2025/11/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」にアルジェントさんが現れました。
アルジェント > 夜も更け、板張りの隙間風が吹き込んで骨身にしみるような時刻。

娼婦が馴染みの男の腕を取り、宿の二階に上がっていくころ。
猥雑な喧騒に紛れるように、そのシルエットでは男か女かを判じがたい存在が、安いスツールをきしませるように足を組んでいた。

手元には適当に見繕った安酒。濃すぎるか薄すぎるそれを、木製カップ一杯。
つまみ代わりの干し肉を戻したのを時折千切って咀嚼していた。

別に飲んだくれているわけではない、待ち人があるわけでもない。
一日の終りそその猥雑な中において、その耳を澄ませているだけだった。
松脂のくすんだ灯りに照り映える蒼鈍色の髪が、緩く、酒を呷るのに仰向く挙措に揺れ。

時折男でも女でも構わないらしい輩に掛けられる言葉を、煩わしそうに手を振って応じもした。

「売りじゃねーよ」

面倒そうに返す声音は、確かに女のそれではあった。
その界隈で、一人でいられるのは確かにそれだけの意味を持っているだろう。

アルジェント > 人がはけたあたりで、カウンター越しに給仕してくれる男へと、チップを指ではじく。
無言でそれを受け取った相手が向ける視線に、金色の双眸をゆるく細めた。

「なんか面白い話、ある?」

端的な言葉に、少々面倒そうに肩を竦めるものの、一応チップの真贋を確かめるようにちら、と視線を向けてから。

路地裏の、猥雑な界隈の与太話かもわからないような噂話から。
或いは貴族の邸宅に勤めているという下働きの嘘か本当かわからないような話に耳を傾ける。

己が手渡したチップ数枚分の、今口にしている酒と似たような塩梅の精度ではあったけれども。
その真偽を一つ一つ確かめに赴くのはそれなりに面白い暇つぶしの一つだった。

アルジェント > 意味があるといえばあるし、ないといえばない。
一杯を飲み終えると代金を置いて、立ち上がる。

シルエットを隠すようなデザインのコートの裾を翻して、狼は夜に紛れてゆくのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」からアルジェントさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2/娼館「プリプリ」」にマドレーヌさんが現れました。