2025/06/14 のログ
エレイ > ある日の水遊場。
平民向けエリア内、プール全体が大体見渡せる位置に設置された監視台の上に腰掛けた金髪の男は、
暇そうな面を隠しもせず大欠伸をかましていた。

今は見ての通り、プールの監視役の依頼(バイト)を請け負っている。
とはいえ、そうそう緊急事態があるわけでもなく、男は暇を持て余していた。

「──まああ平和なのはいいことなんだがな。一応目の保養になるっちゃなるし……」

ふ、と小さく息を吐きながら口元を緩めつつ独りごちる。

視界にはたまに、他のスタッフの策略によりやたら面積の少ない水着を貸し出された女性客が
恥じらいながらプールサイドをそそくさと通る姿が見受けられる。
そんなものを見やっては、あーあーやられちゃったかー、なんて思ってニマニマしていたりして。

ご案内:「ル・リエーの水遊場」にカロンさんが現れました。
カロン > 眩い日差しがキラキラと水面を輝かせ、元気にプールに飛び込む若人や、それを遠巻きに眺める妙齢の男女、多くの人々の休日をより素晴らしいものへと引き立てる今日この頃。
プールサイドでは楽しくおしゃべりをする女性客のグループがちらほら。
そんな彼女らに鼻の下を伸ばすナンパ目当ての客もちらほら。
今まさに声を掛けようかとしている彼らだったが、突然――

「あぁ~……」

消え入りそうな少女の声を聞いたと同時に、

ドンッ! ――ドボンッ!!

背後からの衝撃によろめき、一人がプールへと突き落とされた。
何事かと仲間たちが振り返ると、そこには一人の少女が。
少女は日差しに長く熱されていたのか、顔は赤く、ふらふらと足元をふらつかせ、その場にへたり込む。

「わぁ……あ、あっ、あの! 申し訳ございませんっ! 少し、眩暈がしてしまって……落ちた方は、だ、大丈夫でしょうか?」

男たちは何人かでプールから仲間を引き上げ、残った二人は顔を見合わニヤリと笑ったかと思うと少女の傍に寄り、介抱でもするように肩と腰に手を添えて。
そのような、この辺りではよく見られる光景が監視役の目に留まるかもしれない。

エレイ > 「──む」

ドボン、と響く大きな水音が耳に届き、男はボーッと中空に向けていた視線をすぐさまそちらに向けた。
一応監視役らしく、異音を聞けばそちらに注意を向けるよう心がけている。
もっとも、プールに入る際勢いよく飛び込む客は一定数いるため、大抵は特に問題のない平和な光景を目にするだけで終わるのだが──

「……ふむ」

その光景を見た男は、少し思案する仕草を見せた後監視台から降り、速やかにその現場へと足を向ける。
下心満載の様子で少女の体に手をかけるナンパ男たちの一人の肩に、ポンと手を置けば、
監視役の接近に気づいていなかったらしき男はビクッ、と肩を跳ねさせて。

「はいはいそこまでよー。いやそういうことをするなとは言わんがその娘はちといかん、
見た感じ熱中症っぽいからな。お前らも要救護者に手を出して具合を悪くされては寝覚めが悪いはず」

軽妙な口調ながらも真面目さを含ませたトーンで語る監視役の言葉に、最初は文句をつけようとしたナンパ男たちも言葉をつまらせて。
やがて渋々といった感じで少女から手を離した。その様子に男はニッコリと笑みを深め。

「──よろしい。ではこの娘は今からカカッと救護室に連れて行くのでこれで」

そう言って少女をひょいと横抱きで抱き上げ、速やかにその場を離れる。
やがて空調の効いた涼しい小部屋へとやってくれば、男は少女の体を簡易ベッドの上にそっと下ろしていって。

「……ふぃー。すまんねバタバタして。具合は大丈夫かね、キミ?」

ベッドのそばの小さな椅子に腰を下ろして一息入れてから、改めて少女に顔を向けるとにへ、と笑いながら問いかけ。

カロン > 「はぁ……っ。 ぁ、えっと、すみません……」

体を支えられ、立ち上がるのを手伝ってもらえば、少女は戸惑いながらもへにゃりと微笑み眉を下げる。
傷一つない陶器のような白い肌に、光に透ける金糸の髪。眠たげに細めた目は青空のように澄んだ色をしていた。未成熟な体と細い手足も相まって、西洋人形のようだった。
色々とボリュームが不足した水着姿だが、これはこれで背徳的と思う男達であった。

