2025/06/09 のログ
アイシャ > よく勉強している、という言葉を素直に誉め言葉だと受け取った娘は少しばかり誇らしげに胸を張る。
同時に水の浮力の恩恵を受けている柔らかい質量がた分と水音とともに揺れたのだけれど、未だそれと仲良くなるには少し難しい本人はその事を見なかったことにした。

「…だって、どの夜会でも『母さまはいつも呑んでる』って聞くのだもの」

人伝手に聞く様子も酒豪と呼ぶにふさわしいと感じるけれど、晩餐の際に母が傾ける本数も娘から見れば中々の量だと理解していた。
だから、自分が甘いものや食事を少しばかり口に運ぶ機会が多いのと同じようにお酒という志向に思い至っただけのこと。

「本当?
じゃあ、わたしもそう遠くないうちに海にも潜れるようになるかしら?」

母の指導は娘の好奇心を順調に育て、水への過剰な恐怖心を程よく解いてくれている。
出来ないことが多い娘だが、それでも一つできるようになるとやはり嬉しいし次の目的に足を進める切欠にもなった。

顔をつけられるようになったら、こんどは水に潜っていられる時間を少しずつ伸ばせるようにする練習。
水の中は楽に感じるけれど、自ら出ると思っていた以上に疲労が蓄積するものなのだとも学んだ。
そして、合間の休憩に嗜む冷たく甘い飲み物の美味しいことといったら!
甘い食べ物だけでも控えるべきだとはわかっているけれど、水分補給は大事だと聞かされたらすぐに信じてしまうに違いなくて。

初めてのプール体験はまさかの母との小旅行に突然様相を変える。
食事をして、湯浴みをしてベッドに腰掛けただけのつもりがあっという間に朝になってしまったから、やっぱり自分で思う以上につかれていたのだろう。
本当は翌日もまたプールを愉しんでみたかったのだけれど、起きてもなお緩やかに船をこいでいたから暫くはゆっくりすることを選んだに違いなく。
それでも意識がはっきりしてくれば、次のプールに備えて新しい水着をもう一着選びたい気持ちを母に伝え、王城に戻る前には暫く母と娘のショッピングデートと相成ったようで───。

ご案内:「ル・リエーの水遊場」からロゼールさんが去りました。
ご案内:「ル・リエーの水遊場」からアイシャさんが去りました。