2025/11/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」にアルジェントさんが現れました。
■アルジェント > ギルドに討伐指定の魔物の素材を提出し終えたその帰り。
ついでにおすすめ依頼として差し出された一枚を何の気なしに受け取って忘れていた。
とりあえず、食事がてらの酒場の席について、がさつくコートのポケットからそれを取り出す。
大量に用意できるよう、繊維が荒めの安い紙片。
それだけ急を要しているのか、あるいは大口の依頼なのかは、女にはあまり興味のない事ではあったが。
時期的に城の夜会の護衛なんかは増えそうだよなーと、注文した安酒のカップを雑に咥えながら、内容に目を向ける。
「…………ぁん?」
急募、は急募なんだが、と胡乱な眼差し。
祝祭、祭事期間はかきいれ時だから、ということで
どこぞのティーサロンの呼び込み係。
容姿審査があるのは当然そうだろう。
場所にもよるがああいうのは──基本的に富裕層向けのものだという印象はある。
あるのだが──。
性別が女であるというのと、後サロンの給仕制服着用義務、というのまで目を通してくしゃ、と紙片を丸めた。
どうせなら魔物討伐のほうがまだましだなあ、なんて脱力感と共に。
■アルジェント > とりあえず丸めた紙は卓において、咥えていた木のカップを手で支えた。
味がついている程度の薄さを舐めて。
食事枠は、と視線を巡らせる。
メニューボードに乱雑に書き込まれた文字列を眺めて、野菜をなるべく避けたメニューを選ぶように視線を動かす。
結局のところ───。
「獣肉の薄切りと、後なんか」
雑な注文を給仕に入れて、ついでに酒のおかわりも注文する。
銅貨のチップを投げ渡し。
それでようやく、少し背筋から力を抜いて、だらんと椅子にもたれる格好。
変わらない日々の営み。
けれど少しづつ浮ついた空気が街全体に漂い始めているのは、きっと一年の終りという節目がそうさせるんだろう。
■アルジェント > 特に複雑な注文でもない。
何なら干し肉をふやかしたものでも文句を言わない女に対して、さほど凝った料理は供されない。
女としてもあまり味付けの濃いものを好まないせいかそれはそれでよしとうけいれる。
今夜のそれは、ローストされた兎か何かの赤味の部分を薄切りにしたもの。
表面はこんがり、中はレア風。
そこに軽く塩と、香りづけの香草が振られただけのシンプルな一皿と蜂蜜風味の酒の薄めたのがおかわりとして。
どーも、と謝意を示しつつ、カトラリーでひと切れ掬って口に入れる。
ぎゅ、と咀嚼して、脂の旨味がしみだしてくるのを味わった。
家禽とは違う、繊維質の噛み応え。柔らかい肉の部分の味わいに満足そうに緩く喉を鳴らし。
金色の双眸がゆるりと細められた。
■アルジェント > 木製のカップ故にわかりづらいが、その酒の色身は己のそれに似る。自分の方が純度が高い分色濃いだろうが。
ゆる、とカップを回し、淡い香りと味わいを舐める。
安酒を好んで口にしているのは単に強い味わいを必要としないから。
香りも、味も。人のそれより薄いもので十二分に届く。
嗅覚が人のそれよりずいぶんといい、というのがその理由。
高級な嗜好品としての酒を出すところに行けば己はきっとずいぶん悪食な客として映るか、あるいは下戸としてとらえられるのだろう。
だから今宵もそうして、猥雑な片隅に身の置き所を見つけて時間を過ごしていた。