2025/06/01 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」に枢樹雨さんが現れました。
枢樹雨 > ゆらゆらと、実体なく空中を漂う妖怪。
人々が行き交う街道を見下ろし、其処へと降り注ぐ陽光を見上げ、眉根寄せたのは数十分前のこと。

妖怪が降り立ったのは、青々と茂る木々の下。
それを見ていたのは羽休める鳥か、木に土に巣をつくる虫たちか。
何も無かった空間に靄がかかり、異国の衣装身に纏う女が現れる。
人間の目で、指先で、存在を認識できる状態。
そう成った妖怪は、木々の隙間から僅かに落ちる陽光を見下ろし、ゆっくりと歩き出す。

異国の履物が、草を踏み人の歩いた形跡を残す。
それが向かった先は、澄んだ泉の畔。
湧き水が作り出した小さな泉は、動物達の水飲み場にもなっているのだろう。
兎が二羽、毛づくろいし合う様を横目に、妖怪もまた泉の縁にしゃがみ込む。
不思議と兎は逃げ出す様子もなく、妖怪が其処に在るのが当然の様に毛づくろいを続けていて。

「………」

伸ばした白い手。
長い裾を右手で押さえながら、左の手をそっと泉に浸す。
ひやりと冷たい温度に前髪の下の双眸細めては、安堵するようにそっと息零す妖怪。
次いで下駄を脱ぐとその場に尻をついて座り、真白の足袋も脱いで素足を晒す。
袖と同じく長い着物の裾。それを膝上までたくし上げれば、今度は脚を泉へと浸して。

枢樹雨 > 澄んだ泉の水面に波紋が広がる。
その下でゆらゆらと上下に揺れる妖怪の脚。
足先が少しだけ水面から顔を出せば、ピチャン――と水が跳ねる。
其れに反応を示した兎の黒い瞳と目が合うこと数秒。
大きな後ろ脚で地面を蹴った兎達は、茂みの中へと姿を消してしまう。

訪れた静寂。心なしか下がる妖怪の眉尻。
泉の涼に癒された時とは違う、小さな溜息。
妖怪は再び脚を揺らし、水面の波紋を広げ、水を跳ねさせ遊ぶ。
そうして数秒後、妖怪の右手が持ち上がり、黒い靄に包まれていく。
黒靄はじわじわと広がり、楕円の形を作り、底の見えぬ穴を作る。
其処へ沈む白い左手。戻って来たその手には、茶色の紙包み。
黒靄はあっという間に霧散し、紙包みだけが妖怪の手に残る。

膝の上で広げられた紙包みの中には、シンプルなパウンドケーキが数切れ。
そして透明な瓶に収められた琥珀色の蜂蜜。
瓶を開封した妖怪は人差し指で蜂蜜をすくい上げ、ぱくりと口に含み。

「………甘い、」

仄暗い蒼の双眸が見開かれる。
ゆっくりと数度瞬き、薄い唇から指を引き抜くと、木々の隙間から落ちる陽光に蜂蜜の瓶を透かして。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にエズラさんが現れました。
エズラ > 茂みの奥。
弓に矢をつがえた男が、気配を殺して一部始終を見ていた。
最初は森に入って今夜の得物を探していただけのこと。
手頃な野兎を目の端に捉え、追った先にいたのは。

「……なんだ今のは……――」

思わず喉の奥から声が漏れる。
最初はその存在に気づくことができなかった。
“目の前にいたのに”――
野兎が茂みに消えたあたりでようやく気づいた“それ”は、まず間違いなく人間の女の姿を取っていたが――
異様な術か、無の空間から取り出したのはしかし――

「……飯か?」

茂みの奥でずっこけそうになる。
妖魔の類か、単なる魔術か――
ともかく、まとう空気が異様なため、次の行動の一手をいかにすべきか、思案しているのであったが――
不意に、矢を背の矢筒に戻し、その場で立ち上がる。
ちょうど相手の方からも男の姿が見えるであろう。
なぜ――自問自答するが、答えは一つ。
その美しさに魅入られたからであった――

枢樹雨 > 店主が曰く、ケーキだけでも美味しいが蜂蜜をかけるともっと美味しい…とのこと。
瓶から蜂蜜を垂らすか、それとも小さくしたケーキを瓶の中へと浸すか、どうしたものかとしばし膝の上の甘味と睨めっこをする妖怪。
その最中、不意に茂みが音を立てれば、反射的に持ち上がる視線。
兎が戻って来たのかと、その予測は一瞬にして崩れ、視線の先に立つ長身の男性の姿に瞬きを数度。
鬼角を隠す白絹が穏やかな風に揺れると、共に長い前髪も揺れ、驚きの色を乗せる双眸が覗き。

