2025/06/03 のログ
ご案内:「ル・リエーの水遊場」にロゼールさんが現れました。
ご案内:「ル・リエーの水遊場」にアイシャさんが現れました。
ロゼール > アイシャの反応に少し目を瞬かせるけれど、先程塗った自分の手を顔に近づけて、香りを確かめれば納得したような苦笑を浮かべる。

「そっか、アスティはこういう細かい所をしっかりと作る子だものね……さっき塗ったのは、アスティ製の日焼け止め。
成分だけなら、アイシャもあの子からもらったものと一緒よ。
ただ、私向けのものを塗ってしまったから、いつもと匂いが違ってて気づけなかったのかもしれないわ。」

アイシャ向けのものであれば、菫の香り。ロゼール向けのものであれば、薔薇の香り。
香りがここまで違えば別の薬と思っても仕方のないことで。
でも、中身は同じものだから、効果に心配はないと安心感を深めることを口にする。

そして、水の中に入ってみたいと告げるアイシャの言葉。
少し目を瞠るものの、それはびっくりしたというよりも喜んでいると言った方が正しい表情。
与えた選択肢以外のものを選んでくるのは、ロゼールにとっては喜ばしいことだ。
なぜなら、子供が自分の意思を伝えてくることは、親としては少し寂しく思えても、それ以上に嬉しいことだから。

「OK、分かったわ。全然ダメじゃない。
じゃぁ、腰くらいまでのプールに行ってみましょうか。
そこが怖かったら、もう少し浅い所。
そこが大丈夫で、もう少し頑張れるなら、もう少し深い所。
アイシャの一番いい所を探しましょ。」

子供が意見を言ってきたら、それに合わせて調整するのが親の役目だと思っている。
だからこそ、どんな意見でも願いでも言って欲しいと思うし、言われたからには全力でサポートするのが親だとも思っている。
そのために、まずは、と連れて行ったのはアイシャの腰くらいまで水に浸かれるプールへと。
到着すれば、ロゼールは気にした風もなく、脚から飛び込んで着地する。
アイシャがプールサイドに座りながらゆっくり入ろうとも、自分と同じように入ろうとも構わない。
飛び込んで転んだ時、支えてあげるために先に入っただけなのだから。

「水練は、何歳からでも学べるわ。
水に慣れるからはとても良いと思う。今日は水に慣れることを試してみて、怖いと思わなかったのなら、水練を学びましょう。
アイシャがもっともっと沢山の場所へ行きたいと思ったときに困らないように。」

水練は、生存確率を高める。それはまさに道理だ。
そして、その道理はとても大切なことでもある。
貴族だ王族だと言えど、生死の境は平民と変わらない。
だからこそ、生存確率を上げるための技術は覚えるべきなのだ。

アイシャ > 「そうなの?
…言われてみたら本当ね、母さまの香りがする」

言われて指先を顔回りに寄せてみれば確かに感じるのは母の名を彩る艶やかな花の香り。
同じ日焼け止めだと聞けば、猶更上の妹の技術に感心するばかりだ。
自分が慣れている香りとどこか違うその花の香りに、少しばかり背伸びした気分になる。
もちろん、中身も自分も変わらないのだけれど。

母の提案を受けて返した自分の考えがどのように受け入れられたのかを伺うように睫毛を持ち上げてみれば決してその表情は暗いものには見えなかったからまずは安堵することが出来た。
それも、どちらかと言えば喜色が滲んでいるように感じられたので、娘の頬にはその嬉しさが伝播したかのようにふんわりと天然の頬紅を刷いたかのように染まる。

「ふふ、嬉しい。
わたし、母さまと一緒だから今のところはちっとも怖くないのよ。
…そうね、みんなもいるものね。
とっても楽しみだわ」

母に誘われる合間も娘は当然のように母の腕に自分の腕を絡める。
けれど、その会話の合間で小さくつぶやく言葉は明らかに母に向けたものではない。
水の性質が強いこの場所に当然のように存在する水の精霊達が嬉々として話しかけてくれるのに応えたもの。
幼い頃から突然宙に向かって話しかけたり笑いかけたりする次女の曖昧に花開いてしまった資質を両親が丁寧に育ててくれた結果に他ならない。

まずは、と誘われたプールに早速入る母の様子を一度確認する。
母の身長と、その横に並んだ時の自分の身長を思い描き、そこに今の水深を朧げに照らし合わせる。
普段使い慣れた浴槽よりは深いけれど、恐らく両足で飛び込むのはさすがに危ないのだろう。
いつもと違い結われていない髪は首を傾げるとさらりと傾げた方向に傾いて、その次には縁に腰掛けて両足をまずは水に入れてみる。
爪先を揺らめかせると床の気配はなかったので、そのままゆっくり慎重に膝から腰と順につけていけば床と爪先が巡り合う。

