2025/07/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にカグヤさんが現れました。
■カグヤ > 人生常に上手くいくわけでなし、仕事でミスをしたり人間関係に悩んだり。
そんなときに足を向けるのは決まって、普段足を伸ばさない貧民街の酒場。
そんなに頻度高く訪れるわけではないが、比較的平民地区寄りの表通り沿いの店。
既に冒険者や亜人等、様々な人種が賑わうその店のカウンターで、その場には似合わないスーツ姿。
「エールに乾き物──、そうね……干し肉でも頂けるかしら?」
頼んだものは冒険者もかくや、酒場で態々頼むものではないけれど。
届いたエールも冷えておらず温く、干し肉も処理が甘いのか血の香りと肉の臭さは抜けきらない代物だった。
それでも、口に含み噛み進める。無心に、噛めば噛む程味が出るという事も無いがそれを噛んでいる間は、吐きだしそうなため息をつかないで済んだから。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にヴァンさんが現れました。
■ヴァン > 隣の席に人が座る。カーゴパンツ、ジャケット、バンダナと銀髪。
「スタウトとナッツ。……後ろ姿を見てもしやと思えば、やっぱりカグヤさんか」
遠い方の手をひらひらとさせ、挨拶のかわり。
女の前にある小皿にジャーキーが載っているのを見れば、返答まで時間がかかるだろうと考えて言葉を続ける。
「こういう雑多な……賑わう所に来るイメージはなかったな。家、ここから近いのかい?」
平民地区寄りとはいえ、学院からはそれなりに離れている。
普段の――そして今の外見から、あまり想像がつかない。
届いたスタウトのジョッキを軽く掲げてみせる。
■カグヤ > 「あら──」
隣へと座る男の姿、他にも何度か座って声を掛けてくる男は居たが、外見と飲食しているもののギャップ。
そして明らかに機嫌が悪そうな目つきで睨み返して相手にもしなかった。
そんな中見知った顔から声を掛けられれば、干し肉を齧りながらも驚きの声だけは出て。
咀嚼も程々にエールで干し肉を流し込んでいった。
「マスター、おかわり。
──そうね、滅多には来ないけれど、反省したいこと、忘れたいことがあった時には、こういう雑多さが良いのよ。
ヒミツ。知られたら、押しかけられそうだもの。」
そんな風に口元を隠しながら笑っては、まだ1杯目ではあるものの酒精の影響はあるのかもしれない。
ジョッキを掲げる相手へと、丁度良くこちらにも届いたおかわり。そのジョッキを軽く当てて響かせる音。
「乾杯。」
そう声に出してまた口元へと運び嚥下してゆく。こくり、こくりと一気に半分程──大きく吐きだした吐息と共に、トン、とカウンターにジョッキが置かれた。
「貴方は、仕事終わりかしら?それとも、これからお仕事?」
そう紡いで視線を後ろへ、自身以外にも酔って大胆になる冒険者や、潰れかけの亜人等豊富は豊富。
連れて帰るには頃合いね、なんてダル絡みをするように話しかけるのはやはり酒精のせい。
■ヴァン > こんな店で女性が一人で飲んでいればナンパは避けられないと思っていたが。
カウンターの向こうにいる酒場のマスターの様子から、何があったかはおおよその見当がついた。
「ほう。そんなネガティブな気持ちになることもあるんだな。
まさか。招かれなければ行かないよ」
図書館で会話する時よりは少し砕けた、柔らかい口調に聞こえた。己もやや軽口を叩く。
一人で疲れを癒す時間を邪魔してしまったかな、と思いつつも時間を戻せる訳でもない。
秘密、という言葉には笑って返す。
「仕事終わりだよ。うちの図書館は24時間営業じゃない。
帰りに書店に寄ってペーパーバックをいくつか買って、ここで読もうかなと思ったら君がいたのさ」
素直に答えた後、つられるように視線を向ける。酒で危機意識が弱まった客が数人。
見知った顔はいないが、そういうことをすると次からこの店が使いづらくなると話す。
うっかり本のことを口に出してしまった。相手が気分を切り替えたいか、愚痴を吐き出したいか。
わかりかねたので、軽く聞きながらジョッキを傾ける。
「何かあったのかい?」
■カグヤ > 「そうね……私もまだまだ思ったようにはいかないし、伝わらないものよ。」