「………誰?」

警戒の色はない。
死の概念を知っていながら死を危ぶむことを知らぬ妖怪は、ただただ突然現れた存在に首を傾げる。
いつの間に近くに来ていたのかと、しばらく見られていたとも知らずに、真っ直ぐに貴方を見つめる。
しかしその身に担いだ矢の存在を見つければ、気ままに水の中で揺れていた脚を止め。

「…私は、…食べて美味しいものではないよ、」

よもや狩りの対象となったか。
そんな少しの警戒のもと、小さく顎を引き、淡々と抑揚のない声で伝え。

エズラ > 立ち上がり、しばらくの間視線が交錯する。
年の頃は自分よりも一回り下というくらいか。
身に纏うのは異国の装束――見たことはある。
しかしその頭から伸びているのは紛れもなく人外の証。
不躾な観察を続けていると――

「ああ、いや悪い――」

手に提げていた弓に気づき、肩に担いで空手の両手を宙に掲げ、敵意のないことを示す。

「獣を追って森へ入ったモンだ――あんたを撃とう、てんじゃあない」

泉の淵を歩いて、少し相手との距離を詰めて。
その女の醸し出す異様な雰囲気は、人間と異なる種族に興味を惹かれる、という男の性質を刺激した。

「ただ少し――あんたの姿に見とれちまっただけだ」

枢樹雨 > 兎と同じ、しかし兎とは確かに違う、黒色の双眸。
木々の隙間から零れる陽光を受け止める黒髪は、己の生まれた国では標準的な髪色であり、自然と視線が引き寄せられる。
だからこそ少しだけ湧いた興味。
ただ、それ以上に視線引いた矢と、弓の存在。
それが己へと向けられることはないと貴方が示してくれるのなら、肩の強張りは解け。

「それなら、良い。痛いだけは嫌い。」

ならば構わないと、伝えるように頷きをひとつ。
当然のように真っ直ぐに伸びた背筋。普段は慎ましく重ねられた着物の下、当たり前にピタリと閉じられた両脚。
品があると言えばあるが、それは貴族のそれとは違うのだろう、文化の違う異国の妖怪。
人間の世界に溶け込みきらない雰囲気が貴方の琴線を揺らしたと知らぬまま、近づく貴方をただただ視線で追い。

「私の姿?……そう、…褒められているなら、嬉しいよ。」

己の視界に入った理由を、教えてくれたのだろう。
そう捉えれば不思議そうに数度瞬くも、おもむろに己を見下ろし、改めて貴方を見遣る。
言葉通りの"嬉しい"感情は見受けられないかもしれないが、距離詰めることを咎めはしない。
パウンドケーキをひとつ左手で持ち上げると、貴方へと差し出し。

「一緒に食べる?ひと切れだけなら、あげる。」

エズラ > そこに確かに居るのに、その存在が奇妙に“薄い”。
それは、隣に腰を下ろした今ですらそうである。

「お、そりゃ嬉しい――小腹が空いていたとこだ」

差し出されたケーキを素直に受け取って口に運ぶ。
ちょうど先ほど見ていたので、それが何やら異空間?から取り出されたことは知っていたが――
味わいはなんということもない、否、十分に――

「ムオッ……こりゃうめぇ……――」

朝から森の中で過ごしていた男にとって、甘味はエネルギーを回復させる。
もぐもぐと咀嚼しながら、間近くなった相手の双眸をじっと見つめる――
陰のあるその眼は、彼女の纏う気配の根源でもあるかのように薄く、蒼い。

「……近くで見ると、やっぱり“違う”な――」

己でも意図せぬまま、男の片手がそっと相手の頬に伸びる。
拒まれなければ、その白い頬に男の手が添えられるだろう――

枢樹雨 > 富裕地区で売られている様な上等なものではないが、年配の女性が長く続けている店の品。
しっとりとした内側の生地と、さっくり焼けた外側の生地との食感の違いもまた楽しいパウンドケーキ。
先に食べる事となった貴方の様子を見れば、妖怪もまた興味が膨らむ。
膝の上に拡げた紙包み。其処に残る二切れの内の一切れを更に四つに細かく割れば、ひとつを瓶の中の蜂蜜に浸す。

とろり――、滴る蜂蜜が落ち着くまで待ち、琥珀の蜜を纏ったケーキを持ち上げれば、其処へ伸びてくる手。
体温の低い肌。其処に人の指が触れれば必要以上に熱を感じ、視線は貴方へと向く。
距離詰める事も、隣りに腰掛ける事も、そしてこうして触れる事も、妖怪は咎めない。
前髪の隙間から静かに視線を向け、貴方の黒を見つめ。

