2025/06/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」に篝さんが現れました。
■篝 > ――新月の夜。
光の灯らぬ寂れた貧民地区でも、娼館や酒場、賭場等が多く立ち並ぶ辺りだけは他の地区同様に眩いほどの火が灯る。
人通りも多く、客は貧民だけに留まらず平民、貴族、魔族にまれびと。多種多様。
小奇麗な店では話題に出来ないような、下品な話、後ろ暗い告白、悪巧み等々。
酒で口が軽くなり、女相手に鼻の下を伸ばし、声も大きく上機嫌で高笑いをする者もいたり、いなかったり。
その話に聞き耳を立てる者も、いなかったり、いたり……。
貧民地区の酒場の一番隅。灯りの届かぬ薄暗いテーブル席に腰掛ける小柄が一人。
頼んだ安酒をちびちびと舐めながら、情報収集に精を出す。
「……」
二件隣の娼館主が新しく奴隷の娘を5人仕入れたとか。
その娘のうち2人はミレー族で、残りは平民と、没落した貴族の令嬢であると言う。
没落したと言う貴族の名には聞き覚えがあった。
三か月ほど前に自分が暗殺したのが、確かそんな名前だったから。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にクチナシさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にクチナシさんが現れました。
■クチナシ > 普段は平民地区の冒険者ギルドや、その近場の酒場を主な情報源としているが―――時によっては、違う場所での情報収集も必要となる。
それがいわゆるアングラな情報だったり。
表立って話題にすることではなかったり。
そういった理由を以て、貧民地区の酒場へと足を踏み入れる小さな影が一つ。
この場に似付かわしくない和装。そして、一見すれば小柄な少年にしか見えず、
何も知らない存在からすれば「ミレー」と勘違いされそうな獣耳も合わされば、先客たちから如何にもな視線を向けられるのも仕方が無き事。
「―――。」
一瞬、その腰帯に添えた刀の柄を揺らせば、視線は霧散する。
そしてため息の上で辺りを見回せば、流石にこの時間――。
人の入りも多く、空いていたとしても近くにいる他の客と関わりたくないということも合わさり……。
「ふむ。―――。」
自然と人気の少ない隅のテーブルや椅子周りを狙って腰掛ければ、結果的に聞き耳立てる少女の近く。
「ああ、すまない。ラガーと。揚げたイモの盛り合わせを一つ。……何?子供には売れない?
――未成年ではないのでな。其処は気にするな。金はあるさ。」
オーダーを店員に告げ、まずは深呼吸。改めて聞き耳を立てていれば、
自然と誰とも離さず、自分と同じように聞き耳を立てている小さな影にも、気付くわけであり。
「……もしかして、ご同輩か?」
別に種族などではなく、情報収集をしているという意味合いで――。
まずは一つ、コンタクトを。
■篝 > その他にも、色々と聞けたことがある。
新しい火薬を使った武器の開発が隣国で行われているとか。
とある貴族が旅の商人から大量の武具を仕入れていたとか。
どれもバラバラで繋がりがあるとは思えない事柄だが、何かの役には立つだろうと書留めて。
人の出入りが多いためそこまで新しい客を気には留めないが、皆の視線が一点に向かえば追うのは自然なことで。
例にもれずストールで隠された緋色も其方へと向いた。
其処に立っていたのは、年若いミレー族らしき少年。
見目も悪くないと、傍にいた人買い共が品定めをするような眼をしたが、刀の柄を鳴らされれば途端に大人しくなり目を逸らした。
注がれていた視線が離れて行く中、緋色は構わず少年を眺め店員とのやり取りから年相応ではない事、この堂々とした態度からおそらくミレー族ではない事を悟った。
手に握る杯を緩く傾け、布で覆った隙間から差し入れ酒を一舐め。
少年がこちらに声を掛ければ、しばしの沈黙を持って首肯を返す。
「ご同輩……多分?
……貴方は、隠さないのですか?」
何を持って同輩としたかは定かではないが、続く問いかけはその頭にある立派な耳を見上げてのことだった。
男とも女とも、老人とも子供と取れない奇妙な声で淡々と尋ねた。
■クチナシ > 「くはは。―――矢張りな。
何せ、この酒場で誰とも喋らず、静かに酒を飲む。それも此処でとなれば。
……ん?」
色々と危うい情報が蔓延る貧民地区の酒場。
そこで静かに聞き耳を立てる――情報収集を行う冒険者だと思っての"ご同輩"だったのだが、返ってきた言葉に少しだけ首を傾げる。
ああ、確かにあそこで刀などを見せてしまえば、冒険者としての立場を隠す事にはならないか――。
それはいわゆる、アンジャッシュ。絶妙にボタンがかけ違う返答をひとつ。
「ああ、特に隠す必要はない。……お主のように身を守るような、そういった術はあまり得意ではなくてな?
