三体目の顔面に吸い込まれるように、蹴りの直撃、もとい着地と言うようにほぼ踏みつけて行っている。黒毛の塊が地に足を付けたやいなや、三振りの銀色の軌跡が流れて。
戦いにまだ不慣れであろう少女にすら、目で追えないような速度ではない、太刀筋も実直にまっすぐ、しかし良く鍛えられた業物の剣と、よく鍛えられた歴戦の肉体から繰り出されるそれは一振り一体、三振りできっちり三体、それで戦いは終わっているのである。
「……うむ、すまんがな。俺がこれを抜いた時は、斬り捨てると決めた時だけ、でね」
などと、地に崩れたコボルト三体に軽く手を合わせてやる余裕すら見せていて。
■カロン > 選んだ魔法は必殺ではなく、必勝に繋ぐための攻撃。
万が一にでも彼の背を撃ってしまうかもと思えば、使える魔法は限られた。その中で、更に森に被害を出さないものとなるとこれ一択である。
初めてのチーム戦として、やれることはやった。……と、思う。
宙に浮かぶ水が弾切れを起こすより少し早く、砲撃に紛れて飛び込んだ黒い影をコボルト達の目は追い切れず、まさに成すすべなく踏みつけられ、それぞれ一太刀で討ち取られてしまうのだった。
それを後ろで見守っていた少女は、目にもとまらぬ早業に息を呑み、握った手に力を込めた。
これより上があると聞けばさぞ驚くことだろう。
「わぁ……っ!」
あっと言う間に魔物たちを片付け、そんな彼らにも情けを掛け拝む姿に少女の胸は熱くなる。
夢にまで見た冒険の一ページが今目の前で書き記された。そんな感慨深さに胸を震わせ、ちょっとその場で飛び跳ねたくなる気持ちを抑えつつ、ゆっくりと近付いて動かない三体を見下ろし、手を組み簡易的ながら祈りを捧げる。
「ヴェスタさん、お疲れ様です。もう大丈夫……でしょうか?」
巣が近くにあるなら、一度離れるべきかと辺りを見渡して。
■ヴェスタ > 大抵は素手のままで何とかしていて、剣を抜くのは――本気の戦闘、の時ぐらいなのだが。万一の事を考え、少女に被害が出る前に片付けるべく抜いた剣。
ゆえに、見ていた少女からは歓声が上がったりするぐらいには、この獣人男の本当に怖い姿を見せずに済んでよかった、と内心ほっとしているような心持ちでもあった。
格好付けたがる剣士などであれば、剣を回しでもしつつ鞘に収める所なのだろうが。
この男の方はと言えば、んん〜……などと唸りつつ持ち上げた剣の角度を変えながら、血糊など残っていないか確かめては、取り出した荒布でしっかり拭き上げたりなどしている。質実剛健な旅慣れた者であればこそ、使った剣をそのまま鞘に入れて痛めるような事はしないのである。
「カロンの方も……いい魔法だったぞ。
あれだけ敵さんが止まっていれば、後は容易いものだ。いい連携が取れたのではないかね」
手入れの合間、近づいてきた少女には笑みを見せながら、しっかり腕前を褒めてやり。
共闘にならねば意味がないのだから、ちゃんと貢献できていたぞ、と言ってやるのが自信につながるだろうし、実際しっかり戦えていたのだからお世辞と言うわけでもない。
「……うむ、ひとまず近くにこれ以上はおるまい。三体も仕留めていれば、成果としては良いのではないか?
来た方向、進んだ方向――巣も、あるとすればこのまま向こうだろうが、依頼内容としても殲滅ではないからなぁ、そこまで危険を取ることもあるまいよ」
暫し、鼻先を動かしたりしていたが。今のところ周囲は問題なし、と感じているようであった。
■カロン > 素手での応戦になっていれば、それはそれで見ごたえある者になっていたかもしれないが、この少女から上がるのは歓声でなく怯えの籠った悲鳴となっていただろう。
それくらいにはギャップがある。
剣士にとって剣は相棒。
大切にしている姿はそれがより良く見えて、血を拭い剣を納める様子を、どこか嬉しそうに頬を緩め眺めていた。
笑みを交えて褒められれば顔を上げ。
「ほ、本当ですかっ? 良かったぁ……えへへっ」
嬉しい気持ちが抑えきれずに、へにゃりと笑って肩の力が抜ける。
あれだけ凄い身のこなしをする剣士に褒められるなんて、身に余る光栄と言う奴で。
緩み切った頬がなかなかなおらず、両手で摩りつつ。
「そう、ですね。もともとの目標は3体討伐でしたから……」
ようやっと頬も戻り、真面目な顔が出来るようになって、顎に手を添えて思案する。
そして、迷いながら。
「目に見える危機に飛び込むのは無謀だと思うのですが、その……危険に、身をおいてこその冒険者なのでは、ないでしょうか?