「なに?……これ以上は、あげないよ。」

貴方との間、妖怪の左手が持つパウンドケーキ。
これはあげないと、己の胸元へと寄せれば、纏う蜂蜜が垂れて妖怪の指先を汚し。

エズラ > てのひらに伝う感触は確かに“そこ”に存在することを証明する。
冷たく、まるで生きているのか、そうでないのか――
しかし、ものを食べることには執着しているようである。

「むっふふ、いや、別に取りゃしねぇ――」

食うの邪魔して悪かったな、と先ほど同様に両手を宙に掲げて。
目の前の人外が、甘いパウンドケーキを味わうのを、まったり眺めようというつもり。

枢樹雨 > 攻撃の意思童謡、奪う意思も無いのだと貴方が示す。
頬に残る僅かな体温を追うよう、貴方の指先をちらりと見上げた後、改めて己の手元に視線戻す妖怪。
本日のお楽しみたるパウンドケーキを口の中へと収めれば、少しの咀嚼の後に僅かだが目元が緩む。
美味しいのだろう。口角もまた僅かに持ち上がれば、指先に零れた蜂蜜を舐め取り、今度は蜂蜜に浸すことなくひとかけを食べて。

「君の言う通り、美味しい。この店の菓子は、どれも美味しい。」

満足気な呟き。抑揚が薄いのは変わらないが、再びひとかけを蜂蜜に浸す様子は気に入ったと語っている。
しかしその手をふと止めれば、傍らの貴方を見遣り。

「君はこの国の人?毎日森に出て動物を捕まえているの?」

貴方の容姿へと向けられた妖怪の好奇心。
それを満たすべく問いかければ、手元に視線戻さぬままにパウンドケーキを口元へと運ぶ。
そうすれば今度は蜂蜜が妖怪の掌へと落ち、パウンドケーキを咀嚼しながら蜂蜜がそれ以上垂れぬ様にと掌を上に向けたまま留め。

エズラ > 目の前の妖魔の類が、蜂蜜のたっぷりかかったパウンドケーキを咀嚼する――
どこか夢幻的なその光景は、男の脳裏に、これまで交友を結んできた異種族の存在が浮かんでくる。
指先に垂れた蜂蜜を舌で舐め取る仕草には、人間以上の艶めかしさのようなものすら感じ――

「オレか――ああ、この国のモンだ――と言って、狩人ってわけじゃねぇ」

仕事は戦場に出ることさ、と短く告げる。
戦仕事にあぶれている間は、身体を鈍らせないため、こうして森に入って過ごしている、ということも。

「そっちは、異国の出だろう。おまけに――」

す、と彼女の頭部を指して。

「人でもねぇ」

そうして、その手を彼女の手に重ねるように伸ばす――
蜂蜜に濡れたその手を手繰るようにこちらに寄せ――おもむろに、そこにゆるりと舌を這わせようと企む。

枢樹雨 > 「そう…。私と同じ色だから、近い国の生まれかと思った。」

同じ黒、と言ってもまったく同じではないのだろう。
それでも見慣れた色を貴方が持っていたから、僅かに視線が落ちる。
しかし興味が失せるでもないのか、戦いを生業とする旨を聞けばその身体つきに目線が向く。
自分よりも大きな背丈。分厚い体躯。腕の太さを見ればなるほどと小さく頷くに至る。
その太い腕から連なる指が己の頭部を示すなら、僅かに上肢が後ろへと倒れる。
薄い白絹から透ける、青碧の鬼角。それを貴方に見咎められた。
そう思えば再び警戒を見せ、触れる手に小さく肩が震える。

妖怪の白い手は、警戒を見せても逃げはしない。
触れる貴方の体温を感じ乍ら、その動向を仄暗い蒼がじぃ…と見つめる。
覗いた貴方の舌が己の掌を、其処に零れた蜂蜜を味わうなら、今度は指先が小さく震えて。

「……人でない何かは、嫌い?」

僅かに首を傾げ、問いかける。
貴方に引き寄せられた左の手。その指先が、貴方の顎を擽り。

「…それとも、美味しい?」

エズラ > 触れた手は、頬と同じく冷たい。
しかし、舌を這わせたその肌は、柔く――
少しの怯えのようなものと、こちらの顎に触れる積極性のようなものを見出せる態度――
むくりと相手に向けたその顔には、男の年齢よりずっと幼げな笑みが浮かんでいた。

「うめぇし――もっと味わいてぇと、思ってる――」

その腕を少し強く引き――己の方からも身を寄せるように――

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