意図しない伝わり方。同僚との会話や後輩への指導等人間関係がある以上避けられないものだけれど、
それを引き摺ったとて仕方がないと、手の中のジョッキを揺らして波を立てる。
「どうかしら?」なんて冗談めかして返すのは先日を思い出しての揶揄。
「いいわね、なんだか余裕がある……。って感じで羨ましいこと。
あ──、そういえばこの前お勧めしてもらったミステリー、とても良かったわ。」
そう、ペーパーバックと聞いて思い出したのは勧められていたミステリーの内容。
物理法則に縛られた世界で、様々な工夫をし罪を重ねる者と、それを解き追い詰める者の話。
斬新な設定と何度も覆る展開に胸が躍ったと握ったジョッキが振えるくりには興奮していたようで。
「ん、ごめんなさいね、心配してもらって。
でも、大丈夫。今思い出した物語で随分と元気をもらったわ。ヴァン、貴方と会えたおかげよ。」
もう一度ジョッキを口元へ、先ほどまでの荒れていた飲み方からは嘘のように、落ち着いた傾け方に。そして干し肉を小さく千切る様に齧れば、少しばかり表情も穏やかに。
■ヴァン > 「そうだな。俺も他人様にうまくいってるとは言い難い」
副館長として中間管理職をやっていると、それはそれで困難にぶち当たる。
何があっても仕事は続くし、手を止めることはできない。雇用されている者の宿命か。
「いくつかは図書館の備品として買ったものだがね。
そいつはよかった。あのトリックを読んだ時は声が出たな……。
最近、異世界……っていうのか? 俺達の世界とは違う世界観の読み物が流行っているみたいだな」
冗談めかして笑う。本来ならば業務時間に書店に行って手配すべきものだ。
小説を読んだ者にしかわからない、抽象的な単語を使って共感を示す。
魔法の発展が緩やかな世界、科学技術が発展した世界……常識を根幹から揺さぶるものはなかなか興味深い。
異世界モノ、というジャンルで面白いものがないかと水を向ける。
「なーに、同業者、しかも競合って訳じゃない。
穏やかに仲良くやっていければ一番さ」
会えたおかげ、などと言われれば少し照れたように笑い、誤魔化すようにジョッキを呷る。
彼女がどれだけ酒豪かは知らないが、あのペースで飲んでいればすぐに潰れてしまうだろう。
そうなったら悪い連中にお持ち帰りされる危険もある。もしかしたらそれも彼女の計算の内かもしれないが……。
ひとまず、気分が落ち着いたようだったので良かったと微かな笑みを浮かべた。
■カグヤ > 「本当に、儘ならないわね。こればかりは──。」
とりあえず、これ以上話を続けてしまえば、折角の酒も出会いも台無しになりそうだったから。これで打ち止め、と咳ばらいを一つ。
それでも、「ありがとう」と再度感謝は告げられた。
「それでもよ、私最近自分で本を買う、というのを忘れていたもの。
ええ、流行り過ぎて玉石混交のジャンルではあるけれど、
学生とお店の店主という歳の差の恋愛ものや、スポーツ物まであるんだから、想像力には驚かされるばかりね。」
この世界と異なる法則のある舞台。という軸以外は割と自由に展開されるが故に、物語の体をなしていないものもあったりはするけれど。
「そうね……、私はこう──自らの肉体と、チームとの絆で勝利を目指す。玉蹴り?の話も良かったわ。
魔法で玉を飛ばすでもなく、手も使わず足でなんて、不自由な制約のかかる競技で。」
手も杖も魔法も使わない、非効率的で盛り上がりも今一欠けそうだが、青春と其の葛藤とがクセになると。
「それも、そうね……。
じゃあ、今日は改めて……。 よろしく、ヴァン。」
図書館から離れている今は、物語に囚われる事なく楽しめている。
先日の妖艶さは無いかもしれないがそれを引き合いに出し皮肉るところは変わっておらず。
それはそれで、本来、普段の自身なのだろうから、改めて挨拶を。
もう殆どからになったジョッキを掲げて。
■ヴァン > 「仕事柄本には囲まれてるし、うちと違って学院は貸出もないからカウンター業務は――それでも忙しいだろうけど。
それなりに本を読む時間はありそうだものな。
沢山あるんだな……裾野が広いとどうしても玉石の玉の方から見てしまうのは我々の職業病か」
多くの人に書の楽しみを伝える。他にも役目はあるが、その観点からいくと良質のものを選ばざるを得ない。
