2025/08/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にセニアさんが現れました。
セニア > 「ふー」

そんな彼らの路地の近くを仕事上りなのか、鎧を外した普段着の姿で息をつきながらゆっくりと歩いている。
仕事は終わったが終わりが遅くなった為、安宿の近く―――それでいて安い酒場でさっさと食事を終わらせようと出てきた次第だ。

そんな時、路地裏を出ていく娼婦達の様子を見てひょいとアキアス達の居る辺りを覗き込んだ。
そこにいるのはまあ、柄がいいとは言えない男たち。
「ああ」
顔は知っている。
ぼんやりと疲れた中頭を働かせて名前を思い出す。
確か、アキアスといったような。
向こうが知っているかまではわからないが。
そして酒場ではなく、屯して酒盛りをしているのはこの辺りで言うとよく見る光景である、といえばそうであった。

アキアス > 冒険者稼業も長くやっていれば、様々な所に伝手もできる。
良い物も悪い物もさまざまではあるが。

そして、その日は昔馴染みたちといつものように路地裏で益体も無いことでげらげら笑いながらの酒盛り。
割合で言えば、店で飲む方が多いのだが。
これもまた伝手ゆえのものといえば、そう。この地区出身だからこその、処世の術。

案外にこういうところで聞ける話が馬鹿にはならないのだ、と。
ただ、飲んでいると、自分が先に馬鹿になるだけで。

「っお? ……お。ぃよう姉ちゃん、一緒に飲む……か……って、確か……セニアか。今日はオフか?」

路地の入口側から覗き込んでいる女がいれば、柄悪く絡むように声をかける。
が、その声がやや窄まってから、調子を抑えたのはちょっとした知己だったからだろう。

元兵士の傭兵。
兵士時代も傭兵時代も、縁はある。袖すり合う程度のものだが。

女だてらに傭兵家業をしている手合い相手に、軽率に下卑た言葉はかけないあたりが、
突出した才能を持つわけでもないアキアスがこの年まで無難に冒険者をこなせている所以でもあって。

ただ、周囲はそうでもないので、どのように見えるかは相手次第。

セニア > お互い顔は知っている、と理解をして。
彼に声を掛けられれば、飄々とその路地裏へと進んでいく。

人に寄っては鴨葱に見える行為なのであろうが、彼女にとっても既にこの辺りが日常であって特に気にしたそぶりもない。

「いーや、仕事」
アキアスに近づきながら、臀部やらに手を伸ばそうとしてくる周囲の男の手をぺし、と軽く払い、時にふわりと避けながら。
特にそれに関して睨むわけでも無く、それこそこれも日常なのだろう。

「まあハズレだったけど」
はあ、と息を吐いてアキアス近くの壁に身体を預ける。
一応、背後だけは取られないようにするようであった。
「あれだこれだ色々と情報を仕入れて挑んでも結局ハズすんだよね」

困ったもんだよね、と肩を竦めた。

「んで……こんなとこで飲んでるの?」
それは特に咎めた様子もない、単純な質問。
元兵士だろうと彼女にとってはそれは遠い日の話だ。
希望に燃えてた頃はどうだったろうなあとかちょっと思いながら。

アキアス > 気後れすることもなく、慣れた様子で路地裏に入り込んでくる女を眺める。
彼女が相応に実力ありながら、腐敗する王国内部に嫌気がさして兵士を辞めたというのは、誰に聞いた話だったか。
その後の傭兵としての活躍もその腕の良さを裏付けるものだが。
けれども、腕はあるが、あまり上昇志向が無いのもその態度で判る。
活躍ぶりがそうそう聞こえてこないのは、ひとえにその性格によるところなのだろう。
腕は良いが、扱いやすいとは言えない。
仕事上絡みがあるかもしれない相手のことはいくらかは調べることもあるアキアスの最終評価はそれ。

ただ、その気だるげに見える表情は一部の男傭兵たちには密やかな人気だとも聞いている。
実際。こうして傍で見れば、なかなかな美人で、鍛えられつつもそそる体つき。
取り巻き連中がその身体の丸みに誘われ指を伸ばすのもやむなしだろう。

