2025/12/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」に影時さんが現れました。
影時 > ――此れも仕事だ。
ああ、仕事だ。仕事よ偉大なれ。労働、汝に貴賎なし。善しと悪しがあるだけだ。
薄らと白い雪が舞う貧民地区。所々に灯る小火めいた火は、廃材を寄せ集めて焚いた焚火であろう。
少しでも寒さをしのごうと寄せ集まるものたちは様々で、時偶に殴り合いすら生じる。
それを横目にして動くものもまた、夜の闇に紛れるように在る。
闇に溶けるには白く。だが、闇のように昏いもの。夜に跳梁するものにも似た闇のようなもの。

それが、今は人のカタチを取って貧民地区の一角の或る酒場にあった。
闇の濃さが際立つ地域でありながら、鎧戸の隙間にから漏れる光は、光と闇の落差をより際立てるかのよう。
人が居る所には、金が動く。灯火一つ燃やすにも金が要るなら、成る程。ここには人が集まる、金銭をやり取りする場に違いない。
冒険者ギルドを介しない、直接人と人、仲介人等が遣り取りして、何らかの仕事を任せる所がある。
この酒場は、もちろん酒場には違いないが、自己責任の道理がまかり通るような処。

「……やぁ、今日も寒いねェ。ほーら、例の奴だ。此れで間違いがないか確認してくれ。ン?」

――煤の濃い脂のランプの煙と、煙草、安酒、仄かに臭う悪臭は、ははァ、隅っこに立ってる商売女でも見て扱いたか?
様々な装い、風体、年齢。男も居れば女も居る。
そんな場の奥のカウンター席で、ぼろいスツールに座す男がカウンターの向こうの姿に物を渡し、嗅ぎ取る臭いに肩を揺らす。
この場では一際目を引こう、潔癖さすらある白い上下のスーツと白い中折れ帽、右目に片眼鏡を付けた姿だ。
にも拘らず、眼をくれられることもなく、逆に目を向けられたら、そそくさと眼を反らされることすらある始末。

仕事を頼めば、数日のうちに情報、或いは何がしかの物を持ってくる。仕事の早い男だ。
金銭には然程こだわらない代わりに、情報にこだわる。そしていざ手を出すならば容赦もない。
この酒場に初めて顔を出した際、――何をやったのか。やや厄物めいた扱いは記憶がまだ冷め遣らないかのよう。

影時 > 馬鹿ども(フールズ)とも誰かが宣った盗賊ギルドに属し、諸々の合間にこなし、表沙汰にし難い荒事を適宜片す。
裏社会には深入りすると厄介なのは知っているが、事此処に至っては止むを得ない。
必要な手段がそこにしかないなら、そうもする。必要と判断したなら、好まぬ手段も割り切れるのが忍者だ。

偸盗の如きも強盗の如きもやる。

昨今売れ筋の魔薬の売人をシメ、丁寧に聞き出した販路の出元を依頼者に流すのも、慣れたもの。
直ぐにその情報の価値が無くなるが、その過程を記録し、前後を分析する能があるなら、また別の意味を見出す者も居よう。
内容次第によっては、己が今籍を置く盗賊ギルドに流し共有するのも、此れもまたいつもの事である。

「――確かに。さて、あれをくれるかい? 確かウン代前位の王即位記念の、……ぁぁ、25年物を。いや、違ったかな?」

カウンターの向こうの禿頭の男に渡したのは、小さな薬包よろしく折り畳んだメモ。
その内容を確かめに裏に行き、程無くして戻ってくる。内容的には先方には満足出来るもの、だったのだろう。
小さな布袋がじゃらり、と中身を鳴らし置かれる。重さは摘まんで、そっと下ろせばすぐに分かる。
其れを上着の下、腰裏に仕舞い、在ったはずだろう?とばかりに片眼鏡越しに視線を遣る。この店で真っ当=お高いレベルとされる酒。
王の代替わりの度に樽詰めされ寝かされ続けている酒が、偶にこの地域にも転がってくる。
投機的な扱いにもされるものだが、金さえあれば呑める。金さえあれば、だ。磨かれたグラスに済んだ琥珀色の液体を注ぎ、置かれる。

ちびりと舐める味わいは、悪くない。水で割るのも勿体ない。
こんな処に置かれたままにされるには、惜しさすらある。それを呑む、呑めるのは、どういうことか。
ちら、と背に刺さるような気配、眼差しをよく意識する。せせら笑うように口の端を捩じり。