こ、今回はヴェスタさんと言う頼もしい助っ人もいますので! えっと、その……もう少しだけ、駄目……でしょうか?」
最初は顔を上げ、目線を向けて話していたが、途中から徐々に逸れて声も一緒に小さくなって。
おどおどと視線をさまよわせながら、最後は恐る恐る尋ねる。
■ヴェスタ > 「うむ、俺としても後衛が居る場合の間合いの取り方だとか、単独旅では得られん経験になるからなぁ。護衛依頼みたいに後ろは全く戦わん、などと言う場合ともまた違ってくるからな」
自分を時折おじさんと揶揄する事もあるぐらいで、それなりの歳であるから当然ながらチーム戦も何度もしてはいるのだろうが。
それでも基本は一人を好む、ゆえにこうして時折仲間を置くのは勘を維持する意味でも自身のためになっているのである。
加えて傍でこう可愛らしく喜んでいるような少女の姿があれば、気持ちの方も和むと言うもの、それもまた有り難くも思っているのだ。
「ひとまず、こいつらの尻尾は取っておかねばな。
――で、なるほど先へ向かう、とな。それはカロンがそう決めるなら構わんぞ。おじさんとしてはそのぶん、後で何かわがままの一つにでも付き合ってもらうので良し」
今の戦い程度では、この男にとっては小競り合いと言うぐらい、余裕はまだまだあるのである。
少女がしっかりやる気を出しているのだから、そこはこちらも気の済むまで付き合ってやろうぞ、と頷いて。
忘れないうちに依頼達成の証であるはずの尻尾切りなどを済ませながら。ふと思いつきで、帰ってから何かねだってやろうか、などといたずら心をわかせたようで、ニヤリとしながら見ている。
「戦いになっても、何度も言うように俺が何とかするが……あまり最初からそれをアテにしすぎて無茶な作戦は立てるんじゃぁないぞ。
――と言っても今はまあ、あまり気にしすぎず気の済むようにしていいがね」
■カロン > 「そうなんですね。えっと、少しでもお役に立てているなら、私も嬉しいです。
ヴェスタさんはいつもはお一人なんですか?」
ふと、気になったことを何気なく尋ね首を傾げる。
冒険者のことは少しだけわかるようになってきたけれど、傭兵のような人たちのことはまだあまり良く知らない。
一匹狼ならぬ一匹黒豹であるとは思わずに、普段はどんな感じなんだろう?と想像を膨らませるのだった。
「あ、そ、そうでした。尻尾……うぅ……」
思い出せば、眉尻を下げ弱々しく声を漏らす。尻尾を切り取ると言う作業は、少女にとって今回の依頼の中では一つのハードルとなっているようで、先を切り落とすだけと分かっていても少し顔が青くなるか。
「――あ、えっと。じゃあ、もう少しだけ進んで巣を見つけたら帰ると言うことで。
ヴェスタさんには沢山お世話になっていますから、一つと言わず、二つでも、三つでもわがままを仰って下さいっ。
……私が応えられる範囲で、になりますが」
そこはお手柔らかに。と付け加えて笑って見せた。
哀れ、尻尾を切り取られたコボルトには、最後にもう一度手を合わせて。
「はい。承知いたしました。
……とは言っても、巣はもう近くかもしれませんし、中に入るわけでもないですから」
こっそり探して、見つけたら引き返すだけの簡単なお仕事。
うっかり見張りに見つかるか、他の魔物に出くわすような事でもない限りは、安全に街へ帰ることが出来るだろう。