「そいつぁ、ご愁傷様だな。こっちは、こいつら相手にお大尽するくらいにゃ、実入りが良くてな」

傍の壁に背を預ける女を見下ろす。頭一つ分ほどの身長差。
軽装鎧姿が記憶にあるが今の格好は仕事空けで鎧を脱いできたというところか。
彼女の顔から、その割合に豊満な胸元にと視線を流しつつ、自身がもたれる壁にある窓に指を伸ばす。
そこからよどみなく供給される酒。壁の向こうは安酒場なのだろう。

ジョッキ一つ、隣の女に差し出して。要るか? とばかりに、掲げて見せた。

セニア > 「それはそれはうらやまし限りで」
手を伸ばしはしないものの、視線というのはやはりわかりやすいもので。
とはいえそれを咎めるようなことはしない。
咎めた所で得が無いのは承知であるし、この身体が時には得になり得るものだと自覚はしているからだ。

ふと、以前に聞いた彼の評と今の評は随分と変わったな、とそういえば思い出す。
確か遺跡一つを踏破した、と言うのは話に聞いたがその時はそこまで話題に上がるようではなかった、と思い出しながら。
その一軒の後から実力がついた、といえばいいのか人が変わったというべきなのか。
その遺跡で何かしら手に入れた、と考えるのが自然ではあるが、詳しくは聞いていなかった。

などと少し思案に耽っている中、声をかけられて意識を目の前に引き戻して。

「いいの?」
どこかで仕事終わりの一杯を、と考えていたから渡りに船だといわんばかりに手を伸ばしかけて……一度戻した。

「彼らには――大盤振る舞いしてるワケだけど……タダじゃないよね?」
流し目でそう問いかけた。
アキアスと知己ではあるものの近いわけではない。
水を差すかもしれないが、それは彼女なりのこの世界での処世術でもあった。

アキアス > 男が迷宮を踏破したのは、それこそ彼女がまだ兵士をしていたころで。
きっといくつか聞こえた冒険者の一獲千金の話の一つだろう。
アキアスは名の売れた冒険者でもなく、有望なパーティーの一員などでもない。

その時の稼ぎで家を構えたくらいの話で、あとはまた凡百の冒険者と変わらぬ仕事ぶり。
ただ、確かに羽振りはよくなっている。こうやって時折、昔馴染みに酒をふるまえる程度には。
その理由を彼女が知ることがあるかどうかは、また別の話となるだろうか。

冒険者の暮らしぶりなどその日その日で目まぐるしく変わる。
蓄財をしないわけではないが、商売人やらと違うのはやはりその金遣いの荒さだろう。
今日は偶さか、自分が羽振りが良いから彼女にもおすそ分け。けれどもそこに彼女の、こちらの思惑窺うような視線があるなら。

「昔っから聡いし、立ち回りの上手い女だよなぁ、おまえさんは。
 仕事終わりなんだろ? 俺としちゃ、少し付き合ってくれりゃ御の字だな」

そうっと、彼女の腰に腕を伸ばし、抱き寄せてしまおうとしつつ。
稼ぎ良く財布のひもの緩い男に、彼女がどのように応じるかにもよるが。
何に付き合えと言っているのかなど分かり切ったこと。

周囲から抜け駆けめいた行為を非難する声も上がるも、意に介さずにセニアに碧眼を向けたままで。

セニア > 「そりゃあ……そうしないと後ろ盾なんてなんもない女はね」

彼が知るか知らないかはさておき―――王国に所属して頃はそれで随分と苦労もしたのだ。
腕っぷしがあった所でお上が言う『政』というものにはとにかく無力な事が多かった。
今となってはその時の慣れはこの生活に躊躇なく踏み込める経験になったな、と少しは思うものの。
いや、やっぱり納得はいかないな、と思い直す。

「ん……」

伸びてくる腕に一瞬の逡巡と、視線を絡めたものの、払いのけはせず、彼に抱き寄せられて。
周りから野次もあがっているが、どちらにせよアキアスに頭は上がるまい。
買ってくれる、と言うのなら。

「―――まぁ吝かじゃないかな」
腕を見ていた視線を彼の碧眼に絡める。
やや赤みはかかっているものの相変わらずけだるげで、眠たそうな瞳ではあったが。

「じゃ……とりあえずこれは手付の一杯ってことで」

ジョッキを受け取り乾杯をするように彼の盃へ近づけた。

アキアス > (後日継続)
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からアキアスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からセニアさんが去りました。