2025/11/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にルティナさんが現れました。
ルティナ > 王都マグメールの貧民地区
立ち並ぶ店の数や取り扱う種類で言えば、平民地区に勝るところはない。
けれど、希少な素材が手に入るのは、案外、貧民地区の方だったりする。
それだけ表沙汰にできない仕入れルートからのものが多いということなのだろう。

裏通りにひっそりと店を構える道具屋
店といっても、外観からは、とても店だとは思われないただのボロ小屋で。
そんなボロ小屋の中で、髭の強面と交渉していたのは、まだ年端もいかない少女だった。

「うぅ……あの、もうちょっと安くならないんでしょうか?
 ほら、これなんて、もう萎びちゃってますし!」

少女が指差すのはこの辺りでは稀少な薬草の根
煎じて飲めば、疲労回復に効能があるものの、王都では精力剤の素材としてよく知られるもの。
ただでさえ入荷数が少ないうえに、そんな理由で上流階級が買い占めるものだから、
どこでも品薄になっている、そんな素材で。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にタマモさんが現れました。
タマモ > 目的地と言うものは、決められてしまっていると、案外、上手く辿り着けないものだ。
それが、普段から気紛れに動いている者となれば、尚更に…

そんな己が今回頼まれたのは、ちょっとしたお使いである…その頼みの主は、己の式神の一人だ。
何でも、貧民街のどこかのお店に、調合に必要な材料があるとかどうとか?

「いつも思うんじゃが、妾が主のはずなんじゃがのぅ…ともあれ、この辺りだと思うんじゃが、さてはて?」

ぺらり、と一枚の羊皮紙を広げ、そんな店の前で足を止める。
そうしたところで届く、店内からの上がる声。
何かしらの交渉をしているのであれば、この目の前の店が、もしかしたら探していた店かもしれない。
そう思えば、その手に羊皮紙を広げたまま、ずかずかと入って行くのだ。
ちなみに、羊皮紙に描かれているのは地図、目的地はまさにこの道具屋であった。

とりあえず、まだそれを認識していないのもあってか、この中に居る誰かに確認をしてみようと。
まぁ、そんな考えである。

ルティナ > 萎びていようと、干からびていようと、価格というのは需要と共有の関係で決まるもの。
髭面の店主からの回答は、首を横に振るだけの愛想のないものだった。
少女としても、どうしても必要という訳ではないだけに、それ以上は無理強いをする気もなく。

「仕方がないです……代わりに、そっちの薬草を一束ください。」

ため息をひとつ漏らしてから、指差したのは先程の薬草からすれば、桁ふたつは違う薬草の束
冒険者でなくとも、近くの草原で摘んで来られるくらいの、そんな子どものお小遣い稼ぎの素材で。
こんなので良いのか、と言いたげな表情を浮かべつつも、店主は「ほらよ」と放り投げ。
珍しく来客の多い日だとばかりに、続く客を値踏みするかのように、見遣り。

「わっ、いくら安物だからって、投げないでくださいよっ」

慌てて受け止めたものの、背後の注意なんて全くしていなかったものだから、
後ろから入って来た客にぶつかってしまうかもしれず。

タマモ > 「ふむ、賑やかで何より、ところで…」

そう入って来たのは、異国風の着物姿な上に、狐の耳と複数の尾を持つ変わったミレー族、に見える少女の姿。
手にした地図に視線を落としたまま、だったのが災いするのだが…

「…おぉっ!?」

そんな状況の中、不意に…不意と言う程でもないが、正面から突如現れたように見えた少女。
さすがに地図を潰されては拙いと、ひょい、と羊皮紙は上に上げるのだが。
その所為で、投げられた薬草を受け取るのに後ろに下がったであろう少女まで、避ける事は出来なかった。
結果、どんっ、と進んでいた己へと軽く衝突する事になる訳である。

勢いがそう無かったのならば、そのまま、少女の体を止める事も出来るだろうが。
ちょっとでも勢いがあったのなら、その弾みで、付近に陳列された別の商品やらを、落としてしまうかもしれない。

ルティナ > 軽く放り投げられたのが薬草の束だったから、取り落としてもそこまでの被害はない、はず。
後ろに下がってどうにか受け止めたのは良いけれど、ドンと軽い衝撃を背中に感じる。
勢いはなかったはずだし、体格的にもそこまでの衝撃ではないはず。
あるとすれば、まったくの無防備だったから、後頭部あたりをぶつけたかもしれないくらい。

「わわっ、ご、ごめんなさいっ!
 このお店に他のお客さんが来るなんて、思ってなくて…っ」

慌てたように、背後の相手に頭を下げる。
けれど、下げた頭を戻した際に、異国の衣装を身に纏った少女の、その頭に見える狐っぽい耳に視線が行ってしまい。

タマモ > うん、どうやら、軽く当たっただけで周囲に被害はなかったようだ。
それにしても、混んでいる訳でない店内で、どうしてこうなったのか…等と、考えを巡らせ始めたところで。
慌てた様子でこちらに振り返り、頭を下げる少女を見れば。

