2026/03/14 のログ
> 辿り着いた場所に、報告と同じ数の屍が積みあがっているのを確認してから、その躯がほかの魔物を引き寄せる前に処分する。
指に嵌めた火打指輪を擦り、起きた火花を種に手印を組んで炎を操る。
森の木々へ火が移らぬように注意しながら、燃え上がっていく屍を背に傀儡へと振り返る。

「依頼はこれで完了。貴方は一度戻って」

『……戻らんとダメか?』

「駄目」

『はぁ、仕方ないか……。あいわかった、戻るとも』

もう少し気ままに遊んでいたかった。そう言いたそうな顔で、やれやれと首を振る鬼女。
こっちがやれやれと言いたいところだが、小柄は余計なことは言わず、言葉少なく必要なことしか口にしない。
それで相手も交渉は無駄と諦めたのか、その場に胡坐を掻いて座り込み目を閉じる。
すると、今まで生き生きと動いていた身体から、すぅーっと魂が抜け出るように動かなくなり、鬼女はただの傀儡へと戻る。
同時に、術者である小柄の中へと傀儡の中に蓄積された数か月分の記憶と、屍の肉体から得た技術の全てが流れ込み、瞬く僅かな時の中でそれらは小柄に継承される。
抑えられていた屍の火が一度大きく燃え上がり、またゆるゆると静まり小さく、だが骨まで燃やし尽くす高温へと戻っていく。

「…………」

緋色の瞳がゆっくりと瞬き、動かなくなった傀儡を見下ろす。
魔族の女。生前の彼女が何者で、どのような生き方をしてきたか。今更ながらその断片を垣間見たのだろう。
ただの道具として見ていた傀儡への視線が、少しだけ親しみをもったものに変わっていることに本人は気付いていない。
徐に、傀儡が腰に下げていた剣の柄へ手を伸ばし、引き抜き現れた刀身を掲げ、一振り。
ヒュッ、と空気を裂く風斬りの音を耳で聞く。
扱ったことのない武器なのに不思議と手に馴染むのは、傀儡を通して魂が得た経験から来るものか。
だが、実戦で使う前に少し調整もかねて軽く弱い魔物を捌いた方が良いだろう。

全ての屍の灰となるまで、もう暫くかかる。
それまで、もう少しだけ。戦で使い込まれたこの剣を眺めて過ごそう――。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 旧道」からさんが去りました。