単なる変装だと、ただの小柄な子供にしか見られず、結局絡まれてしまうから……こうやって、開き直った方が良いというわけだよ。」
自分の術式は基本的に対人。自身へ催す効果はあまりない故、そういった術を取る。
この物言いだと、冒険者としての身分なのか。ミレー……に見える外見に関してなのか。絶妙に判断しにくい。
そして、数分もすれば、木製のジョッキに注がれたラガー。
そして、揚げたてのポテトの盛り合わせが置かれる。
どちらも安い上で、腹持ちも良い。こういった酒場では丁度いいものだ。
―――そこで、山盛りのポテトが入った木皿を少しそちらに差し出し。
「ああ、行き成り話し掛けてすまなかったな。一人で酒を飲むのも何だと思って、声をかけてしまった。
……詫びというわけではないが、少しどうだ? 揚げたてだ。」
■篝 > 「……確かに、それは盲点でした。酒さえ飲んでいればと」
隠れ目立たず忍んでいればと思ったが、それはそれで目につくか。言われてみれば全くだ。
今度から輪に加わるように心がけるべきかと思案しながら、微妙に互いにずれた行き違いは修正されずに話は続く。
「そうなのですか。それは――この国では、生き辛いでしょう。
小柄な子供でも、ですか。……難儀ですね」
その耳がトラブルのもとになるとわかっていても、開き直って堂々と出来るのは自分の力に自信があるからだ。
相当な手練れなのか。冒険者ギルドにはほとんど顔を出していない己が知らないのは仕方ないとして、有名な冒険者ならば二つ名があったりするのだろうか。
そうこうして、運ばれて来た酒と肴が少年の前に置かれる。
そして、どういうつもりか肴であるポテトの乗った木皿をこちらに差し出され、小柄は緩く首を傾げた。
理由を聞いてまた少し考えるように無言を挟み、杯を置いてからそーっと指を伸ばし。
「……お言葉甘えます。いただきます」
一つ、ポテトを摘まんで、片手で口元を隠しながら口に運んだ。
さくさくと、揚げたての触感が心地よく、ほくほくと――
「あっ、つ……」
揚げたては猫舌には凶器だったか。舌を火傷して小さく声を漏らし、口を手で押さえ俯いた。
■クチナシ > 「無論。一心不乱に酒を飲んでいれば、ただ飲みたいだけ。と思われるかも知れないが。―――ほれ。」
微笑みながら指差す先。彼女の手元にあるのと言えば、安酒。
しかもちびちびと飲んでいるからか、減りに関しては芳しく無く。
「そうやって、酒をゆっくりと飲んでいたら、飲みながら何かをしている。と――そう思い、自分も声を掛けたというわけだ。
案の定、当たりだったようでなによりだがな。これで間違っていたら目も当てられない。
―――なに。自衛の術は持ち合わせておるよ。それに、一つ拳を飛ばせば聞いてくれる。
むしろ、子供だと侮ったなら、それは重畳。裏を掻いてなんとかしてしまえば良いことさ。」
実際、自分をミレーと勘違いし、ちょっかいを出してきた相手には――少し強めのお灸をすえるようにしている。
結果、自身の所属する冒険者ギルドでは、自分をミレーと勘違いする同業は殆どいない。
知名度は――中級程度。二つ名等は持ち合わせていない。
そして、差し出したポテトと自分の事を交互に見た彼女が、まだ揚げたてで熱を孕んだそれに指先を伸ばし――一口。
認識阻害の術のせいで零す言葉や素振りから年齢や性別はいまいちよく分からないが、熱がる姿は何処か子供っぽい。
「くははっ。―――ああ、言葉に甘えると良い。此処で出会ったのもなにかの縁さ。
それと、熱々だからな。ちゃんと冷ますと良い。ほら……何なら冷えたラガーがあるぞ?」
揚げた芋の内側のほくほくとした熱が舌先に少々ダメージを与えてしまった様子。
安酒も随分とぬるくなっているだろう。と考えて、まだ口を付けていない自分のラガーが入ったジョッキ。少しいるか?と言いたげに小首を傾げて。
「――こうやって話しているだけで、そういった情報を持っている輩からの警戒心が薄まる故な。……もちつもたれつ。というものよ。」
―――優しくする理由に、少々の打算があることも、ここに記す。
そういった理由があれば、初対面の相手でも少しは施しに応じてくれるだろう。と考えての。