「…うん、この深さは大丈夫そう。
お水がいっぱいだからかしら、ちょっとふわふわする気がするわ」

人生初のプール体験。
浴槽よりも深い水深のせいで、母に近づくにも少し大変だ。
だが、それすらも面白いのか頬の色は先程よりも少し濃くなっているか。

ロゼール > 「ええ、そうなの。……アスティも腕もあげてるのね。後でたっぷり褒めてあげないと。
……ふふっ、ありがと。でも、私はアイシャの香りも好きなのよ?……穏やかな中に隠れる華やかさ。
菫の華やかさに気付ける人こそが、アイシャにとって良い友人になると思うわ。」

菫の香りをして、華やかさがあると口にするロゼール。
それを理解できるかどうかはアイシャ次第だけれど、
人はそれぞれであり、どちらも結局は、愛らしく美しいのだ、と言っているようなものか。

自分の嬉しさがアイシャへと伝播して、アイシャの嬉しさが自分に伝播してくる。
こういう感情の流れはとても良いものだ。
だから、より楽しく、よりうれしく感じられてくる。

「そう言ってくれると嬉しいわ……ええ、そうね。
アイシャのお友達たちも、アイシャが水に親しむことを悦んでくれているのね。良かったわ。」

アイシャの言葉が途中で自分に向けられていない事を知るのは難しくはない。
そして、それをしてもなお、アイシャにとって大切な時間であるからこそ邪魔もしない。
ロゼールの一芸は、最たる資質は『頭脳』。
あらゆる知識に親しみ、あらゆる可能性を考慮に入れる。
だからこそ、アイシャが精霊と話をしている可能性を否定しなかった。
そして、それをおかしいこととも断じなかった。
それこそが、アイシャのギフテッドだと考えたから。

ゆっくりと入ってくるアイシャ。
けれど、ゆっくりだったからこそバランスを崩すこともなく足が立ち、水を親しむ様子を見せる。
その様子を穏やかに、楽し気に見やっていれば

「でしょう?……ただ、覚えておいて、アイシャ。
海のように波打つ水では、脹脛くらいまでの高さで抵抗ができなくなるの。
この高さまで踏み込んでしまったら、抵抗は出来ない。
……海で子の深さまで踏み込んだら、あとは泳ぐしかないわ。

でも、今は気にしなくて大丈夫。このプールでは、波は来ないから。」

知識として知っていて欲しいことを伝えた上で、今は大丈夫と安心させる。
少し大変ながらも近づいてくれば、優しく娘を抱き留めて、抱き寄せよう。
その頬の色が濃くなっていることが、アイシャが楽しんでいる証。

「どうする?……もう少し深い所も試してみる?それとも、ここで楽しむのもいいと思うわ。」

アイシャ > 「わたしの香りは、素敵なお友達の素敵なお裾分けを、アスティが沢山考えて、大切に作ってくれるからこそいい香りなのだと思うの。
…良い友人?それは、精霊達とはちがうお友達っていうこと?」

銀色の睫毛を揺らめかせながら首を傾げる。
次女にとっては一番身近な友達はやはり精霊達。
かの声たちは限りなく自分に友好的であるから友達と言っても差し支えはないと思っている。
けれど、母の口ぶりだと自分の考えていることとは少し違うように思えて今度は首が傾ぐ。

「そうなの。
みんな、わたしの感想が聞きたいみたい。
…ふふ、何だか、ちょっとくすぐったいわ」

母に受け止められ、抱き寄せられる様は幼子の水練の趣もある。
受け止められると一つ達成できたことが嬉しくて、表情もまた一つ明るくなった。
両の手で水面から水を救い上げれば歓迎なのか、それとも達成できたことを祝うのか、掬い上げた水の上でくるくると細い水の帯や雫が踊り弾けて母と娘の目を楽しませるかのよう。
そこに姿として存在しなくても、意思として存在していることを愛し娘の母に示す目的もあるのだろう。

けれど、両の手に掬った水を湛えたまま母の教えを聞く表情は少しだけ真剣だ。
幾ら精霊の加護篤い身との自覚はあってもいつ何時も意志たちの助けを得られるわけではない。
それは少女が朧げに自覚していることでもある。
確かに意思たちは少女のことを愛してくれるけれど、少女に都合のいい存在であろうとはしないのだ。
勿論、気前よく贈り物をしてくれたり手を貸してくれたりすることもあるが、あくまで少女と精霊の間は平等。
少女の依頼に対して手を貸してもいいと思える時には貸してくれるし、認められなければ勿論無視だ。
だから時々喧嘩をしてこちらが拗ねることもあるし、引きこもりの次女を育てている長い年月の間には、そんな光景も両親たちにとってはきっと普通の光景になっていたのだろう。

「そうなの?…海って、凄いけれど少し恐ろしいのね。
私、レオンハルト兄さまとの旅行の時も海には入らなかったの。
泳げないし、海に入る準備もしていかなかったから。
そうしたら、今度はもっと深いところにも会いにおいでって言ってくれたの。

