2026/01/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2/娼館「プリプリ」」からマドレーヌさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」に影時さんが現れました。
影時 > まるで、息を吐けばすぐ凍り付くよう。……寒い夜だ。
実のところ、これがまだマシな部類であるというのだから、嗤えない。
過ぎたる寒さの極致は未だ体感したことはなくとも、きっとこうだ、と考えられることがある。
例えば先達の冒険者、探検家が記した紀行録。はたまた例えば、強烈な吹雪、寒波を放つ攻撃魔術。
とは言え、こんな寒さであると人の動きとて鈍ろう。それが貧民地区であれば尚のこと。

それは高い処から見れば、一目することができる。
貧民地区と云ってもどこもかしこも平坦、低い建物ばかりではない。荒れ果てていても往時の高さを残すものもまた、幾つもある。

「……取り掛かりが遅すぎたか。こりゃァ獲物は地下か何処ぞに隠れ潜っていると見える」

その姿があるのも、そうした高い建物の上であった。地上三階建ての宿か商家か。
なまじ頑丈に建てられたお陰で、今なお朽ち果てきれない石像建築の屋根の上。煙突らしい突起に座する人影が嘯く。
平民地区の街の明かりと、月明り、星の光と。遠く、か細い光を受けた白い羽織姿が襟巻を引き寄せ、やれやれ、と肩を竦める。
ちょっとした人探しだ。盗賊ギルドではなく、報酬は安くとも冒険者ギルドで請けた依頼である。
そうとなれば、変装する必要もない。気楽なものだ。目を引いて困る時は気配なり何なりを消せばいい。

「おっ、と……――嗚呼。」

くいくいと襟巻を引けば、もぞ、もぞと。逆に引っ張るような小さな動きが襟巻の中で起こる。
お気に入りの毛布を取られたくないような、と言えばしっくりくるかもしれない。
悪かったよ、と嘯きつつ、遠く目を遣ろう。今更ながらに思えば過日、血生臭い修羅場と化した場の一角が見える。
そうだったとは誰も気付くまい。結界を敷いた中で為した上に、屠ったものは骨をも残さぬ程に滅却し、名残もなく。

影時 > いざ事が済めば――思うものはある。言葉にするととても馬鹿らしく、声に出してしまうと仕様もない。
とは言え、現場を見てしまうと矢張り思ってしまうものだ。
用法が正しいかは分からないが、犯罪者は犯行現場に戻ってくるもの、という与太もあながち間違いではないらしい。

(許せ――とは言わんが、な)

襲われたからには殺す他なかった。交渉の余地もなかった。とは言え。嗚呼、とは言え。
心の中で手を合わせる。酒の一瓶でも手向けたい処でもあったが、己が現状を思うとそれは出来ない。
どこに“目”が付いているかは分からない。
ぶらりと目立つ白い羽織を翻して歩くのは、念には念を、とばかりに当たりを付けるためであった。
歩きつつも感覚を研ぎ澄ませば、どの方角、どの辺りから注視の気配を察し、辿ることは不可能ではない。

空飛ぶ竜種と関わりがあるが故に、その視点が虚空からも生じうることを知る。
地を潜る忍術、魔術を知るが故に、固められた土、岩板を通して目を覗かせる手合いを知る。

故に探知は平面ではない。己が自身を中心とした球状の域と成る。
こうして座しつつ、襟巻の中に潜って飼い主の体温も使って暖を取る小動物らとじゃれつつ、感覚を研ぎ澄ませていれば。

「……まァ、俺の考え過ぎ、かねぇやはり」

――今のところ、そうした気配、予兆、違和感、虫の知らせの類はない。は、と苦笑交じりに白い息を零そう。