2025/09/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にさんが現れました。
> 日が傾き出す頃、貧民地区は賑わいを増す。
一日の仕事を終えて飲み歩きに出た冒険者。そんな冒険者を娼館へ誘う娼婦たちの甘い声。
あっちでは既に出来上がった飲んだくれが歌を歌い、こっちでは些細な事で喧嘩を起こす者もいる。
今日も今日とて変わりなく、この街は通常運転だった。

建物から建物へ屋根を伝って歩く人影が、ゆらゆらと揺れて地面に影を落とす。
顔を上げたなら、そこには白髪を靡かせ佇む少女の姿が一つ。

「……んー。どっちか、わかる?」

独り言を呟けば、ケープのフードがもぞもぞ動いて、ひょっこりと虎柄の子猫が顔を覗かせた。
子猫はキョロキョロと辺りを見渡したと思うと、右を向いて『にゃぁ』と鳴く。

「もっと、西? わかった」

子猫が向いた方に少女も向いて、子猫の直感を頼りに親猫探しはまだ続く。

> かれこれ一時間は貧民地区を彷徨っているだろうか。
腹を空かせて鳴いていた子猫にパンの欠片を分けてやり、落ち着かせながら親猫を探す。
親が生きていれば良いが、最悪死んでいたら里親を探さなければいけない。それが、一度手を貸した者の責任だ。

子猫についていた匂いから、親猫が近くにいれば見つけられる自信はあるのだけど。
狭いようで広く、雑多な物と人で溢れたこの地区は、隠しごとには向いているが、探すとなると困難極まりないと改めて実感する。
つい重い溜息が漏れると、子猫が右肩に前足を置いて頬に額を擦りつけて来る。
遊んでいるのか、元気づけているのか。猫の真意はわからなかったが、ふわふわの毛並みは温かくて心地良い。

「ん、大丈夫。ちゃんと見つける。
 ……一度下に降りるから、落ちないようにフードに戻る。うん、良い子」

そう告げて子猫の顎を軽く擽り、フードの中に戻ったことを確認してから、屋上の縁に上り。
その高さは優に三階を越えているが、少女は臆することなく、ひょいっと軽く跳び降りる。

> 「――……んっ!」

帽子を片手で押さえ、したっ!と靭やかに音もなく着地する。

10点、10点、10点……8点。 98点。

減点は丈の短いスカートが風に煽られ色々と見えてしまった点である。

普通は、帽子より翻る其方を気にするべきなのだろうが、別に誰が見ているわけでもないのだ。
……否、誰かが見ていても、少女は然程気にすることも無いが。
無事地面に降り立ち、子猫の無事も確認してから、乱れた髪とスカートを軽く直して少女は再び歩き出す。

> 目指すは西。きっと、其方に行けば子猫と同じ茶色い虎柄の猫に出会えることだろう――。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からさんが去りました。