ではではと、人気のない方へ向かおうかと言うところで、肩ポンされ振り返れば監視役の姿が――

そこからの流れはあっという間で。
ふわふわと思考の定まらない少女をよそに、男たちは監視役の彼に言いくるめられ――もとい、諭されて渋々手を引く形となった。
そうして、ふわふわ揺れるのは頭だけでなく、体も抱き上げられ揺られて目を閉じている間に気付けば見知らぬ部屋へと運ばれる。
部屋の涼しさと、体をベッドに横たえられて幾分か気分はましになり。

「……はい、お陰様で。もう少し……休めば、一人でも立てるようになるかと。
 ――先ほどの方々には、大変申し訳ないことをしてしまいました……。後でお詫びをしないといけません」

知らない天井だ。ここは救護室だろうか?
うすぼんやりと目を開け、向けられた青年の爽やかな笑顔を見上げながら小さく頷く。

「ぁ、あの……ありがとうございます。監視員の方――えっと……お名前を、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

エレイ > あまり聞き分けがないようならば彼らにも水の中に入ってもらうところだったが、
平和的に済んでありがたいことだ──なんて思いながら少女を運ぶ男。
男の腕の中で目を閉じていた彼女は、その間それほど大きな揺れは感じなかっただろう。
もし目を開けていれば、その揺れの少なさと静かさに反して背景が異様に速く流れてゆくのを
目の当たりにすることになっていただろうが──それはさておき。

「ならばよし。まあああんまり慌てずにゆっくり休むことをオススメする。
──あー…別にキミが詫びる必要はないぞよアイツらただのナンパ野郎だからな」

ベッドの上、目を開けた少女から問題ないと伝えられれば笑顔で頷き。
続けて詫びを、なんて口にしだすのを見れば軽く目を丸くした後眉下げて笑って、ひらひらと手を横に振りながら必要ないと告げ。

「ウム、礼には及ばないが……俺はエレイといって旅人で冒険者なのだが今は
依頼の一環でココの監視員をやっている者だ。呼ぶときは気軽にさん付けで良い。
……せっかくなのでキミの名前も聞かせてもらっても?」

礼を告げられれば言葉は謙遜しながらもドヤ顔で。そのまま名前を聞かれてつらつらと変な自己紹介のセリフを繰り出し。
それから少女の名前も問い返してみて。

「あとそれと……一応なぜ具合が悪くなってしまっていたのかの理由も聞かせてもらえますかねぇ?」

さらにもう一つ、そんな質問を付け加えた。

カロン > 「はい。お言葉に甘えて、休ませていただこうと思います。
 ナンパ、ですか? ……それはそれで、お邪魔をしてしまったかと」

目を丸め、かと思えば破顔する様子を見上げながら。
特に、プールに突き落とす形となってしまった一人を思い出し、しゅんと目を閉じて顔の前で手を合わせる。
どうか、彼らの恋路が上手くいきますようにとお祈りをして。

「エレイさんですね。まぁ、冒険者の方だったのですかっ! ――っと、と、ぅ~……。
 えっと、私はカロンと申します。私も一応冒険者をしています。
 改めまして、ここまで運んで頂きありがとうございました」

奇妙な偶然についつい起き上がりかけたが、すぐに目が眩んでベッドの上へ逆戻り。
礼は良いと言われても、少女は変わらず感謝を口にした。本当は体を起こして頭を下げるべきだけれど、今は横になったままで失礼を。
続けて事の経緯を聞かれれば、また困ったように照れ笑いを浮かべて。

「その……。プールで水着を借りた時に帽子も頼もうと思っていたのですが、うっかり忘れてしまいまして……えへへっ」

初めてプライベートプール以外の場で水遊びをと、財布と相談して平民向けのエリアに赴いたまでは良かったのだが、受付のスタッフさんに勧められるまま水着を借りて、その布の面積の少なさに動揺するあまり、うっかりと帽子を借り忘れたのが今回の原因。
やっぱり、慣れないことはするべきではありませんね。と内心で苦笑しつつ、笑って誤魔化しパタパタと手で火照った顔を仰ぐ。

エレイ > 「いやそーいうことじゃなく……まあいいか。アイツらもまあ……気持ちだけで充分でしょう」

どうやら自らが手を出されそうになっていたことには気づいておらず、尚もナンパ男たちを気遣う彼女に
さらにツッコもうとして──やめておいた。なんとなくだが、彼女には知らないままでいてもらったほうがいいだろう、と考えて。

「おっとと大丈夫か。何、仕事だからな礼には及ばにい。──しかし同業とはと驚き顔になった。
カロンちゃんは見た感じ後衛タイプってことでいいのかな?
それとも実はその細っこい身体にまさかの怪力を秘めているとか……」