「いやはや、危ない危ない…ちゃんと周りを見ておらねば、転んで怪我をしてしまうぞ?
…? おや、これはまた、可愛らしい女子じゃのぅ…して、どうかしたか?」

やれやれ、と肩を竦めながら、下げている頭に手を伸ばし、ぽんぽん、と撫でてやるも。
その撫でていた頭が上がり、こちらを見れば…顔、よりも更に上、頭に向けられた視線に、かくん?と小首を傾ける。

いやまぁ、大体見ている場所に、予想は付く訳だが。
一応は、こう、とりあえずは聞いてみているのだ。

ルティナ > 頭をぽんぽんと撫でられると、少々子ども扱いのそれに微妙な表情。
それでも、今はこちらがぶつかったのが悪いので、それには言及せずに。

「それは……ごもっとも、です。
 ……? え、あ、ご、ごめんなさい。不躾でした。」

不注意を窘められると、言い訳はしようがない。
再度頭を下げると、どうかしたかとの問いにキョトンとしてから、己の視線への問いかけだと気が付く。
おかげで三度頭を下げることになるわけだけれど。
ちなみに、可愛らしい云々は聞き漏らしている。

そんな茶番を繰り返していれば、強面の店主が「おー、どうでもいいが、用事がないならとっとと帰れ」と邪険そうに手で追っ払う仕草をして見せてくる。

タマモ > まぁ、実際に己からすれば、人間は誰しも子供のようなもの…なのだが、少女がそれを知る由はないか。
微妙な表情は見逃さなかったが、そうした相手は幾人も見て来たので、大丈夫だろう、と余り気にしたりはしない。
大丈夫じゃなかったら、何かしら言ってくるだろうし、とも思っているからだ。

「あー…いや、別にそう気にしておらんがな?
妾に何かある訳でもなかろうが、お主に何かあったら、逆に妾が悪かろうと思ってしまうしのぅ。
いやいや、気になるものは気になる、何かあれば遠慮せず言うても良い、それも気にせん事じゃ、うむ」

ぺこぺこと何度も頭を下げる少女に、くすくすと笑いながら、頭はダメならこっちは良いだろう、と。
今度はぽん、と肩を叩いてみせながら、そう伝え。

「おぉ、そうそう…ここに書いている先に、えーっと…ここに書いてあるものを、送って欲しいそうじゃ。
何でも、妾の説明では信用ならんそうでなぁ…こうした形で、お願いする、だそうじゃぞ?」

次に視線を店主に向ければ、今思い出したかのように、ごそごそ、と袖を漁り、中から一枚の別の羊皮紙を取り出した。
そこに書かれているのは、この店で並ぶ商品の一つ、更に言えば、今まさに交渉されていた薬草の根。
後は地図が描かれており、富裕地区にある手紙の送り主の住んでいる場所だろう場所に、印が付けてあった。

「さて、妾の用は終わったが…せっかくの機会、急ぎの用など無ければ、ちと付き合ってくれんかのぅ?」

続けて、改めて少女へと向き直れば、そんな事を頼んでみる。
こうした場所での、珍しい邂逅だ、何かあるかもしれないとの、そんな期待を抱いてみるのは、悪くはないだろう。

ルティナ > 遠慮せずにとは言われたものの、だからと言って「そのお耳が気になります」とはさすがに口にはできず。
とりあえずは、許してもらえたらしいことに対してお礼を述べるに留め。

そして店主との交渉が始まれば、邪魔になるのでお店を後にしようとしたところで、
つい先ほどまで交渉していた品が店主の手の内に収められる。
話を聴くに、どうやら送料さえ払ってくれれば、特別に届けてやらんでもないとか、どうとか。
つまりは売れてしまったということで、着物姿の少女の方をついつい見てしまう。
ぽんと大金を支払えるお金持ちの令嬢だったのかと。

「ひゃっ……は、はいっ! お付き合い、させていただきますっ」

こちらはしがない平民どころか、その日暮らしに近い。
相手が貴族かどうかわからないけれど、少なくともそれに近しい身分であることは確実
そんな相手にぶつかってしまったと己の罪を思い知れば、返事の声も上ずってしまうというもので。

タマモ > 少女の気持ちは分からないでもない、そうした視線は、何度も受けた事があるのだ。
慣れたものとは言えど、それを知らぬ相手にとってみれば、その辺りは気を遣うところなのだろう。

支払いについては、すでに受け取っていたのだろう。
店主からの、送料さえ払えば送るとの言葉に、再びごそごそと袖の中を漁る。
どこにそんなに詰まっているのだろう、と思えるような、大金の入った袋を取り出し、どん、とテーブルに置き。
これで用事は終わったと、少女の側へと歩み寄る。

「ふふっ…そうかそうか、良い返事を貰えて、嬉しい限り。
そうであれば、ほれ、その先まで一緒に行くとしよう」

己をどう見たのか、急に畏まった様子を見せる少女に、軽く思案するも。
それを何と無く理解したのだろう、にっこりと笑顔を向ければ、するりと少女の腰に腕を回し。
そのまま、二人は店を後にするのだった。

ルティナ > いった何処に連れて行かれるのか。
そんな不安を抱え、腰を抱かれれば、大人しく付いて行くことになる。
後に店主が語ったところによれば、それは仔兎が狐に捕まって、巣に持ち帰られるようだったとかなんとか……

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からルティナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からタマモさんが去りました。