だから、本当は水の中ももっと深いところまで行ってみたいんだけど、…そう聞いたら、潜るのもまだちょっと勇気がいりそう。
でも、もう少し深いくらいなら、いけそうな気がするの」

ロゼール > 「そうね。アスティは気づいているのか、それとも察しているのか。でも、見えなくても、理解していなくても、アイシャが見えている世界を一生懸命考えた結果が菫だったのだろうと思うわ。
……ええ。それは、精霊たちとは違うお友達。人間のお友達のお話ね。」

アイシャにとって一番の友達は精霊たちだろう。
だが、人間の中でもアイシャの考え方を理解できる者もまた存在しうる。
だからこそ、精霊たちとは違うお友達の可能性はアイシャに伝え続けるのだ。

「あら、それは素敵じゃない。たくさん感想を教えてあげなさいな。」

アイシャの感想を聞きたいのは精霊。
その程度を察することは、ロゼールには容易いこと。
何よりも、精霊が存在することを理解して、何よりも娘の友達であることを理解しているからこそ。
同時に、アイシャ自身が精霊は友人であるが、無制限の味方ではないことを理解している。
だから、敢えて口を挟むこともないのだ。
アイシャは正しく精霊を理解しているから。

「そうね。海の恐ろしさは、プールとは比べ物にならないくらい大量の水が1つの意思を持って動いていること。
量が大きくなれば、より重くなれば、自分の力では抗えなくなるから。
……でも、ただ怖がる必要もないの。海の精霊たちの誘いにのって、より深い所へと行きたいとアイシャが思うなら、水練を覚えなくてはならないわ。

……ええ、じゃぁ、もう少し深い所へと言ってみましょうか。」

アイシャの意欲を削ぐことはない。
何よりも、自分がついていれば危険は回避できるのだから。
故に、一度プールから外に出て、近くの別のプール……アイシャの胸まで水に浸かるそこへと誘導していく。

「さっきより、大分動きにくくなるから、気を付けて。」

注意喚起をしたうえで、先ほど同様、先に自分が入って娘が入ってくるのを待つ。

アイシャ > 「きっと、わたしよりもたくさん色々なことを知ってるからできるのね。
夏も、アスティにいっぱいお礼しなくちゃ!
…でも、夏ってアスティの好みに合いそうな花とか草が合ったかしら」

お礼をするにも自分ひとりではできない歯がゆさをほんのり感じつつ、それは置いておきながら生薬や化粧品に使えそうな植物があったかどうかをぼんやりと思い描く。
それと同時に、人ならざる友人ではない、対等な生物としての友人という存在のことも考える。
引きこもりには、母が伝えてくれる可能性を秘めた文字通りの友人を得るということが随分と高い壁のようにも感じた。

「勿論、沢山伝えるわ。
でも沢山伝えるためにはもっと水に入ってみて色んな事をしてからのほうがいい気がするの」

今はまだ水に入れただけだ。
浴槽で感じるのとは違うひんやりとした水の心地よさ。
両手を伸ばしても壁に当たらない不思議な感覚。
けれど、それだけでは精霊たちが喜ぶ感想には程遠い気がしたのだ。

「…本当に、海ってすごいのね。
そうよね、大きな要塞のような船も軽々浮かべてしまうくらいだもの。
はじめましてのわたしに色んなものをくれたけれど、そういう優しい時の海ばかりじゃないってことね。
だけど、行けるならやっぱり行ってみたいわ…陸とは違う世界があるって教えてくれたもの。
わたし、今すぐには無理でも…いつか見てみたいわ」

だから、今は今の自分にできる範囲での挑戦をしてみるのだ。
母による次のレッスンの場へと向かうために一度プールから上がれば水の浮力から解放された足が少しばかり重く感じる不思議にまずは驚く。
そして先程と同じように次のプールのふちに腰掛け、同じように爪先を揺らした後、ゆっくりと膝、腰、今度は胸元、そして胸と順に体を鎮めていく。
爪先はもう床に届いているけれど、先程よりも大きい水の抵抗のせいで母のもとに辿り着くのは倍以上の時間がかかってしまった。

「…?
えっと……?」

母の体に捕まることが出来た辺りで、ふと気が付いたように少し首を捻る。
それから、少しだけ離れて、また近づいて。
少し顔を水面に向けていたかと思えば急に真剣な顔をして母を見上げてしがみ付き

「母さま、大変!
…胸が、お水に浮いてるわ!」

随分と間の抜けた宣言だが、本人には至って真剣で、驚くほどの発見だった。

ロゼール > 【継続】
ご案内:「ル・リエーの水遊場」からロゼールさんが去りました。
アイシャ > 【継続します】
ご案内:「ル・リエーの水遊場」からアイシャさんが去りました。