先日勧めたミステリーもその一つだ。続いた言葉に、あーと呻き声のようなものが漏れる。
「聞いたことがあるなぁ……あれ、作者はうちの故郷の人かもしれない。二つの組に分かれて、相手のゴールに入れるやつでしょ。
故郷にも似たようなのがあってさ。玉じゃなくて罪人の頭蓋骨でやるんだよ。平民の子供の遊びなんだが……」
死者を冒涜する目的をもって行われる遊戯だが、それをスポーツにしてしまうとは。
人間の想像力に限界はないことに驚嘆するため息と共に、ゼロから生まれるものがなさそうなことへの安堵感。
よろしく、と言われてジョッキを掲げてみるものの、動きから空に近いことを見て取った。
「そうだな、カグヤさん。よろしくされるためにも、何か注文した方がいいかもしれない。
ほら、マスターが準備してる。次もエールにするかい? ドワーフの火酒? エルフの蜂蜜酒? あ、俺は同じものを。
あー……背負って帰るのが怖いから念の為聞いておくが、カグヤさんは酒に強い方?」
注文を捌ききって一段落しているマスターを茶化すように話す。
図書館での取引先としてのさん付けでもない、物語の中での呼称でもない。フラットな状態での呼び方が、少し心地よい。
いつの間にか空になっていた己の飲み物のおかわりを頼みつつ、相手の限界をいちおう、尋ねておく。
ここまで注意したうえでもし酔い潰れたなら――さすがにその時は男も狼になっていいかな、と思った。
■カグヤ > 「本当はダメなのだけれど、文法すらままならないのを読むのは時間の無駄に思えてしまうから……。」
どうしたって、玉のみに目が向きがちになる。
人に勧めるのであれば尚の事だし、好きになってもらうなら更に。
「へぇ、しっかりと元ネタ、というと言葉は悪いけれど、あるのね。
なんにせよとても物騒なもののようだけど。」
それをただのスポーツに昇華してしまうのだから、想像とは残酷さもありながら優しさや美しさに溢れている。
そんな素晴らしい物語に囲まれている事を幸せに感じながらも──。
「私だけ呼び捨てじゃ居心地悪いから、カグヤで良いわよ。
で、明らかに潰そうとするようなラインナップにしないで頂ける?
でも──、そうね……潰して頂けるなら、ヴァン──、貴方なら構わないわ?」
ふふ、と笑みを浮かべて、マスターへと頼んだの蜂蜜酒。
すぐに届けられるそれを軽く傾けながら、念のため、として彼の耳元へ唇を運び──。
「私酔うと起きないし──、すごいわよ? 寝相。」
冗談めかしてそんな、悪戯めいたセリフを届けた。
行為に及んで疲弊し、気絶同然に寝てしまった前回はきっとその寝相の真価は発揮されなかったろうから、嘘か誠か、そんな脅し文句を囁いて見せよう。
それから、少しカウンターの椅子を近づけて、その肩に凭れてみた。
進む酒に、蜂蜜酒のように甘ったるい空気、彼が無事、酔う前に自身を持ち帰ることが出来たかどうかは、彼のみの知る所。自身の寝相について、も。
■ヴァン > 「違いない。一方で……内容だけ読むと、添削というか、良い書き手がいればな、というものもある」
作者は忘れてしまったが、原作と編集という二人体制の作品はとても良いものだった。
アルコールが抜けて一晩ぐっすり寝れば思い出せるだろうか。
「あー……前に話したかもしれないが、俺は誰にでもさんづけするんだ。
しないのは余程親しい奴か、あるいは……ってな。
待て待て、火酒はともかくエールも蜂蜜酒も飲んで潰れるような酒じゃないだろ」
潰すつもりか、という声には思わず抗議の声をあげる。
酒に弱いのならともかく、エールも蜂蜜酒もそう強さは変わらない。飲み方を心得ない、という風でもない。
潰してもいい、という台詞には笑うような戸惑ったような、曖昧な表情をみせた。
顔が近づいたので耳を寄せて――ふむ、と。
「なら、酔い潰れるギリギリを見定めないとな。目覚めたら床の上に転がらないためにも」
肩を近づけられて、腰に手を伸ばす。
男のお目当ての場所まで、二人で歩いて向かえたのか、あるいは抱えていくことになったのか――。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からカグヤさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からヴァンさんが去りました。