再びめまいを引き起こした彼女を気遣いつつも、改めて礼を告げられるとふっと笑ってそう答え。
それから同じ冒険者であるという事実への驚きをしみじみと口にする。
些末な軽いジョークなども交えつつ、無遠慮にジロジロと彼女の上から下まで眺め回し。

「そうか……そういう時は極力日差しの少ないところを選ぶべきだったな。
まああ過ぎたことなので仕方ないが……フラフラになるまで我慢してしまってはもつわけもない。
どれ、今の熱はどんなもんかね……」

照れ笑いを浮かべる彼女に眉下げて笑いながらそういうと、顔を仰ぐ仕草を見て
一応熱を見ておこうかと片手を伸ばし、彼女の額にひたりと触れようと。
触れられれば彼女は男の手のひらのひんやりとした冷たさを、火照った額に感じることになるだろう。

カロン > 気持ちだけで十分と言われると、そうなのかな?と首を傾げて彼を見上げた。
とは言え、先ほどの彼らを後で見つけられるかと言えば、彼の言葉に頷いておくしかないのだけれど。

「だ、大丈夫です。すみません……。
 よく言われます。まだまだ新米なので、威厳?とか、風格が足りていないのだと思います。
 はい。魔法使いですので、見た目通り近接はからっきしでして……」

秘めたる怪力の説は否定して、自分の細い腕を見ては少し残念そうに眉を下げて笑って見せた。
そんなに無遠慮に見られるのは流石に照れくさく、赤らむ顔は日差しの余韻のせいにして、視線は彼の顔から下へと流れて行く。

「エレイさんは……前衛でしょうか?」

チラリと見た体は程よく引き締まって見えるので、魔法職よりは戦士系統の役職なのかと素直に尋ねてみた。
そして、話しの流れで注意を受ければ素直に反省して、また大人しくしゅんとして。

「……はい。今後は気を付けようと思います。これから、夏に向けてどんどん暑くなりますから……特に。
 ――へ? ぁ、えっと……」

不意に伸ばされた手に目をパチクリと瞬かせ、戸惑いながらも額に手が触れれば、ぎゅーっと目を閉じ。
そのひんやりとした温度にまどろんで、一瞬力んだ体も徐々に緩んでいく。

「はぁ……。エレイさんの手、冷たくて気持ち良いです」

そう呟いて、ふにゃりと心地良さそうに笑みを零した。

エレイ > 「そうだろうなあ……だがまあそういうものは後で勝手についてくるものなので気にする必要はないという意見。
なるほど、見た目のまんまであるか。まああ魔法使いの近接が貧弱なのは宿命なので当面は前衛に頼らざるをえないだろうな」

怪力説があっさり否定されれば眉下げて笑いつつ、残念そうな様子を見ながらも仕方ないと小さく肩を竦める。
例外はたくさん知っているが、今の彼女にそれを言ったところで意味はないだろう。
ちらりと向けられた視線と言葉に、軽く瞬きしてからドヤ顔で頷き。

「どちかというと前衛タイプだな。まああ後衛もできんことはないが……つってもカロンちゃんと逆に魔法はからっきしなので
弓矢とかの飛び道具に頼る必要はあるがな」

などと、胸を張りながらそんな返答を。
パーカーの隙間から覗いている胸元からはしっかり鍛えられた胸筋が伺える。
しょんぼりして反省の言葉を口にするのを見れば、また眉を下げて笑って。

「ウム、体調管理には充分気をつけるべき。それは冒険者としての基本スキルでもあるからな。
……ふむ、まだ少々熱いが危ないということはなさそうだな」

冒険者は身体が資本、故にその管理も基本であり重要なことでもある、ということを教え諭すように告げながら、
触れた額をさすさすと撫でて熱感を確かめて。
問題なさそうなので手を離そうとすれば、何やら心地よさ気な表情の少女が見えて。

「……そうかならしばらくこのまま撫でていてやろう俺は優しいからな」

ふ、と笑ってそう言うと、掌をそのままするりと頬まで滑らせ、ゆるゆると撫で回しはじめ。

カロン > 「経験や慣れは早々に付くものではないとは私も思います。ですが、早く一人前になれるように努力は必要だと思うのですよ。
 前衛の方がいてくださると安心なのはわかります。安全を確保できるというのもありますが、精神的に余裕が持てるので……」

少し前に前衛職の先輩と組んで討伐依頼をこなした際のことを思い出しつつ、当面と言うか、この先、危険地帯に独りで踏み込むような無茶はしないでおこうと思うわけで。
例にもれず魔法使いらしい魔法使いの少女は驕らず謙虚に冒険を続けようと頷いた。

「やっぱりっ! ふふっ、そうだと思ったのです。
 魔法がからっきし、ですか。では、何か魔法使いが必要になった時は、お声掛けください。私でよければ、いつでもお手伝いしますのでっ」

