2025/08/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 日が落ちてから暫し。
熱い風というには少しだけ穏やかで、ぬるぅい風というには発汗を誘うぐらい。
今日も今日とて夏向きの装束に袖を通したちんまいのが、ふらぁりと貧民地区に。
他所からの移動途中だったのだろう、未だ繁華街のエリアには至っておらず、
細い運河に沿った小道を、てこてこと。
運河、といっても大層なものではない。
人が数人、もしくは一抱えはありそうな木箱を十個ほど乗せられる小舟がすれ違える程度。
当然、観光用でもないし、灯をつけてまでの航行は割りに合わないしで、水面は静かなものだ。
「思うてみれば、川遊びも、湖遊びも、海遊びも、水遊場遊びもせず仕舞いの気がするのじゃが。
水棲生物でもなし、水に浸からねばならぬという法は無いのじゃが、勿体ないことをしたかのぅ。」
ぽつりと呟くのは、ちゃぷちゃぷという水音が連想させたのだろう。
温泉には顔を出したくせに、日の下で水遊とならなかったのは…
当人は否定するかもしれないが、爺むさい。
もっとも、面と向かって指摘して、無事に帰れるのは稀有の範疇に含まれよう。
さて、思考をまだ見ぬ水辺から地上に引き戻し、所々暗がりの残る路地を眺める。
繁華街の外れまであと少し。
酔漢が勢い余って転がり出たり、逆に酔い覚ましで避難したり。
人目に付きにくいから何事か表立ってできない取引の場になったり、
娼館に所属していない立ちんぼが、他の女と諍いでナワバリから弾かれて客待ちしていたり。
他者に遭遇する密度はそこそこでも、何も起きない無人地帯ではない。
綺麗な黒髪に隠れがちの、小さなお耳がぴこんっと。
何事か気配を察知したらしいのだけれど。
■ホウセン > ――にゃあ。
なんて、横の路地の暗がりから、毛並みの良い黒猫が我が物で姿を現し。
「何じゃ、猫助か。
ここいらで見かける連中より、手入れが行き届いておるようじゃのぅ。」
この地区の一般的な住民の飼い猫というには違和感があるが、猫は猫である。
よっこいしょっとしゃがんで、ちっこい手でおいでおいで。
「大方、娼婦の飼い猫といったところかのぅ。」
貧民地区に店を構えていたとしても、支払いの価格帯もそれに準ずるとは限らない。
大っぴらにできない”遊び”を提供する、口止め料込みという場合もあるのだし。
そういった店の売れっ子ならば、羽振りがいいことは珍しくない。
こんな子供の姿をした人外相手でも、野生の勘とやらは働かぬようで、
ゆったりと歩み寄る猫の頭を指先でなでなで。
軽く愛でて解散と相成ったか、細っこい腕に抱えて散歩の同行者としたかは、まだ分からぬ話。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からホウセンさんが去りました。