当たっていれば嬉しそうにポンっと手を叩き、今度はこちらが少し自信を持って答える。
弓矢や銃など、飛び道具が使えるだけでも相手はかなり前衛としては器用だと思う。少女はナイフ一つまともに振れる自信が無いので、それはもう彼を尊敬の眼差しで見て。

「うぅ……。はい、それは……気を付けます。
 ――ん。この部屋で涼ませていただければ、すぐに良くなる程度ですよ」

真面目な顔で言い聞かせられていると、ついつい兄達の顔を思い出す。髪や目の色が同じだから、と言うのもあるのだけれど。それだけじゃない。雰囲気と言えばいいのだろうか。
勢いに任せて家を飛び出し冒険者になっても、やっぱり根本的に自分の人に心配をかけてしまう無計画さが原因であるとわかっていながら、運良く人に助けられて……。

ゆっくりと瞼を開けて、ジッと彼の顔を見上げた。

「ふふふっ。……ありがとうございます、エレイさん」

今は優し気な笑みに甘えさせてもらい、額から頬へと流れる手に、くすぐったそうに笑いながら礼を重ねる。

エレイ > 手が頬へと移っても態度は変わらず、礼を言って無防備に身を任せる少女に、男の目が細まる。
男の胸に去来したのは親切心か、あるいは悪巧みか。
この救護室でその後何が起こったのか、知るのは当人たちだけで──。

ご案内:「ル・リエーの水遊場」からカロンさんが去りました。
ご案内:「ル・リエーの水遊場」からエレイさんが去りました。
ご案内:「ル・リエーの水遊場」に孫伯さんが現れました。
孫伯 > 店の者にも、館の者にも休暇を与えたこの日、自身が館に残っていては寛げまいと足を向けたのは水遊場。
手荷物には魔道具である背負い袋一つのみで上層への入場手続きを済ませる。
水着に着替えると常夏の気温はしっとり汗ばむ程に。太陽も空高く上る雰囲気は上々。

「流石に朝一でプールははしゃぎすぎ、でしょうかね。」

目一杯泳ぐような真似をすれば午前中すら体力が持たないだろう想像は容易に出来たから、
まずはベッドもかくやと言わんばかりにしっかりしたデッキチェアに腰を下ろす。荷物を床に置きタオルの類を準備していると、給仕がドリンクをもってやってきた。

「それじゃぁ、これを。」

客は一人だというのに複数種類を用意するあたり上層なのだろう。
取ったグラスの位置へチップを置いて受け取るとグラスの縁に果実の刺さった鮮やかな色味のドリンクは、発泡感も相まって心地の良いもの。

揺れる水の音が、時折聞こえる下層からの声が心地よい空間を作り出す。
徐々に人の入りは増えるのだろうけれど、まだ閑散とした雰囲気を楽しむ贅沢に、酔い痴れた。

孫伯 > 少しずつ人も入り始め賑わいを見せ始めた上層。従者を侍らせ区画を占拠する者や、
カフェの一つを貸し切る者等、貴族とはいえ金の使い方は多種多様。
所詮代々続く家とぽっと出の家では資金力が余りにも違い過ぎる。

「でも、まぁ……見せびらかすような下品な使い方は、感心しませんが。」

品位に応じた使い方、それこそ本当の金に糸目をつけない貴族なら層そのものを貸し切るだろう。
しかし、いずれにせよ純粋に泳ぐ目的で、この場を用いる事は無い。

「開放的な気分で、羽目を外すにはもってこいですからねぇ……。」

ズズ、と刺していたストローが音を鳴らす。サイドテーブルにグラスを置くと程なくして給仕が新たな物を用意した。
明らかに富裕層の客へ向けたアピールなのだろう。ほぼ紐と言っていい水着姿の給仕からグラスを受け取り。

「貞淑な、素振りを見せた方が喜ぶと思いますよ。」

そんな余計な一言。考える事は皆一緒。どれだけ自らの肉体を誇示し目を引くか。
その中に野暮ったい貞淑さがあれば逆に目を引くだろうに、と。
それも結局要らぬお節介。無言のまま立ち去る給仕を見送ればチェアにまた身を横たえ瞼を閉じる。

聞こえる音に艶が交じり始めるのも、時間の問題。

孫伯 > 「さてと……」

ドリンクもまだたっぷり残った中。立ち上がるとプールへと飛び込む。
白い髪が水に浮かび褐色の肌との対比で映えた。

夕刻まで横になったり泳いだり。帰りには水着売り場でお土産を。
そんなふうに過ごして1日が終わる。

ご案内:「ル・リエーの水遊場」から孫伯さんが去りました。